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【レポート】資源回収とリサイクルの鍵を握るマネタイズ化のヒント会員限定

CSV経営サロン 2025年度第2回 2025年10月27日(月)開催

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2025年度のCSV経営サロンでは、「資源循環」のリアルな現状を知ることを目指し、この分野の第一線で活動する有識者をゲストにお招きして議論を積み重ねています。

第2回のテーマは「資源の回収からリサイクルまで」です。資源回収と地域コミュニティ拠点が融合した新しい仕組みをつくったアミタ株式会社(以下、アミタ)取締役の宮原伸朗氏、リサイクルPET樹脂やケミカルリサイクルを通じて容器包装の高度な再資源化に取り組むキリンホールディングス株式会社(以下、キリンホールディングス)CSV戦略部環境チームの池庭愛氏にご登壇いただき、資源回収の現状と課題、そしてこれからの可能性について、ディスカッションを展開しました。

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再生材に社会的な価値を付与することで利用価値を上げる

再生材に社会的な価値を付与することで利用価値を上げる

image_event_20251224_1.jpeg アミタの宮原伸朗氏

1977年の創立以来資源循環に取り組み、「自然資本と人間関係資本の増加に資する事業のみを行う」と定款に掲げるアミタ。取締役の宮原氏は、同社の根幹にある考え方について次のように説明します。

「当社では『情報から価値を生み出すことが重要』と謳っています。例えば卵の殻は一般的にはゴミとして扱われますが、これを"炭酸カルシウム95%の未利用資源"と捉えると途端に景色が変わりますよね。その物を目に見える状況や状態ではなく、構成要素を分解して情報を再編集することが大事だと考えています」

こうした考えの下、(1)廃棄物の100%再資源化、(2)環境認証審査サービス、(3)環境管理業務のクラウドサービス、(4)サステナブル経営への移行支援サービス、(5)持続可能な地域づくりという5つの事業に主に取り組んでいます。中でもこの日は、自治体や住民と連携しながら、その地域の未利用資源を利活用し、資源循環と地域活性化、そして地域住民の社会的行動動機の安定化を目指す(5)について紹介されました。

代表的なものとして宮原氏が取り上げたのが、資源循環や再生資源の調達だけでなく、人口減少や少子高齢化といった地域課題も含めて統合的に解決し得る互助共助コミュニティ型の資源回収ステーション「MEGURU STATION(R)」です。具体的には、プラスチックや古紙、瓶などの回収に加え、古着や陶器のリユースや、100世帯規模の小型バイオ装置を地域に設置することで、生ゴミの処理と同時に液体肥料とバイオガスの生成を実現しています。また、MEGURU STATIONで生ゴミを分別して資源化することは、ゴミに含まれる水分量が多いと焼却にかかるエネルギー投入量が多大になるという、焼却炉の課題解決にもつながります。そのため、この取り組みを進めることは将来的な焼却炉のダウンサイジングにもつながると期待されています。

この取り組みが社会に与える効果は他にもあります。ゴミの回収ステーションという地域拠点の提供は、住民の外出と利用者同士のコミュニケーションにつながり、それに伴う運動機会と交流の創出は、健康寿命の延伸や認知症予防、医療介護リスクの低減に貢献すると考えられます。人が定期的に訪れることでコミュニティの拠点として地域に浸透していくと、ステーションに行くことに生きがいを感じる利用者が増え、防災時の連携強化や治安向上、育児支援にもつながります。アミタではこうした具体的な影響について、神戸市が市民と共に運営する「エコノバふたば」を対象に、三井住友信託銀行と連携してインパクトレポートをまとめています。

「初期アウトカムで、環境意識や地域活動への関心、運動機会、初めての人と知り合いになる機会などがどう向上・増加し、それらがどうやってインパクトにつながっていったのかを見ていきました。すると面白い社会的指標が確認できました。例えば、5分以上滞在して『暇なときに行く場所ができた』人が6割弱いたことがわかりました。特にシニアの方々にとってエコノバふたばが居場所になっていることを意味していて、中には800回以上来場した方もいます」

その他にも、会話の機会や歩数の増加も確認できたことから、エコノバふたばのような資源回収ステーションは、地域の課題解決に貢献する多機能拠点であることが定量的に示されたと言えます。一方で課題となるのが「どうやってビジネスとして成立させるか」という点です。宮原氏は「インパクトトレーサビリティ」の開発が重要になるのではないかと説きました。

「集まった良質なプラスチックや資源は企業に対して供給できますが、再生材はバージン材よりもコストアップになりがちです。そこでコストアップ分を吸収するために、再生材に社会的なインパクトデータを付加して資源の価値を高めます。そうすれば再生材の使用が地域社会のウェルビーイングの向上、ひいては企業価値の向上へと導くと考えています。私たちはこれを『インパクトトレーサビリティ』と呼んでいて、先ほど紹介したエコノバふたばであれば、回収された資源に、健康寿命の延伸や地域のウェルビーイング向上に貢献したという社会的データを付与できます。将来的にはMEGURU STATIONを軸に資源供給機能と情報提供機能を組み合わせ、地域住民の社会的動機を資源に組み込むことで、地域と企業の双方がよくなるモデルの構築を目指しています」

宮原氏は最後に「資源循環の取り組みは、コストとみるか投資とみるかで全く違うものとなります。株主をはじめとしたステークホルダーと共通言語で話すことが大切ですが、その際、経済以外の価値観として社会的なインパクトを定量化して説明することも重要になります」と話して講演を終えました。

ペットボトルリサイクルを阻む3つの課題とキリングループのアプローチ

image_event_20251224_2.jpegキリンホールディングスの池庭愛氏

キリングループは2050年の未来に向けたグループの環境ビジョンにおいて「ポジティブインパクトで豊かな地球」を目指し、「気候変動・容器包装・水資源・生物資源」というテーマに統合的に取り組んでいます。中でもこの日は「容器包装を持続可能に循環している社会への取り組み」を中心に、日本の資源循環の課題と対策や、同グループの資源循環に関する取り組みについて説明が行われました。

日本のペットボトルリサイクル率は85%で、世界トップクラスに位置しています。ただしその利用先は、シートや繊維、輸出向けペレット、成形品などもあり、ペットボトルのリサイクルとして最も望ましいとされる、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する「ボトルtoボトル(水平リサイクル)」は33.7%(2023年)に留まっています。では、ペットボトルの国内資源循環率を向上させるためには何が課題となるのでしょうか。池庭氏は「資源の国外流出」「メカニカルリサイクルの限界」「消費者の意識」を挙げました。

「ペットボトルは消費された後、資源回収、可燃・不燃ゴミに混ざる、散乱ゴミになるという3つのルートに分かれます。後者の2つに関しては分別や捨て方に対する消費者意識の向上が必要となります。一方で資源回収ルートに乗ればすべて解決というわけではありません。日本の自治体で回収されるペットボトルは品質が高く、海外企業が高値で買ってくれる場合があります。そのため経済的な力学が働き、資源が国外に流出してしまいます。また、現在主流のメカニカルリサイクルという手法では汚れがひどいボトルはリサイクルできないため、資源循環の輪から外れてしまうのです」

キリングループでは、次の3つのアプローチで課題解決を図ろうとしています。

(1)国内の資源循環促進
リサイクル樹脂の使用を拡大し、再生PET樹脂を100%使用したペットボトル「R100ボトル」を普及する取り組み。自治体や企業と連携し、使用済みペットボトルの効率的な回収・利用システムの構築も目指す。

(2)ケミカルリサイクルの活用による資源循環量拡大
使用済みプラスチックを化学的に分解して新たに原料として再利用するケミカルリサイクル技術を活用して、汚れたペットボトルや非食品用のPET素材も飲料用ペットボトルに戻せるようにし、資源循環量を増大させる。

(3)消費者の意識・行動の変容
業界横断で、自動販売機の横に設置されているリサイクルボックスに異物が混入しにくい新型のものに切り替えると同時に、リサイクルボックスがゴミ箱ではないことを啓発して、消費者の意識を高める取り組み。

池庭氏はそれぞれの取り組みの成果と今後の展望について、次のように述べて講演を締めくくりました。

「R100ボトルは、石油由来樹脂の使用量を従来比で9割削減できます。キリングループでは、国内におけるペットボトルへのリサイクル樹脂使用比率を2027年に50%にすることを目標としていますが、2024年で36%に達し、今後も目標達成に向けて進んでいきたいと考えています。ケミカルリサイクルへの取り組みは業界横断で臨んでいます。また新型のリサイクルボックスは2024年末時点で累計2万台設置し、異物混入は3割以上削減できています。まだまだ完璧な対策ではありませんが、今後も啓発活動を行っていきたいと思います」

重要度を増す環境価値のマネタイズ

image_event_20251224_3.jpeg 小林光氏(写真左)と吉高まり氏(写真右)

講演を終えたところで、CSV経営サロン座長の小林光氏(東京大学先端科学技術研究センター 研究顧問、教養学部客員教授)と副座長の吉高まり氏(一般社団法人バーチュデザイン 代表理事)、並びに参加者を交えた質疑応答へと移りました。まず小林氏と吉高氏から宮原氏へ「資源回収ステーションの利用者に対して、ウェルビーイングの向上以外のメリットを提供する仕組みはできるのか」という質問がなされます。

「エコノバふたばの事例では、集団は積極的な2割、普通(中間)の6割、消極的な2割に分かれるという『2-6-2の法則』の6の人々に継続的に来てもらうための工夫を展開しました。チェックインするとポイントを付与し、有料のゴミ袋やリユース品と交換できるというインセンティブを提供しました。今後も現役世代や子どもたちが足を運んでくれるようなアプローチを検討しています」(宮原氏)

池庭氏には、「プラスチックは他の資源と比べて安価で価格転嫁がしづらいだけに、法制度の強化などが必要になるのではないか」という質問がなされます。

「R100ボトルを使用した商品は環境価値よりもブランドに対する価値から買われているのが現状です。ただ、バージン材を使った、より安価な商品が隣に並んでいたらそちらを手に取るお客様が多いことも事実です。このジレンマを解消して環境価値が価格として許容される社会にするために、有志企業連合で、環境対策に取り組む企業が損をしない、あるいは取り組まないと不利になるような制度設計をしてほしいと環境省に提言しています」(池庭氏)

続けて会場の参加者からも積極的に質問がなされました。ある参加者からは「MEGURU STATIONの取り組みは大丸有エリアでも実現できるのか」と問われ、宮原氏は「場所によって適しているところと、そうでないところがある」と前置きした上で次のように話しました。

「例えばコンビニやスーパー、オフィスなど、生活者のアクセスポイントに回収ボックスが置けると資源回収の場になり得るでしょう。ただし、私としてはMEGURU STATIONは社会的な効果効能を発揮するものとして考えていますので、単に置くのではなく、都会における社会的課題とは何なのかを突き詰めてから実施検討していくべきだと思っています」(宮原氏)

その他にも、自治体と協働する上でのポイントや、インパクトレポートで得られた情報発信の工夫、ペットボトル回収を向上させる啓発方法など、積極的に質疑応答が展開されました。最後に小林光氏は、次のような言葉でこの日のプログラムをまとめました。

「資源循環を進める上で環境価値のマネタイズが重要になりますが、その取り組みが進んでいることにとても興味深く感じました。一方で、環境対応は本来コストをかけてやるべきなのに、それをせずに利益を得ている企業があることは問題です。今後はリサイクルしにくい物質の規制や、ただ乗りしている企業のパフォーマンスも見える仕組みが求められていくと感じました。今回のテーマは難しい領域ですが、その分知恵の見せどころです。今日の議論を通して解決に向けて一歩前進できたのではないでしょうか」

資源の回収からリサイクルまでを牽引するアミタとキリンホールディングスの取り組みは、今後も要注目です。

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CSV経営サロン

2011年からサロン形式でビジネスに関する様々なプログラムを提供。発足当初から小林光氏に座長を、2017年からは吉高まり氏に副座長をお願いし現在に至っています。
2015年度からは「CSV経営サロン」と題し、さまざまな分野からCSV経営に関する最新トレンドや取り組みを学び、 コミュニケーションの創出とネットワーク構築を促す場として取り組んでいます。

小林光氏

座長:小林光 氏

東京大学先端科学技術研究センター研究顧問 /
教養学部客員教授

慶應義塾大学経済学部卒(1973年)、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士、博士(2010・2013年、共に工学)。
1973年環境省(当時環境庁)入省。京都議定書交渉の担当課長、環境管理局長、地球環境局長、官房長、総合環境政策局長、2009年から2011年まで次官を務め退官。
慶應大学教授、米国イリノイ州にて派遣教授、2016年から現在まで東京大学客員教授。その他日本経済研究センター特任研究員、国立水俣病研究センター客員研究員、地方の環境審議会委員や脱炭素対策検討の委員等を歴任。
再生可能エネルギーを主要なエネルギー源とする資源循環型の社会を構築するために必要な価値観の転換、諸制度の整備などに取り組む。


吉高まり氏

副座長:吉高まり 氏

一般社団法人バーチュデザイン代表理事 /
東京大学客員教授/
慶慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授

明治大学法学部卒、米国ミシガン大学環境サステナビリティ大学院科学修士、慶應義塾大学大学院政策・メディア科博士(学術)。
IT企業、米国投資銀行等での勤務を経て2000年より現三菱UFJモルガン・スタンレー証券において気候変動関連の資金枠組みづくり、カーボンクレジット組成などに関与。政府、地方自治体、金融機関、事業会社などに向けて気候変動、GX、サステナブルファイナンスの領域について講演、アドバイスなどを提供し、新たにサステナビリティ経済の推進の実装を図る。

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