大手町駅にほど近い日本ビルとJFE商事ビルの間の道を歩くと、その脇に小さな畑があります。これはエコッツェリア協会が設置し、大丸有農園協議会が農水省の「食と地域の交流促進対策交付金」という補助金を得て運営している実験農園です。以前は普通の植え込みだった場所に土を入れて畑を作り、都市農業の可能性について実験しています。
東京の真ん中での都市農業ということで、今回は東京の伝統野菜の栽培の実験を行い、10月に亀戸ダイコン、金町コカブ、品川カブ(東京大長カブ)、ノラボウ菜、三河島菜、小松菜といった江戸東京野菜などを植えました。
亀戸大根ダイコン、金町コカブ、品川カブ、三河島菜は現在でも東京に残る地名が名前に付いている通り、その土地で江戸時代から作られてきた野菜です。ノラボウ菜は菜花の一種で五日市市周辺で江戸時代に栽培され、天明・天保の飢饉の時には多くの住民の命を救ったと言われています。
小松菜はいまや全国で栽培される野菜ですが、実は8代将軍吉宗が鷹狩の時に食事のためによった神社(現在も江戸川区にある道灌島香取神社)で出されたのが青菜が入った餅のすまし汁で、これをいたく気に入った将軍が当時流れていた小松川にちなんで「小松菜」と名付けたと伝えられています。
その野菜の最初の収穫が11月21日に行われました。葉物野菜は大きく育ったものの、金町コカブなどはかなり小さくて、「こんなに小さくて大丈夫?」と心配する声も聞かれましたが、島とうがらしなども含めてかなりの収穫がありました。
収穫した野菜は、丸ビルの5階にある小岩井農場の経営するレストラン「小岩井フレミナール」に持ち込み、試食会を行いました。試食したのは小松菜・金町コカブ・三河島菜の3種類。金町コカブは生で、小松菜と三河島菜はさっと茹でてシンプルな味わいで食べます。どの野菜もその日にとれたものだけに葉や茎はシャキシャキ、「小松菜はいつものものよりも味が濃くて香りが深く、金町コカブは小さいのにすごく甘くてびっくり」という声も。
小岩井フレミナール
土もそれほど多くなく、日当たりもあまりよくない高層ビルの谷間で、しっかりと野菜は育ち甘味や旨味を蓄えるのです。エネルギーの節約や安全安心のために地産地消が日本の社会にとって大きな課題になる今、この農園で大丸有で食べる野菜を賄うことはもちろんできませんが、都会の真ん中で専門家でなくても野菜を育てることが出来る、その可能性を感じることが出来ました。
今後も四季を通じて、様々な野菜や果物を作っていく予定ですので、近くを通ることがあったらちょっと覗いてみてください。