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広大な自然と人々の活気を感じる上士幌町。1日目は移住体験住宅の視察や移住者との意見交換、2日目は廃校跡地の利活用や畜産業、シェアオフィスを切り口にしたまちづくりの取り組みに触れました。 2日間に渡る濃密なフィールドワークを終え、最終日はリフレッシュを挟んで町長への課題解決プランの発表へと進んでいきます。
3日目の朝は、リフレッシュ・フィールドワークからスタート。午前9時に中村屋を出発し、旧国鉄士幌線路跡の散策に出かけました。
<3日目> リフレッシュ・フィールドワーク(旧国鉄士幌線路跡・タウシュベツ川橋梁・ひがし大雪自然館・上士幌ゴルフ場・ドリームドルチェ・十勝養蜂園ショップ)→課題解決プランまとめ→町長への課題解決プラン発表
▼旧国鉄士幌線路跡・タウシュベツ川橋梁
国鉄士幌線は、かつて帯広駅から上士幌、糠平(ぬかびら)を通り、十勝平野を北上して十勝三股までを結んでいた鉄道路線です。国鉄民営化直前の1987年をもって全線が廃止されましたが、今なお、コンクリートで造られた美しい橋梁が多く残っています。それらは、「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」と呼ばれ、登録有形文化財として登録されている橋梁もあります。
▼ひがし大雪自然館
次に向かったのは、ぬかびら源泉郷にある「ひがし大雪自然館」。「環境省ぬかびら源泉郷ビジターセンター」と「上士幌町ひがし大雪博物資料館」から成る施設です。絶滅した蝦夷オオカミをはじめ、ヒグマや蝦夷鹿の剥製など、旧東大雪博物館の展示・収蔵物を引き継ぎながら、日本最大の国立公園である「大雪山国立公園」の十勝地方側の入り口という立地を活かして、自然や歴史から観光まで幅広く情報発信する案内拠点として、親しまれています。
▼上士幌町ゴルフ場~ドリームドルチェ~十勝養蜂園ショップ
昼食は、「上士幌ゴルフ場」のクラブハウスでジンギスカン。ちょうどこの日は感謝祭が行われていて、パターゴルフやゴルフカート試乗を無料で体験できるほか、綿あめやポップコーンが楽しめる子ども向けのテントも設置されていました。偶然にも、フィールドワークの初日、移住者のひとりとして意見交換に参加してくださった瀬野航さんが、お子さんを連れて来られていました。「再会できたことがとても嬉しい。地域の人々とつながっていくと、観光以上のところを作っていくことができると思う。瀬野さんに、再訪を約束した」と受講生のひとりは話していました。
続いて、上士幌町随一のアイスクリーム工房「ドリームドルチェ」へ。1000haを超える広大な敷地で3000頭の乳牛を飼育し、年間75トンを超える牛乳搾乳量を産出するメガファーム「農業生産法人 有限会社ドリームヒル」が運営しています。バイオマス発電によって発生した予熱を使ってハウス栽培したいちごなど、こだわりの原料を使った16種類のプレミアムジェラートアイスや自家製ソフトクリーム、洋菓子がラインアップ。好みのスイーツを堪能した後は、十勝養蜂園のショップで、菩提樹や百花などさまざまなフレーバーの蜂蜜を試食し、お土産のショッピングを楽しみました。
▼課題解決プランまとめ~発表
午後2時、一行は上士幌町生涯学習センター「わっか」に戻り、課題解決プランのまとめ作業にとりかかりました。約1時間半、黙々と取り組む姿は真剣そのものでした。作業を終えると、竹中町長と松田氏を囲んで、受講生から今回のフィールドワークの感想が共有されました。下記にその一部をご紹介します。
「関係人口になるということは、情報の集積だけでなく、体感しないと分からないことがある。竹中町長がおっしゃるところの"応援人口"(=関係人口)として、また上士幌町に来たい」
「本(「ふるさと創生 北海道上士幌町のキセキ(黒井克行著・木楽舎)を読み、面白そうな取り組みをしているところだと思ったが、想像をはるかに超えていて驚いた。移住者の方たちの『困っていることは特にない』という言葉が印象的だった。そこにある課題とは、一体何なのかということを深く考えさせられた」
「このまちが持つ素晴らしい資源と、そこに関わる人たちの想いや熱量が掛け合わされることによって、地方創生が促進されているように感じた。共に感じること、つまり、共感の大切さを再確認した」
「さまざまな場所を訪れるたびに、地域の人々がこのまちをいかに愛しているかということが、すごく伝わってきた。今だかつてない体験させてもらった」
上士幌町で過ごした濃密な時間への熱いコメントが次々と飛び交う中、竹中町長は真剣に耳を傾け、時折、笑顔を浮かべられていました。
そして、いよいよ竹中町長への課題解決プランの発表が行われました。What(何をするか)・Why(なぜするかというその理由)・Who(私は何を担うか)・Whom(誰をターゲットにするか)・How(どのように実現するか)を"私主語"で示した「上士幌町地方創生シート」には、「~~プロジェクト」というタイトル付けがされています。以下、発表順にプロジェクトのタイトルを記します。
(1)廃校を利用した"ふるさと納税ファクトリー"開設 (2)コンテンツアーカイブプロジェクト廃校活用 (3)廃校活用による課題解決 (4)オフィスで部活!?合宿プロジェクト (5)上士幌廃校ヘルスツーリズムプロジェクト (6)かみしほろ塾"逆参勤交代"拡大プロジェクト (7)世界中の子どもが学び、遊ぶ、まちプロジェクト (8)ワーケーション促進プロジェクト~素敵で便利な上士幌~ (9)SDGsエコツアーによる上士幌町のPRと国土強靭化 (10)安心・安全上士幌!!(災害に対して安全でレジリエントな上士幌にする) (11)泊まって応援!!青春若がえりプロジェクト (12)再生エネルギーを地域で消費プロジェクト (13)応援人口FULL活躍プロジェクト (14)ナイタイ高原牧場ムーンライトウォーキング (15)上士幌、100の動く町プロジェクト
竹中町長は、発表プランへの講評を次のように述べられました。
「事前の座学はあったにせよ、ほとんどの方が予備知識なくこのまちを初めて訪れ、2泊3日という短い期間の中で、まちの課題について検討し、今ある資源を積極的に活かそうとするプランを提案してくださった。皆さん方のプランをひとつでも実行に移すべく、これから上士幌町役場の職員一同、しっかりと検討させていただきたい。松田氏へのお願いとなるが、この成果は、ぜひ国の方にも伝えていただきたいと思う。地方での期間限定型リモートワークを通じて、働き方改革と地方創生の同時実現を目指す逆参勤交代が、政策として実現するとなると、日本のあり方や人の移動を大きく変えることになるだろう。今後もぜひ連携を取りながら、まちとしては、来年度以降に向けて、皆さん方の提案を含めながら、ふるさと納税と関係人口への取り組み、ならびに都市圏の企業との濃密な関係を築いていくべく、企業版ふるさと納税にも力を入れていきたい」(竹中町長)
「今回ほど、受講生の笑顔と笑いにあふれた逆参勤交代コースは、かつてなかった」と話すのは、プラチナ大学運営事務局の田口真司氏。「皆さんの熱量が高く、素晴らしいアイデアが多かった。このまちの魅力なのか、あるいは、住民の方たち一人ひとりの優しさなのか、愛情なのか。そういったものを感じ取ったからこそ、笑顔が続いたのではないかと思う」(田口氏)
地方で関わりを持つ上で大切なのは、「続けること・広めること・深めること」の3つ。これは、講師の松田氏が、常日頃から受講生たちに呼びかけている言葉です。
「一過性のイベントとして終わらせるのではなく、何度も続けること。課題解決プランについて議論し、さらにブラッシュアップさせて深めていくこと。広域連携を通して広めていくこと。働き方改革と地方創生を同時実現していくためには、この3つを繰り返していくことが大切。上士幌町に来る企業や現役のビジネスパーソンの本分は、"知の貢献"ではないかと私は思っている。その貢献を実現するべく、今後も邁進していきたい。今回、皆さんとご一緒できたことを大変嬉しく思う。心より感謝申し上げたい」(松田氏)
今回のフィールドワークで得たご縁を大切にしていくために、松田氏発案の「クラス委員」を受講生の投票で選定し、今後もSNSを活用したプラットホームを基盤に情報交換を行い、交流を図っていくことになりました。 20億円を超える道内一の「ふるさと納税」を集め、人口増加に転じた"奇跡のまち"、上士幌町。短い滞在の中でも、30万人の人々が寄付を通して応援してきた理由が感じ取れたツアーでした。このまちで生まれた人も、移住してきた人も、その誰もがまちを愛する想いを持ち、「まちをより良くしたい」というひとつの希望に向かって、心をひとつにして、ひたむきに取り組んでいるからではないかと思います。それを体感した受講生たちが、上士幌町とどのように関わっていくのか。上士幌町はどのように発展していくのか。逆参勤交代が社会にどう広がっていくのか。今後の動向に大きな期待が募るトライアル逆参勤交代ツアーとなりました。
丸の内プラチナ大学では、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供しています。講座を通じて創造性を高め、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、受講生の様々な可能性を広げます。