エコッツェリアの会員企業のCSR担当者が集まり、新しい時代のCSRについて考える「丸の内地球環境倶楽部ワーキンググループ(以下、WG)」。6月からスタートし、これまでに6回の勉強会を開催してきました。
その中から生まれたのが、"社食"を企業間のコミュニケーションやまちづくりの場として活用するアイデア。今回はアイデア実現に向け、有志によるフィールドワークを実施しました。訪問したのは、ユニークなオフィスと多様なCSR活動で知られるパソナグループ本部。「アーバンファーム」と呼ばれる緑豊かなオフィスで、参加者のみなさんは、いったい何を感じ取って来たのでしょうか? 当日の様子をレポートでお届けします。
パソナグループソーシャルアクティビスト倶楽部
この日、参加したのは、10名のWG参加者のみなさんです。東京駅からもほど近いオフィスビルに入った途端、目に飛び込んできたのは、いきいきとした植物の数々!
目にも鮮やかなロマネスコ(カリフラワーの一種)畑が一面に広がり、待合室の天井からは、たわわに実ったキュウリもぶら下がっています。この光景に、思わずカメラを向ける参加者も多数。期待感も高まる中、地下にある「ソーシャルアクティビスト倶楽部」へと移動しました。
「ソーシャルアクティビスト倶楽部」は、社内外の様々な人が交流し、教養や知識を高めるための場。幅広いテーマの勉強会やセミナーを毎晩のように開催している他、ランチタイムは社食としても使われているそうです。
そんな今回のフィールドワークの趣旨にぴったりな場所で、まずは、株式会社パソナグループ社会貢献室の山本さん、澤村さんから、パソナグループの多様なCSR活動についてご紹介いただきました。
パソナグループと言えば、人材派遣事業。山本さんによると、事業スタートの背景には、「主婦の社会復帰を応援したい」という思いがあったとのこと。この「ビジネスそのものよりも社会課題が先にあったという歴史から、設立後も、中高年や若者の雇用創出など、社会の課題を見据えた数々の挑戦をしてきました。
そんな中でつくられてきたパソナグループのビジョンは「働くのが楽しくなる社会」をつくること。「会社は来るのが楽しいところでなくてはいけないのでは?」と内外に向けて問いかけるため、「農場の中にある会社」というコンセプトで、このアーバンファームができました。また、現在建設中の大阪のオフィスは「美術館の中にある会社」をテーマにしているのだとか。これまた斬新なアイデアです。
「これからは個人のアイデンティティが強くなり、"会社は必要ない"と思うようなプロフェッショナルの人が増えていくのではないかと思います。そうなると、会社が本来どうあるべきかが問い直される。何か魅力がないと会社は生き残っていけないのでは、という危機感が我々にはあります。それを他の企業に提案するためのひとつとして、オフィス環境にも様々な工夫をしています」
と、山本さん。今回のテーマである「食」に関しても、夜ご飯は無料、大阪では飲食店のテナントを入れ、主婦の方に働いてもらってランニングコストを下げる等、会社を魅力あるものにするために実践している様々な工夫をご紹介いただきました。
そんなビジョンの延長線上にあるのが、パソナグループのCSR活動。「パソナで働いて視野が広がって良かった」と感じてもらうため、参加型の活動に力を入れているとのことです。
山本さんから紹介されたのは、エコをテーマにしたイベントの開催や、芸術・音楽イベントへの参加などを通じた情報発信のほか、障害者雇用を目指した活動、地域活性化モデル事業、震災復興支援活動など、社内外のたくさんの人を巻き込んだ、多岐に渡る活動の数々。
これらの発案から企画、実施には社員一人ひとりの意見が反映されていますが、それは、会社を内閣に見立てて省庁や大臣を置き国会で法案を可決する「シャドーキャビネット」という独自の仕組みから生まれたものなのだとか。山本さんは、「社員の参加により自主性を引き出すことはもちろん、一人ひとりが個人の能力を活かせる社会を目指しています」と、活動の背景にあるビジョンを改めて語りました。
ここからは、参加者のみなさんを交えた意見交換タイムへ。社食や社内だけではなく、社外も巻き込んだコミュニティへと広げているパソナグループの活動の話を聞き、参加者のみなさんもそれぞれに感じたことがあったようです。
「自分の会社でもボトムアップ型の活動が何かできればいいが、どうすればいいか...」
「お金をつけるのが難しいのでは?」
といったみなさんの問いに対し、パソナグループの山本さんは、
「予算がつかなくてもできる価値あるアイデアはたくさんあります。我が社のシャドーキャビネットは、興味のある人同士の横のつながりができるだけでなく、アイデアも出やすいので、いい制度だな、と思っています」
と、自由に意見を言い合える組織環境が、取り組みに大きく影響していることを示しました。
横のつながりは大事ですが、ただ交流するだけでは何も生まれません。「集まることで何かが生まれていく仕組みをつくること」が大事なのだと、メンバーのみなさんも、再認識した様子でした。
その後も、活発な意見交換がなされ、参加者のみなさんは、やりとりの中から、社食からコミュニティへと広げていくアイデアを膨らませていいた様子でした。最後に、WGのファシリテーターの櫻井亮氏(NTTデータ経営研究所)は、
「せっかくこのような機会をいただいたので、このステップから次にまた何かを企画するとか、社食だけではなく、みんなでオフィスを回っていくような試みもできたらいいと思います」
とまとめ、今後への期待感を残してこの日の見学会は終了となりました。
終了後、参加者のみなさんを待ち受けていたのは新鮮なサラダ!使われているのは、このビルの中にある植物工場で栽培したレタスです。パソナグループでは、このレタスを社食のサラダバイキングで使用しており、社員のみなさんにも大好評なのだとか。オフィスビル内で地産地消が実現しているなんて、驚きですよね。参加者のみなさんも、そのアイデアに改めて感心しながら、シャキシャキのレタスを美味しく味わっていました。記事冒頭の写真はこのときのものでした!
オフィスビル内の見学もさせていただきましたが、会議室から屋上まで、あらゆるところに緑が施されているだけではなく、障害者アートの展示や社員の憩いスペースの設置など、会社としての取り組みが随所に見られるアーバンオフィスは、訪れる人を楽しませてくれる場所。全体を通して、「働くのが楽しくなる社会」というビジョンを、大いに体感することができた見学会となりました。
さて、この見学会の成果は、WGの"社食"企画にどのように活かされていくのでしょうか?
今後の展開も引き続きレポートしていきますので、どうぞご期待ください!