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誰もが、100年の人生を生きるかもしれない未来が待っている。 2017年にリンダ・グラットンによって書かれた『LIFE SHIFT(ライフシフト)』で提示された「人生100年時代」という言葉がひとつのきっかけとなり、多くのビジネスパーソンが人生におけるキャリアについて考えるようになりました。
自分の本業のほかにも、一生を通じて追いかけるキャリアを築きたい。誰もが気になるパラレルキャリアについて、「ファシリテーション」「プロボノ」「複業」の視点から学んできた丸の内プラチナ大学・パラレルキャリアコース。4ヶ月間・8回に渡って行われてきた講座の最終回が11月1日(金)に開催されました。この日のテーマは、「自身のパラレルキャリアの実行計画を描く」という、まさに今までの学びの総括にふさわしいもの。講師である塚本恭之氏のアテンドのもと、参加者同士のワークの場も設けられた和気あいあいとした講義となりました。
塚本氏の進行によって始まった最終講義。 今回のテーマは、「あなたらしいパラレルキャリアとは?」。個人のやりたいこと・やりがいに感じることを優先しながら選び作り上げていくパラレルキャリアに正解はありません。年代・時代、様々な要素が絡みあって、臨機応変に変わっていくものです。それでは、これからのキャリアをどのように描いていけばよいのでしょうか。
講座は、塚本氏自身が何度も見たというオンライン講演TED(テッド)、サイモン・シネックの『優れたリーダーはどうやって行動を促すか(How great leaders inspire action)』の視聴から始まりました。今回は、自分らしいパラレルキャリアを深掘りして知るためのツールとして、サイモン・シネックが提唱した「ゴールデンサークル」を使います。
ゴールデンサークルは飛行機を発明したライト兄弟や、黒人として市民権運動を起こしたキング牧師、さらにはAppleも使っている考え方です。その考え方の根源は「まず、Whyから始めよ」。「何のためにやるのか」「自分の信念は何か」という心の底からあふれる思いを明らかにし、伝えることで多くの人の心を動かすことが可能というものです。 この「Why」が明らかになることで、「How」や「What」といった次に取るべき行動の指針も見えてきます。
「普通の人は、「なぜ」では無く、「何を」「どうやって」というところで説明をすることが多いです。ですが、それだけでは、人の気持ちは動きません。」と、塚本氏は語ります。
「人の心を動かすのは、Why。Whyを徹底的に考えることで、自分が独自にやっている方法や強みについても見えてきます。何のためか、という目的はとても大切です。たとえば、"ダンスをやりたい"がWhatだったとします。このときに、なんでダンスが好きなのか、どうしてダンスじゃなければだめなのかをWhyの視点から考えます。世界にはいろんなダンサーがいるけれど、私のダンスとの違いはなんなのか。目に見える強みがあるのかを掘り下げていきます。その過程で自分の思いや強みが具体化されていき、人に伝わるようにもなるのです」(塚本氏)
最近は、複業を始める人も増える中で、「自分が得したい」「売れるうちに売ってしまおう」という思いを持つ人もいます。塚本氏が開催するコミュニティでも、このような人から声がかかることがありますが、やはり違和感があり、他の参加者からも指摘がくるそうです。「彼らの思いもひとつの形としてはありです」(塚本氏)しかし、何がWhy、原動力になっているかについては、自分自身でも自覚しておくことが必要だということを、重ねて説明いただきました。
ここまでの講義をもとに、机の上に置かれた白紙とペンでゴールデンサークルについて書き込むワークが始まります。今回は、パラレルキャリアについて、「Why」「How」「What」の3点を明らかにし、実行計画を立てていきます。講義の緊張感とはまた違う、真剣な空気が漂います。
「Why、How、Whatの順番は問わず、自由ですが3つ書けていることが大事です。適当でもいいです、ここで宣言したことを追求することはないので自由に書きましょう、今日の思いつきでも構いません」(塚本氏)という言葉で受講者の表情も緩みました。
20分ほどかけてそれぞれのゴールデンサークルを作ったあとは、3~4人でのグループに分かれてシェアを行います。 自分ひとりで心に抱えていた「Why」「How」「What」を言語化して人に伝え、率直なシェアをもらう機会は非常に貴重なもの。丸の内プラチナ大学に集まる受講者は、目指す場所や思いは異なるもののパラレルキャリアやこれからの自分の未来に対して考える姿勢が前向きな人ばかり。何気ない言葉から、新しい可能性を見いだしたり、アドバイスを受けたりと、アイディアが広がっているようです。
テーブルごとのシェアのあとには、受講者全員の発表の場が設けられました。 「ファシリテーション」や「プロボノ」などについて学んできた受講者から多く語られたのは、「場づくり」の声。自給自足を地元で行いたい、人や地域を幸せにする場を生み出したい、いろいろな地域の多様性を残したい、地方のおばあちゃんと郷土料理を掛け合わせたい、対話型の美術鑑賞の場をつくりたい、といった思いが飛び交いました。 その人の人生も垣間見えつつ紡がれる言葉に、皆頷きながら耳を傾けます。
このほかにも、様々な職業を経験したことも含めて教えるということをしてみたい、子どもを育てた今、いろんな人に助けられてきたことを還元していきたい、社会の一員として一生働き学び続けることができるように、やりたいこと・やってほしいことをマッチングしたい、かっこいい大人を増やしたい、という、人と人とのつながりを大切にする姿も見られました。
1人3分ほどの限られた時間でしたが、今まであたためてきた思いを語り出すと止まらず、それぞれのもつ「Why?」を共有する場になりました。 話を興味深く聴く塚本氏も「ゴールデンサークルを使うことで、非常にわかりやすく伝わるようになりますね」と、それぞれが描くパラレルキャリアについて、後押しをしていました。
受講者が描くパラレルキャリアを共有したあとは、塚本氏によって「なぜ、パラレルキャリアが大切なのか」というまとめに入りました。
現在の日本を俯瞰して見てみると、いくつかのキーワードが挙げられます。 たとえば、「貧困」。所得や資産の不平等・格差をはかるための尺度のひとつであるジニ係数を見てみると、現在の日本は0.39という数値です。数値が1に近づけば近づくほどその格差は広がり、0.4を超えると暴動が起きるともいわれています。今、デモが起こっている香港ではこの数値が0.7となっており、世界でもトップクラスの数字です。実は日本も、行政や自治体が介入して調整をしないと、この数値が0.6になるといわれています。アジアで起こりがちな貧困に対して、何か打つ手はあるのでしょうか。このほかにも、地球温暖化による台風や水害の影響、AIの台頭による雇用減少など問題は山積みです。
「こんな時代だからこそ、パラレルキャリアが大切になります。いろいろな問題に対して、ひとつのセクターだけで地球の問題は解決できません。一人ひとりが、自らの強みを生かし、思いを持って、それぞれの立場を越境していく必要があります。複業やパラレルキャリアを経験することは、まさに「越境」の経験。知識を共有し合いながら、自分がいる場所の論理を超えて、アクションを起こす、そんな役割を果たしていきたいと思っています」(塚本氏)
最後に集合写真を撮影し、全8回の講座は終了となりました。互いの思いを話し合った受講者同士もすっかり打ち解けた様子です。4ヵ月にわたって学び、育んできたスキルはこれから取り組む「複業」「パラレルキャリア」に繋げていくことができる、そんな期待を感じました。丸の内プラチナ大学では、今後もパラレルキャリアに関連する講座や取り組みをご紹介していきますので、これからの活動にもご期待ください。
丸の内プラチナ大学では、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供しています。講座を通じて創造性を高め、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、受講生の様々な可能性を広げます。