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オフィスビルが立ち並ぶ大丸有エリアの一角に、湿性花園や花壇、透明の円筒状の屋内農園があることはご存知でしょうか。こちらは、大手町ファイナンシャルシティに隣接する自然豊かな遊歩道「大手町エコミュージアム」。自然の草花の風景を提供するとともに、環境技術の取り組みを紹介している施設です。
エコッツェリア協会では、この大手町エコミュージアムで定期的に近隣の園児たちを対象とした自然体験プログラムを企画しています。3月25日は「お花の植え替え体験」が開催され、ゆうてまち保育園とコトフィス新国際ビルの2園から、総勢11名の園児たちが参加してくれました。
まだ寒さの残る早春でしたが、子どもたちは元気いっぱい。植栽を管理する小岩井農牧株式会社のスタッフの方々とともに、自然との触れ合いを楽しみました。
ゆうてまち保育園の子どもたちと先生
子どもたちや保育士の先生方には、事前に植え替え方法の動画を見ていただき、現地に来ていただきました。植え替えは時間を2回に分けて、1園ずつの参加となり、密を回避しての開催。
まず初めに、植栽を管理する小岩井農牧の佐野亘哉さんから、あいさつと植え替えの説明がありました。「前に、お花の植え替えをやったことがある人は?」と呼びかけると、数名の子どもたちが元気よく答えます。今日を楽しみにお花の勉強をしてきた子どもたちもいるようでした。
土の感触を確かめながら花を植える子どもたち
今回参加したのは、2〜3歳の子どもたち。数種類の花を前にして、それぞれの名前や、色、形などを先生とともに興味深く観察します。花を選んだら、植える場所を決めて土を掘ります。
大丸有エリアの保育施設は、ほとんどがオフィス内にあるため、普段子どもたちが土に触れる機会は多くありません。土に手を入れることに、最初は戸惑いを見せていた子もいましたが、次第に夢中となり、土の中の感触の違いを楽しんでいる様子が見られました。
コトフィス新国際ビルの子どもたちと先生
先生たちが、「葉っぱにかからないように、優しく土をかけてあげてね」と呼びかけると、丁寧に土をかけようとする様子も。目を輝かせながら、植えたお花を「見て!」と呼びかける子どもたちに、自然と笑い声があふれました。お花を植えた後は、じょうろに水を汲み、自分が植えたお花へ水やり。最後には、それぞれ子どもたちが考えてきた「魔法の言葉」をかけて、お花の成長を願いました。
普段、公園で見る草花とは、また違った視点で触れ合う機会になった「お花の植え替え体験」。今回のプログラムを通して、「子どもたちが新たな発見をし、興味を持ってもらえるきっかけの場になれば」と佐野さんは話します。
「ありがとうございました!」と子どもたちの元気な声で、春のお花の植え替え体験は終わりました。
ゆうてまち保育園施設長 射場紀江(いばのりえ)先生
「屋外で自然に触れる機会は、公園に行くほかに、ビルの隙間の空間にもあります。大人だったら見逃してしまうような、ビルの一角の植栽などにも、子どもたちにとってはたくさんの発見があるんです」(射場先生)
そう話すのは、ゆうてまち保育園施設長の射場先生です。大丸有エリアは、高層ビルが立ち並ぶオフィス街。子どもたちが自由に遊ぶことのできる屋外空間は、あまり多くないと思われるかもしれません。ですが、ドングリを拾うことのできるスポットがあるなど、限られた中でも自然に触れられる機会はたくさんあると言います。
「屋外の自然の中での体験は、子どもにとってとても大切です。見るだけでは気づかない、匂いや音、感触を全身で感じ、探求が始まります。今回のお花の植え替えでは、植物をいたわる心や道徳心を育む良い機会になったと思います。やはり、自分で植えると、大事にしたくなりますよね。大手町エコミュージアムは、保育園の散歩コースにもなっているので、子どもたちとともにお花の成長を見守っていきたいです」(射場先生)
また、植栽の管理をしているプロの方が一緒にやってくれることで、自然を守る仕事をしている人がいることも伝えることができる、と射場先生は話します。植物についての知識を教えてもらうきっかけにもなり、子どもも大人も学べる機会。このプログラムを通して、園に帰ってからも、土や植物に触れる遊びなど、継続して体験できるような環境づくりを意識しているそうです。
コトフィス新国際ビル 四方田七海(よもだなつみ)先生
普段は、皇居周辺の芝生広場が散歩コースだというコトフィス新国際ビルの四方田先生。ダンゴムシやアリを捕まえて観察することもあれば、三菱一号館美術館の庭園で、季節のお花を観察することもあるそうです。
「直接土を触る機会は少ないので、今回は貴重な体験をさせていただきました。今日は、事前にお花の本を読んできて、子どもたちはとても楽しみにしてきました。自分達が植えたお花は、やはり特別感があってとても嬉しかったようです。園に帰ってからも、お花の図鑑や絵本を見せて、これからの春から夏に向かって、どんな花や動物が出てくるかなどを楽しみにしたいと思います。そういった経験を踏まえて、また大手町エコミュージアムに見学に来たいですね」(四方田先生)
実体験は、子どもにとってワクワクする特別な経験。特に、五感を使った体験は心身の成長に欠かせない刺激となります。
「濡れた土と乾いた土を比べていた子どももいて、とても新鮮だったようです。大人だったら気がつかないことや躊躇することも、子どもは好奇心でどんどん行動します。今回は、遠慮なく土を触ったり、掘ったりすることができて、やってみたいという好奇心が満たされる良い経験になったと思います」(四方田先生)
大手町エコミュージアムには、花壇だけでなく、蛍を生育するほたるのせせらぎ、水生植物を育てている湿性花園、竹筒に耳をあてると水音が聞こえる水琴窟(すいきんくつ)、ビルから出た中水をろ過しその水を使って野菜を育てているアーバンエコファームなどがあります。ここに訪れることで、環境に対する取り組みや、自然に優しくすることの大切さを知ってもらう。それが、一番大事なことだと佐野さんは語ります。
子どもたちに植え替えの説明をする小岩井農牧 佐野さん(左手前)
「3月23日には、子どもたちとともにホタル放流体験プログラムを開催しました。初夏になる頃には、せせらぎに輝く蛍の光が見られるようになるでしょう。1つ1つの体験後も、子どもたちには継続してこの場所に訪れ、さらにいろんな自然について興味を持ってもらえたらと思っています。子どもたちにとっても大人たちにとっても、新しい発見の場になれば嬉しいですね」(佐野さん)
子どもたちが、家に帰って今日の出来事を保護者の方々に話すことで、さらに継続して興味や学びを広げることができます。今回だけに限らず、植物や動物の季節による変化に寄り添うことが、子どもの教育や成長には重要です。 大丸有のまちづくりでは、「多様な人々が集まるまち」を一つの方向性としていますが、「子どもを含めた、子どもをめぐる人々」も重要な大丸有の関係人口として捉えています。そこで、「子ども」に焦点をあてた、まちの快適性の向上を目的としてエコッツェリア協会が発足したのが、「大丸有エリアまち育プロジェクト」です。まちに関わる人々の多様な視点からまちを見つめなおすことで、まちを育み、まちの人々が心地よく育まれることを目指した活動です。
「大丸有エリアまち育プロジェクト」では、大丸有や周辺エリアの保育施設と連携した現地調査やヒアリングを重ねられ、都心の特性を活かした、子どもと大人にとって心地よいまちづくりを進めています。 今回開催した「お花の植え替え体験」もこのプロジェクトの一貫であり、「ホタル飼育体験プログラム」や自然観察会などのほかにも、さまざまなプログラムを開催していく予定です。大丸有の子どもたちを取り巻くまちづくり、ぜひ今後の展開にご期待ください。
エコッツェリア協会では、気候変動や自然環境、資源循環、ウェルビーイング等環境に関する様々なプロジェクトを実施しています。ぜひご参加ください。