イベント丸の内プラチナ大学・レポート

指導経験ゼロから日本一のチームを作った「日本一オーラのない監督」が語る存在感と自己肯定感

【丸の内プラチナ大学】ウェルビーイングライフデザインコースDay3 2024年10月15日(火)開催

挨拶するゲスト講師の中竹竜二氏(左)ウェルビーイングライフデザインコース講師の前野マドカ氏(右)

学生から社会人まで全世代対象とした丸の内プラチナ大学のコースの一つ「ウェルビーイングライフデザインコース」のDay3が10月15日、3×3Lab Futureで開催されました。今回のテーマは存在感と自己肯定感。講師の前野マドカ氏はこのテーマについて「人生において自己肯定感が無いと様々なことにチャレンジできなくなる。ウェルビーイングを考える上でとても重要なテーマ」とその意義を語り、今回のゲスト講師、株式会社チームボックス代表取締役CEO中竹竜二氏を紹介しました。同氏は名門早稲田大学ラグビー蹴球部監督を経て、日本ラグビーフットボール協会初代コーチングディレクター、ラグビー日本代表ヘッドコーチ代行などを歴任してきました。その経験を基にお話頂いた様子をレポートします。

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自分のダメなところを見つめることが自己肯定感の根底

自分のダメなところを見つめることが自己肯定感の根底

今回の講座は受講生が6つのチームに分かれ、講義中に出されるテーマや課題に対して話し合い、発表を行うワークショップ形式。
中竹氏はまず全チームに対して、存在感を示すにはどうしたらいいかを問いかけました。受講生からは、大きな声や動作という回答が多い中、同氏は「存在感というと、在ることばかり証明しようとするが、足し算ではなく引き算によって存在感を示せるということも考えてほしい」と新たな視点を提供しました。そして「最近は『自己○○感』が流行っている。自己肯定感と自己効力感の違い、それぞれどのように磨いていくかも本日は話したい」と講座をスタートしました。

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中竹氏はまず、早稲田ラグビー蹴球部監督時代に関するエピソードを交えながら、ありのままの自分を受け入れることの大切さ、とりわけダメな自分との向き合い方や受け入れ方について語りました。監督就任後2年連続でチームを全国大学選手権制覇に導き、一見華々しい経歴のように見えます。しかし同氏は様々な批判や苦言と向き合う日々だったようです。

「32歳で監督を引き受けましたが、当時の私はラグビーの指導経験がなく、コーチ陣も全員入れ替えたため全員指導力ゼロ。だからグラウンドに行っても選手たちは『つまんねぇ、こいつらわかってねえ』という白けた態度でした。前任者と比較され、就任初日に『日本一オーラがない監督』というあだ名がつき、練習中に選手から『中竹、今すぐやめろ』と面と向かって叫ばれたこともありました」

そして、そのような環境下だからこそ、ダメな自分と向き合い、存在感と自己肯定感を上げていったと続けます。

「自分のダメなところを向き合うことが自己肯定感の根底です。そして、それを指摘してくれる人がいたら受容することが重要です。コーチや選手にも怒られましたが、怒ってくれることは有難いことなんです。批判が存在することが私の存在意義ですし、存在証明にもなるからです。みんなに迷惑かけたなと自分で思っているのに、誰からも指摘されず無視される方がよほど寂しいですからね。それなら怒りを表す対象でいる方が私は良いと思うんです」

さらに「今すぐやめろ」というように相手が怒っている時は、怒りの本質を知る努力をしてほしいと説きました。

「怒りは、心にある不安、孤独感、やるせなさなどのネガティブな感情が積もり積もった結果、自分を守るために表れると言われています。これは無自覚なことが多いですが、それに気づくと、自分に対して怒りをぶつける人の裏側にはどんな感情があるのかと探究する余地があります。他人からの苦言は問題のお知らせ。そろそろスピード落とした方がいいよ、カーブやってきますよ、坂道だから頑張りなさいといった道路標識だと思えば『教えてくれてありがとう』と感謝できるようになります」

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そして、同氏は強いチームを作るために選手たちにもありのままの自分を肯定していく姿勢を求めました。

「当時のチームには存在感と自己肯定感が不足していました。それが醸成されれば指導力ゼロでも優勝できると思ったんです。そのためにひたすら全員と面談を実施し、選手が自分らしさを見つける手助けをした。『足りないものは何か』『強みは何か』『自分らしさとは』と問いかけ、最初はみんな答えられませんでした。それでも『何が得意で、何が不得意なのか』『今シーズンでどのプレイが一番ワクワクしたか』と尋ね方を変えて問いかけを続けると、点が線になっていく。自分らしさを1回尋ねただけで答えられる人はまずいません。頑張っても3年はかかります。しかし自分らしさをつかんだ時点で選手たちは変わっていきました」

自己認識から自己肯定、そして自己超越へ。周囲を承認することから始めよう

image_event_20241015.005.jpegチームごとに議論する受講生たち

このようなエピソードの後、冒頭で触れた自己効力感と自己肯定感の違いを各チームで考えていきました。各チームから「自己効力感は他人に影響を及ぼすことで、自己肯定感は自分自身で完結する」「自己効力感は自らを奮い立たせることで、自己肯定感はありのままの自分を受け止めること」など発表された後、中竹氏は自己効力感と自己肯定感の違いを次のように語りました。

「自己効力感はいわゆる自信で、私はできると言い聞かせること。特定の目標や課題を設定し、その領域において私はできると思うこと。注意したいのは、まだ視野が狭いうちに自己効力感を持ってしまうと、特定の領域ではなく『私はなんでもできる、なんでもやっていい』と考える危険性があることです。スポーツ選手の不祥事はこの間違った万能感から来ることが多いですね。一方で自己肯定感は、私はここにいる、存在していると認めること。できる、できないではなく認めたくない嫌いな自分も含めて自分が存在している状態を認知していることだと思います」

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その上で、ありのままを受け入れる自己肯定こそがウェルビーイングの出発点だと話します。

「私の仕事の中では、自己肯定感はレジリエンスや逆境力といった逆境から立ち直ることと結びつくことが多いです。その際にネガティブな部分を受け入れることから始めないと立ち上がって行けません。多くの人は自分のネガティビティを受け入れるのが怖くて自分のことが分からなくなってしまう。重要なのはきちんと自己認識し、自己肯定し、そして自己超越すること。自己超越するには自己認識とダメな自分を見つめる自己肯定がないと到達できません。だから私は他人からネガティブなことを言われて、私に欠けているものを指摘してもらえると、さらに私の存在感と肯定感が高まるのでありがたいのです。そして、そこから自己超越が始まると思っています」

そんなありのままの自分を受け入れるためには、受け入れてくれる仲間も必要で、まずは周囲の人々に対して、ありのままでいいのだと承認することが必要と語りました。

「相手に対してありのままでいいと言うことを伝える最も単純な方法は挨拶です。『みんなおはよう』ではなく『○○さん、おはよう』と名前で呼ぶのはとても大事です。成果を上げた人に挨拶するとかではなく、成果や能力に関係なく名前を呼んで挨拶する。存在感と自己肯定感を自分だけで高めるのではなく、周囲を承認し、仲間と一緒に自己肯定感を高めてほしいです」

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最後に各チームから中竹氏への質疑応答が行われました。同氏は、ウェルビーイングなチームを作る秘訣について「自分の弱さをさらけ出せるか。そのためには本音を出す場を作る、本気になる場を作る必要がある。試合が終わった後に自分の感情を本音で言えて、許容したり本気でぶつかり合ったりできるような場を作っていくことが大切」また、褒めてもうまく響かない自己肯定感が低い人への対処法について「自己肯定感は承認することで、承認とは相手の行為を共有すること。褒めるという行為は、上下関係を作ることにもなりうるので万能ではなく、自己肯定感の低い人には褒めない方が良い」と答えるなど、多くの質問に答え、講座を締めくくりました。

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講座後、受講生のひとりは「私は自分の存在価値を否定的に捉えてしまいがちだったが、自分の人生を振り返ると苦しい時を乗り越えたことによって他人とうまく協働したりコミュニケーションができたりという体験があったことを思い出せた。今日の講義はとても腑に落ちた」と感想を語りました。

「ダメな自分」も含めてありのままの自分を認め、受け入れることは簡単にできることではありません。しかし、最後に中竹氏が語ったように、「そのままでいいんだよ」ということを認め合う仲間がいれば、自分の弱みをさらけ出せるような場があれば、そのハードルは下がると思います。皆さんもまずはプライベートや職場で名前を呼んで挨拶することから始めてみてはいかがでしょうか。

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