イベント環境プロジェクト・レポート

【レポート】秋の終わり、冬の始まり、鳥と木々

シゼンノコパン「秋の鳥を察る ~冬の前の心変わり?~」2021年10月31日(日)開催

ホトリア広場の向かいのお堀に群れていたヒドリガモ

秋、そして冬のはじまりはどこか心寂しい......なんて思ったりしていませんか。秋の終わりはたしかにみのりの季節の終わりですが、冬が始まるとにわかに活気づいてくるのが鳥たちです。冬の渡り鳥たちが日本に飛来し、特に皇居周辺のお濠には、多くの水鳥たちの姿が見られるようになります。

10月31日のシゼンノコパンは、そんな鳥たちの姿を求めて街へ繰り出します。いつになく?多くの鳥たちの姿を見ることができ、新しい発見もたくさんあったワクワクのバードウォッチングです。

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植物と鳥の関係、冬の始まりで変わる鳥の暮らし

植物と鳥の関係、冬の始まりで変わる鳥の暮らし

講師は、鳥といえばこの方、中村忠昌さん。NHKラジオ「夏休みこども科学電話相談」の回答者の経験もあり、優しい口調で楽しく面白く教えてくれます。しかも、鳥の専門家ですが、植物や虫、自然全般にも詳しく、ガイドとしても超一級です。

「とにかく、鳥好き、自然好きの人が増えてくれるとうれしいなと。その一歩として身の回り、都市の中にも結構いろんな鳥、生き物がいるんだよ、ということを今日は見てください。今日は植物と鳥の関係、そしてもうひとつ、秋になって変わる鳥たちの行動にも注目していきたいと思います」(中村さん)

秋、冬になると何が変わるのか。まず「餌となる虫が少なくなること」が挙げられます。
「これからの季節、虫が冬眠に入ったりして姿が見られなくなっていきます。そうすると、鳥も食べるものが、植物中心になっていくんです」

例えば、ホトリア広場の横で見たのがソヨゴ、エゴノキ。中村さんは植物を「鳥と仲の良い関係」かどうか、と話します。例えば、赤い実をつけるソヨゴは、タネが小さく、実を食べられても、タネがふんと一緒に出され、新しい場所で芽を出すことができます。例えばヒヨドリやツグミなどの鳥が好んでソヨゴを食べ、ソヨゴの生息域拡大に手を貸しているわけです。これが「鳥と仲の良い関係」です。

一方、すぐそばに生えているエゴノキの実は、比較的大きく、固いため、メジロやヒヨドリは食べることができません。しかし、この固い実を食べてしまう鳥がいるのです。皇居からやってくるヤマガラやドバトです。

「エゴノキは、食べられないことで生き残る作戦をとっているんですけど、頭の良い鳥はこれを割って食べてしまう。ヤマガラはすごくエゴノキの実が好き。キジバトは割らずに飲み込んで、丈夫な胃(いわゆる砂肝)ですりつぶして消化します。エゴノキとしては、こういう鳥たちには来てほしくないと思っているでしょうね」

※ただし、ヤマガラは貯食という行動をします。地面にエゴノキの実を埋めて、あとで掘り出して食べるのです。この時に忘れられてしまう実は、そこから生えることができます。その意味では、100%お呼びでないとも言えないでしょう。

(下段左)ソヨゴ (下段右)エゴノキの実 小さいですが形はまるっきりラグビーボール!

鳥と仲が良いかどうか、という視点でまちの植物を見ると、新たな発見があるかもしれません。

内堀で水鳥に双眼鏡を向ける参加者たち。ここではヒドリガモを観察。

お濠で暮らす鳥たちに出会う

カワセミとコブハクチョウの競演? カワセミがどこにいるか分かるかな?

ホトリア広場から内堀通り沿いにお濠を見ていくと、内堀通り側の石垣の一角で、カワセミを見つけました。遠くにいるうちから、中村さんが「あ、カワセミが鳴いている」と双眼鏡で探して見つけて教えてくれました。すぐ横で車がビュンビュン通り都市の喧騒の中でカワセミの鳴き声を聞き分けるのもスゴイ。

少し離れた場所から、三脚の双眼鏡で順番にカワセミを見学する参加者たち。非常にサービス精神豊かで、随分長いこと、動かずにとまっていてくれたため、全員が十分に見ることができました。そのうえ、カワセミの横を、コブハクチョウがスイーッと泳いでいくおまけ付き。

石垣の中は小さな林のようになっており、カワセミを見た反対側に行くと、今度はジョウビタキを発見。高い「ヒッ......ヒッ......」とも「ピッ......ピッ......」とも聞こえるような、と字にするとちょっと怖いですが、実際には可愛らしい鳴き声が聞こえます。またサービス良く、あまり動かずに鳴き続けてくれることから、「自分たちでも探してみて」と中村さん。

「渡り鳥なんですけど、オスは頭が灰色で、これを白髪に見立てて"おじいさん"という意味の『尉(じょう)』という字で名付けられた鳥のようです。メスは尾の付け根がオレンジ色で、今、おしりを振って鳴いています。人をあまり怖がらない鳥なので、ゆっくり探せます。見つけられますか......」

ジョウビタキのメス

ジョウビタキは秋になると渡来し、個々に縄張りを作ります。高い梢にとまって鳴いている姿を見かけるのは、縄張りのアピールのためなのだそう。

「ジョウビタキがいるのは、おそらくこれがあるからでしょう」と中村さんが示したのは、植え込みにあるトキワサンザシ。別名ピラカンサとも呼ばれます。小さな赤い実をたくさんつけ、鳥たちの格好の餌になっています。近くにはトウネズミモチという、同じように小さな実をつける木も。

ピラカンサを説明する中村さん

(左)トウネズミモチ、(右)シジュウカラも発見

「こういう木は鳥と仲が良いんですけど、鳥にとっても、自分が好きな実をつける木が増えることになるので、お互いにとって、良い関係なんですよね。トウネズミモチも鳥と仲が良いんですが、実は外来種で、環境省からは迷惑な影響のある植物(総合対策外来種)に認定されています」

思わぬオチもついたところで、皇居外苑へと場所を変えていきます。

身近な鳥も冬に備える

ドバト、ムクドリ

皇居外苑の芝生広場では、馴染みのある鳥たちに出会えました。ハクセキレイ、ドバト、ムクドリです。芝生を歩き回り、餌をついばんでいる様子。何を食べているのでしょうか......

「おそらく、ケヤキの実でしょう。ただし、ケヤキは鳥と仲が良いとは言えません。食べられた実は消化されてしまって芽を出すことができないんです」

ケヤキの実は、葉の根元にぽつんと付いている小さな実。中村さんによると、実だけが落ちることはなく、数葉ついた小枝の形で落ちてくるそうです。

「たまたまこういう形になるのではなくて、意図的に(?)こうやって落とします。すると、風にのって回転しながら、離れたところへと舞い落ちる。そこから新たな芽が出せるわけです。ピラカンサのように鳥にタネを運んでもらうのではなく、風に運んでもらうんですね」

参加者たちには、実のついたケヤキの枝を探してもらいましたが、近くにはドングリもあって、子どもたちはそちらにも夢中。「スダジイ」「マテバシイ」という種類で、スダジイはドングリの中でも一、二を争う美味しさなのだそう。お父さんの晩酌のおつまみにも良さそうです。

また、最近はドバトが生息域を変えており、在来種のキジバトと競合している可能性があるという話も。

「ドバトは外来種で、街の中で暮らしていましたが、最近こうやって林の中にも入ってきて餌を探すようになりました。キジバトは在来種で、もともと林で暮らす鳥。キジバトが食べたい餌を食べちゃっているのかもしれません」

しかし、皇居周辺のドバトは、皇居から飛来するハヤブサやノスリなどの猛禽類の格好の獲物ともなっており、なかなか厳しい生活を強いられているとも言われています。

冬は鳥と出会える季節

ツアーも終わりに差し掛かったところで、保っていた天気も崩れ始め、最後にお濠でキンクロハジロを観察したところでタイムアップ。この日はカワセミやジョウビタキをじっくり観察することができたうえ、飛来が始まった水鳥たちも見ることができました。冬の始まりを感じさせるツアーだったのではないでしょうか。また、ムクドリやカラス、ドバトなどの街でも良く見る身近な鳥たちについても、たくさんのことを教えてもらいました。最後に、中村さんから、これからの季節も観察を、というメッセージがありました。

「今日は、観察できると思っていなかったカワセミにも出会えて、ジョウビタキと一緒に長く見ることができて良かったです。今日はヒドリガモ、キンクロハジロだけでしたが、この先、だんだんと冬の水鳥たちも増えてきます。きれいな水鳥もいますので、ぜひ、機会を見つけて、これからの季節のバードウォッチングを楽しんでください」

参加者の一人は、「説明してもらって身近な鳥を知ることができて良かった。また街を歩いて鳥を探したい」と、喜んでくれました。皇居だから、外苑だから鳥がいたわけではなく、あなたの身の回りにも鳥はいます。気にかけていれば見つけることも容易なはず。参加者の皆さんには、鳴き声にも気をつけて、ぜひ鳥たちの姿を探してほしいと思います。

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