
大手町・丸の内・有楽町(大丸有エリア)の日々の変化や気づきを写真で共有・保存するコミュニティ活動「大丸有フォトアーカイブ」。様々な視点でとらえたまちの表情を楽しんでもらい、魅力の再発見につなげてもらおうと2月21日から3月4日まで新国際ビル1階GOOD DESIGN Marunouchiにて「大丸有フォトアーカイブ みんなの写真展 - まちの魅力」が開催されました。
同写真展では「まちの魅力」をテーマに、大丸有エリアで撮影された写真作品を一般の人から募集し、選考を通過した50作品が展示されました。さらに2月22日、作品選考に関わったフォトグラファー藤田修平氏を招き、オープニングトークイベントを開催しました。この記事では、イベント前に行われた写真展の見学とトークイベントをレポートします。
オープニングイベントは、GOOD DESIGN Marunouchiで開催されている写真展の見学から始まりました。大丸有フォトアーカイブの企画運営を務める鵜久森洋生氏とフォトグラファー藤田修平氏を中心に、20名ほどの参加者がGOOD DESIGN Marunouchiに集まりました。
鵜久森氏は冒頭に「2回目の開催となる今回の写真展には540作品もの応募があり、その中から選りすぐりの作品をここに展示している。まずは展示を見て楽しんでいただければ」と挨拶しました。また藤田氏は「今回は前回よりも応募作品が多く、皆さんのレベルも上がり、いい視点の作品が多かった。その中でも特に印象的な作品を展示しているので、楽しんでほしい」と言葉を続けました。
左:みんなの写真展が開催されたGOOD DESIGN Marunouchi
右:オープニングイベントは展示会場の見学から始まりました
その後、藤田氏が参加者とともに会場に展示されている選出作品を一つひとつ講評して回ります。同氏は、単に写真技術や構図といった観点からだけではなく、撮影者の視点にまで踏み込んだ選考理由を説明しました。
左:作品選考に関わったフォトグラファーの藤田修平氏
右:藤田氏による講評の様子
今回の写真展会場には作品のほかにも、スポットマップと「マチのカオ」という企画展がありました。
鵜久森氏は「今回は、それぞれの作品が大丸有エリアのどこで撮られたのかをスポットマップとして可視化できた。また、新たな試みとして、大丸有エリアを代表する人たちにそれぞれが思う「まちの魅力」についてインタビューしてパネルにまとめた」と説明しました。
「マチのカオ」にはエリア就業者にも馴染みの深い飲食店の方々や美術館スタッフ、そしてこの街の変化を見続けてきた企業の社長まで計8名が紹介されています。鵜久森氏は「今回の写真展は、写真を展示するだけではなく、「マチのカオ」や彼らのおすすめの場所も載せているので、是非大丸有エリアを散策する参考にしてほしい」と語りました。
写真展を見学した参加者らは、その後、藤田氏らとともにトークイベントの会場へ。鵜久森氏をモデレーター役に、「ファインダー越しに見えた『まちの魅力』」をテーマにトークセッションがスタートしました。
DMO東京丸の内にてトークイベントが行われた
鵜久森氏:今回の作品を通じてどんなことを感じましたか。また、大丸有エリアの写真展での特徴はありますか。
藤田氏:今回の写真展は見どころがはっきりしてきました。みんなの目線が非常に定まってきた印象です。作品のレベルが上がり、見方や考え方に多様性が生まれていました。
そして、作品を見ていると、緑や水を捉えたものが多いですね。大丸有エリアは常に新しいことに挑戦するまちであればこそ、それがストレスになることもあるかもしれません。だからでしょうか、人々は癒しを求めて緑や水に惹かれるのかもしれません。
鵜久森氏:前回の写真展では、大丸有エリアの写真展はビルの写真ばかりになると思っていたが、実際は緑の写真ばかりと、驚いた方もいました。丸の内仲通りで毎年開催されているMarunouchi Street Parkでは、道路に芝が敷かれ、そこに腰を落ち着けてパソコンと向かい合っているビジネスマンも見かけます。
藤田氏:緑や自然は人が受け入れやすい部分があると思います。大丸有エリアにもそんな緑や自然がたくさんあって、それをどのように見るか、そしてそれを見つけることによってまた新しいことに気づく、ということがよく分かります。今回の作品もやはり人が本来求めるものを写していると思うのです。
左:大丸有エリアの記録となるような写真展を続けていきたいという藤田氏
右:モデレーター役を務めた鵜久森氏
鵜久森氏:私たちが今撮っている写真は、今後振り返ってみた時に「こんな視点もあったのか」という参考資料になっていきますね。
藤田氏:それは、このまちがたどってきた時間が写っているということだと思います。例えば、このまちには江戸城の石垣があり、数百年単位で歴史を映しているともいえます。一方で、新陳代謝の激しいまちでもあるので、あと数年でなくなってしまう建築物もたくさんあります。今回の応募作品からも、そんな新旧が混在する大丸有エリアをどう見ていくか、どう撮っていくかという意識が伝わってきます。言い方を変えれば、まちの沿歴の中に自分たちの居場所を探しているということだと思います。
鵜久森氏:歴史が感じられる写真も多かったです。
藤田氏:過去ばかりではなく、新しいビルができるということは未来が見えてくることでもあります。それをまた様々な角度や視点で見てもらうのも、いい写真展につながると思います。
鵜久森氏:最後に、今後フォトアーカイブを続けていくにあたって、まちの魅力がより伝わるためのアドバイスをお願いします。
藤田氏: 過去・現在・未来、の都市デザインの移り変わりとそこに息づく人々を撮ることです。特にこのまちは絶えず新たなイノベーションで創造的破壊を行なっています。そんな新陳代謝の速さはほかのエリアにはない特徴です。だからこそ、記録として残していきたい。このエリアならではのテーマを深めていくのはとても楽しみですね。
こちらの写真について、藤田氏は「まず、本当にこんな場所が大丸有エリアにあるのかと驚きました。写真の持つ意味を追求し続けている1枚ですね。花と赤いバスが入ることで、楽しい気持ちや優しい雰囲気が表現されている。世界観がしっかりしていて、撮影者の人柄がよく出ている。僕がすごく好きな写真です」と講評しました。
また、イベントに参加していた撮影者は、「赤いバスは絶対に入れたかった。苦労した点は、コスモスが少し枯れ気味の時期だったことと、バスが後ろに走っていて、こちらに向いて咲いているコスモスを見つけるのが大変だった」と撮影の裏話を明かしてくれました。
次の写真について、撮影者が「せっかく東京駅に来たので、東京駅の真っ直ぐさと、手すりの真っ直ぐさを意識して撮影した」と当時の意図を明かすと、藤田氏は「この子どものクネッっとした後ろキックの動きがとても可愛いらしく見える。その点がすごくいいなと思う。また、意識して撮影された東京駅のまっすぐなラインがお洒落に見えて、その点も良かった」と講評しました。
他の作品についても、藤田氏はさまざまな視点から講評を行いました。
最後に藤田氏は、「写真は人の心の目のようなもの。オリジナルな視点なので、人それぞれ違うのが当たり前です。様々な人の視点を楽しんでもらいたい。しかし最終的には、自分が撮った写真は自分自身でもある。フレーミング、光、レンズ、サイズなどを選ぶ作業は、自分が満足できるように自分と向き合うことでもある。今日のように、それぞれの世界観を共有し、『この人はこんなふうに見るのか』と他人の世界観を知ることができるのは、とても楽しい時間だった。そんな"自分らしさ"を見つけるためにも、是非また大丸有フォトアーカイブに参加してほしい」と締めくくりました。
参加者たちは、トークセッション終了後も、藤田氏や鵜久森氏らとフォトアーカイブや写真展についての談議に花を咲かせていました。
左:藤田氏から作品の講評を受ける参加者
右:参加者同士で写真の構図や撮り方について情報交換を行う場面も
鵜久森氏や藤田氏によれば、今回選ばれた作品の中にはスマートフォンで撮影されたものも多かったそうです。皆さんも大丸有エリアを訪れた際には、自分ならどの場所をどう撮るかを考えてみるのも楽しいのではないでしょうか。そして、次の写真展にはぜひ応募してみてください。
2025年5月13日(火) 18:00 - 20:30
2025年4月11日(金)18:30 - 20:30
6月2日(月)・6月16日(月)・6月30日(月) 18:30~20:00
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