イベント環境プロジェクト・レポート

【レポート】大丸有エリアの保育事業者と考える、"多様な視点"のまちづくり

第1回大丸有エリアまち育連絡会 2023年2月7日(火)開催

4,11,17

「まちが育む、まちを育む」――エコッツェリア協会がまちづくり活動のコンセプトの一つとして掲げて取り組みを進める「大丸有エリアまち育プロジェクト」(まち育プロジェクト)。このプロジェクトはまちに関わる多様な視点からまちを見つめ直すことで、まちを育み、まちの人々が心地よく育まれることを目指した活動です。その一環として、多様なステークホルダーとの情報交換の場「大丸有エリアまち育連絡会」(まち育連絡会)を立ち上げ、2023年2月7日に大手門タワー・ENEOSビル1階「3×3 Lab Future」で第1回ミーティングをキックオフしました。初回に集まっていただいたのは、大丸有エリアで保育事業を手掛ける▽アルファコーポレーション▽ポピンズエデュケア▽ママスクエアHR-Partners――の本社スタッフ・施設長の方々。加えて、同エリアで企業主導型保育事業も展開する三菱地所プロパティマネジメントの担当者も参加し、まち育連絡会事務局とともに活発な意見交換が行われました。

image_event_230227.002.jpeg事務局でエコッツェリア協会の北村

今回のまち育連絡会では、①大丸有エリアの保育事業者等が共通して抱える課題などを情報交換し、まちに必要な魅力や機能をともに考え、②このエリアで活動する様々なプレイヤーと連携しながら、子どもやその保護者、子どもを取り巻く多様な人々等にとってのまちの快適性を向上させる――ことが主な目的です。会の冒頭、事務局を務めるエコッツェリア協会の大丸有エリアまち育プロデューサー北村真志は、まち育プロジェクトについて「プロジェクトは活動の第一歩として子どもと共に過ごすまちをテーマにスタートしました。大丸有エリアには現状、保育施設が11か所あります。その子どもたちの快適を考えることで大人も子どもも快適に過ごせるまちづくりを考えていきたい。」と説明。その上で、だからこそまち育連絡会という枠組みを通じて、「多様なステークホルダーと手をつなぎ共に活動していく必要があります。皆さまの力を借りて、有益なまちづくりの活動を広げていきたい」と伝えました。

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"葉っぱじゃんけん"でアイスブレイク

"葉っぱじゃんけん"でアイスブレイク

続いて、出席者の自己紹介タイムに。ただ、その順番決めの方法をひと工夫。会場のすぐ隣にある緑地空間「ホトリア広場」で子どもたちが集めた葉っぱを使い、"葉っぱじゃんけん"で順番を決めました。コーディネートしたのは、まち育プロジェクトメンバーでNPO法人生態教育センターの村松亜希子氏。2人1組になって参加者それぞれが持った葉っぱの大きさや長さ、色の濃さで勝敗を決め、まさに"アイスブレイク"と呼ぶにふさわしい、笑顔あふれる時間となりました。

image_event_230227.003.jpegアイスブレイクに葉っぱじゃんけん。みんな楽しそう

自己紹介では、各自が施設紹介や担当業務などとともに、同エリアの魅力や課題にも言及。京都で創業し、大丸有エリアでは2005年から保育事業を展開しているアルファコーポレーションのキッズスクウェア丸の内永楽ビル施設長の大庭舞夕氏は、「施設に園庭がなく、窓も開かないので、なるべく多く外に出ようと活動しています。よく行く場所は、皇居前広場や和田倉噴水公園。スタッフがびっくりするぐらい自然があふれていて、大丸有エリアの魅力の1つと思っています」と述べました。同じく大丸有エリアの自然について触れたのは、丸の内にある新国際ビルでも事業所内保育施設を運営しているママスクエアHR-Partners保育事業部の馬上あかね氏。「都会にありながらこれだけ自然と触れ合えます。もっと子どもたちに自然と触れ合ってもらって、いろいろな知識や学び、体験ができるような空間をつくっていきたいので、本日はいろいろ吸収して施設に持ち帰らせていただきたいと思います」と話しました。また、大手町プレイスにあるゆうてまち保育園で施設長を務めるポピンズエデュケアの射場紀江氏は、都心特有の外遊びについて触れつつ、「地域の方ともっとつながりを持てたらいいなと思いながら活動しています」と現場での実感を語ってくれました。

"多様性を受け入れるまち"を目指して

自己紹介の後は、事務局で三菱地所設計の中条瑛子氏が、まち育プロジェクトの活動概要をあらためて説明しました。2021年1月に始動したまち育プロジェクトは、最初の活動としてベビーカーにアクションカメラを付けて子ども目線で大丸有エリアのまちの魅力や課題を実地調査したことを紹介。「子どもの目線での豊かな緑や小さな生き物、遊びに使えそうな植物など、大丸有エリアの就業者として歩いているだけでは気づかなかった新たな発見がありました」と話し、プロジェクトメンバーの村松氏とともに、まちあそびプログラムや親子まちなか遠足、お花の植え替え体験といった、これまでの活動内容を共有しました。

image_event_230227.004.jpeg大手町エコミュージアムでの「お花の植え替え体験」の紹介スライド

併せて事務局の北村から、日本都市計画学会誌『都市計画』に掲載された活動レポート「『大丸有エリアまち育プロジェクト』の目指すもの」について報告しました。このレポートでは、まち育プロジェクトの活動内容に加え、▽子どもを含めた多様性を受け入れるまち、▽多様な視点の発掘、▽自由な挑戦や発見、▽五感を刺激する自然、▽安全性――など、その背景にあるプロジェクトの思想性を記載していることを紹介し、「子どもと大人が一緒に過ごせる空間や場を考えることは、今後のまちづくりにおいてさらに必要とされるでしょう。皆さまと力を合わせながら、大丸有エリアから"インクルーシブなまちづくり"を進めていきたいと考えています」(北村)と話しました。

身近な葉っぱでこんなに遊べる!

ついで、プロジェクトメンバーの村松氏がレクチャー講師となって、大丸有エリアにある自然を使った"遊び"を参加者全員で体験する時間に。初めのテーマは、"匂い"。3種類の葉っぱのいずれかが入った小さなボトルを各自が持ち、嗅覚だけで同じ葉っぱの人を探すゲームをしました。葉っぱの種類は①カツラ、②サクラ、③ミカンで、その匂いに嗅覚を研ぎ澄ませつつ、ふだんはなかなかしないようなゲームに参加者の皆さんのテンションもアップしたようでした。匂いの次は、"手触り"。①ミカン、②ツツジ、③ケヤキの葉っぱのいずれかを各自が持ち、手触りだけで同じ種類のものを当てる遊びをしました。こちらも皆さん、童心に返ったように大盛り上がり。親睦が深まる笑顔の絶えないひとときとなりました。

image_event_230227.005.jpeg葉っぱの匂い当てゲーム

「自然は多様であるとともに、それを受け止める人の多様さも教えてくれます。『自然の中で遊ぶことによって"個"を大切にした保育につながる』と、こうした遊びに参加していただいた保育士の先生からよく感想をいただきます」と村松氏。ふだんは見過ごしがちな身近にある都市の自然と保育施設をつなぐ重要性について、楽しみながら学ぶ機会となったようです。

葉っぱを使った遊びの後、事務局から「お花の植え替え体験」に関する新たな情報提供をしました。今は年3回、常設花壇の3か所で体験活動を行っていますが、2023年3月から仮設の木製花壇を3基新設すると報告。試行的に増やしてみて、ニーズがあるとわかった場合は、さらに自然体験ができる場づくりを拡大していく方針です。さらに、2023年度以降は、子どもたちと野菜を育てる場もつくれないかと検討をしていることも伝えました。

image_event_230227.006.jpeg多様な葉っぱ遊びをレクチャーした大丸有エリアまち育プロジェクトメンバーの村松氏

密度の濃い、現場起点の情報交換

会の最後は、じっくり意見交換。大丸有エリアで日々、保育活動を実践している皆さんだからこその現場起点の多岐にわたるテーマについて話し合いました。

▽大丸有エリアにおける"地域"とは?
「これまでの話に地域連携というキーワードが何度も出ていますが、大丸有エリアには住んでいる人がいません。想定されているのは、神田や日本橋などにお住いの方なのか、それともまちに集う就業者などの方なのでしょうか」。まち育プロジェクトメンバーでSDGsや生物多様性を専門とする環境教育プログラムやイベント・企画会社DRIMON代表の深須布美子氏がこう投げかけました。

この質問に「一般的な地域であれば住民になるのでしょうが、このエリアでは就業者がメインになりそうです。また、他保育施設さんも地域の方になると思います。住民に限らず、エリアのみんなで子どもたちを支えて育てていきたいと思っていますので、住民かどうかはあまりこだわらなくていいのかもしれません」とママスクエアHR-Partnersの馬上氏。アルファコーポレーション営業部の藤田亮氏は、丸の内消防署も地域の例として挙げた上で「ハロウィーンでまちを練り歩いて就業者の方などにお菓子を配るような取り組みもしています」と紹介してくれました。同様に地域企業に言及したのは、ポピンズエデュケア事業開発部の吉田俊一郎氏。「勤労感謝の日に弊社の保育施設を使っていただいている企業さまを訪問してプレゼントをお渡しするイベントなどをしています。そうしたことを大丸有エリアのまち全体で行えればいいなと思っています」と話しました。

image_event_230227.007.jpeg株式会社ママスクエアHR-Partners 保育事業部 保育運営課 課長の馬上あかね氏

image_event_230227.008.jpeg株式会社ポピンズエデュケア 事業開発部 マネージャーの吉田俊一郎氏

▽他保育施設の子どもたちと一緒に環境プログラムやイベントに参加できる?
大丸有エリアで開催されているイベントも話題に。まち育プロジェクトメンバーでDRIMONの浅井小夜加氏は「保育施設として大丸有エリアの環境プログラムやイベントに参加することはありますか」と質問しました。

この問いに対し、ママスクエアHR-Partnersの池田氏は、2022年12月に実施された「丸の内クリスマスパレード」に参加したことを共有し、「地域に密着したイベントだなとすごく感じました。いろいろな来訪者の方と一緒になってサンタの格好をして楽しめました。子どもたちにとっても過ごしやすい環境で、他保育施設の子どもたちや保護者の方とともに、例えば年4回ぐらいこうしたイベントがあったらいいなと思っていました」と語りました。

image_event_230227.009.jpeg株式会社ママスクエアHR-Partners 保育事業部 部長の池田眞姫世氏

イベントに参加できる時間は、午前や午後など各施設で違いがあると意見交換で分かった後、そもそも他保育施設と一緒にイベントに参加するスキームは現実的なのかという質問が上がりました。その問いには、ポピンズエデュケアの射場氏がこう応じました。「私立、公立問わず、千代田区内の保育施設同士で交流会や合同お散歩、合同避難訓練を企画しようという動きがありますので、そうした連携プロジェクトがあれば参加できるところは多いのではないかと思います」。さらにママスクエアHR-Partnersの馬上氏は、他自治体の事例も参照しながら、園庭やプールの無い保育施設のために、園庭開放やプール開放といった取り組みがあることも紹介してくれました。

image_event_230227.010.jpeg株式会社ポピンズエデュケア ゆうてまち保育園 施設長の射場紀江氏

▽高層ビルの"屋上"という選択肢
大丸有エリアは高層ビル街のため、どうしても外遊びの空間が限られてしまいがち。でも、さすがは地域の実践家の方々。高層ビルの"屋上"というアイデアが出され、意見が交わされました。

 「例えば、大手町ビル屋上の大手町ビルスカイラボは立派で広い公園のような空間です。広い空間なのに、子どもが遊ぶには利用しにくい面もあります。子どもたちが自由に走り回れませんので。例えば月1~2回、保育施設専用の時間を設定したりできれば、大丸有エリアではなかなかできない外でのかけっこやボール遊びもチャレンジできるようになるかもしれません」。こう提案したのは、アルファコーポレーションの藤田氏。加えて同社の大庭氏は大手町ビルスカイラボを利用した経験談を交えつつ、「子どもたちは体力があり余っているので、"走ってはダメ"だと、どうしても遊びにくくなります。この屋上スペースは、ちょうどいい広さの上、死角があまりなく見渡せる空間なのがいいなという印象があります。少し見える電車の走る姿でさえ、子どもたちはすごく喜んでいました」と話しました。

image_event_230227.011.jpeg株式会社アルファコーポレーション 営業部 店舗開発・法人営業チーム マネージャーの藤田亮氏

外遊びに関しては、プールなどの水遊びも話題に。保護者から「プールをつくってくれませんか」という声もあるようで、大手町ビルスカイラボに大きなビニールプールを置くのも良さそうという意見も上がりました。ただ、水遊びには、更衣スペースの確保などのプライバシー上での課題あり、服を着たまま水遊びしたとしても、濡れたまま保育施設まで戻るわけにはいきません。そんな中、今回の会場の3×3 Lab Futureを更衣スペースにして、隣接するホトリア広場で水遊びするアイデアも出されました。

image_event_230227.012.jpeg株式会社アルファコーポレーション キッズスクウェア丸の内永楽ビル 施設長の大庭舞夕氏

image_event_230227.013.jpegそれぞれの視点や立場から活発な意見交換が行われました

大丸有エリアの保育事業者の皆さんが集まり、親睦を深めながらまちの将来を見据えて考える貴重な情報交換の場となった、第1回大丸有エリアまち育連絡会。今後は他エリアのゲストをお呼びするなどして、年2~3回ほどのペースで開催する予定です。「まちが育む、まちを育む」を合言葉に、多様な人の視点を取り入れたまちづくりをこれからも進めていきたいと考えています。

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