イベント丸の内コミュマネ大学・レポート

【レポート】「場は器であり、価値を吹き込むのは人」―AI時代だからこそ高まるコミュニティマネージャーの価値

丸の内コミュマネ大学 community frontline#05 2026年6月5日(金)開催

企業や地域など、多様な場づくりに関わる人たちが集い、コミュニティマネジメントの実践知を学び合う「丸の内コミュマネ大学」の第5回講座が2026年6月5日、東京・大手町の3×3Lab Futureで開催されました。
今回はPerkUP株式会社共同代表COOの斉藤晴久氏をゲストに迎え、未来の働き方とコミュニティの関係性について学びを深めました。 斉藤氏は、国内外のコワーキングやコミュニティスペースを俯瞰的に整理した業界地図「カオスマップ」をもとに、 場が「場所の提供」から「目的を持ったコミュニティ」へと変化してきた過程や、コミュニティマネージャー(コミュマネ)に求められる役割について語りました。

image_event_20260605_001.jpg 開会にあたり3×3Lab Future拠点に社会課題解決コミュニティを育むエコッツェリア協会の活動内容を紹介する神田主税(写真左)と田邊智哉子(写真右)

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参加者には、食事を通じて出会いやつながりを生み出すshokujiiのお弁当が提供されました。参加者全員で「いただきます」と声を合わせ、和やかな雰囲気のなか講座がスタートしました。

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「場所」から「目的」へ、カオスマップが映し出す場の進化

「場所」から「目的」へ、カオスマップが映し出す場の進化

ゲストである斉藤晴久氏は、システム開発会社や大手ECサイト運営会社、ベンチャー企業などを経て、2020年に株式会社AnyWhereを創業し、2025年に後継のPerkUP株式会社共同代表取締役 COOに就任しました。
同社は「人と地域の出会いを科学する」をミッションに掲げ、法人向けの合宿やワーケーションの企画・手配、コワーキングスペース向けシステムの開発、リトリート施設や会員制ワーケーション拠点、ビジターセンターの運営などを手掛けています。 講演ではまず、同社が2020年から毎年作成しているコワーキングスペースの業界地図「カオスマップ」をもとに、場を取り巻く環境の変化について解説しました。

image_event_20260605_003.jpg カオスマップの変遷について語る斉藤氏

斉藤氏によると、2020年に最初のカオスマップを公開した時は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって働き方が大きく変化し始めた時期でした。当時のコワーキングスペースは「働く場所」としての役割が中心であり、いわば場所を提供すること自体が価値となっていました。
しかしその後、デジタルノマドやワーケーションといった新しい働き方が広がり、無人運営やDX化なども進展。働く場所の選択肢は急速に多様化していきました。さらに最新版となる2025年版のカオスマップでは、その変化がより顕著になっています。 単に働く場所を提供するのではなく「何のために存在する場なのか」という目的そのものが重視されるようになりました。

斉藤氏は、こうした変化を踏まえ、場の価値を「質の高い働く場所」「共創・スタートアップ支援」「つながり・交流」「団体受け入れ」「特定属性や専門領域へのインパクト」「周辺サービス」の6つの観点から整理。
「最近では働く場所だけではなく、共創やスタートアップ支援にフォーカスする場、クリエイター支援や社会課題解決など特定テーマに特化した場も増えている。しかし、その中心にあるのは人と人とのつながりや交流であり、コミュニティとしての機能がますます重要になっている」と説明しました。

image_event_20260605_004.jpg 会場は満席となり、参加者の関心の高さがうかがえました

続いて斉藤氏は、AI時代におけるリアルな場の価値について話題を移しました。コロナ禍を経て、多くの仕事はオンラインで完結できるようになりました。さらに生成AIの登場によって、情報収集や資料作成、リサーチなども短時間で行えるようになっています。
斉藤氏は「仕事をすること自体はオンラインでも十分可能になった」と語る一方で、人との関係づくりについてはむしろリアルな場の価値が高まっていると指摘します。「以前は仕事をすることも、人との関係を広げたり深めたりすることもリアルが当たり前だった。しかし現在、仕事はオンラインでできるようになった一方、人との関係づくりについてはリアルな場に回帰している」と斉藤氏。
AIによって日常的な業務は効率化される一方、人と会うためにその場所へ足を運び、偶発的な出会いや新しいアイデアが生まれる機会は、むしろ希少性を増しているのではないかと語りました。

また、斉藤氏は海外のトラベルテックカンファレンスで紹介された「Quiet Power(静かな力)」という考え方にも触れました。
人間関係を紡ぐ力や阿吽の呼吸、場の空気を読み取る力、相手との関係性を踏まえて調和を生み出す力など、日本人が得意とするコミュニケーションのあり方は、AIには代替しがたい価値であるといいます。 「AIが得意なのはプロセスの実装や情報収集、一対一の対話。一方、人にしかできないのは、人と人との接点を生み出し、そこから新しい価値や化学反応を生み出すことではないか」と斉藤氏は語りました。

最後に斉藤氏は、これからのコミュマネに求められる役割について3つの視点から説明しました。 1つ目は、「コミュマネ自身がコンテンツである」ということです。施設やイベントの魅力をつくっているのは設備や仕組みだけではなく、そこにいる人そのものです。コミュマネ自身が唯一無二の存在であり、その人だからこそ生まれる価値があると語りました。
2つ目は、「ハブ人材」としての役割です。地域や施設が抱える課題や眠っている資産と、企業や個人が持つ知見やスキルを結び付けることで、新たな価値を生み出す存在が求められているといいます。 そして3つ目が、「セレンディピティを演出すること」です。異なる背景や目的を持つ人同士をつなぎ、偶然の出会いから新たなプロジェクトや活動が生まれるきっかけをつくることもコミュマネの重要な役割だと説明しました。

「場は器であり、価値を吹き込むのは人。AI時代だからこそ、人が集う場の価値はさらに高まり、コミュマネの存在はますます重要になる」斉藤氏はそう語り、講演を締めくくりました。

AIには代替できないもの、コミュニティとAIの関係性を深堀する

講演後のグループディスカッションでは、「コミュニティ(あるいはコミュマネ)とAIの付き合い方」をテーマに意見交換が行われました。 参加者からは、「もしコミュニティマネージャーがAIだったら冷たく感じるのではないか」「人が人をつなぐからこそ関係性が広がっていく」といった声が上がり、人だからこそ生み出せる価値について議論が深められました。

また、AIは事務作業や情報整理などの効率化には有効である一方、人の感情や場の温度感を読み取り、適切なマッチングを行うことは難しいとの意見も共有されました。さらに、コミュニティ内で生まれるアイデアや対話をAIで可視化・記録するなど、人の活動を支援するツールとしての可能性にも期待が寄せられました。

image_event_20260605_005.jpg 「コミュニティとAIの付き合い方」をテーマに意見交換が行われました

その後は、3×3Lab Future館長の神田主税、同ネットワークコーディネーター田邊智哉子が加わり、斉藤氏とのクロストークセッションが行われました。 ファシリテーションは株式会社ファイアープレイスの渡邉知氏が務め、AI時代におけるコミュニティの価値やコミュマネの役割について議論を深めました。

image_event_20260605_006.jpg コミュマネ大学恒例となったクロストーク、右から渡邉氏、斉藤氏、田邊氏、神田氏

クロストークでは、講演で提示された「AI時代における場の価値」を踏まえながら、「コミュニティとは何か」「コミュマネはどのような役割を担うのか」をテーマに議論が行われました。 まず話題となったのは、「コミュニティ」の定義です。

斉藤氏は「コミュニティとは何らかの理由で集まっている集団」と説明し、「成果達成を目的とするチームとは異なる」と語りました。 チームが明確な目標や成果を目指して活動するのに対し、コミュニティは共通の関心や価値観、問題意識などをきっかけに人が集まり、そこから関係性や新たな活動が生まれていく場だと整理しました。
田邊も「ただ人が集まればコミュニティになるわけではない」と指摘します。3×3Lab Futureには「社会課題解決」や「新たな価値創造」といった大きな方向性があり、その理念に共感する人々が集っていると説明しました。 その上で、「参加者一人ひとりが何に関心を持ち、何を実現したいのかを聞き取り、それぞれに適した人やプロジェクトにつなげていくことが自分の役割」と語り、コミュニティを支える実践について紹介しました。

image_event_20260605_007.jpg 渡邉氏(右)からカオスマップについて質問を受ける斉藤氏(左)

さらに議論は、コミュマネとネットワークコーディネーターの違いへと発展しました。 斉藤氏は、「コミュマネは一定の目的や方向性を持ったコミュニティを支える役割が強い。 一方でネットワークコーディネーターは、人や組織、活動を横断的につなぎ、新たな関係性を生み出していく役割が大きいのではないか」と説明しました。

一方で両者に明確な境界線があるわけではなく、場や目的によって求められる役割も変化することが共有されました。 また、コミュマネに必要な資質について渡邉氏から質問が寄せられると、斉藤氏は「人の話を純粋に聞く力」が重要だと回答しました。
さらに「地方のコワーキングスペースを訪れると、その場には運営者の価値観や想いが色濃く表れている。 設備やサービスだけで差別化することが難しくなった今、場の価値を決めるのはそこにいる人そのものだ」と語り、コミュマネ自身が場の個性や魅力を形づくる存在であるとの考えを示しました。

質疑応答では、「コミュマネは人と人をつなぐだけでなく、参加者の対話力や協働する力といったソフトスキルを育む役割も担うべきではないか」という意見が寄せられました。 また、コミュマネとネットワークコーディネーターの違いや、それぞれに求められる役割についても議論が交わされました。議論を通じて浮かび上がったのは、AIによる効率化が進む時代だからこそ、人と人との関係性を育み、多様な人材やアイデアを結び付ける存在の重要性です。
コミュマネやネットワークコーディネーターは、単なる運営者ではなく、人と人との出会いを支え、新たな価値創造のきっかけを生み出す演出家であることが改めて確認されるクロストークとなりました。

AIの進化によって、コミュニティマネジメントでも多くの業務が効率化されつつあります。 しかし今回の講座を通じて見えてきたのは、人と人との出会いや対話、そこから生まれる偶然のつながりは依然として人にしか生み出せない価値だということでした。 AI時代だからこそ、人が集う場の価値はさらに高まり、その価値を引き出すコミュマネの役割もますます重要になっていくのではないでしょうか。

image_event_20260605_008.jpg 学びと対話をともにしたみなさんで記念撮影。今回も新たな出会いとつながりが生まれました。

丸の内コミュマネ大学

社会をアップデートする素地を考える

丸の内コミュマネ大学では、交流や共創を生むコミュニティのあり方や、コミュニティマネージャーこと"コミュマネ"に着目し、社会をアップデートする素地を考えます。業種や地域の枠を越えてコミュマネ同士がつながり、そのつながりのハブになることを目指しています。

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