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東京・大手町にある4つのラボが結集し、新たなコラボレーションや革新を生み出そうと「大手町ラボフェス」が8月26日に開催されました。今年のテーマは「食べる、育てる、暮らすを感じる1日」。会場は、SAPジャパン株式会社と三菱地所株式会社が共同運営するInspired.Lab、JAグループのAgVenture Lab、住友商事株式会社のMIRAI LAB PALETTE、そしてエコッツェリア協会が運営する3×3Lab Futureです。それぞれの会場ではサステナブル以上の付加価値を社会に還元しようとする企業や団体が発表を行い、イノベーションやコラボレーションの最前線に触れる貴重な機会となりました。今回は、そんなラボフェスの様子をレポートします。
Inspired.Labで行われたリジェネラティブ・リーダーシップ導入ワークショップは、来るべき社会のリーダーシップについて参加者と共に考える場となりました。
リジェネラティブ・リーダーシップの重要性を説く原氏
SAPジャパン株式会社の原剛氏は「これまでは便利さや効率性に価値があったが、これからは精神的な豊かさや仲間との共感に価値がある時代。効率的なことはAIに任せ、人は人らしい仕事で自分らしい生き方をする時代の幕開け」と今が転換期であると指摘しました。そして「そのような時代には、人や組織や地域が本来持つ再生する力を信じて引き出すリーダーシップが大切。ビジネスでも組織全体のレジリエンスを育て、社員のモチベーションや幸福感を高めることがイノベーションや長期的な成果に繋がる」とリジェネラティブ・リーダーシップの重要性を説きました。
自社のリジェネラティブ戦略について語る竹中工務店の蓑茂氏
その一例として、株式会社竹中工務店による持続可能な木材調達やと建築物の長寿命化への取り組みが紹介されました。同社の蓑茂雄二郎氏は「リジェネラティブへの挑戦は、一つひとつの積み重ねが大きな未来へ繋がると思う」と担当者としての実感を語りました。
その後、参加者は自らが所属する組織でのリジェネラティブへの取り組みについて意見交換をしました。多くの参加者がリジェネラティブ・リーダーシップの考え方に関心を示し、組織や業務に取り入れたいと願う一方で、業種や部門による温度差もあり、必要性と導入の難しさとのギャップが浮き彫りとなるワークショップとなりました。
所属組織でのリジェネラティブの取り組みについて話し合う参加者
同じビル内にあるAgVenture Labでは「めぐる、つながる、都市で育つ食のかたち」と題して、大手町エリアの企業が取り組む食や農のユニークな取り組みが紹介されました。
まず紹介されたのは、福島県浪江町のお米を使ったサステナブルな日本酒「回~gururi~」です。住友商事株式会社が、地域事業者による新規事業開発のサポートを目的とした「ナミエシンカ」のプログラムとして立ち上げたプロジェクトで、原材料、容器、輸送などで極力CO2排出を抑える工夫が施されており、廃棄される酒粕も有効活用するなど「各行程においてお米を無駄なく使いきる仕組で作られた日本酒」(同社 南光祈氏)となっています。今後は、穀物残渣を使ったバイオプラスチックを導入するなど、地域資源を活用した循環型社会のモデル拡大を強化していく予定です。
サステナブルな日本酒「回~gururi~」を紹介する住友商事の南氏
続いて、エコッツェリア協会の松井宏宇氏がオンラインで登壇し、養蜂を通じたまちづくり「丸の内ハニープロジェクト」を解説。大手町周辺の草花から蜂に蜜を集めることで、これまでに約800㎏の蜂蜜を採集し、地域産の食品やスイーツの原料に活用されています。また、プロジェクトを通じて花粉を運ぶポリネーターの重要性に改めて気づかされたと松井氏は語り、「蜜が少なくなる時期に街中に花を増やすなど、活動を通して都市が自然と共生できる環境を整えていきたい」と述べました。
丸の内ハニープロジェクトについて耳を傾ける参加者
最後に紹介されたのは、クオンクロップ株式会社の「Myエコものさし」の取り組みです。同社は「オーガニック」や「地産地消」など一般的に環境負荷が少ないとされる商品について、ライフサイクルアセスメントなどの裏付けデータを提供することで、消費者への訴求力強化を図っています。「データとして可視化されないため、日本の消費者の約3割はエコ商品の購入を控えている。"Myエコものさし"を使い、データに基づいた訴求をすれば、消費者の行動変容が増えるはず」(同社 北垣卓氏)と意義を語りました。
「Myエコものさし」について語るクオンクロップの北垣氏
パネルディスカッションでは、AgVenture Labの篠原裕志氏がモデレーターを務め、各事業の理解を深める場となりました。最後に今後の展望について南氏は「商品だけでなく、その商品を取り巻く地域の関わりや想いを汲み取り、魅力をさらに発信していきたい」と述べ、北垣氏も「頑張っている生産者や地域の循環モデルを深く理解・共感して購入を決める消費者を増やしたい。そしてこのモデルを海外にも発信していきたい」と抱負を語りました。
パネルディスカッションでは事業のスケール化や地域資源の活用法なども話題に
MIRAI LAB PALETTEでは3分間という短時間で事業内容を紹介するライトニングピッチが開催されました。
会場では各企業の展示も行われており、企業担当者の説明に熱心に耳を傾ける来場者の姿も見られました。
写真左上:ハイパースペクトルカメラを使ったレモンの鮮度測定の様子
写真右上:会場で配布された植物工場育ちのサニーレタス
写真下:各社の展示ブースには多くの人が集まり意見交換が行われた
夕方からは3×3Lab Futureがメイン会場となり、「食と農業とサステナブル」をテーマに講演会と交流会が行われました。
写真左上:会場で提供された廃棄される魚の頭を煮込んだフィッシュヘッドカレー
写真右上:御殿場高原ビール30周年記念ゴールデンピークも提供された
写真下:会の始めは、参加者全員で「いただきます!」の大合唱
講演会のトップバッターとして登場したのは、株式会社家'sの伊藤昌徳氏。「古いものに出会って古いものに魅せられた」と語る伊藤氏は、地方の空き家などに眠る家具を、アクリルを用いて、あるいは炙りの手法で現代アートのようにデザイン性の高い家具に生まれ変わらせて販売しています。伊藤氏は「他人が不要というモノにどうすれば新たな価値を与えられるか常に考えている。日本の文化や思想から生まれたタンスなどはかっこいいし、使い捨てられてしまうのは惜しい。現代のデザインと比べても遜色ない素晴らしいものが多いので、大切に使って欲しい」と想いを語りました。
古いものに魅せられたという家'sの伊藤氏
続いて登場したのは、ライトニングピッチでも登場した株式会社BLUABLEの藻場再生事業です。同社の福地達貴氏は「過去40年で日本の海藻類は半分以上が消失してしまった」と警鐘を鳴らす一方、「現在の海藻を再生させるための取り組みは、どれも税金やボランティアに頼っており、経済的に見ても持続可能ではない」と課題を指摘します。このような課題に対して同社は容易かつ安価な藻場創生キットを開発し、全国10か所の実証実験で順調に成果を上げています。福地氏は「藻場の再生を通じ、カーボンクレジットを求める企業と、地域の食や文化を守りたいと考える地域を持続可能な形で結びつけたい」と語りました。
日本の藻場を再生したいと語るBLUABLEの福地氏
最後に登場したのは合同会社渋谷肥料の坪沼敬広氏。渋谷肥料は企業ミッションとして"Beat Circulation"(ドキドキ、ワクワクする循環型社会の設計)を掲げ、渋谷をはじめとした大都市の廃棄食物を再生した肥料で育ったさつま芋をお洒落なスイーツにして、再び渋谷で販売するといった循環を生み出しています。実際のスイーツは競合製品の1.5倍の価格にも関わらず2倍の販売個数を記録するなどの人気を博しており、循環を通じて都市と地域をつなぐ架け橋となっています。坪沼氏は「大都市と周辺地域が結び付いて生まれる『渋谷肥料モデル』の経済圏を、将来的には世界に広めていきたい」と展望を語りました。
大都市と周辺地域がつながる仕組みを世界に広めたいと語る坪沼氏
そその後のクロストークでは、地域の農家や漁師、家具職人などのステークホルダーを巻き込む難しさについて語ったほか、最終製品の高いデザイン性をどのように確保するのかといった質問も出ました。クロストークで見えてきたのは、それぞれのビジョンに対する想いが発露となり、福地氏は現地に足を運び漁業者との関係性を構築し、伊藤氏や坪沼氏はクリエイティブの本質を捉えた上で、既存の技法や仕組みを活かしながらサステナビリティを実現しようとしている姿でした。
クロストークは3×3Lab Futureから神田主税や田邊智哉子も加わった
今回のラボフェスは、各企業の多様な挑戦を知り、参加者同士の新たな出会いを生み出す場となりました。ここから未来を創る協働がさらに広がっていくことを期待します。
会場の座席はすべて埋まり、大盛況を迎えた
大手町ラボフェススピンオフ企画vol.1 私からはじめる!~新規事業・まちづくりに欠かせないコミュニティの作り方~ 2024年5月24日(金)開催
大手町ラボフェス2023 2023年9月14日(木)開催
「GOOD DESIGN MARUNOUCHI」にて14日(土)まで
【ひなたMBA×丸の内プラチナ大学】第3回 共感を生むクリエイティブ戦略〜地域の思いを届ける力〜 2025年11月17日(月)開催