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大丸有エリアの丸の内パークビルと三菱一号館に囲まれた一角にある、緑豊かな一号館広場。噴水、ベンチ、アート作品などが設置され、オフィス街の中の憩いの場となっています。
普段は、ビジネスマンや買い物を楽しむ人々でにぎわう広場ですが、実は子どもたちにとっても自然にふれあえる貴重な場所。この場所で、企業主導型保育施設「コトフィス新国際ビル」に通う0歳から2歳の子どもたちと、その保護者の方々、保育士の面々が集まり、"大丸有エリアまち育プロジェクト"の活動として「親子まちなか遠足」が開催されました。
"大丸有エリアまち育プロジェクト(以下、本プロジェクト)"は、大丸有エリアの保育施設と協力して、"子どもたちと、子どもをめぐる人々"の目線を通じてまちの快適性を向上させることを目指したまちづくりプロジェクトです。保育施設のヒアリングやお散歩同行調査などを通して、オフィス街の特性を活かした乳幼児向けのまち遊びや自然スポット、散策エリアなどの調査研究を積み重ね、さまざまなプログラムの提供・紹介を行っています。今回の親子まちなか遠足では、本プロジェクトでの利用に限り特別に一号館広場の植物を摘む許可をいただき、五感を使った自然とのふれあいを楽しみました。
保育士の方々とやって来た、コトフィス新国際ビルの子どもたち。一号館広場でママやパパと合流し、リラックスした表情で今日のまち遊びがはじまるのを待ちます。
エコッツェリア協会 大丸有エリアまち育プロデューサーの北村真志による挨拶のあと、「あっこ先生」ことプロジェクトメンバーの村松亜希子氏(NPO法人生態教育センター)は赤や緑、黄色などの色紙や、その色をしたミニカー、葉っぱなどを子どもたちの前に取り出しました。
「今日はみんなと一緒に葉っぱや虫、木の実で遊びたいと思います。前回一緒にお散歩したときもみんな楽しいものをいろいろ発見したね。一つ目は、赤い色のもの。みんなで赤い車を見つけたね。2つ目は、緑。みんなのおててみたいにかわいい葉っぱがゆらゆらしていたね。まねして踊っていた子もいたね」(村松氏)
赤、緑、黄色、黒などの色ごとに、前回プロジェクトで実施した"まちあそびプログラム"のお散歩の中で見つけたものを振り返ります。
「今日はお鼻を使って遊びます。このお庭には、いろいろな匂いがする葉っぱがあるよ。みんなで好きな匂いを見つけてサシェを作ってみよう」(村松氏)
一号館広場には、高級爪楊枝の原料となる香木"クロモジ"や、クリスマスツリーとしてもおなじみの"モミノキ"、アロマセラピーでリラクゼーションにも使われる"ラベンダー"など、良い香りのする植物が実はたくさん植えられています。1組の親子にひとつずつサシェにする袋が配られ、早速広場の中へ親子まちなか遠足がスタートしました。
「どうかな?いい匂いする?」。思い思いに葉っぱを摘み、匂いを嗅いでみる子どもたちに大人たちが問いかけます。嗅いだことのある匂いや、お気に入りの匂いを見つけると、パッと表情が変わる子どもたち。うれしそうな笑顔に、思わず大人たちの顔もほころびます。
やわらかい葉っぱに、ちくちくした葉っぱ。じっと感触を確かめる子もいれば、木の根元でダンゴムシを見つけて歓声をあげる子も。それぞれ、五感をフルに使っている様子が見られました。
葉を摘んだあとは、子どもたちに水の入った小さなボトルが配られ、植物に水やりをします。
「今日は葉っぱさんで素敵なお土産が作れたね。ありがとうの水やりを最後にしてみましょう」(村松氏)
子どもたちは、広場の道を戻りながら小さな手を一所懸命振って植物に水をあげていきました。葉っぱの上を水が抵抗なく流れたり、滴になってコロコロはじいたり、葉っぱの種類によって違うことを発見したようで楽しそうな様子。
葉っぱ探しを満喫した一同は、丸の内二重橋ビルのDMO東京丸の内に向かいます。保護者や保育士の先生に手を引かれ、もう片方の手でサシェを持つ子どもたち。満足げな表情がとても印象的でした。
DMO東京丸の内に着くと、保護者と子どもたちには好きな場所にシートを敷いてもらい、お茶休憩となりました。リラックスした雰囲気で親子遠足の時間を楽しみます。
続いての第2部は、過去に本プロジェクトで実施したお散歩同行の動画放映からはじまりました。コトフィス新国際ビルの協力をいただいて子どもたちのお散歩に同行させてもらい、子どもたちの目線でカメラを回した調査動画です。
地上80cmくらいからの目線で見る大丸有のまちなかや公園は、普段私たち大人が見ている景色とは違った発見がたくさんあります。子どもたちが何に興味を示して歩いているのか、動画を通してプロジェクトメンバーの浅井小夜加氏(DRIMON合同会社)が調査内容を解説しました。
「お子さんたちは、それぞれのペースで自分の気になるものを見つけていることがわかります。動画内の皇居外苑広場は、スペースがあるので走ったりもできるし、生き物にも触れることができます。遠くを走る車に視線を移し、興味を持っているのもわかりますね。大丸有エリアは、自然の中でしか見られないもの以外にも、働く車や働く人、地下街、面白いアート作品などが見られることが特徴です」(浅井氏)
子ども目線での環境調査をはじめたことで、エリア内には子どもたちが興味を持つような、ハート型の花びら、クリスマスの飾り付けができそうな木など、意外にも低木の豊かな自然があることも明らかになりました。
このような調査を通して、まちの中でできる乳幼児の遊びをまとめたのが"まちあそびプログラム"です。今回の親子まちなか遠足で実施したような、いろいろな匂いの葉っぱを見つけたり、赤・黄・緑・黒など、まちなかでいろいろな色を探したり・・・五感を使って楽しめる遊びなどを研究しプログラムを提供しています。
また、大丸有エリアだけでなく、近所の公園などでもまち遊びが楽しめるよう "まちあそびブック" も配布しました。黄色い花を見つけたら、黄色のページにシールを貼ったり、見つけたものの絵を描き加えたりすることができ、あとから思い出としても振り返ることができる小冊子に仕上げられています。
このほか、大手町ファイナンシャルシティの足元にある大手町エコミュージアムでは、子どもたちによるお花の植え替え体験を実施。好きな色の花を選び、土を掘って植え、最後には水やりを行います。体験後も、お散歩や送迎の際に目に触れることで、継続的に自然への興味を育む効果が期待されています。
プロジェクトメンバーの中条瑛子氏(株式会社三菱地所設計)が本プロジェクトの活動概要と目指す方向を解説しました。これまでの活動を通じてプロジェクトでは、エリア内の保護者の方々からのご協力のもと、まち育スポット紹介マップを制作しています。安全に乳幼児とお散歩できるルートはもちろんのこと、電車が見える場所や、色とりどりの花壇がある場所、ベンチがたくさんある場所など、子どもと快適に過ごしやすいスポットを掲載しています。
「今日参加していただいた、保護者の方々や保育士の方々に教えていただかないとわからないようなスポットを今後もたくさん盛り込んでいき、最終的にマップを発行できたらと考えています。みなさんの意見を取り入れながら、この活動を続けていきたいと思いますので、ぜひ今後もご参加いただけたらありがたいです」(中条氏)
本プロジェクトの活動報告会が終了した後、子どもたちにどんぐりのお土産が配られました。遠足で見つけたいい匂いのする葉っぱと一緒に入れて、とても素敵なサシェが完成。「また、まちの中でいろいろな楽しいものを見つけて教えてね」と、子どもたちを見送りました。
多様な人々が集まり成長を続けていく大丸有エリア。ビジネス街では見逃されがちだった子どもの存在が、その多様性のひとつとして注目されています。子どもたちや子どもをめぐる人々にとって快適なまちは、働く人々にとっても、訪れる人々にとっても、きっと快適なまちとなるはずです。
大丸有エリアまち育プロジェクトでは、大丸有エリアの保育施設の方々と協力・連携しながら、子ども目線でのまちの新しい魅力や課題となることを発掘し、今後もさまざまな取り組みを行っていきます。ぜひご期待ください。
エコッツェリア協会では、気候変動や自然環境、資源循環、ウェルビーイング等環境に関する様々なプロジェクトを実施しています。ぜひご参加ください。