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【レポート】新しい人生のスタートアップをしよう!

ミドルシニア世代 “自分スタートアップ”プログラム 〜Program3〜2020年1月23日(木)開催

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東京都の創業支援事業「インキュベーションHUB推進プロジェクト」の一環として、2019年12月にスタートした「ミドルシニア世代 "自分スタートアップ"プログラム」。人生の選択肢に「起業」という可能性を加えたい40代〜60代の方を対象とした全5回の講座では、起業に精通した多彩なゲストを迎え、起業にまつわるさまざまなテーマについてお話いただきます。1月23日(木)に開催された第3回のゲストは、一般社団法人BMIA協会認定コンサルタントの宇都宮雄一氏 。今回は「新しい人生のスタートアップをしよう!」をテーマに、世界で最も使われているフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス(BMC)」と「パーソナル・キャンバス(BMY)」を使ったワークを通して、個人のビジネスモデルの描き方をリアルに体感することで、起業の知見を深めていきました。

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冒頭、本講座のファシリテーターを務める塚本恭之氏(ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役/経済産業省登録 中小企業診断士)が登壇し、「ミドルシニア世代 "自分スタートアップ"プログラム」に込めた想いについて、次のように話しました。

「人生100年時代が当たり前に叫ばれるようになった今、80歳まで働く時代が到来すると言われています。アメリカの最新データによると、企業の平均寿命はおよそ20年。20歳ごろから80歳までの約60年間働くとすれば、3回くらいは職を変えなくてはならないことになります。スタートアップというと、莫大なお金を投資して、ビジネスが急成長するようなイメージがありますし、起業というと、敷居が高く思えるかもしれません。しかし、制度上も現場でも、これまでに比べて最も起業しやすい環境になっています。多様な働き方が受容されるこれからの時代において、まずは自分自身をスタートアップしていくこと。この講座では、そのきっかけを提供したいと思っています」

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『ビジネスモデルキャンバス』の本当の意味とは

『ビジネスモデルキャンバス』の本当の意味とは

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次に、宇都宮氏が登壇し、開口一番、こう述べました。

「今日の目的は、皆さんに、自分スタートアップのヒントを得るための方法を知ってもらうことです。前半では、ビジネスモデルキャンバスという組織のビジネスモデルを俯瞰するフレームワークを知っていただき、後半は、ビジネスモデルキャンバスを応用した『パーソナル・キャンバス(BMY)』を俯瞰する方法をご紹介したいと思います」

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▼組織のビジネスモデルの俯瞰

ビジネスモデルキャンバスが、日本で最初に紹介されたのは、2012年のこと。スイス・ローザンヌ大学のアレックス・オスターワルダー教授とイヴ・ピニュール教授の共著「ビジネスモデル・ジェネレーション」の中で紹介されました。

「ビジネスモデルと言うと、儲けの仕組みなどと表現されることが多いですが、この本の中では、

"ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的かつ構造的に記述したもの"であると定義されています。2012年ごろからビジネスモデルに注目が集まり始めたのは、テクノロジーの進化などによって、外部環境の変化が飛躍的に早くなったことがひとつの理由ではないかと私は思っています。例えば、5000万人ユーザーを獲得するまでにかかった時間を見てみると、電話では50年、テレビは22年、パソコンは14年。さらに、iPod が4年、ツイッターが2年、ポケモンが19日。これはあくまで一例ですが、私たちを取り巻く外部環境は、凄まじいスピードで変化を続けています。そのような時代において、企業は自らのビジネスモデルを常に迅速に見直さなくてはならなくなった。ゆえに、ビジネスモデルキャンバスをはじめとするフレームワークが登場したのではないかと思います」

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<ビジネスモデルキャンバスを構成する9つの要素>

ビジネスモデルキャンバスは、既存ビジネスや新しいビジネスモデルの全体像の俯瞰・分析に活用できるフレームワークです。このキャンバスを構成するのは次の9つの要素です。

1,顧客セグメント(Customer Segment)

顧客はビジネスモデルの柱の要素。

顧客なしに企業は存続することはできない。どのような顧客に満足してもらうか。

2, 価値提案(Value Proposition)

顧客と価値提案がビジネスモデルの柱。

その製品・サービスが提供されることによって、顧客はどんな喜びを得るのか。

どういった問題の解決を手助けするのか。

3,チャネル(Channels)

顧客との関わりの経路。「顧客への価値提案」をどうやって提供するか。

顧客とどのようにコミュニケーションを取るか。

4,顧客との関係(Customer Relationships)

顧客との関わりの結果、生まれる特筆すべき関係。

例えば、小売業の場合、ポイントカードを使うことによって「リピート利用」という「長さ」の仕組みを作り出している。

5,売上(Revenue Streams)

顧客はどんな価値にお金を払おうとするのか。

どのように収益を上げることができるのか。

6,重要なリソース(Key Resources)

ビジネスモデルの実行に必要な資産。

物理的なもの、ファイナンス、知的財産、人的リソースなど。

7,主要活動(Key Activities)

ビジネスモデルを実行する上で、必ず行わなければならない重要な活動。

例えば、コンビニなら、1日数回の配送やPOSレジによる顧客分析など。

8,重要なパートナー(Key Partners)

自社で持つには効率が悪い、時間がかかるなど、パートナーによってその作業コストを低減するもの。例えば、アウトソーシング先や銀行など。

9,コスト構造(Cost Structure)

ビジネスモデルを運営するにあたって発生するコスト。

どのリソース、主要活動が高価だろうか。また低コストだろうか。





「キャンバスの右半分を占める顧客セグメント、チャネル、顧客との関係、売上の4つ要素は、企業にとっては"外部の活動"にあたります。ここには、どのように顧客に価値を届け、顧客とコミュニケーションを取るかという要素が含まれています。対して、キャンバスの左半分を見ると、重要なリソース、主要活動、重要なパートナー、コスト構造といった要素があります。これらは、企業が顧客に価値を届けるために必要な"内部の活動"に相当します。そして、9つの要素の中でも、最も重要なのは、顧客セグメント。どのような企業であっても、やはり顧客の存在なしに存続することはできません」

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ビジネスモデルキャンバスの使い方の一例として、宇都宮氏は「従来型の理髪店」と「10分、1,000円の理髪店」を取り上げて紹介しました。

<従来型の理髪店のビジネスモデル>

顧客セグメント  男性や子ども 

価値提案     理髪

チャネル     店舗

顧客との関係   信頼・リピート

売上       理髪料金1人/3000円〜

重要なリソース  理容師、バーバー椅子、洗髪台

重要な活動    カット、洗髪、ひげ剃り

重要なパートナー 理容メーカー

コスト      地代家賃、設備費、材料費、人件費

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<10分、1,000円の理髪店のビジネスモデル>

※現在は、1,200円に価格変更されている。

顧客セグメント  忙しい男性や子ども

価値提案     理髪、時間節約、低価格

チャネル     店舗

顧客との関係   信頼・リピート、高頻度

売上       理髪料金 1人/10分1,000円

重要なリソース  理容師、吸引マシン、簡素な設備、美容師

重要な活動    カット

重要なパートナー 理容メーカー

コスト      低い地代家賃、設備は簡素化、低い材料費、高い人件費

「10分、1,000円の理髪店のビジネスモデルは、従来の理髪店の常識を覆した革新的なモデルです。洗髪やひげ剃りをなくし、カットに特化したサービスを提供することで、10分、1,000円という低価格を実現しています。顧客セグメントは、従来型と同じ男性や子どもですが、その中でも、とりわけ"忙しい"男性や子どもです。価値提案は、理髪に加えて、時間節約と低価格。顧客との関係には、信頼・リピートだけでなく、高頻度を加えることができます。重要なリソースは、従来型のバーバー椅子や洗髪台をなくした代わりに、カットした毛髪を吸い取る吸引マシンを導入。またひげ剃りをなくしたことで、理容師だけでなく美容師を雇うことが可能になります。バーバー椅子や洗髪台が要らない分、従来型に比べて小さい敷居面積、低い地代家賃で済ませることができます。さらに、シャンプーなどの材料費を抑えながら、より優れたカット技術を持つ人材を雇い、従来よりも高い人件費を払うというビジネスモデルになっています」

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<ワーク1 コンビニエンスストア>

次に、コンビニをテーマに、ビジネスモデルキャンバスを描くグループワークが行われました。コンビニを利用する人たちはどんな人たちなのか、コンビニは、その人たちにどのような価値提供しているのか、その価値を提供するにあたって、コンビニ側にはどんな活動が必要なのか。参加者たちは、各グループでそれぞれ1枚のキャンバスを作り上げていきました。

宇都宮氏は、下記の詳細を記したコンビニのビジネスモデルキャンバス一例を紹介し、「ビジネスモデルキャンバスの利点のひとつは、共有できることです。これをもとにして、ひとつの企業、ひとつの店舗のビジネスモデルを描き、話し合うことができます」と付け加えました。

コンビニエンスストアのビジネスモデルキャンバス例

顧客セグメント  学生、社会人

価値提案     いつでもどこでも(利便性)

チャネル     店舗

顧客との関係   セルフサービス、ポイントカード

売上       商品代金(定価)、ATM手数料

重要なリソース  小さな敷地面積、POSシステムによる購買分析、淹れたてコーヒー

         PB、ATM

重要な活動    少人数運営、複数回配送、購買分析

重要なパートナー 商社

コスト      商品原価、物流コスト、店舗の在庫コスト(減)

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<ワーク2 他己紹介>

次に行われたのは、宇都宮氏が認定コンサルタントとして活躍する一般社団法人BMIA協会の伝統的なワーク「他己紹介」。このワークでは、2人1組のペアを作り、相手の「現在の仕事」について交代でインタビューを行います。そこで得た内容をふせんに書き込み、適切な項目の枠内に貼っていくことで、ひとつのビジネスモデルキャンバスを完成させていきます。

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次に、グループ内で別のペアを組み、インタビューの内容をもとに作り上げたビジネスモデルキャンバスの詳細を説明します。「ふせんをたくさん貼った状態で見せてしまうと、情報が多すぎて分かりづらいので、一旦ふせんを外し、キャンバスを白紙に戻してください。そして、再びキャンバスにふせんを貼りながら説明してみましょう。そうした方が、いかに分かりやすく伝えられるかということを体感していただきたいです」(宇都宮氏)

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『パーソナル・キャンバス』を描く時のリソースは、自分自身

▼個人のビジネスモデルの俯瞰

講座の後半は、個人のビジネスモデルを描くパーソナル・キャンバス(BMY)の解説からスタート。パーソナル・キャンバスは、2012年に刊行された「ビジネスモデル YOU」(アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール共著、神田昌典訳)で初めて国内で紹介されました。ビジネスモデルキャンバス同様、世界中で広く使われているキャンバスのひとつです

「パーソナル・キャンバスも、使うフレームワークはビジネスモデルキャンバスと同じです。ただ、次の2つの視点を変えることがポイントになります。ひとつは、重要なリソースは『自分自身』であるということ。自分の興味やスキル、能力、個性、財産などが相当します。もうひとつ、売上やコストについては、金銭だけでなく、満足度、ストレス、貢献度なども含まれてきます」(宇都宮氏)

パーソナル・キャンバスを描く際のポイントについて、氏は次のようにまとめました。

<パーソナル・キャンバス描く際の9つのポイント>
顧客セグメント  誰の役に立ちたい?誰のためになりたい?

価値提案     どう役に立ちたい?どうためになりたい?

チャネル     どう届ける?

顧客との関係   どういう関係を持つ?

売上       そして何を手に入れる?

重要なリソース  あなたはどんな人?どんな資格や能力がある?

重要な活動    あなたならではの大事な取り組みは?

重要なパートナー カギとなる協力者たちは誰?

コスト      そのために何を費やす?

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早速、パーソナル・キャンバスを使ったワークが行われました。「現在の自分」をテーマに、

各自がパーソナル・キャンバスを描き、グループ内で共有を行いました。

「基本的な考え方は、ビジネスモデルキャンバスと同じですが、顧客セグメントについては、自分にお金を払ってくれる人と捉えてみてください。会社に務めている人は会社や上司、自営業であれば、顧客となるでしょう。価値提案については、その顧客に対して、どんな価値を提供しているか、顧客はなぜ自分にお金を払ってくれるか?と自問自答してみてください。起業や副業を踏まえて、パーソナル・キャンバスを作る時は、顧客セグメントを変える、増やすことがポイントになります。顧客セグメントが変わることによって、自分の活動も変わり、その結果、新しい人脈や経験を得られることは、起業や副業ならではの利点と言うことができます」(宇都宮氏)

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<ワーク4 やってみたい仕事キャンバス>

最後に行われたのは、「やってみたい仕事」をテーマにパーソナル・キャンバスを描くワークです。
「これは仮説ですので、非論理的でかまいません。まずは、やってみたい仕事を自由に考え、顧客セグメントと価値提案を描いてみてください。新しい仕事のために、必要なスキルや活動、パートナーがあれば、それらも書き加えてください」(宇都宮氏)

ビジネスモデルキャンバスとパーソナル・キャンバスの使い方について、宇都宮氏と塚本氏は次のように述べました。

「こんな価値を提供して誰かの役に立ちたいなど、アイデアを思いついた時、メモ書きするような感じで気軽に使ってみてください。私自身も、何か思いついたら書くという使い方をしています」(宇都宮氏)

「キャンバスを美しく描くことが目的ではないので、空欄があってもいいと思います。ただ、どうしても埋めていただきたいのは、顧客セグメント。どんなにいいアイデアがあっても、使ってくれる人、買う人がいなければビジネスにはなりません。例えば、『私のビジネスの顧客セグメントは、中小企業です』と言っても、国内には約300万社の中小企業が存在しているので、まだ十分に絞り込めているとは言えないでしょう。ここをしっかりと絞り込むことによって、顧客像が見えてきます。そこから、他の要素も見えてくると思いますので、ぜひ心に留めていただければと思います」(塚本氏)

ワーク中心の講座で、大いに盛り上がった第3回。次回は、税理士の吉村知子氏をゲストに迎え、起業の形態や設立方法などについてお話いただきます。ミドルシニア世代 "自分スタートアップ"プログラムの今後の展開に、乞うご期待ください。

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