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「こんなに大きいカブトムシははじめて!」「見て、水辺に虫がいるよ」太陽の日差しが照りつける暑い一日。3×3Lab Futureに元気な子どもたちの声が響きました。
エコッツェリア協会は大丸有SDGs ACT5実行委員会と共催し、夏休み中の子ども達にいきものに触れ、カブトムシの意外な能力を学べるプログラムを提供しました。いきもの調査と環境教育の専門家であるNPO法人生態教育センター高橋利行氏と共に、実物のカブトムシ鑑賞や五感をつかったワークショップのほか、昆虫の力でゴミを資源化し、世界の資源不足の解消を目指すバイオスタートアップ企業の株式会社TOMUSHI CEOの石田陽佑氏の講演など、昆虫好きの子ども達にとって盛りだくさんな一日になったようでした。
プログラムは高橋氏のワークショップから始まりました。参加者分用意された紙袋の中には、用意された3種類の葉のうち1種類だけが入っています。各自紙袋の中にある葉を触り、同じ種類の葉を持つ仲間を探して3つのチームを作るというものです。今回配られた葉は、「つるつるした手ざわり」のみかん、「つるつるした手ざわりで、周りがふにゃふにゃする」クスの木、「ざらざら、べたべたした手ざわり」のツツジの3種類でした。みかんの葉は柑橘系の香り、クスの木はメンソレータムの香りがするため、匂いでも植物の特徴を感じることができます。子どもたちは会場を歩き回りながら、同じ種類の葉を持つ相手を探していきました。
「葉っぱにはそれぞれ手ざわりや匂いなどの特徴があります。夏は緑色をしていますが、秋になると色が赤くなり葉を落とすなど、1年を通してさまざまな方法で生活しています。このゲームで手ざわりや匂い、音を感じてもらったように、自然観察には五感を使うことが大事です」(高橋氏)
子どもたちは植物を観察する上で必要なものの見方について、楽しく学んだ様子でした。
高橋氏は、続いて生物多様性について話しました。
「世界のいきものの種類はどれくらいだと思いますか。哺乳類がおよそ5,500種類。鳥がおよそ1万種類。植物はおよそ30万種類。昆虫はおよそ100万種類。このほか全て合わせると、だいたい870万種類あると言われています。地球上に住む様々ないきものは自分達に合った環境で個性を活かし、助けたり助けられたりして生きています。これを生物多様性といいます」(高橋氏)
スライドいっぱいに映し出された模様の異なるてんとう虫の写真。実は全てナミテントウという同じ種類のてんとう虫だと高橋氏が話すと、驚きの声が上がりました。同じ種類の昆虫でも遺伝子により少しずつ違いがあります。個性があることで、病気や、気温などの環境の変化にも種として耐えることができるのです。
次に大丸有エリアに暮らすいきものの紹介です。トンボやてんとう虫、ハチドリと間違われるというスズメガ、ショーウインドウに止まっているホタルガ、落ち葉のなかに紛れて見つけづらいアケビコノハなどの昆虫の写真が続きます。街路樹に巣をつくるスズメの姿や、ハヤブサなどの鳥の姿も観察できました。 ビルだらけの東京になぜいきものがいるのか。それは、大丸有エリアに皇居や日比谷公園、大手町の森などの緑地があるからだと高橋氏。3×3Lab Futureのそばにあるホトリア広場にもいきものが集まっています。この後の自然観察ではどんないきものと出会うことができるのか、期待が高まります。
その後、株式会社TOMUSHI・石田氏の講演に移りました。小学生の頃からカブトムシが好きで、兄弟で一緒に会社を興しました。研究を続けるなかで、カブトムシがゴミを食べることに気づき、日本国内にカブトムシを使ったゴミ処理工場を作るようになりました。TOMUSHIでは、カブトムシにゴミを食べさせるだけではなく、カブトムシの幼虫を魚の餌にするための試験や、カブトムシのフンが薬の一部や畑の肥料になる取り組みを行うなど、ゴミが資源に変わる方法を探しています。好きを追い続けることでカブトムシが環境に貢献できる方法を見つけたと語る石田氏。子どもたちが大きくなるころにはカブトムシが環境に与える影響もさらに大きくなっているかもしれません。
講演の合間に、モニターに石田氏が撮影したセアカフタマタクワガタ・ギラファノコギリクワガタの対決の様子が写されると、子ども達も大喜び。クワガタ対決の勝者を予測して盛り上がりました。「カブクワ(カブトムシ・クワガタムシ)すごいぞ クイズコーナー」と題したコーナーでは、カブクワに関するクイズが次々に投げかけられました。昆虫好きが集まるためクイズの正答率も高く正解が続きます。世界一大きなカブトムシであるヘラクレスカブトムシの名前を当てたり、カブトムシの敵がカラスであることを当てたりする度、大人からも驚きの声が上がりました。
いきものの知見を得た後は、体を動かしていきものに触れる時間です。「ホトリア広場でいきもの観察」と「室内でカブトムシ観察」の2つの班に分かれて交互に体験しました。
さまざまな木々や花が植えられ、いきもののつながりが作感じられるホトリア広場に向かう班には、NPO法人生態教育センターの佐藤真人氏がサポートに入りました。早速「幼虫を見つけました」「アシナガグモがいた」という声が聞こえてきます。今回は、写真を撮るだけでいきものや植物の名前が分かるアプリ「いきものAI図鑑 Biome(バイオーム)」も使い、子どもだけではなく、大人も一緒に楽しみながらいきものを探しました。
「みんな集まって!」と佐藤氏が声を掛けました。今回は珍しいモノサシトンボを見つけたのです。水辺に生息するという事前情報のとおり、池のほとりにいるところを発見しました。腹部に入っている線がモノサシのようで名付けられたという説明に子どもたちも興味津々。東京都の絶滅危惧種にも指定されていますが、ホトリア広場の水草に卵を産みにきているようです。参加者たちはモノサシトンボを観察した後、そっと元にいた場所へ戻しました。
室内では、石田氏自慢の貴重なカブトムシを自由に触ることができました。
幼虫や10㎝を超える大きなカブトムシはなかなかお目にかかれません。子どもたちは思い思いにカブトムシに触れ、観察を楽しみました。ヘラクレスオオカブトはもちろん、黄土色の毛に覆われて重量感のあるエレファスゾウカブトなどの珍しさにも驚く姿が見られました。大きな幼虫に触れながら「思ったよりもかわいい」という実際に触れたからこそ聞ける感想もありました。
「クイズの正答率が高くて驚きました。子どもたちのカブトムシ・クワガタに対する知識は素晴らしかったです。そんな子たちに、実際に触れ、間近で見る経験を提供できて良かったです。夏休みの思い出にもなりますし、ぜひたくさん触れて、もっと詳しく知りたいと思ってもらえたらいいですね」(石田氏)
今回はお土産として今後の昆虫観察にも役立つ吸虫管が配られました。チューブで息を吸い込み昆虫を捕まえることができるグッズです。参加者はイベント終了後もゲストに質問に回り、カブトムシの飼い方や、観察時のポイント、今回の自然観察で気になったことを尋ねていました。子どもたちのみならず、大人にとっても学びの多い一日になったようです。
「普段は見ることのできない虫を触ることができて、楽しいです」
「こんなに大きなカブトムシがいるなんて驚きました」
「オフィス街という印象の大手町エリアで、たくさんのいきものを観察できることに驚きました。身近なところから探していきたいですね」
「カブトムシの持つ力に驚きましたし、好きを追究して環境について調べたり、新しい仕事を生み出したりするゲストの話も印象的でした」
まちのなかのいきものに触れ、カブトムシの力で資源を有効活用できる未来にも想いを馳せた夏休みとなりました。
エコッツェリア協会では、気候変動や自然環境、資源循環、ウェルビーイング等環境に関する様々なプロジェクトを実施しています。ぜひご参加ください。