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【地球大学アドバンス速報】第44回「地球大学アドバンス〔コミュニティ・セキュリティの再構築シリーズ 第4回〕 企業の災害対応能力とBCP(事業継続計画)」(山村武彦氏)

2011年度の地球大学アドバンスのテーマは「コミュニティ・セキュリティの再構築シリーズ」。その第4回は、ゲストに防災・危機管理アドバイザーで、震災以降TVなどでも専門的なコメントをされている山村武彦氏をお迎えし、さらに森ビルなどの企業の防災担当者もお招きして9月26日に開催しました。

■ 求められるコミュニティ・セキュリティセンター~竹村氏

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今回の震災で、例えばイオン等のショッピングセンターが避難所となり、コミュニティ・セキュリティセンターとして機能したというニュースがありました。今回そのように機能したのは基本的に現場の判断だったと聞きましたが、今後はどうしていくのか、どうするべきなのかが課題になります。

そして、首都震災を想定すると、大きなビルがそのような機能を持つことが求められています。この新丸ビルもそうですが、独自電源を持つ六本木ヒルズなどもセキュリティセンターとしての機能を持っています。今回の震災時にも多数の帰宅困難者を受け入れました。ここで重要になるのは「機能すること」であり、頑丈だというハード面での防災以上に、人の確保や意識といったソフト面での防災ではないでしょうか。

今回はいつもとはちょっと違う構成で、まずは、防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんに40分ほどお話をしていただき、そのあと今回の震災地で力を発揮されたイオンや「逃げ込めるまち」を提唱している森ビルさんにお話を伺おうと思っています。

■ ニューノーマルリスク社会~山村氏

震災で壊れたのは建物だけではありません。被災者の心も壊れてしまいました。その時大事なのは「一緒に頑張りましょう」ということ、それはつまり人の立場になって考えることができるということです。実はこのことが一番大事で、それはつまり自分も場合によっては被災者になることを理解していること、それが防災には何より大切なのです。

3.11は史上初の広域災害でしたが、実は世界を見るとM9以上の巨大地震というのは約10年に一度起きていますし、原発事故や伝染病、異常高温、サイバーテロなども考えると災害リスクというのは非常に高まっています。今の社会はロジャー・マクナミーが言うところの「ニューノーマルリスク社会」になってしまっているのです。

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そのリスク社会において企業は「ソフト・ハード+システム・人」という2S2Hの視点から防災体制を再点検する事が必要です。例えば東京都は避難場所も物資もあったけれど、実際には渋滞で必要な場所に運ぶことができませんでした。ソフトやハードを活かす人間やシステムの視点が欠けていたわけです。

そして、そのためには有事にどのような心理に陥るのか、どのようなケアが必要なのかを考えておき、それに対処できるよう意識改革をするこもが大事になります。例えば、帰宅困難者は社内宿泊し帰らないという原則が立てられていてもどうしても帰ろうという人もいます。それも事前に理解しておけば対策を立てることがでるはずなのです。

個人に視点を移すと、今回の震災で陸前高田では指定避難場所の市民体育館に避難した80名のうち助かったのは3名だけでした。この原因は、災害想定のそもそもの誤りです。震災全体を検証するならなぜそうなったのかを検証する必要がありますし、これはハザードマップや専門家が言っていることが正しいとは限らないということを意味します。生き残るためには、それらを自分たちで吟味するという感覚が大事なのです。

そしてさらに、心理的な要素も重要になります。震災の時、人には「凍りつき症候群→正常性バイアス→楽観性バイアス→経験の逆機能→エキスパートエラー→同調性バイアス」というように様々な段階のバイアスがかかり、正常な判断ができなくなります。それを覆すのに必要なものは何でしょうか?

まず、1800年程度のデータと経験で大地震発生を特定予測することは困難だと考えるべきで、普遍的・最大公約数の地震想定とすべきです。つまり震度6強程度の地震はどこでも起きる可能性があると考えるべきなのです。

その上で、自分たちが被災する前提で自分たちが生き残るための「実践的生き残りマニュアル」を考える必要があります。そのために何よりも必要なのは安全ゾーンを作り、そこへの逃げ道を確保することです。小さな揺れを防災訓練と考えて、安全ゾーンに避難する癖をつければ実際の大地震の時に生き残れる確率が高まります。

帰宅困難者問題についても様々な想定を行い、例えば通勤途上に緊急支援拠点を設けるなどの対策を行なっていく必要があると思います。

■ 各企業の防災対策~各企業担当者

続いて、各企業担当者からのプレゼンテーションです。竹村氏からは「防災意識の日常化、災害の常態化がキーワードである」との指摘がありました。

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森ビルでは「震災時には「逃げ込めるまち」六本木ヒルズの真価が発揮され、一時1000人近くの方が避難されました。震災対策ではソフト面に力を入れていて、事業エリアの近隣に200戸の防災社宅を設け、年8回の訓練を行なっています。また災害情報収集システムでインターネットが生きていれば各ビル間の情報のやり取りがスムーズに行えるようなシステムになっています」とのことです。これに対し竹村氏は「2S2Hの四拍子が揃い、人がちゃんと動ける体制ができている。このOSをモデルとして東京じゅうに広げていけないだろうか」とコメントしました。

三菱地所では、大丸有エリアの企業等と連携して丸の内防災隣組を設置し、近隣の企業や千代田区等と協力し、災害対策を行なっています。その担当者は「千代田区から補助金を受け、千代田区の備蓄を管理して、働いている人や来街者に対応する対策を行なっています。しかし地区内の4000事業所の内67社に参加いただいているだけなのが課題です」と話した。

イオンは震災時の対応について「震災直後から一部の店舗が避難所となり、石巻では2000人以上が避難しました。全てが現場の判断でなされたのですが、お客様のためにという経営理念が生きたのだと思います。チェーンとしてはJALやJRとも業務提携をしており、ガソリンの備蓄もあったので、緊急援助物資の輸送などもスムーズに行えました」と話しました。竹村氏は「避難所として役立った背景には2S2Hがあった。自治体から頼られる存在にもなっていると思いますが、今後法制度上などで必要なことは?」という質問が。これには「600を超える自治体と防災協定を結んでいるが、具体的な所では自治体と想いが相反するところもあるので、これからの課題として取り組んでいきたい」と答えました。

山村氏はイオンの活動について、「お店を開けるのも使命。阪神大震災の時には、自治体の要請もあって多くの店舗が店を開けたことで治安が維持されたました。今回はほとんどの店が開けられることが出来ず略奪などが起こってしまった」とコメント、竹村氏は「頼れるところがそこしかないと負担がかかってしまう。今日は共通認識を日本全体に広めていくためのプラットフォームづくりの第一歩になったのではないか」と締めくくりました。

次回
第45回地球大学アドバンス[コミュニティ・セキュリティの再構築]
シリーズ5 日本経済再生計画― 震災とデフレを超えて

日時:2011年10月24日(月) 18:30~20:30
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