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2009年春の開校から、ついに10周年を迎えた丸の内朝大学。この大きな節目を祝して「10周年記念祭」が開催されました。 大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアをキャンパスに、朝7時台に開講する市民大学として始まった丸の内朝大学。これまでの受講生は2万人を超え、朝の学びの場として朝活ブームを牽引し、社会に浸透してきました。
はじまりは、前身ともいえるイベント「朝EXPO」にさかのぼります。丸の内のビジネスパーソン向けに新しい朝時間の使い方を提案する、期間限定のイベントとして2006年にスタートし、単発的に開催を重ねていくうちに参加者同士のつながりが広がり、定期開催を求める声が増えていきました。そして2009年、ネーミングを「丸の内朝大学」と新たにし、大丸有エリア全体をキャンパスに見立て、春・夏・秋の年3期制の学びの場としてスタートすることとなりました。
こうして始まった朝大学は、多様な人々が集まる学びの場を提供しながら、企業の新規プロジェクトや地域と連携し、さまざまな課題解決に取り組み、アクションが生まれるコミュニティへと次第に成長。2012年には、朝の学びの場を起点に自己実現や社会貢献活動のきっかけの場へと展開していることが評価され、グッドデザイン賞・特別賞を受賞しました。その後も、クラスをきっかけに生まれた受講生主導のソーシャルプロジェクトが毎年展開されています。
今回の10 周年記念祭では、そうした受講生たちの活動が一同に会し、実行委員のプログラムの企画を始め、パフォーマンスや活動発表、ミニ講座など、朝大学の受講生らしいバイタリティにあふれた1日となりました。
この日実施されるプログラムのほとんどは、受講生による企画。これまで開催された600を超えるクラスの中から、それぞれ学んだことをアウトプットする場として、ワークショップや展示、パフォーマンスなど多様なプログラムが集まりました。
地域と連携したクラスも多く、長野県産の食材を使ったお弁当づくりや福井県の新ブランド米「いちほまれ」を使ったおむすびづくりワークショップ、新潟清酒の利き酒体験など、地域の魅力を伝える企画も展開。朝大学のクラスでは、地域からゲスト講師を招いたり、フィールドワークに訪れたりと、さまざまな地域と密なつながりが得られるため、受講生のトークにも地域への熱い想いがこもっていました。
また、10周年ということで、数年ぶりに受講生たちが再集結されたクラスも。2013年まで開講されていた「丸の内コーラスクラス」は、ブランクを感じさせない圧巻の歌声を披露し、開講回数10回を超えるロングランクラスの「丸の内チアダンスクラス」は、歴代の衣装に身を包んでパフォーマンスを披露するなど、まさに10年の歴史が詰まったプログラムとなりました。
受講生企画以外では、朝大学がパートナー団体として参画しているTokyo Good Manners Projectとのコラボレーション企画、「目指そう!フードロスゼロin丸の内」が行われました。 ※「Tokyo Good Manners Project」についてはこちら
前半では日本におけるフードロスの現状や、冷蔵庫収納家の福井かずみ氏から冷蔵庫の収納のアイデアを学び、後半のワークショップでは、余りがちな食材を使って料理に役立つソースづくりが行われました。 ソースは、参加者がその場で考案され、いちごジャムやブルーベリーを使ったソースで仕上げた鶏肉の照り焼きは、普段の味とは異なるアクセントに。/BR> 参加者の皆さんは、これまでのクラスを通して、さまざまな社会課題を解決するアイデアを考えてきた経験が培われているのか、次々にアイデアが行き交い、「ロスを減らすだけでなく、料理の幅も広がりそう」と楽しんでいる様子が印象的でした。
クラスによるパフォーマンスが終わると、後半戦には、歴代の事務局スタッフと受講生が集まり座談会が行われました。 登壇者には、丸の内朝大学の立ち上げメンバーである、古田秘馬氏、加藤奈香氏、井上成氏や、現在の事務局を担う村上孝憲氏、山本寛明氏。受講生からは、朝大学をきっかけに起業や移住をした方や、60を超えるクラスを受けた経験があるという"レジェンド"と呼ばれる面々が集まり、10年間を振り返りながらトークが繰り広げられました。
中でも、議論の中心となったのは、「これからの朝大学について」。10周年を迎え、新たなフェーズへ移ろうとしているいま、現状をどのように捉え、次に進むべきか熱い意見が行き交いました。
「丸の内朝大学のようなコミュニティは、仕組みとしては他のエリアでもできるかもしれないが、丸の内であるからこそ成り立っている理由があると思う。28万人のビジネスパーソンがいるこの街は、属性が近いようで遠い人が集まっているため、強いつながりになる部分もあれば、刺激になる部分も多い。こうした丸の内の強みを今後突き詰めていくと次の展開が見えてくるのではないだろうか」(井上氏)「丸の内でこうしたコミュニティが定着したことは、丸の内自体が誰のものでもないということが大きい。東京の他のエリアや地方と違って住んでいる人が少ない、つまり地元性が薄いため、誰もが街に入り込んでアクションを起こしやすい開かれた空気感がある。インターネットの発展によって、誰もが発信する術を手にしている時代だが、リアルな場所として誰もが何かを始めることができるということは、大きな強みになっていくのでは」(古田氏)
これまでの朝大学では、日本各地と連携したクラスの開講を中心に、東京のビジネスパーソンと地域をつなぐハブのような役割を担ってきましたが、丸の内を舞台とした活動を広げていくことも今後の可能性につながるかもしれません。
また、受講生からは朝大学をきっかけに結婚、起業、移住をするなど、ライフステージが大きく変化した方も多く、クラス受講したその先の展開が広がるとよいのではとの声も。これに対し、井上氏も来たる副業解禁を見据えながら賛同します。
「大学院をつくるなど学びのステップを明示化していくとよいかもしれない。今後副業がさらに認められていく中で、よりプロを目指していける仕組みも用意しておくことで、朝大学の活動も一つの仕事となれば、今以上に活動の幅を広げることができる」(井上氏)
さらに加藤氏も、自身が朝大学を立ち上げた当時を振り返りながら、受講生主体の活動について可能性を見出します。
「朝大学を立ち上げたとき、クラスへの集客見込みがあるかどうかよりも、まずは自分たちがやりたいと思うことを大事にしてきた。そういった気持ちで企画したクラスに集まってきてくれた人は、共感してくれる仲間のようで、積極的に課題を考えたりアクションを起こしてくれることで、学びの場からコミュニティへと発展できたのだと思う。これからの朝大学では、より多くの人がやりたいと思うことに挑戦でき、仲間を増やしていけるコミュニティになるとお互いに可能性が広がるのでは」(加藤氏)
移住してから数年ぶりに朝大学のイベントに参加したという受講生は、「こうしていまでも関係性があることがすばらしい財産。朝大学を受講して楽しかったと思うその次に、この仲間と新しい未来をつくりたいと思えることがこのコミュニティの魅力と再確認した」と話し、事務局スタッフ、受講生ともに朝大学の未来についてさまざまな想いが溢れた座談会となりました。
10周年祭での受講生は、イベントを楽しみつつも仲間同士で真剣に話し合ったり、他のクラスの活動について情報交換したりと、積極的な姿が印象的でした。取り組む活動や関心はそれぞれですが、前向きに未来を見据えた仲間同士、心通ずるものがあるのかもしれません。 朝の1時間の学びの場から、10年を経て、新しい未来をつくるコミュニティへ進化してきた丸の内朝大学。11年目を迎える朝大学は、これまでの強みを活かして新しくリニューアルを予定。これからも、朝大学をきっかけとして広がる受講生の活動にご注目ください。
朝の時間、大手町・丸の内・有楽町をキャンパスとして活用し、生き方、働き方、遊び方を自分なりにデザインすることを目的に開講する市民大学。 受講者数はのべ2万人を超え、共感や共創から生まれるつながりを大切に、チャレンジのきっかけと新たな価値を生む場を提供しています。