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【レポート】スナックひきだしから学ぶ「主催者」になる方法

【丸の内プラチナ大学】 Social SHIFT テーブルコース DAY4 2026年1月9日(金)開催

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先行きが見通しづらい社会のなかで一歩を踏み出すには、自分自身でビジョンを持ち、それを他者に語り、構想することが大切です。丸の内プラチナ大学「Social SHIFT テーブルコース」は、さまざまな分野で一歩を踏み出したゲスト講師をお招きして、その体験談を聞きながら、そんなマインドを形成することを目指す講座です。2026年最初の講座となったDAY4では、昼スナック「スナックひきだし」のママとして多くのミドルシニア世代にサードプレイスを提供している株式会社ヒキダシ代表の木下紫乃氏をゲスト講師に迎え、「昼スナックママが教える スナック(的サードプレイス)のつくり⽅」と題した講演を行っていただきました。

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「だめならやめたらいいじゃん」が新しいことを始める後押しになる

「だめならやめたらいいじゃん」が新しいことを始める後押しになる

image_event_socialshift_day4_2.jpeg株式会社ヒキダシの代表取締役にして、「スナックひきだし」のママも務める木下紫乃氏

自分自身のことを「なんでも体験したい人」と評する木下氏。その言葉通り、5度の転職に3度の結婚、45歳で大学院に入学、47歳で人材開発会社である株式会社ヒキダシを起業するなど、様々な体験をしてきました。そんな木下氏がスナック経営をすることになったのは次のようなきっかけからでした。

「大学院で若い人たちと話していると、彼らは親世代である40代以上の大人にものすごく失望していることに気づきました。私が人材開発系の会社に在籍していたこともあってよく就職相談をされていたのですが、ベンチャーや外資系企業よりも国内の大企業を目指してもらいたいというプレッシャーを親からかけられている子も多かったです。そうした話を聞いていると、大人たちをもっと元気にしてチャレンジしやすい社会を作っていくことが、若者のサポートにつながるのではないかと感じたのです。そこでミドルシニア世代に研修やセミナーを提供するヒキダシを起業しました」(木下氏、以下同)

「40代以上の個人を対象に、今後の人生に役立つ研修を提供しようと企画を練りました。素晴らしい講師を選りすぐり、破格の参加費でセミナーを展開したのですが、まったく人が来ませんでした。原因は私にとっては意外なもので、『自分のために出すお金があるなら子どものために使う』という声が多かったのです。この時、自分はお客さんにしようとしている人たちのことを、いかに知らないか痛感しましたね。そこで、まずは彼らのことをちゃんと知ることにシフトしました。ターゲットであるバブル世代は飲み会に対するハードルは低いので、この世代が集まりやすいスナックを開こうと思いついたのです」

知人が経営していた飲食店を間借りし、「45歳以上」で「モヤモヤを抱えている人」という入店条件を満たした人を対象にした「スナックひきだし」をスタートします。「半分はお遊び感覚だった」と木下氏は振り返りますが、入店条件を設定したことで自然とコミュニケーションが活性化しやすい状態となったこともあり、オープンから満員が続いたといいます。

「ただ、私自身が夜に弱かったことに加え、夜の営業だと女性が足を運びづらかったことから、オープン後間もなく昼の営業へと転換しました。営業時間を変更してお客さんが来るか心配でしたが、多くの方が来てくださいました。ちょっとしたおしゃべりができるようなサードプレイスが求められていたのでしょうね。もうひとつ面白かったのが、『紫乃ママみたいに自分でスナックをやってみたい』という人が多かったことです。そこで間借りしていたお店にも相談し、すべての曜日で昼スナックを開くことにしました。スナックをやってみなければ、こんな需要があることに気づかなかったはずです」

その後日本を襲ったコロナ禍では、多くの飲食店がダメージを被り、閉店に追い込まれる店も少なくありませんでした。しかし木下氏は、そんなタイミングで間借りしていた店から飛び出して、自らの店舗を構えることになります。「不動産屋で働くお客さんから、運よく格安の物件を紹介された」ことがその理由ですが、客観的に見るととてもリスクの大きいチャレンジとも言えます。それでも一歩を踏み出したのは、木下氏が「だめならやめたらいいじゃん」という"心のお守り"を持っていたからでした。

「私が大学院に行っていたことを知り、自分も大学院に行きたいとよく相談されます。そう口にする人の多くはお金や時間がネックとなって二の足を踏んでいるのですが、大学院はこちらがお金を出して通う場所なのだから、嫌だったらやめたらいいと思うんですよね。これに限らず、一度やり始めたら絶対に続けないといけないと思い込んでいる人がすごく多いのですが、私の場合、仕事も恋愛もだめだったらやめたらいいと決めています(笑)。正当化と言われるかもしれませんが、そう思わないと新しいことは始められないと実感しているからです」

image_event_socialshift_day4_3.jpegこの日は「スナックのおつまみとして出てきそうな料理」を楽しみながらセッションは進んでいきました

「主催者」になることで得られるメリット

現在スナックひきだしは、木下氏も含めて昼夜合わせて30人ほどのママ・マスターがそれぞれの担当曜日を切り盛りしています。2017年のオープンから8年以上スナックを経営してきたなかで、木下氏は「3つの居場所があると人は生きやすくなる」ことに気づいたと言います。

「1つめは会社や家族など自分の生活の基盤となる『ライスワーク』の場です。2つめはボランティアや地域活動、学びの場など『ライフワーク』の場です。3つめは趣味の集まりや同窓会のつながり、いきつけのお店など、もっと気軽な『ライクワーク』の場です。複数の場を持っているとそれぞれをまたいだ人のつながりを持てますし、どこかが苦しくなってしまった時に別の場所に逃げられます。例えば親の介護のことをライスワークの場で相談するのは憚られる場合もありますが、ライフワークやライクワークの場であれば相談しやすいですよね。異なる領域や人やテーマとのつながりというのは、チャンスの入口にもセーフティネットにもなるのです」

さらに、スナックという場の主催者となることで得られたメリットも多くあると教えてくれました。具体的には次の5つを挙げます。

①自分の関心事を多くの人に知ってもらえる
②主催者は一番多くの人と繋がれる
③主催者には一番多くの情報が入ってくる
④自分の好きなようにやれるので実験ができる
⑤自分で企画ができるのでゲストとして呼びたい人を呼べる

「私の場合はミドルシニア世代を知るためにスナックの主催者となりました。実際にその世代の方々に来てもらい、皆さんに関心があるんだと伝えられます。多くの人と繋がれる分、たくさんの情報が入ってきますし、私の場だから誰かに従う必要もなく、好きなようにやれて、色々な人を呼べる。ついには『スナックでの経験を本にしないか』と声をかけてくれた方もいて、実際に出版もできました。こうしたメリットはスナックに限ったものではありませんから、小規模でいいので主催してみることをオススメしたいです」

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「紫乃ママ」の軽快な語り口に講演中も笑い声が起こり、会場はまるで本当の"スナック"のように楽しげな雰囲気が満ちた

では、実際に主催者となって場を始めるにはどのようなことがポイントになるのでしょうか。木下氏は3つのステップを踏んでいくことが大事だと説明します。

ステップ1:何でもいいからイベントを企画する
ステップ2:「来てよかった」と思ってもらえる場を創出する
ステップ3:「行けばよかった」や「次はあの人を誘おう」を創出する

「まずは企画することが大事です。どんな小さなイベントでもよくて、難しいテーマを掲げる必要もありません。何が売りになるのかを考え、SNSなどを使って集客には力を入れましょう。ステップ2では、知り合いにも初対面の人にも平等に対応したり、お客さん同士をつなげたりすることで、一人ひとりのお客さんに主役となってもらい『来てよかった』と感じられる場を創出します。安全に話せる場を作っていくにはママがコネクタとなり、場の雰囲気を調節するキーマンにならなくてはいけません。そしてステップ3では、来てくれた人にお礼のメッセージを送ったり、参加者の承諾を得た上で当日の様子をSNSでレポートしたりすることが効果的です。SNSでグループを作るのもいいでしょう。お店に来たことがない人でも入ってくれますし、定期的に情報発信していけば、いつかは来てくれるようになるはずです」

このようにスナックひきだしを通じて得た様々な知見や気付きを教えてくれた木下氏は、次のような言葉で講演を締めくくりました。

「最後に皆さんに送りたいのは『やり散らかそう!』という言葉です。やってみないと前に進みませんからね。違ったら辞めたらいいし、変えたらいいんです。考えているだけでは何も起きませんから、やり散らかしていく中で、『これは続けたい』というものを見つけて、続けていってみてはいかがでしょうか」

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Social SHIFT テーブルコースのファシリテーターを務める服部直子氏(写真左:ソシオエンジン・アソシエイツ Medi nogizaka プロジェクト主宰)と町野弘明氏(写真右:ソーシャルビジネス・ネットワーク代表理事)

やりたいことの本質を捉えて、ハードルを下げ、少しずつ成功体験を積み重ねていく

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大いに盛り上がったグループディスカッションと壁打ちの様子

講演を終えると、参加者同士のディスカッションを経て、木下氏との「壁打ち」が行われます。例えば「本業以外にやりたいことはあるが、勤務先が副業禁止のためなかなか行動に移せない」と話す参加者に対して、木下氏は次のようにアドバイスを送ります。

「人脈や情報も仕事の報酬に値するものです。本業以外で金銭を得るのがいけないのなら、人脈や情報を積み重ねていってはどうでしょう。数年後、金銭以外の報酬も貯まり、今より住宅ローンも減っていれば、そこで新しいことを始めてみても良いと思います。ただし、私たちはロボットではありません。肉体的には徐々に老化していくことは忘れずに、あまり先送りにしない方がいいでしょう」

「色々なことをやっている人を見て、悔しい思いを抱きながら、時間やお金を言い訳にしてなかなか一歩を踏み出せない」と口にする参加者に対しては、「やらない理由が出ているうちは、実はそこまでやりたくないことだから、自分を責める必要はまったくない」と前置きした上で、次のような考えを述べました。

「何かをやろうとする時にハードルをとても高くしている人が多いと思います。例えば転職を望んでいる方がいて、よくよく話を聞いてみると、その理由は上司が嫌いだからだという場合があります。それなら転職までいかずとも、上司と話す時間を1時間減らすだけでも状況は変わりますよね。ハードルを高くしすぎてしまうのは精神衛生上あまり良くなくて、まずは自分のやりたいことの本質を捉えて、ハードルを下げ、少しずつでいいから行動し、成功体験を積み重ねていく方が楽しみながらやれるのではないかと思うんです」

さらに「自分の心が動くものやワクワクするものはどうやって見つければいいのか」という問いに対しては、意外な回答をしました。

「私は常にワクワクしているように見られがちですが、そんなことは全然ありません。『嫌なことをなるべくやらない』を基本方針としていますし、嫌な人と会ったり、嫌なものを食べたりする機会をなるべく減らすという意識低めな生き方をしています(笑)。やりたくないことを減らせばその分の時間は増えて、余白が生まれることでやりたいことが見えてくる可能性もあるはずです」

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この日のセッションはファシリテーション・グラフィック・アートに描き出されました(ファシリテーション・グラフィック・アーティスト:吉田顕(ひかり)氏)

大いに盛り上がったSocial SHIFT テーブルコースのDay4は、こうして終了の時間を迎えました。講演はもちろんのこと、壁打ちも濃密なものとなり、参加者たちの表情には、スナックでママとの会話を楽しんだ後のような爽やかな疲労感が浮かんでいるのが印象的でした。

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最後に全員で記念撮影

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