ミドリガメが特定外来生物になる――? この報道を聞いて驚かれた方も多いのではないでしょうか。9月5日に開催された環境省の「侵略的外来種リストの作成会議」で、ミドリガメを、輸入や飼育を原則禁止にする「特定外来種」への指定を検討する方針であることが明らかにされました。
ミドリガメの正式名称は「ミシシッピアカミミガメ」。その名の通りアメリカが原産で、1960年代後半から日本に爆発的に広まりました。お祭りの縁日で見かけた人も多いでしょう。少し成長するとかわいらしさが薄れるので捨てられてしまい、河川湖沼にまたたく間に広まりました。今、日本で普通に見られるカメの7~8割はこのアカミミガメだと言われています。
このミドリガメの特定外来種の指定に向けた動きは、2つの面で興味深いものです。
ひとつは、今まで社会的インパクトの大きい生物の特定外来種指定は見送られてきた背景があること。飼育禁止となれば一斉に捨てられる危険性や、関与する業者からの反対が懸念されるなど、さまざまな問題が発生するからです。アカミミガメのほか、アメリカザリガニ、外国産クワガタムシなどが同様の理由で見送られてきました。にも関わらず、今回指定を検討する方向に進んだことは、生物多様性の保護に向けた取り組みにおいては大きな一歩といえそうです。
もうひとつは、今回のケースが日米の貿易上のリスクに踏み込むことになる点です。アカミミガメはアメリカの主要輸出品目のひとつで、今も年間20万匹以上が日本に輸入されています。日本側が輸入禁止にすればアメリカ側が反発するのは必至。過去、日本ではナミハダニという世界的な害虫の防除のために、カーネーションの輸入を規制しようとしてWTOに提訴しましたが、アメリカの反対にあって失敗、事実上ダニの侵入が公には認められてしまったという苦い経験があります。今回の日本の動きがどう影響を与えるのか、今後の動向が気になるところです。
生物多様性は自然環境の多様性であり、ひいては文化の多様性を支えるものです。4日には、福島県の只見と南アルプスがユネスコの「生物圏保存地域」(ユネスコエコパーク)へ推薦されることが発表されるなど、さまざまな動きが活発化しています。大丸有でも、ホタルやミツバチを飼育したり、本物の森を移植するなど、さまざまな取り組みを行っています。