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エネルギー産業の旗手として新ソリューションで社会課題解決へ

東京ガス・TGESの新ブランド「IGNITURE」が目指すもの

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昨今、世界的に脱炭素やサステナビリティの重要度が高まっている一方で、地政学的リスクの顕在化などの影響により、エネルギー分野に関わる企業の多くが将来の事業戦略の見直しを迫られています。東京ガスグループもそのひとつで、同グループでは2023年に中期経営計画「Compass Transformation 23-25」を発表し、主要戦略のひとつに「ソリューションの本格展開」を掲げました。そしてエネルギーやインフラ関連技術など、グループが培ってきた様々な強みを活かして顧客に新たなソリューションを提供する「IGNITURE」という事業ブランドを立ち上げたのです。

IGNITUREではどのような取り組みを展開し、社会に価値を提供するものなのでしょうか。IGNITUREを展開する東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社(以下、「TGES」)執行役員 企画本部経営企画部長の村田行麿氏に、IGNITUREの狙いや展望についてお話を伺い、これからのエネルギー分野に求められるソリューションについて考えを巡らせていきました。

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「東京ガス・TGES」のイメージを刷新する新ブランド「IGNITURE」

「東京ガス・TGES」のイメージを刷新する新ブランド「IGNITURE」

image_column_240220.002.jpeg東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社の村田行麿氏

東京ガスと言えば日本最大手の都市ガス事業者であり、特に関東では多くの企業や家庭のエネルギーを支え、人々の生活に根付いている一大ブランドです。それだけの規模と伝統を有しているだけに、「東京ガス」という名称からは「安心・安全・信頼」といった言葉を想起します。ただし、このブランドイメージは東京ガスグループにとって大きなメリットである一方、「挑戦」や「イノベーション」といったイメージにはつながりにくい状況もあるのではないでしょうか?社会を取り巻く環境が激しく変化を遂げている時代において、エネルギー問題をはじめ様々な課題があふれる中、現状維持のままでは組織の成長も顧客への価値提供も停滞が予見されることから、東京ガスグループは中期経営計画「Compass Transformation 23-25」の中で従来のビジネスモデルを変革するための新たなブランド「IGNITURE」の構築を標榜しました。村田行麿氏はIGNITUREに込めたグループとしての思いを次のように語ります。

「脱炭素化をはじめ、サステナビリティに対する要請は世界的にますます強くなり、この流れは今後も加速していきます。また、日本では多くの会社で労働力不足が深刻化していて、例えば私たちも地域冷暖房プラントのオペレーターや所長クラスの人材を確保するのに四苦八苦しています。エネルギーに限らず人を含めた社会そのもののサステナビリティの向上が求められる中、東京ガス・TGESならではソリューションを通じてお客様や社会が直面する課題を一緒に解決していきたい、困った時には東京ガスの社員の顔を思い浮かべてもらえるようになりたいという思いを込めてこのブランドを作ったのです」(村田氏、以下同)

image_column_240220.003.jpeg「IGNITURE」は「灯す(Ignite)」と「未来(Future)」をかけ合わせた造語

「東京ガス・TGESならでは」とは、グループ全体で培ってきた脱炭素技術やエネルギー提案の知見、インフラの建設や運用管理など、これまでの事業を通じて培ってきたエネルギーマネジメントのノウハウを指します。このノウハウに先進技術を取り込むことで、顧客にエネルギーの枠を超えた新たな価値提供を目指すものがIGNITUREなのです。

東京ガス・TGESでは、IGNITUREの対象を法人・個人・地域コミュニティの3つに分類し、各カテゴリのニーズに応じたソリューションを提供していますが、法人の場合は次の3つのビジネスの創出や支援を掲げています。

①サステナブルなビジネス
東京ガス・TGESが持つ脱炭素技術やユーザーズノウハウを駆使し、脱炭素や水廃棄物といった世界的に関心が高いサステナビリティに関する課題に関連するビジネスの計画、設備導入・運用、クレジット調達、報告業務までを一気通貫してサポートする

②生産性の高いビジネス
工場や地域冷暖房プラントなど大規模施設におけるエネルギーシステムを効率的かつ安定的に運用してきた経験と、それらの施設を運用する上で蓄積してきたデータ分析・解析の技術を活かし、顧客の施設管理の負担を軽減し、業務生産性の最大化を実現する

③安定したビジネス
エネルギー企業として長年に渡って培ってきたエネルギー多重化のノウハウや、インフラ建設や運用管理を通じて獲得した安全監視や故障予知、省力化等に関連するデジタル技術を活かして、災害が発生しても事業継続できる体制を構築したり、労働力不足を解消したりすることで、事業の安定化とビジネスレジリエンスを実現する

image_column_2402.004.jpegグループが持つノウハウを活かしながら3つのビジネスの創出・支援を目指すIGNITURE

ここまで見てきたように、IGNITUREはエネルギー関連ビジネスの支援を重点領域としてはいるものの、決してエネルギーの枠だけにとどまらず企業や社会が抱える課題、特に労働力不足という人材面にフィーチャーしている点は大きな特徴と言えるでしょう。

「今後ますます多くの業種で人材が不足していきますが、オペレーターを担う人々の採用は特に難しくなっていきます。デジタル技術を活用することで、少ない人数でも安定的なオペレーションを実現したいと考えています。例えば、東京ガスは芝浦に地域冷暖房プラントを持っていますが、そこを管理センター的な機能を持たせ、周辺他施設の状況も一括的に管理しています。そうやって各施設を親子関係にすれば通常時は親施設だけにオペレーターを常駐させておき、何か問題が発生した際には親施設から子施設へ担当者を派遣する形を取れば省力化が実現できます。こうしたソリューションは、工業団地などで私たちが複数の工場を一括して管理を受託するようなサービスとして展開できるのです」

従来のエネルギー事業とは異なるアプローチで課題解決と共創を実現

IGNITUREがターゲットとしているのは、工場など大規模施設の管理に課題を抱えている企業ですが、昨今のサステナビリティの動きに社内だけでは対応するのが難しい企業にこそ提供していきたいと考えているそうです。

「例えばバリューチェーンの中でサステナビリティに関する規程がある場合、バリューチェーンにおいて上流側の企業は対応できても、下流側に位置する企業は人員も豊富でないことが多く、本業以外の事象に対応しにくい側面があります。そこで我々が持つノウハウを活かしてサポートすることで課題を解決していけるのではと考えています。その際には、我々のパートナーの知見や技術を活かすケースもありますし、そうすることで、顧客とパートナー企業が連携した共創も実現できるはずだと考えています」

実際にとある病院にIGNITUREのソリューションを提案したところ、「どのような取り組みを行えば組織としてサステナビリティ向上を実現できるかわからなかったが、未来のロードマップ作成のサポートをしてもらったことで自分たちが何をすべきか明確にできた」と感謝を得られたそうです。これは「IGNITUREを通じて社会を前進させることができるという手応えを社員に掴んでもらうことができた」エピソードだと村田氏は話しました。

このようにブランドを広めていく中で、課題が明確化してきているとも言います。前述した従来からある東京ガスのブランドイメージからの進化に加え、次の2つを超えるべき壁として挙げられました。

●多様な顧客が抱える個別の課題把握と共通化
●新規顧客との接点創出のためのデジタル活用

一般的に顧客が抱える課題はそれぞれ異なりますが、これまでの東京ガスグループは画一的なサービス提供が基本となっていました。しかし多様化する顧客ニーズに応えていくために、今後は顧客ごとにカスタマイズした提案が必要になってくるというのです。しかし、顧客ごとにいわばフルオーダーメイドでソリューションを提供すると高価で時間のかかるものになってしまうため、複数の顧客に共通する課題を解決するソリューションをセミオーダーで提供していく仕組みを構築することにより、よりスムーズな課題解決が期待できます。

加えて、これまでの東京ガスは関東×都市ガス・電気を中心にビジネスを展開していたため、接点のない企業や個人、自治体も多くありました。ですがIGNITUREは全国を対象範囲としているため、新規顧客との効果的・効率的なコミュニケーションが重要となります。そのため、デジタルを活用した営業手法を取り入れていくことで顧客層の拡大とソリューションのスケール化を実現し、IGNITUREブランドを東京ガス・TGESの新たな柱に育て上げていくことを構想しているそうです。

「これまで東京ガスはお客様に請われてエネルギーを提供するビジネスが中心でしたが、IGNITUREのようなソリューションは自分たちの視点だけで提案するのではなく、『あなたの悩みはなんですか?』ということをまず聞き、それに対して『私たちならばこんなことができます』と話していかなければなりません。"You"の視点を持ってコミュニケーションを取らなくては共創にはならないんです」

新ブランドの波及効果は社内にも浸透

IGNITUREは東京ガス・TGESの持つイメージを変革させることも目的としていますが、それは外部だけではなく内部への波及効果も期待されています。実際、このブランドを立ち上げたことにより、組織内にも徐々に変化が生じてきているそうです。

「2023年に発表した中期経営計画の中では、挑戦を称賛することが謳われていますし、実際に社内でもそのような風潮が浸透してきています。私は東京ガスグループに入って30年近くになりますが、この5年ほどで社内の雰囲気が急速に変化していることを感じます。 今日は度々『共創』というワードを取り上げましたが、それは私たちの会社の来歴にも関係しています。東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は2015年にエネルギーアドバンスと東京ガス・エンジニアリングという二社が合併してできた会社です。現在我々が使用しているブランドマークはDNAの二重らせんのように2本の線が絡み合っているものですが、これはエネルギーアドバンスと東京ガス・エンジニアリングそれぞれのDNAが受け継がれていることと、我々とパートナー企業、あるいは会社と社員のみんなが力を合わせていくイメージを表現したものとなっています。加えて私たちは『誰もできない、に挑む。』というカンパニーメッセージも持っていますので、このメッセージを実現するために挑戦を続けていきたいと思っています」

最後に村田氏は今後の展望を次のように教えてくれました。

「多くのお客様の喫緊の課題となっているのはやはり脱炭素に関することです。この領域に関しては我々も多くのソリューションを持っていますので、IGNITUREを通じた提案をしていくことで課題解決とブランド認知の拡大を進めていきたいと思います」

IGNITUREは東京ガス・TGESの新時代の柱であると同時に、TGESのチャレンジャー精神を象徴するブランドでもあるのです。IGNITUREが東京ガス・TGESのあり方を変革させていった道の先には、日本のエネルギーを取り巻く環境が飛躍的に改善された未来が待っていることでしょう。

image_column_240220.005.jpegこの日は法人向けのソリューションを中心に説明していただきましたが、「個人向けや地域向けのソリューションもあるので、多くの方と共創していきたい」と村田氏は話してくれました。
写真右はインタビューを行うエコッツェリア協会の田口真司

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