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【レポート】関係資本の力を最大化する コミュニティデザインと持続的価値創造

【ひなたMBA×丸の内プラチナ大学】第1回 プロジェクトデザインから始まる、コミュニティデザイン 2025年9月24日(水)開催

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2025年9月24日、宮崎市の一般社団法人宮崎オープンシティ推進協議会(通称MOC)を舞台に、「ひなたMBA」と「丸の内プラチナ大学」による注目すべき特別連携講座が開講しました。会場には、宮崎県内の経営者、事業者、自治体職員、教育関係者など23名が集結。世代や立場の垣根を越えた参加者たちが熱気を帯びた雰囲気の中で交流する、特別な時間となりました。
東京の3×3Lab Futureを拠点に、学生からビジネスパーソンまで全世代を対象にキャリアや学びの可能性を広げる「丸の内プラチナ大学」と、宮崎県が産業を担う人材を育てる実践型プログラム「ひなたMBA」。都市と地方の知見を掛け合わせるこの連携は、新しい価値と共創のプロセスを生み出す試みとして、大きな注目を集めています。
全3回シリーズの初回となる今回のテーマは「コミュニティ」。「プロジェクトデザインからはじまるコミュニティデザイン」と題し、全国各地で地域課題の解決に挑む実践者、MYSH株式会社代表取締役/GlidePath株式会社代表取締役の向井裕人氏が登壇しました。参加者たちは、向井氏の豊富な現場経験から導き出された、生きた知見と実践的な戦略に真剣に耳を傾けました。

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ビジネスにおける「関係資本」の重要性

ビジネスにおける「関係資本」の重要性

 hinataMBAplatinum250924_2.jpg MYSH株式会社代表取締役 / GlidePath株式会社代表取締役 の向井裕人氏

向井氏はまず、自身のユニークなキャリアから話を始めました。関西出身の向井氏は、これまで複数の大手企業やベンチャー企業での業務を経験。特に大手自動車メーカーでは、経営企画部門に所属し、経営戦略の立案や部門横断プロジェクトのリードなど、戦略部門の中核を担っていました。
しかし、大手企業で戦略部門を担当していた当時、心血を注いで立案した戦略が組織の論理や都合でなかなか実行に移せず、強いもどかしさを感じることが何度もあったといいます。この経験が、2015年の独立への決定的な転機となりました。向井氏は、「自分のビジョンを自分で描き、それを実行し、成果を確かめるサイクルにこそ、本当のやりがいがある」と振り返ります。
独立後、向井氏は経営コンサルタントとして大手企業を中心に新規事業開発や業務改革に携わる一方、地域活性化を目的とした自身の会社を設立しました。この経験と強い信念が、現在の「地方創生 × 人材育成 × 自己実現」を軸とした地域事業展開の原動力となっています。現在、同社は地方自治体からの委託事業として、地域における「移住相談窓口」や「地域ハブ拠点」の運営に取り組みながら、まちづくりを推進しています。加えて、地方自治体のデジタル戦略アドバイザーとしても活動し、地域の実務と戦略を結びつける役割を担っています。
向井氏が立ち上げたMYSH株式会社は、「自分の楽しいを日本の元気に」というミッションを掲げ、「共感からはじめる」「やりたいを実現する」「地方を元気にする」という3つのバリューを軸に、地域や人の課題に向き合う事業を展開しています。向井氏は、「自分の『楽しい』という感情を起点にし、それを事業に転換することが、結果的に地方創生や自己実現につながる」と述べ、自らの哲学を参加者に伝えました。

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さらに講義では、向井氏の活動の根幹をなす「関係資本主義」というアプローチが紹介されました。これは、金銭的な資本や利益よりも、まず信頼関係を積み重ねることを最優先する考え方です。向井氏は、「交流を重ね、何度も顔を合わせ、振動を共有することが何より大切」と語ります。地域課題の解決や事業の推進には、計画や資金だけでは動かない要素が多く存在します。そうした現場において、信頼関係こそが最も強固な基盤であり、ビジネスを成立させる真の資本となると述べました。
それを痛感したのは、かつて日本酒バーを拠点に地方の魅力を発信した経験によるものです。向井氏は「地域にそれを受け止めるコミュニティ、つまり『受け皿』がなければ、活動は根づかない」と振り返ります。いくら魅力的な企画や商品があっても、地域住民や参加者が共感し、関わる場がなければ、事業は定着しません。向井氏の言葉には、現場に根ざした実践知が込められており、参加者たちは深く頷きながら、熱心にメモを取る姿が見られました。

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基地とフォロワーが生む持続可能なコミュニティ戦略

向井氏は次に、地域活動の具体的な事例を、「地域外の人との関係構築」と「地域内の人との連携強化」という二つの視点から紹介しました。

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1. 地域外からの「振動」を定着させる福島・南相馬
福島県南相馬市では、行政から受託し移住相談窓口を運営しています。この活動の目的は観光客を増やすことではなく、将来的に地域で事業を生み出す人、つまり「移住につながる関係人口」を増やすことです。この取り組みを支えるのは、「しつこいほどの継続」と「緩やかなイベント運営」という戦略です。
一度地域を訪れた人には定期的に情報を届け、小さな接点を重ね続けることで、関係性の「振動」を維持します。さらに、流しそうめんのような一見ライトなイベントも、実は移住検討者を地域に招き入れる戦略的な仕掛けであり、「楽しいから参加するうちに、自然と地域とつながる」仕組みになっているのです。現地での特別な体験と継続的なフォローアップによって、関心を持った人が定着へとつながるプロセスを設計しています。

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2. 地域内の「横のつながり」で課題を解く奈良・奥大和
一方、奈良県奥大和では、地域内の事業者を対象にコミュニティリーダー育成プログラムを実施しています。これは、地域に存在する事業者を横につなげ、その力を引き出す試みです。この連携から、クラフトビール開発など新しい事業の芽が生まれており、信頼できる人材のネットワークによって、空き家活用のような個人では解決できない地域課題にも、コミュニティとして挑む動きが広がっています。

3. コミュニティを持続させる「基地」と「役割」
向井氏は、「コミュニティを持続させるには『基地』と『フォロワー』が欠かせない」と強調しました。南相馬では、古民家を拠点に宿泊や共同料理の場を提供し、都市部では得られない特別な体験を創出しています。ここに集まった人々が「また来たい」と思う循環をつくることが、地域を支える原動力になっています。
さらに、運営においてはフォロワーに役割を与えて主体的に関わってもらう仕組みを設けることで、運営負担を分散させています。単に人を集めるだけでなく、地域を100年先まで続けていくために「価値と真剣に向き合う人材」を育てるという向井氏の言葉は、現場での積み重ねに裏打ちされた強い説得力を持っていました。

質疑応答で深まる実践知

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講座後半は、参加者同士のグループワークと、実務に直結する内容の活発な質疑応答へと移り、会場の熱量はさらに高まりました。

 hinataMBAplatinum250924_8.jpg 活発に意見交換する参加者たち

実務における「イベント運営の疲弊を防ぐにはどうすればよいか」という問いに対し、向井氏は、主催者側の負荷を分散させる具体的な工夫を語りました。

 hinataMBAplatinum250924_9.jpg 写真左:質疑応答では、エコッツェリア協会の田口真司(右)がファシリテーターを務めた
写真右:自身の事業を手掛けながら、コミュニティ運営も行っている事業者

「イベントの規模に大小を設け、運営の実務負荷を軽減することを意識しています。例えば、年に数回の大規模イベントの合間に、小規模で遊びの要素が強いイベントを挟むことで、全体の負担を分散できます。特に小さい規模であれば、フォロワーに運営を任せることも可能です。『これなら任せられる』という形で、誰にどの役割を与えるかを工夫することで、主催者側の疲弊を防いでいます。大切なのは、フォロワーに『これをやってください』と指示するのではなく、『何をやりたい?』『どんなことなら参加者が喜んでくれるだろう?』と考えてもらい、自主的に動いてもらう仕組みを重視することです。」(向井氏)
この回答に加え、これまで数多くのイベントを運営してきたエコッツェリア協会の田口が、役割分担の重要性を補足しました。
「人に託すことで、結果"チームビルディング"につながっていきます。例えば今日は、宮崎県からエコッツェリア協会に出向しているスタッフの宮村が、マイク回しなどを担当しました。
実際に任せてみると、『今はここでサポートしてほしい』『人が足りないから入ってほしい』といった連携の感覚が自然と身についていく。役割を入れ替えながら経験することで、互いの立場や気持ちが理解でき、結果的にチームとしての一体感が育っていきます。
もちろん、不安な面もありますし、失敗することもあります。でも大切なのは"失敗してもいい場"をつくること。そこで挑戦してみるからこそ、思いがけずうまくいくこともある。今日のような場は、いろんな試みをしやすいです。そうした小さな積み重ねが、結果的に大きなチーム力につながると思います」(田口)
回答を聞いた参加者は大きくうなずき、会場全体にも共感の空気が広がっていました。

 hinataMBAplatinum250924_10.jpg 写真右:田口のコメントに笑顔を見せる、宮崎県庁からエコッツェリア協会に出向しているスタッフの宮村駿

他にも「地域の信頼を得る方法は?」との質問には、向井氏は「本気度を見せること」と即答。雨の日でも畑仕事に手を抜かず取り組む姿勢が、地元住民の信用につながると具体例を交えて語りました。行政との連携に関しても、「簡単に諦めず、何度でも提案すること。子どもたちの笑顔や移住事例といった具体的成果を見せることで共感を得られる」と実践的な助言を加えました。

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質疑応答の場は、講師から一方的に知識を得るのではなく、参加者が自身の現場に思い起こしながら考える時間となり、会場の熱量をさらに高めていました。
最後に向井氏は、これまでの実績を踏まえた未来の展望を語りました。南相馬で関わる500人の関係人口、奥大和で育ちつつあるコミュニティ、さらに日本酒バーを軸にした70名の運営メンバー。いずれも「人」を中心に据えた活動が多角的な事業展開につながっていると指摘しました。
「結局、地域も事業も人が動かす。そこに尽きます」と力強く語った向井氏の目には、熱意と信念がにじんでいました。
今回の講座は、地域×関係資本の実践を具体的に知る貴重な機会となりました。次回以降は「リビングラボ(地域共創)」や「マーケティング」をテーマに展開される予定です。地域の実践知とビジネス戦略が交差する場として、新たな視座を得られることが期待されます。宮崎から生まれる学びと共創のプロセスに、ぜひご注目ください。

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(取材・執筆:東郷あすか)


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