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【環境コミュニケーションの現場】 見て、さわって、空気と水を体感 ― 体験・発見・技術・製品が一体化したダイキン工業の「フーハ東京」

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普段、気にすることは少ないものの、大切な空気。"フーっ"と熱いものを冷まし、"ハーっ"と冷たいものを温める、そんな何気ない動作にちなんで名づけられた、ダイキン工業(株)の「フーハ東京」が、人気を集めています。【環境コミュニケーションの現場】第19回は、"空気"と"水"をテーマにした体感型ショールーム「フーハ東京」におじゃまして、「フーハ東京」マネージャーの酒井茂孝さん、アプライド・ソリューション事業本部首都圏販売推進担当課長の松本賢治さんに、「フーハ東京」でのコミュニケーションや同社の節電・省エネ等のソリューションについてお話しをうががいました。

ダイキン工業
フーハ東京

― 「フーハ東京」を開設された目的は何ですか?

酒井: 昨年は東北・関東で、今年は関西を中心に電力不足が大きな問題となっています。ビルを例にとると、夏のピーク時の電力使用量の約半分がエアコンによるものです。ですから、当社はエアコン等の空調機器メーカーとして、「節電」「省エネ」には大きな役割を果たしていく必要があると考え、環境配慮型商品をはじめ、先進の省エネ・節電技術にもとづく、多彩な「節電」ソリューションを提供しています。

そのような背景から、単にエアコンや空調システムのショールームではなく、冷暖房・換気・空調・給湯に関するあらゆるニーズに応えるソリューションを提案する空間として、2011年12月にオープンしました。

― 住宅向けと業務用のゾーンが独立していますね
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酒井: はい。住宅用製品を中心に展示する「住宅用ソリューションゾーン」、業務用製品を中心に展示する「業務用ソリューションゾーン」の大きく2つに分けています。住宅用ゾーンには、小学生から大人までがワクワク楽しみながら「湿度の不思議」「冷暖房のしくみ」「きれいな空気」を学ぶことができる「空気の気づきゾーン」というスペースも併設しています。こちらには、主に新築やリフォームを検討中の個人のお客様が、業務用ゾーンにはビルや店舗・工場などの企業のお客様のほか、設計事務所、設備工事や建設会社、大学や専門学校の学生さんがお見えになっています。

一般のお客様と業務用のお客様ではご相談内容や私たちのご説明も大きく異なりますので、お客様に適した展示をそれぞれのゾーンで行っています。

― 展示にあたって工夫したことは何ですか?
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「さらに快適な室内環境と省エネの実現へ挑戦するのがダイキンの存在意義」と語る、松本さん。

松本: さきほど「冷暖房・換気・空調に関するソリューションを提案する空間」とお話ししましたが、これを当社では「HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)」ソリューションと言っています。節電や省エネなどの環境対応技術なわけですが、これらは説明を聞いたり、目で見ただけではわかりにくい。ですから、見て触って、肌で感じて、その効果を体感していただくこと。たとえばルームエアコンの展示ルームでは気流や温度変化を、ビル用の空調システムを展示するDESICA(デシカ)ルームでは湿度が身体を温めるというようなことを感じていただく。当社のもつエネルギーを統べる技術、エネルギーコントロールを体感していただくことが一番ですね。

酒井: 実際に身体で感じることが一番記憶に残りますね。ですからバーチャルでなく本物を見せることにこだわっています。たとえば、室外機は地下の駐車場に置き、展示機を実際の冷暖房運転で体感いただけますし、DESICAルームでは、ビル管理者と相談してもともとあったこのビルの空調をとり外したうえで設置しています。多くのお客様が、DESICAルームに入ったときに、体感温度の違いを肌で感じて「あれっ !?」と驚かれるのですが、すかさず「実機を運転してこの環境をつくり出しています。」と説明しています。お客様が大事にしているのは自分の建物に実際に使ったときのことですから、ご納得いただくためにも、できる限り現実に近い状態で説明させていただいています。

松本: カタログに室外機の重量が「-21kg」と書いてありますが、実際に持ち上げてみてその軽さを実感していただければ、工務店の方々やエンドユーザーさんに説明するときに、話し方が変わってきて、伝わり方も全然違ってくると思います。

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― 「空気の気づきゾーン」などは子どもでも楽しめますね。来場者数はどれくらいですか?

酒井: お子様づれのご家族で遊びにいらっしゃるお客様が予想以上に多いですね。おかげさまで、オープンから7ヵ月間の来場者数は約25,000人です。当初の年間目標は4万人としていましたが、5万人へ上方修正しました。

業務用については、ビルオーナーの方などエンドユーザーさんと当社の間には、ゼネコン・サブコン・設備店・設計事務所と幅広い商流のお客様がいらっしゃいます。ですからユーザーダイレクトのコミュニケーションには少し時間はかかるだろうと考えていたのですが、業務用のエンドユーザーの皆さんにもたくさんご来場いただいていまして、私どもの予想をはるかに超えていて嬉しい誤算です。

― 業務用を見学に来られるお客様はどこに関心を持たれていますか?
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「夏でもOLさんに膝掛けを使わせることがないよう、快適空間をつくるのが"エアコン屋"」と話す、酒井さん。

酒井: 1番はDESICAです。これは温度と湿度を個別にコントロールすることによって、節電と快適性の両立を実現する空調システム。従来品は温度と湿度を同時に制御していたのですが、温度と湿度が下がるスピードには差があるためエネルギーロスが生じるのが難点でした。それがDESICAでは最適な温湿度管理によって、従来品と比べて約20%の省エネを実現しながら、快適性を向上することができる。無給水加湿・無排水除湿ですから、配管工事も不要で水道代もかかりません。

営業では設計事務所を訪問してDESICAを説明・提案させていただいていますが、設計事務所からの勧めで商流の方が見えたり、商流の方が施主のお客様を連れて一緒に体験しにいらっしゃいますね。「節電になるし、環境にも対応している。これでいきましょうよ」と。

松本: DESICAには圧縮機が埋め込まれていますが、設計事務所様や一般ユーザーの皆様は音を気にされます。通常は工場までご足労いただいて立会検査のようにして、音のご確認をいただくわけですが、ある設計事務所様は当ショールームの終業後に、ほかの電源すべて切って音の確認をされたことがあります。工場までわざわざ出向く必要がなくなり、それが決め手となり茨城の病院に納入予定です。

DESICAシステム

― やはり皆さん省エネ・節電への関心が高いようですね

酒井: そうですね。2番目に関心を集めているのは、エネルギーマネジメントの展示です。ビル全体の省エネ・節電化をさらに高める管理システムですね。規模別のネットワークシステムを紹介して、それぞれのシステム構成と省エネ・節電効果を提案しています。最先端システムの省エネ・節電効果にプラスしてコストの部分もあわせて説明させていただいていますが、施主であるお客様は節電・省エネ・コストともわが身のことですから、それを自分の目で確認できるとご評価をいただいています。

ダイキンはBEMSアグリゲーターに採択されていますので、従来以上に多くのお客様にエネルギーマネジメントをご提案したいですね。

松本: 「フーハ東京」でというわけではありませんが、当社のソリューションで特徴的なのは、お客様の状況やニーズに応じて、自社製品だけでなく他のメーカーの機器も含めた最適なシステムで、最も節電効果の高いソリューションを提案していることです。

酒井: いろいろなものを組み合わせたトータル提案を商流の皆様と連携して提供することを、お客様から高く評価されています。たとえば、ビルの更新に際して、エネルギー消費を半分にすることをお約束して、ありとあらゆることをやる。遮熱フィルムから給湯器、空調など、自社製品以外も組み合わせて受注しています。そして、そのビル全体のエネルギー消費を監視、コントロールしていくのが、先ほどのEMS(エネルギーマネジメントシステム)というわけです。

― それは、お客様の立場にたったソリューションですね。「フーハ東京」では、数多くのイベントを通じて多彩なコミュニケーションが図られているようですが、いくつかご紹介ください
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「君も空気の探検隊」で分解されたエアコンをのぞき込む子どもたち

酒井: 7月は子ども向け夏休み特別企画「君も空気の調査隊」は実際にエアコンを分解して仕組みを知ってもらうというものですが、大変な人気で連日すぐに満席になりました。室外機の存在を知らない子どもたちが多いので、室外機をふさいでしまうと消費電力どれくらい上がったとか、フィルターが汚れているとどれだけ風の通りが悪くなるのかを見てもらい、それを用紙に書いて学校に持って行けば立派な自由研究になりますね。

8月にも「髙橋先生の大実験教室」「フーハこどもツアー」「目指せ空気博士!inフーハ東京」などの特別企画を開催していますし、3Dシアターでは「みらいのとびら」というショートムービーを特別上映しています。

もちろん、ルームエアコンや床暖房、太陽光発電のご相談にも毎日対応しています。事務局に営業も技術もいますので、どのようなご相談にお応えしています。

松本: 20年ほど前から、当社では「空調実践講座」という、クライアントの新入社員向けに実機研修を交えた講座を開催しています。実機に触れることができるので好評ではあるのですが、当社のつくば研修施設までお越しいただいていました。「フーハ東京」ができて、身近な都内にて、実機を用いて空調の基礎から応用まで学ぶことができるようになりました。

それから、ご近所の文化学園大学では環境工学のクラスで、ここを見学すると1単位取得できる講座も設けていただいています。地球温暖化やエネルギー問題についての企業の取り組み、具体的な製品を学ぶもので、来年度からは定例のコースにというお話もいただいています。

酒井: 幼稚園の園児たちもみんなで団扇をつくってパタパタやってくれたり、小学校の理科の授業で使っていただいたこともあります。そこで、いま中学校の理科部の人たちを呼ぼうと動き始めているところです。ここを見に来た子どもたちが、熱やエネルギーに興味をもって研究に取り組んでくれたら嬉しいし、将来ダイキンに入社してくれたら、などと考えるのは楽しいですね。

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