イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【レポート】丸の内プラチナ大学 第4回 ~輝くシニアを目指し新たなステージをデザインする~

2015年6月26日(金) 開催

動き出した丸の内プラチナ大学2015

2015年度丸の内プラチナ大学の企画が動き出しました。いつもより早い15時半という開始時間にもかかわらず、70名を超える参加者が見られました。女性の参加者が目立ったことも今回の特徴です。

スタートスピーチはこれまで同様、三菱総研主任研究員の松田智生氏が務め、いつものメインスピーカーの一人、志事創業社(しごとそうぎょうしゃ)代表の臼井清氏は今回、ショートスピーカーとしてまとめ役に回りました。この2人の間に入った新たなプレゼンターは森卓也氏と西村美奈子氏。森氏は松田氏と同じ三菱総研の研究員。西村氏はマチュア世代の女性を支援するコミュニティ「Never too Late!」代表を務めています。

今回の丸の内プラチナ大学では、これまでの議論で欠けていた「女性」の視点を取り入れるとともに、「大学」の今後を"みんなで"考える共創の場となりました。冒頭のあいさつで、エコッツェリア協会の田口氏は「これまでのセカンドキャリア、プラチナ世代の議論はどちらかと言えば男性中心」だったと話し、西村氏のトークから、「女性にとってのプラチナを考えて」と訴えました。

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人生二毛作で、新たなセカンドキャリアに生きる

今、経済の絶頂期であったバブル期に大量入社した世代が50代になり、定年を意識する時代となっています。大手企業に金の卵として入社した彼らも、すべての人たちが社内において出世を果たせたわけではありません。生きがいを感じることもなく、窓際に追いやられた人たちも多くいるはずです。最初のスピーカーである松田氏は、こうした多くのサラリーマン生活の実態に焦点を当て、「人生二毛作」を薦める講演を行いました。タイトルは「地域で活躍する人生二毛作」です。

松田氏これまで松田氏はセカンドキャリアとして「二期作」も取り上げていました。二期作は、サラリーマン人生で積み上げてきた経験をそのまま活かすセカンドキャリアです。対して二毛作は、経験に束縛されることなく新たな挑戦をしようという発想。新たなチャレンジをするセカンドキャリアで「生きがい」を感じてほしいというのが松田氏の考えです。

そしてさらに問いかけます。「生きがいを感じることができるのはどのようなときでしょうか――?」。
松田氏は、これまでのプラチナ大学で受講生から寄せられた意見をもとに、生きがいとは、
・儲けることが最優先ではない
・社会の役に立ちたい
・誰かの役に立ちたい
という気持ちから生まれるものだと指摘します。

そして、最後にもうひとつ重要な指摘がありました。こうしたセカンドキャリアに一歩を踏み出すには、助走期間と準備が必要ということ。そこに丸の内プラチナ大学の意義があります。「まず、自分のwill(やりたいこと)、can(できること)、must(しなければいけないこと)を明確にすることが大事だが、それをできている人がまだまだ少ない」と松田氏。それを見付けるために、丸の内プラチナ大学に集い、学ぶ。そして活躍の場を見付ける。それが丸の内プラチナ大学なのです。いま地方創生が強く叫ばれている中、地方では多くの経験豊かな人材が求められているので、活躍する場には困らないことも紹介していました。

参加者みんなで作るカリキュラム

2番目のスピーカーを務めた森氏は松田氏とともに三菱総研でプラチナ構想の事業に取り組んでおり、丸の内プラチナ大学でも運営をサポートしています。森氏は、「丸の内プラチナ大学はまだ本格的な開校をしたわけではなく、今は『プレ開校』の状態」だと話し、今後の本格的な開校を目指し、大学のありようや、カリキュラムなどを、参加している人たちと一緒に考えていきたいと呼びかけました。

三菱総研・森氏最初の松田氏のプレゼンにも関連してきますが、「人生二毛作」の二毛作は、「新しい」キャリアに挑戦することを意味しています。丸の内プラチナ大学には、その新しい挑戦を支える"プラットフォーム"の役割が期待されていることが示されました。

いま巷では、シニア向けビジネススクールが流行っているといいますが、それは、かつて社会問題化した社内における「リストラ部屋」の代わりに過ぎないと森氏はいいます。リストラ部屋では企業のイメージが悪くなるため、隠れ蓑的に生まれたビジネススクールということでしょうか。丸の内プラチナ大学は、そうした胡散臭いスクールとは一線を画した構想で、もっと前向きなものであることを強調しました。

丸の内プラチナ大学は、「会社での経験を活かし、それを新しい生き方に結びつけるきっかけをつくる場」になってほしいとし、大学の今後を考えるために講演の後のワークショップに向けて下記のようなテーマを投げかけました。
●50代になりたての次世代シニア、つまりバブル期に入社した世代を巻き込んだ活動が望まれる。この世代に丸の内プラチナ大学の存在を知らしめるためにはどうしたらいいのか。
●セカンドキャリアへ踏み出せない人が、一歩踏み出すために必要なものは何か。
●丸の内プラチナ大学などへの参加には会社の理解が必要。その理解を得るにはどのようにすべきか。
森氏はこうした課題を示し、「丸の内プラチナ大学を一緒に創り上げていきましょう」と呼びかけました。

女性の立場からプラチナ世代を考える

「美しい50歳が増えると、日本は変わると思う」
3番目のプレゼンターとして立った西村氏が示した最初の言葉。これは、1997年に流れた資生堂のCMのコピーだそう。西村氏は、「美しい50代」=マチュアな(成熟した)女性の生き方のコピーに共感し、会社では部長職を務めながら、昨年、「Never too late!」というマチュアな働く女性の集えるコミュニティを立ち上げました。この日のテーマは「セカンドキャリアはあいさすから」です。あとで触れますが、「あいさす」は「あいさつ」の間違いではありません。

西村氏は大手メーカーで勤務しながら、Never too late!の代表も務めるさて、これまで「定年」は男性サラリーマン中心の話題でした。しかし、1986年に施行された男女雇用機会均等法から30年。それまでごく一部の優秀な女性しか得られなかったキャリアを多くの女性が積み上げられるようになった、その最初の世代が西村氏たちで、50代を迎えた今、定年を男性と同じように考えなければならなくなっているのです。「まとまって定年を考えなければならない、初めての女性の層が私たち」と西村氏。

西村氏は、定年という岐路に立つ女性には2つの選択肢があるといいます。1つは穏やかな生活を求め、家庭に戻ること。もう1つは、新たな輝きを求める生き方です。西村氏は後者の選択に「美しく生きる」を重ねています。松田氏も指摘していた長い老後を考えると、女性が新たなマチュアを求めてセカンドキャリアを選ぶのは当然かもしれません。

そうした生き方を目指す女性のために西村氏は興味深い人生の分析手法を示してくれました。その中で特に重要としたのが、AISAS(あいさす)です。 AISASは大手広告代理店が開発したネット時代の購買プロセス分析で、「Attention(注意)-Interest(関心)-Search(検索)-Action(行動[購買])-Share(発信)」というもの。 西村氏は、これを利用して、マチュア世代のセカンドキャリアのステップアップは、
Attention......【注意】アンテナを高く!
Interest......【関心】いろんなことに興味を持って
Search......【検索】億劫がらずに!
Action......【行動】恐れずに、行動に移そう!
Share......【発信】照れずに素直に、想いを語ろう!
という「AISAS」で始めれば、「きっと仲間は見つかる!」と話しました。また、このステップでは、「最後の2つのステップがとくに大事」と西村氏。丸の内プラチナ大学の思想に通ずるところを感じます。

意見百出のワークショップ

西村氏のプレゼンの後はワークショップです。森氏の講演にもあった、丸の内プラチナ大学の今後を、参加者とともに考える時間です。丸の内プラチナ大学も今秋には試験的に講座を開く予定になっています。そのカリキュラム作りを参加者と一緒に考える作業になりました。

まず、事務局から丸の内プラチナ大学のカリキュラム案が示され、各テーブルでその案の検証を行い、全体でシェアします。カリキュラム案は基本講座と専門講座に分かれていて、基本5科目、専門12科目が想定されていました。

個人ワークでは、示された科目に対して、個人的に受講してみたいものはどれかを、各科目に書かれている概要を読んで、チェックしていきます。企業側が求める内容はどれかという検討も行われました。その個人検討を元に4人ずつ座った各テーブルの中でグループシェアを行い、ワークはさらに全体シェアに結びつけていきました。全体シェアではさまざまな地域から参加した4人の発表があり、地域の抱える課題などともに丸の内プラチナ大学に求められる役割が期待とともに語られました。

サードプレイスで広がる「夢」

今回はまとめ役としてショートスピーチに回った臼井氏。大手企業を退職後、サードプレイスとして3×3Laboを利用するようになり、その後「志事創業社」という新会社を起業した経緯を軸に、夢のある起業とサードプレイスの重要性についての講演。テーマは「嗚呼、零歳シニア起業の半年」です。

起業前には、会社を離れると周囲とのつながりが切れるとか、孤独を抱えながらがんばらなければいけないという悲壮感さえ感じるマイナスイメージを抱きがち。しかし、「実際の起業は違っていた」と臼井氏。自身の体験を示しながら、起業には「夢」があり、可能性が広がることを強く語りました。「孤独なんて嘘」、逆に人との触れ合いが増え、周囲とのつながりも広がったそう。そして、自ら立ち上げた会社を「零歳企業」に分類し、今後の発展に夢を描いていました。

その夢ある起業を支えてくれたのがサードプレイスの存在であることも強調していました。臼井氏は退職する前後から3×3Laboに通い、多くの人と出会い、有意義な刺激を受けたそうです。そして、「起業は一歩を踏み出すと面白い。そのためには、ベースキャンプが必要」と指摘します。ベースキャンプにはいろいろな人が集まります。そこには、プロの登山家もいれば駆け出しのアマチュアもいます。そういう人たちとの出会いは刺激的です。英気を養うこともでき、新しいこととの出会いもあり、それまで気づかなかった自分の興味が広がるそうです。

そして、起業からの半年を振り返って「『一歩を踏み出す』というのは、意外と面白い」と感じていると締めくくり、これからセカンドキャリアに踏み出そうとしている人たちを応援しました。

来期、本格開校へ

そして最後に、エコッツェリア協会の田口氏から、改めて丸の内プラチナ大学の今後について重要な構想が示されました。それは「来期には丸の内プラチナ大学の本格開校を目指す」ということでした。一般的なビジネススクールとは異なる、プラチナ世代の輝きがさらに増すシニア向け学びの場がどのようなものになるか。期待と不安の混じり合うところです。筆者も同じプラチナ世代に身を置く人間として、ワクワクしています。

丸の内プラチナ大学

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丸の内プラチナ大学では、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供しています。講座を通じて創造性を高め、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、受講生の様々な可能性を広げます。

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