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3×3Lab Future ではゴールデンウィークの4月29日~5月1日の3日間、NHKアニメ「忍たま乱太郎」と一緒にSDGsを学ぶパネル展示と、親子で参加する体験イベントが同時開催されました。
2日目の4月30日は「都心の生きものの巻」と題して、ネイチャーガイド・中村忠昌氏により身近な生きものたちを見つける観察会を行いました。
その後、NHKの人気自然番組「ダーウィンが来た!」のプロデューサー・足立泰啓氏に番組で撮影した写真や映像を用いて都会の生きものたちの習性について解説していただきました。
参加者たちは、2人の講師の話に興味深く耳を傾け、都会のど真ん中で大自然を感じる、貴重な体験をすることができました。
「みなさん、おはようございます。」「「おはようございまーす!」」
参加した子供たちの元気なあいさつで始まった今回のイベント。集まったのは、未就学児から小学生の子どもたちとその保護者です。
「みなさん、SDGsって知ってるかな?」株式会社NHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサー・堅達京子氏が参加者たちに問いかけました。
参加した子供たち全員が元気に手を挙げ、子供たちのSDGsへの関心の高さと、これから始まるイベントへのワクワク感がうかがえます。
今日のテーマは「都心の生きもの」。身近な生きものたちとのつながりを知り、生きものを大事にすることこそ、未来の地球を守る第一歩です。
はじめに中村氏からこの日の観察について説明がありました。各参加者に配られた「春の生きものチェックシート」には、鳥の声・花にとまる虫・水の中にすむ生きもの・ザラザラするもの・飛んでいる鳥・草の花と木の花・よい匂いがするもの・足のある生きもの...といった、今日探しにいく生きものたちが書かれています。観察会に先立って、中村氏・足立氏から生きものを見つけるための極意が伝授されました。
野外で使える術、その一は「歩く・みるの修行」です。
「鳥や動物にバレないように抜き足差し足で歩いたり、どこから鳥や虫が来ても気付けるように視野を広げる必要がある」と中村氏。ネイティブアメリカンに伝わる視野を広げる訓練を実際にみんなでやってみました。ほかにも、生きものの鳴き声を聞くために耳をすませること、生きものの習性を知ることも大切だと話します。
その二は、『自然にとけこむ術』です。
木の葉がくれの術、透明人間の術、変身の術という3つの術を足立氏が教えてくれました。動物をびっくりさせないためには、できるだけ動かないことや周りの景色に溶け込むことが必要です。野外で使える術の伝授が終わったら、いよいよ外に都心の生きものを探しに行きます
まずは、生きものを探す練習として近くの花壇に何が隠れているかを探してみました。
「生きものを探すときは、同じところから見るんじゃなくて、色々な方向から見るといいよ」と中村氏は話します。
サルのぬいぐるみ、鳥の巣箱、金魚のオブジェ...発見した子供たちから次々と「見つけたー!」「あそこにもいた!」と感嘆の声が上がります。
参加者たちは夢中で隠れているものを見つけようとしていて、実際の散策を前に、期待に胸を膨らませていることが伝わってきます。
『春の生きものチェックシート』の書き方の説明とともに、「競争ではありません。できるだけみんなで協力して、色んなものを見つけてください」と、中村氏は参加者たちの積極的な情報交換を促します。
観察会が行われたのは、皇居外苑濠に隣接する大手町ホトリア広場。
約3,000m²もの広大な緑地には、皇居周辺に生息する生きものたちが住みやすいような様々な工夫がなされています。
そして、いよいよ散策開始です。
はじめにホトリア広場の西側を散策しました。開始してすぐに、「鳥の声が聞こえた!」「こっちにクモいたよ」「これ何??」という声があちこちで上がります。普段見ることのできないエビ、メダカなども続々と見つけることができ、子どもたちは夢中になってチェックシートに書き込んでいました。
分からないことは中村氏や足立氏、スタッフの方々がすぐに教えてくれます。見つけたいきものを一緒にみて、面白いところを発見したり、どんな生きものなのか知ることで、さらに興味が湧いたようです。
中村氏の掛け声で、一度集合してチェックシートの進捗を確認しました。声がかかった後も名残惜しそうに観察を続ける子どもたちもいて、参加者たちが楽しんでワークに取り組んでいる様子が伝わってきます。
「みんなの頭の上にある木はクスノキっていう木です。クスノキの葉っぱを揉んで、匂いを嗅ぐとスーッとした、ガムみたいな匂いがしませんか?」
参加者たちのチェックシートの埋まり具合を見ながら、中村氏が声をかけると、参加者たちは早速クスノキの匂いを確認していました。飛んでいる鳥の見つけ方のレクチャーを受けたところで、今度は場所を変えて観察会を続けます。次はホトリア広場の東側の散策です。
小さな生きものの観察には、中村氏の秘密道具の登場です。子供たちが見つけた小さな虫を観察ケースに入れてじっくり観察してみます。
観察していた子供たちは、「あ!足がある!」と嬉しそうにチェックシートの「足のある生きもの」の欄に書き込みました。
楽しい観察会も、あっという間に終わりの時間になりました。室内に戻り、観察会のまとめとして、今日見つけた生きもののおさらいをします。
実際に自分たちで探して、見つけて、観察したということもあり、参加者たちは嬉しそうに発表をしていました。
次に、足立氏からNHK番組「ダーウィンが来た!」の撮影で出会った様々な生きものたちを紹介いただきました。
クイズを交えながら番組で撮りためた写真や映像を解説していきます。クイズを当てようと積極的に発言する子どもたちも多く、会場は熱気に包まれました。思いもよらない答えが足立か氏から語られると、参加者たちは興味深そうに聞き入ります。
今回のテーマは『都心の生きもの』ということで、足立氏が今まで観察してきた都会で生活している生きもののなかから、とっておきの3種類の生きものについて詳しく解説してくれました。
1種類目は、皇居のお堀にも生息しているハシビロガモ。
ハシビロガモは、集団でクルクル回るという不思議な習性を持っています。なぜこのような習性を持つのか、足立氏たちは実験してみました。
ハシビロガモを模したアヒルの人形を水中でクルクル回してみると、水中の砂が舞い上がることが分かりました。ハシビロガモが食べるプランクトンも、水中の砂の中にいます。
つまり、ハシビロガモは効率的にプランクトンを食べるためにクルクル回っていたのです。
2種類目は、都心でもよく見られるツバメです。
銀座に生息するツバメは、ミツバチばかり食べていることが分かりました。銀座ではビルの屋上で養蜂していることがあり、ツバメはそこのミツバチをエサにしているのです。
参加者たちから「刺されないの?」と心配の声が上がります。ツバメは、雛も親鳥もミツバチには刺されません。不思議に思った足立氏たちは、親鳥が雛に運んでくるミツバチを1匹1匹調べることにしました。
すると、ツバメがとってくるミツバチは全てオスであることが分かりました。
ミツバチのメスは毒針を持っていますが、オスは持っていません。ツバメは空中を猛スピードで飛びながら、飛んでいるミツバチがオスかメスかを見分け、オスだけを食べているのです。
3種類目は、都心にも意外とたくさん住んでいるというタヌキ。
姿を見せないだけで、実は皇居にもタヌキが住んでいます。「東京のタヌキは電車が大好きなんです」と足立氏が続けます。会場からは、「えー!危ない!」と驚きの声が上がりました。なぜ都会のタヌキは電車の近くに生息しているのか、足立氏たちは調査を進めました。
すると、タヌキは踏切にある穴を住処にすることがあると分かりました。タヌキは夜行性なので、昼間は穴の中でじっと過ごして、夜になると穴から出てエサを探しに行きます。夜間は電車が走らないこと、線路が平べったくてタヌキにとって歩きやすいことが重なり、電車の近くはタヌキが落ち着いて住める場所になったのです。
「生きものは、"なんだか変な行動をしているなぁ"というところをじっくり観察してみると、すごい発見があったりします。気になった生きものをじっくり観察して、色々な発見や驚きを感じる機会を今後持っていただけたら良いなと思います。そして、自然や生きものに興味を持って、大事にしてください。 "大事なものを守りたい"という気持ちがSDGsにつながると思います」(足立氏)
最後の質問コーナーでは、足立氏に参加者からたくさんの質問が出され、会場は大いに盛り上がりました。
Q. なんで写真のミーアキャットは手をあげているんですか?
A. ミーアキャットは前足をあげる癖があるんです。この時はカメラがすごく近かったので、カメラを前足でたたく直前のワンシーンです。
Q. ミーアキャットは、どのように子育てをするんですか?
A. ミーアキャットは地面に穴を掘って暮らしていて、その中で赤ちゃんを育てます。
ミーアキャットは人間以外で初めて教育をする動物として知られました。ミーアキャットはサソリを食べるのですが、サソリは毒があって危ないので、ミーアキャットの親はミーアキャットの赤ちゃんにサソリの食べ方を教えます。最初は死んだサソリを食べさせて、次は毒針を取った生きたサソリ、そして普通のサソリ...と徐々に難易度を上げていくのです。
Q. 一番好きな動物はなんですか?
A. ずっとカラスの研究をしていたので、カラスです。カラスグッズとタヌキグッズを集めています。
Q. どうしてカラスが好きなんですか?
A. カラスはやっぱり頭がいいので、ずっと観察していると顔を覚えてくれて仲良くなれるんです。石を投げたりするとその人のことを覚えてしまうこともあるんですが、僕は良い人と思われていたのでみんなと仲良くなれました。よく見ると可愛いですよ。でも、色々なばい菌を持っているかもしれないので、皆さんは触ったりはしないでくださいね。
Q. カラスに襲われないようにするためにはどうすればいいですか?
A. カラスが人を襲うことはほとんどありません。しかし、カラスの子育て中や雛が巣から出たばっかりの時期に巣に近づくと襲われます。子育てのシーズン(5~6月)は巣に近づかないことが大切です。
Q. カラスはどうやって人を襲うんですか?
A. 目をそらすと後ろから飛んで来て、ギリギリ頭上を飛んだりたまに足をぶつけてきます。ケガをすることはめったにないですが、驚いて転んでケガをしてしまうことがあるので、襲われても堂々としていることが大切です(笑)。
Q. ツバメがミツバチのオスを食べようとするとき、メスはオスを守ろうとしないんですか?
A. ハチはあまり守らないです。昆虫って仲間を守るとかしないんです。ミツバチの家族は一万匹くらいいて、さらに次から次へと産まれるので、ちょっと食べられちゃってもいいようになっているんですね。
Q. 「ダーウィンが来た!」の撮影で一番驚いた発見や生きものはなんですか?
A. 一番びっくりしたのは、日本海の深海にいる小魚の大群です。数がものすごくて、その小魚たちが日本海の生態系を支えていることを知ったときは驚きました。潜水艇で観察していたのですが、小魚の大群を発見したときは「海にはこんな生きものがいるのか!」と世界が広がりました。
Q. ヒゲじいはどういう発想で生まれたんですか?
A. ヒゲじいは15年前、「ダーウィンが来た!」が始まったときにみんなで考えて生まれました。これまでの動物番組は、途中で疑問があっても説明を続けてしまうものが多かったのですが、誰でも不思議に思うポイントでツッコんでくれるキャラクターがいたらいいかもね、ということで誕生しました。ヒゲじいお決まりのダジャレは、ヒゲじいの声優さんがアドリブで言ったことが始まりで、そこからダジャレをいうキャラになりました。
普段気が付かないだけで、私たちの身近にもたくさんの生きものが生息しています。中には私たちがまだ知らない面白い習性を持っている生きものもいるかもしれません。
日頃から地面や空にふと目を向けてみようかな...そんな気持ちにさせてくれるイベントになったのではないでしょうか。保護者の方々からは「子どもたちがすごく積極的に行動していて、とても楽しそうだった」、「講師の方が隣で教えてくれるからか、生きものに対する興味が広がったように思う」、「都会の身近な場所でも自然と触れ合えることを知ることができた、良い機会になった」との感想が聞かれました。
子どもたちにとっては生きものへの興味を通してSDGsへの理解を深めるとともに、ゴールデンウィークの良い思い出となったようです。
エコッツェリア協会では、気候変動や自然環境、資源循環、ウェルビーイング等環境に関する様々なプロジェクトを実施しています。ぜひご参加ください。