イベントエネルギーエリアビジョン・レポート

【レポート】地上からは見えない「熱のネットワーク」 まち全体が取り組むエネルギー循環の最前線

大丸有ゼロカーボンスクール第4クール第1回 施設見学2026年3月2日(月)開催

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2050年カーボンマイナス実現に向け、大丸有エリアが一体となって取り組みを進めています。「大丸有ゼロカーボンスクール」第4クールでは、大丸有エリアの熱エネルギー利用を支える丸の内熱供給株式会社開発事業部の森村平氏を迎え、「ゼロから学ぶ地冷と脱炭素~面的エネルギーを核とした 大丸有ZERO CARBONへのSTORY」をテーマに3回に渡って開催されました。初回となる3月2日は3×3Lab Futureで講義を受け、地下に広がる大手町センター・Otemachi Oneサブプラントを見学。地域熱供給エネルギーネットワークを通してまち全体でのエネルギー循環型モデルの可能性について学びました。
初めに一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(以下、エコッツェリア協会)の三上は、「熱の話からエネルギーについて学べる機会は貴重です」と呼びかけ、森村氏を紹介。同氏は「あまり馴染みが無いかもしれない地域冷暖房についての始まりから日本でどのように普及したか、熱源設備についてお伝えしたいと思います」と応えました。

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大丸有エリアの冷暖房を一括管理する地域熱供給の仕組み

大丸有エリアの冷暖房を一括管理する地域熱供給の仕組み

丸の内熱供給株式会社は通称「丸熱」とも呼ばれ、大気汚染防止を目的として1973年に設立されました。社員数は167名ながら、国内に75社ある熱供給会社の中で売上高2位(2025年6月時点)と国内トップクラスを誇ります。供給エリアは大手町、丸の内一丁目、丸の内二丁目、有楽町、内幸町、青山の6地域。23か所のプラントから74棟の建物、大丸有エリアの地下鉄18駅、12施設に熱を供給しています。

講師の森村氏は、プラントの建設に携わる技術部からキャリアをスタート。開発エンジニアリング部との兼務、経営企画部での電気供給事業や、開発営業部でのお客様との導入交渉などを経て、現在は開発技術部で熱供給施設の新設計画や既存設備の更新計画の業務を担当されています。技術と経営の多角的な視点、豊富な経験と熱意、深い知見をお持ちです。

event_zerocarbon_0302.002.jpeg 丸の内熱供給株式会社 開発事業部 森村平氏

地域熱供給(DHC:District Heating&Cooling)とは一言でいうと、まち全体の冷暖房を一括管理するシステム。空調・給湯などの熱製造設備を集約し、配管を経由してエリア内の建物へ熱を供給します。「発電所で電気を製造し供給する電力会社、ガスの原料を調達し供給するガス会社と同様に、電力やガスを使って熱を製造、供給するのが熱供給システムです」と森村氏。まちを支える大切なインフラです。

大丸有エリアを支える地域冷暖房式。プラントで一括製造されたエネルギーを、導管網を通して複数の建物に供給するのが特徴です。建物ごとに冷暖房施設を設ける必要が無いため、地下の機械室の代わりに地下駐車場を拡充、屋上の冷却塔の代わりにヘリポートやヒートアイランド対策となる屋上庭園を設置するなど、土地の有効活用が可能となり、設備を持たないため運転・管理の人員も不要です。
また、エネルギー効率の高さも圧倒的。ビルの個別分散空調方式の消費を100%とした場合、地域熱供給の消費は68%まで、再生可能エネルギーの併用により58%にまで削減できます。
さらに、ビルにとっては容積率の特例もメリットです。「東京都限定ではありますが、地域冷暖房施設は建築基準法第52条に基づき、容積率算定の対象から除外できる許可制度があります」と森村氏。DHCの熱を受け入れる建物の機械室、パイプシャフトの面積が該当し、例えば1万平方メートル分が除外されることで、賃料収入を得ることもできます。

地域熱供給は、大気汚染防止を目的として1970年の大阪万博を皮切りに国内に導入、1980年代から2000年代にかけて地域冷暖房が全国的に普及しました。2011年の東日本大震災で災害時のBCP(事業継続計画)やエネルギー供給の強靭性が求められ、熱と電気をつくるガスコージェネレーション(CGS:Co-Generation System)などの分散型電源の導入が拡大。今後は、2050年カーボンニュートラルに向けて水素活用や脱炭素化を目指します。

event_zerocarbon_0302.003.jpeg 地域熱供給の基礎知識についてしっかり学ぶ

まちを支える地域熱供給の熱源設備

地域熱供給を支える設備は、大きく分けて3点です。
まずは、炉筒煙管式のボイラー。都市ガスを燃料として水を熱し、約175度の高温高圧の蒸気や、温水を製造します。排ガスを給水に再利用し、製造効率を高めています。

冷凍機は、電気を使う「ターボ冷凍機」、温熱を使う「吸収式冷凍機」があります。いずれも打ち水と同じ「気化熱」の原理を用いて、需要家から戻ってきた12度の水を6度まで冷却して再び送り出す仕組みです。

ターボ冷凍機は冷媒を圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、圧縮機と巡回させ、冷水を作ります。蒸発器で気化熱を利用して冷水を製造。凝縮器で冷却水が冷媒を冷却し、温度が上がった冷却水を冷却塔で大気と接触させ、気化熱で冷却します。需要家から帰ってきた12度の熱を冷凍機で6度まで冷やして再び送り出す循環の仕組みが作られています。

吸収式冷凍機はさらに複雑です。蒸発器と吸収器と再生器と凝縮器の4つで成り立ちます。蒸発器で水温を12度から6度に冷やし、冷水を作った後に、吸収器で気体になった冷媒に吸収液をかけて気体になった冷媒を回収。水を含んで濃度が薄くなった吸収液を再生器で蒸気を使って加熱し、水と吸収液を分離させます。最後に、凝縮器で冷却水によって冷媒を冷却、温度が上がった冷却水を冷却塔で大気と接触させて気化熱で冷却します。

event_zerocarbon_0302.004.jpeg この後プラントで見学する2つの冷凍機

「効率面から考えると、ターボ冷凍機が効率は良いですが、消費電力が大きくなってしまう」と森村氏。地域冷暖房は夏に冷水需要が大きくなり、電力消費が集中します。この時期をターボ冷凍機で賄うと電気の基本料金が上がってしまうため、電気の消費を抑えるために2つの冷凍機を効率よく運用しています。

最後に、ガスコージェネレーションシステム(CGS)は都市ガスを燃料として発電し、効率よく電気と熱を作ります。大きな箱のような外観で、中にエンジンで発電するシステムがあります。BCP対応のために東日本大震災後に導入が進みました。

非常時の対応を強化するため、大手町センターにデュアルフューエル型非常用発電機を設置し、都市ガスと重油どちらの燃料でも非常用発電機を稼働できる体制がつくられています。これにより停電時でもボイラーや冷凍機を動かし、熱供給を継続できます。Otemachi Oneサブプラントでは、ビル側との連携を強化。非常時にはビル所有の発電機から電力を受け、冷水を供給する仕組みを構築しています。さらに、通常時は蓄熱槽として、非常時には備蓄水として活用できる水槽運用など、エリア全体でエネルギーの強靭性を高めています。

エネルギー循環の最前線 地下に広がる巨大プラント見学

座学が終わり、いよいよ大手町センター・Otemachi Oneサブプラントに向かいます。ヘルメットを着用し、エレベーターに乗って地下5階まで移動します。大型ボイラーの設置や、複雑な配管スペースを確保するため、フロア表示は1階ですが、実質2階分の高さがあります。エレベーターの扉が開くと「ゴーッ」という大きな音が響きます。

event_zerocarbon_0302.005.jpeg 左 サブプラント内で資料も見ながら再チェック
右 Otemachi Oneサブプラント入口

Otemachi Oneサブプラントには1台のヒートポンプと6台の冷凍機が設置されています。オフィスの冷房用に使われる冷水はここから生み出されます。

event_zerocarbon_0302.006.jpeg ターボ冷凍機

ここには、大きなボイラーや冷凍機を運び込むための搬入口となるマシンハッチも設けられています。地上から地下5階までに直結し、その高さに参加者からも驚きの声が上がりました。開口部からの水の侵入を防ぐために防水扉が設けられています。

event_zerocarbon_0302.007.jpeg 開口部についての説明をうける

同じく地下5階のボイラー室は他のエリアよりも少し熱くなっています。約175度の蒸気を作る大きなボイラーが並び迫力があります。裏側には小さな窓が設けられ、高温の青い炎が見えます。

event_zerocarbon_0302.008.jpeg 左:大迫力のボイラー
右:非常用発電機

地下3階には同じく6台の冷凍機がおかれているほか、非常用発電機も設置されています。これまでの機械室とは異なる静けさがありました。普段歩いているまちや地下道路の下に張り巡らされた導管や大きなボイラー。普段見ることができない光景に参加者の皆さんも興味津々です。

また、24時間365日体制でオペレーターが待機する監視室も見学。熱供給事業法などの法律も踏まえ、2名以上が配置されプラントに異常がないか、監視と日々の点検を行い、インフラを支えています。

2つの建物は分かれていますが、冷水を連携するシステムが構築されています。再開発による大手町センターを移転するとともにエリアの延床面積が大きくなって熱の需要が増えたため、外部専用としてOtemachi Oneサブプラントの整備が行われました。エネルギーの供給を続けながら機能の更新を行い、一時期は3つのプラントを運用。大規模な稼働中プラントの事業を継続しながら移設する業界初めての取り組みとなりました。

event_zerocarbon_0302.009.jpeg

見学を終えた後は3×3Lab Futureに戻って質疑応答を行いました。エコッツェリア協会の三上からの「非常用発電機について非常時、どのくらいの時間供給を続けられるのか」という質問に対して、森村氏は「季節・需要によりますが、ビル側の備蓄水槽の一部を非常用熱供給として活用できるように確保しているため、真夏以外の中間期やあまり需要が無い時期にはある程度の時間は稼働できる」と回答。毎月試運転を定期的に行って使った分の重油を補充していることを補足しました。

東京大学先端科学技術研究センター研究顧問の小林光氏からは、インバーターターボ冷凍機のCOP(成績係数:Coefficient Of Performance)が25.2という高い部分負荷時最高効率を持つ点に着目し、その仕組みについて問いかけがありました。「通常のCOPは4〜5程度。その5倍近い効率には私も驚きました」と森村氏。インバーター技術を使い、負荷率が低いと効率が飛躍的に上がるという性質を活かし、プラント全体のエネルギー効率を上げる施策をしています。
また、「作った熱が外に捨てられる場合、どのような工夫がされているのか」という点には、「熱源で稼働するインバーターターボ冷凍機により、排熱を抑制したうえで、冷却塔をビルの高層階にして排熱を上空へ逃がしヒートアイランドへの対策を意識している」と回答がありました。また、ビル単体では余ってしまうCGSの排熱を丸の内熱供給が買い取り、常に熱需要があるホテルなどへ供給しています。「オフィスで余った熱を、別の建物で使い切る」という、まち全体で排熱を使い切る循環型モデルが作られています。

event_zerocarbon_0302.010.jpeg 左:「何度か見学させていただいているが、毎回進歩があって面白い」と小林氏
右:非常用発電機について質問を行う三上氏

最後に小林氏は、「『まち全体』だからこそできる排熱の融通は、組織のチームワークがあってこそ。ビル1棟ではできない取り組みや、排熱を買う仕組みは非常に面白い。課題や今後の展望で今後掘り下げていければ」と締めくくりました。講義後のネットワーキングでは、参加者から森村氏へ次々と質問が寄せられました。

かつて大気汚染防止のために始まった地域熱供給は、省エネやBCPを越えて高度なエネルギー循環ネットワークへと進化しています。ビル単体の努力を超え、まち全体が一体となって排熱を資産へと変えるネットワークは2050年のカーボンニュートラルに向けた、大丸有エリアでの重要な取り組みになるでしょう。今後行われる大丸有ゼロカーボンスクールで地域熱供給の課題を参加者同士で考える機会も設けて取り組みます。

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丸の内で考える地球と未来のこと

大丸有エリアでは、2022年に「大丸有エネルギーエリアビジョン」を公開、2050年カーボンマイナスを目指す姿勢が示されました。我が国を代表、世界と競争する大丸有エリアで、「丸の内で考える地球と未来のこと」をテーマとして様々に学び、実践する活動を行っています。

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