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【レポート】「フリー×フリー」で、自分の得意を活かす環境を実現

女性アントレプレナー発掘プログラム ~Program2~ 2019年11月7日(木) 開催

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東京都の創業支援事業「インキュベーションHUB推進プロジェクト」の一環として、5回にわたって開催される「女性アントレプレナー発掘プログラム」。2019年11月7日、「フリーランスからはじめてみよう」をテーマに、第2回目が開催されました。

講師は株式会社グローバル・カルテット代表 城みのり氏。リサーチに特化したフリーランスチームを率いて、世界各国28名のメンバーのマネジメントを行う傍ら、自身もリサーチャーとして活躍されています。
フリーランスでもチームをマネジメントすることは可能なのか。世界のどこにいても働き続けられる仕組みとはなにか。これまでの体験をもとにした苦労やその乗り越え方などをお話しいただきながら、リモートワーク時代のチームの在り方を考える場となりました。

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フリーランスは必ずしも「ひとり」で完結しなくてもいい

フリーランスは必ずしも「ひとり」で完結しなくてもいい

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城氏は開口一番に、「30代は闇のような中を歩んだ」と話します。
2002年にアメリカで会社を設立し、その後、事業を譲渡して帰国したのは城氏が35歳のとき。「その年齢で転職は厳しい」と言われていた時代でした。何社も受けて入った会社を1〜2年でやめ、その後、コンサルティングファームを経てマーケティングリサーチ会社に再就職したのは2012年のこと。数字を扱ったり、データを分析する業務が肌に合い、数年続けていましたが、その後、結婚・出産によって1年間の休職。「これが大失敗でした」と、当時を振り返ります。

「本当にがっつりと休んでしまいました。1年後、復職したら頭で考えていることと動かしたい手が全く違う。上司には評価されず、クライアントにも怒られる日々...泣いた数は数えきれないくらいです。この頃からいわゆるマミートラックに陥り、ネガティブな感情を払いきれずに育休復帰後1年4ヶ月でやめてしまいました」
退職を決めてからは副業をし、フリーランスという働き方の可能性を探っていた城氏。フリーランスの魅力を感じながらも、周囲のハイスペックな女性を目の当たりにし「勝てない」「ビジネス系フリーランスは無理」と落ち込む日々、別の道も考えていたころに転機が訪れました。

「以前お付き合いのあったクライアントさんから定量調査の依頼をいただいたのですが、1人で負うには納期が厳しかった。そのように伝えると『チームでできないか』という答え。フリーランスは、最初から最後まで1人で完結しなくてはいけないものだと信じて疑っていなかったので、その発想に驚きました。フリーランスとフリーランスが組むという考えが頭になく、当時も主流ではなかったと思います。実際に受けてみると"普通のこと"だったんですね。ただ1人で受けるには、納期が短かったから怖かっただけで、やればできること。大きな業務を細かくブレイクダウンすれば、個々でできることはたくさんありました。私は指示と最終的なチェックに徹底し、実際に手を動かす時間はかけていません。メンバーにお願いしている間、私は他の仕事を進めていく。これは会社員時代にしていたマネジメントと同じことでした」

現在、城氏は各種調査のほか、戦略的資料の作成、企業研修をメインに活動。得意な分野を活かし、チームでの活動と個人の業務を分けて進めています。
「約2年かけてやっと自己肯定感が上がりましたが、ここまで来ればあとは思い悩まずに進んでいけると思います」

"弱みを克服する"より"強みを伸ばす"

少しのきっかけでフリーランスに大きな可能性を見出すことができた城氏ですが、一般的にフリーランスとして必要とされていることは何があるのでしょうか。フリーランス協会の2018年の調査によると、「自分を売る力(セルフブランディング)」「成果に結びつく専門性・能力・経験」「やり遂げる力」「人脈」「前向きな姿勢」の5項目が上位に並びますが、これらは「フリーランスだけでなく、会社員としても必要なこと」が挙げられています。
「もし現在、会社の中で実行できていないのであればフリーランスとしても食べていくことは難しい」とした上で、城氏が経験を通じて最も重要だと気付いたのは「与える精神」と「明確な強み」だと続けます。

「まずは与える精神。お試し期間や価格など、受け入れてもらいやすいものを"少しだけ"提供することです。作業で使った計算式の資料など、成果物としては約束していないちょっとしたもので十分。人と人を繋ぐことも非常に大切で、自分で受けられない案件は信頼できる人を紹介しています。喜んでもらえるのはもちろん、地道に続けることで仕事以外での評価も上がり、実を結ぶようになりました」

2点目の「明確な強み」は、紆余曲折を経た城氏ならではのアドバイスでした。
「私は強みに目が向かず"弱みを克服しなくてはいけない"ということばかりに囚われていました。しかし、あるキャリアコンサルタントの方に『弱いところを叩き潰している時間はない、走らなくてはいけない』と言われて気づいたのです。自分の持っている一番の強みを伸ばすほうが楽しく、早いと。コレだけで行こうと決めて軸を作りました。弱みは手放していい、一生懸命克服しようとしなくてもいい。強みを磨いて『これはこの人』と第一想起されるようになれば、その分野の仕事はあなたのものです」

実際に経験した成功例と失敗

城氏が実際に行なって受注に繋がったのは、以下の5つだそう。
1 複数マッチングエージェントへの登録
2 営業用資料の作成
3 ベンチャー企業の代表を訪ね歩く
4 「好きで得意」を教えてみる→SNSでの活動報告
5 クラウドワークスも引き続きセールスツールとして継続中

なかでもユニークな取り組みは3つ目の「ベンチャー企業の代表を訪ね歩く」こと。「自分たちのチームや仕事がどんなところでニーズがあるのか、どんな規模のベンチャー企業であれば、考える規模感で実現できるのかを探るため、SNSでコンタクトを取り、約100社を訪れました。営業というよりは相談をしに行ったのですが、実際にお仕事を紹介していただく機会もあり、やってよかったことのひとつですね」

一方、数えきれないくらい失敗も経験したという城氏が、最初にぶつかったのは値付けの問題。決められたお金が入ってくる会社員からフリーへの転身、自分の仕事に値段を付けるのは容易なことではありません。どれくらいがベストなのか。仕事はほしいが安売りはしたくないとは、誰もが思うことでしょう。
「そこで私はこれまでの収入をベースに、年収を12ヶ月で割って時給に換算した値段を設定しました。が、それが後々自分の首をしめることになったのです。会社の給料には、保険や交通費など見えないものが含まれています。それを考慮できなかったのは失敗でした」

加えて、営業経験のなかった城氏にとって「タイプ別の提案」は難しく、ヒアリングが足りずに苦労することや、早すぎるタイミングで納品した結果、相手の期待値を上げてその後大変な思いをしたこともあるそうです。また継続的な仕事については「卒業のタイミング」も重要だと話します。 「何年も同じパートナーと同じ仕事を続けると停滞の時期が訪れます。自分自身が成長していないと感じながらも続けてしまうと、自分の中で成長するタイミングを逃す。企業にとってもデメリットです。個人的に、フルコミットで長過ぎる契約は失敗のひとつだと感じています。また、フリーランスは何でもできて当たり前ではありません。クライアントの認識との齟齬によるトラブルを避けるためにも言語化することは大切です」

実際問題としてあるフリーランスのデメリット

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さまざまな調査において、全般的に満足度が高いと結果が出ているフリーランス業。時間や働く場所の自由度に関する満足度は約7割。また「充実感や達成感」の項目に至っては8割近くに及び、会社員での同項目結果は3割にとどまっています。これだけを見ると、まるでフリーランスはメリットばかりのような印象を受けますが、もちろんデメリットも大きいもの。さまざまな業務を任される会社員に比べ、仕事も働き方も自分で選べるフリーランス。「このような結果が出るのは当然」だと城氏は指摘します。なかでも大きなデメリットとして挙げるのは「自己責任」「1人3役以上」「精神的・肉体的な負担」の3つ。

「まずはすべて自己責任です。育休などの特別休暇や保険はありませんし、3年目くらいまでは社会的信用もなかなか得られません。病気やけがをすると単純に収入は減りますが、それ以上に怖いのは休みが長くなればなるほどクライアントが離れていくことです。一時的に収入が減るのではなく、長期間にわたってクライアントが他に移るリスクもあります。またマネタイズするには、本業以外にも事務や営業が必須です。苦手な分野であっても自分で担わなくてはいけません。怖いですよね...どんどん仕事を取らなくてはいけないという精神的負担。その結果、パンクしたり、納期に間に合わなかったり、十分な成果物が出せなかったりする。この3つは非常に大きなデメリットだと思います」

それでも「120%でやらなくてはいけない」のがフリーランス。
「80%の力でもいいかもしれませんが、それ以上のスピードで走っている人が近くにいればすぐに仕事は取られてしまいます。走り続けなくてはならない状況はとても辛いものです。そこで私が見出したのがチーム稼働。その時々の状況にあったメンバーにお願いできれば、リスクヘッジできますし、安心して休みも取れます」

現在、城氏のチームには、性別や国籍、年齢、経験を問わずさまざまな状況のコントローラーがいるそうです。適材適所で仕事を任せることによって「誰かは働きたいときに稼げ、休みたい人は休める」。申し訳なさを感じながら休みを取るのではなく、各自、ライフスタイルに合った働き方が実現しているのです。

同業のライバルは必ずしも敵ではなく味方にも

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フリートークで盛り上がったあと、質疑応答を経て、マイクを取ったのはファシリテーターのWarisの小崎亜依子氏です。
「私もフリーランスの方にたくさんお会いしていますが、120%でやっている人は成長します。会社員とフリーランスの1年は全然違う。チームでのフリーランスは、城さんの強みを活かした、非常に素晴らしいひらめきです。そこに揺るがないビジョンや価値観があったから、これだけの人材に恵まれている。実行するためには何かを手放さなくてはなりませんが、誰かの課題を解決するビジネスではなく、その過程でチームのビジョンを実現していくことも可能です。もしかするとそれは会社員が取り組みやすい起業のスタイルなのかなと思いました」

続いて、「すぐに成功する人なんていません」と、エコッツェリア協会の田口真司がエールを送ります。
「強みを活かすことは本当に大切な要素です。強みがあるからこそ、構えず自分らしくいられる。自分らしさが分かれば、一貫性が身につきますし相手にも安心感を与えることができます。うまくいかなくてもやり方を変えながら、好きなことを続けていただきたいです」

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最後に改めて「小さく始めてみませんか」と問いかける城氏。
「会社員として働いている方で、現在の職場に満足しているのであれば、在籍したままスタートするのもいいでしょう。隣のフリーランスと仲よくするメリットは助け合えるからです。必ずしもチームを作る必要があるわけではなく、自分ができないときに安心して頼れる誰かはいたほうがいいと思います。同業者は、ライバルかもしれませんが、決して敵ではありません。自分が信頼できる同業者はとても強い存在になります。トライアンドエラーを重ねながら、楽しくパラキャリ・フリーランスに挑戦してください」


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