環境問題は、ただ規制や保護だけではなく、その解決をビジネス化することに今後の活路が見出されていますが、震災からの復興をプラスしたビジネスのトライアルが行われています。
先月7、8日の二日に渡って、福島県相馬市の松川浦で「生き返る松川浦の自然と暮らし応援ツアー」が開催されました。これは、環境省の「復興エコツーリズム推進モデル事業」の取り組みのひとつで、モデル事業には、相馬市ほか岩手県の山田町や宮城県気仙沼市など5カ所が選定されていますが、今回のモニターツアーはもっとも早い実施でした。
松川浦は生物多様性が非常に高い干潟で、ラムサール条約の潜在候補地となっているほどです。アマモが自生しており、近海魚の産卵と仔稚魚の育成の場として機能し、福島沖から三陸にかけての漁場を支える基盤となっています。しかし、震災後、津波で干潟を守る堤防が2カ所切れたために干潟内部の塩分濃度が上昇、干潟内で生息する生物種や分布に変動が見られました。通常、外洋で生息しているワタリガニやイシガニの生息数が増加し、ニホンスナモグリなど干潟特有の生物の生息密度が低下するなど、湾内全域の生物の状況に大きな変化が起きています。
今回のモニターツアーでは、夜の生きもの調査や干潟観察、地元の方との交流会などが行われ、震災による自然と暮らしの変化と、徐々に以前の状態に回復しつつある松川浦の現状をつぶさに垣間見ることができました。福島沿岸部は、一部の種類の漁業が再開されているものの、未だ全面操業には至っておらず、豊かな海産物を柱としていた観光業も苦戦しています。しかし、今回のツアーは、この苦難の状況を逆手にとって、被災・被害からの回復と復興を観光資源にしようとする取り組みです。同じように苦しむ沿岸部・自治体にとって、ひとつのモデルケースになりそうです。