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【レポート】『そのときは自然にくる』起業に向けて、はじめの一歩を踏み出そう

女性アントレプレナー発掘プログラム2021 ~Program4~ 2021年9月1日(水)開催

8,11

キャリアについて考える女性たちが自らの「ありたい姿」を考える参加型プログラム「女性アントレプレナー発掘プログラム2021」。最終回となる第4回は「はじめの一歩を踏み出すために」をテーマに、株式会社ウエーブプラネット代表取締役のツノダフミコ氏を迎えました。プレイヤーや議員といった幅広いキャリアを振り返りながら、ご自身の起業経験を語っていただきます。

ファシリテーターは株式会社STORY コミュニケーション・デザイナーの若松悠夏氏、ナビゲーターは株式会社リコー TRIBUS推進室の大越瑛美氏が務めます。大手町の3×3 Lab Futureの会場を起点に、海外からの参加も含めた全国各地の皆さんをZoomでつなぐリアルとオンラインのハイブリッド開催です。

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原点は「中学校時代の家庭科」

原点は「中学校時代の家庭科」

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ツノダ氏は、生活関連のB2C大手企業をクライアントとし、マーケティングの上流部分におけるコンセプトづくりの仕事をしています。クライアントと一緒にお客様を理解しながら、暮らしにどのような価値を提供するかを考えます。さわやかな語り口のツノダ氏ですが、実は中学生の時から「熱い想い」を抱いていました。

「なぜ女性だけが家庭科の授業を受けなければならないのか。女の子だけがお嫁さんになると言われているようで、どうしても受け入れられませんでした」(ツノダ氏)

当時の公立中学校では、男子は「技術」、女子は「家庭科」と異なる授業を受けていましたが、ツノダ氏はそこに違和感を持ち、家庭科の授業には出席しませんでした。「社会の枠組みを変えたい、政治家になりたい」と思い図書館でずっと本を読んでいたことが、今のキャリアの原点のひとつです。その後も私立の高校に入学し、授業中にずっと編み物をする、大学に入るとサーフィンに夢中になり真っ黒になるほど海に通うなど、好きなものに没頭する毎日でした。

就活を忘れるほどサーフィンにのめり込んでしまったため、卒業後はアルバイト生活からのスタート。資格を取ろうとインテリアコーディネーターの専門学校に入学します。そこで、パースを書くことやコーディネートのコンセプトを考えることの楽しさに気づき、講師に自分を売り込んだのが25歳のとき。商業施設のコンセプト開発の仕事に就くことになりました。そこでは、サッカーW杯の招致活動支援や、大手鉄道会社のターミナル駅再開発コンセプトなど、スケールの大きい仕事に取り組む機会も数多くありました。

「やりたかった仕事がここにあった!と思い頑張ったところ、すぐに正社員になることができました。ほかにも、事務局を担当した『異業種研究会』で21世紀の暮らしや働き方を考える未来デザインの研究を行いました」(ツノダ氏)

ところが、企画開発室の室長にもなるなどやりがいを感じていたとき、バブル経済が崩壊します。大型開発の依頼が減る様子をみながら、ターゲットの反応がすぐにかえってくる開発スパンがより短い仕事をしたいと考えていたこともあり、29歳で独立。以来、会社の経営を続けています。途中4年間は中学生の頃の夢を叶えるため川崎市の市議会議員にもなりました。

「今の仕事は、社会環境分析、お客様のニーズを調べ、どんな人をターゲットにしてどんな売り方をすればいいかを考える実際のものづくりの手前部分をやっています。たとえば、10年以上にわたりヒットを続けている大手住宅メーカーの共働きファミリー向けの商品はゼロベースから3年かけてコンセプトをカタチにしていきました。このほかにもスイーツの大手ブランドのリニューアルにも関わるなど身近な企業とご一緒しています」(ツノダ氏)

日本で初めて「離婚見舞金」をもうける

「一緒に働く社員が心地良い会社を作りたい」という思いから、日本で初めて「離婚見舞金」制度を作りました。これは、ツノダ氏ご自身が離婚を経験したこともあり、離婚を「新しい人生を踏み出すため」と捉えた祝い金制度です。ほかにも離婚調停休暇や不妊治療休暇も就業規則に盛り込みました。生活関連の企業がクライアントの中心でもあることから、自ずと女性社員が多い会社になったこともあり、女性が働きやすい企業を目指しています。

起業においては、一緒に働く社員の集め方も重要です。採用活動はとても難しいもので、紹介、求人広告、派遣とさまざまな方法をとりいれましたが、こればかりは一緒に働いてみないと分かりません。いつしか「10人採用しても本当に相性がいい人は1人いるかどうか」と考えるようになりました。女性の場合は本人の意志があっても出産や配偶者の転勤など、ライフステージに合わせて変化が大きいことも特徴です。

「最初は友達同士で始めたとしても、ビジョンの違いや経営方針の違いによって方向性が変わることはあります。恐れずにいろんな人と出会い、一緒に働いてみて判断するとよいですね。」(ツノダ氏)

いただいた仕事に全力を尽くす

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起業をする上で欠かせないのがビジョンであり、会社を継続させるために重要なのが「時間×お金×仕事」という考え方です。創業者として、何を優先し、大事にしたいのかを考える必要があります。「子育ては譲れない」なら仕事を減らし、「年間売り上げを達成」ならば戦略的に仕事を選んでいく必要もあります。

また、お金に関しても、自己費用でまかなうか、借り入れが必要か、借り入れも公的なものか、投資や融資を受けるのか。赤字になったらどうするかまで考えておくべきだと言います。ツノダ氏も独立前は「自分ひとり分くらいは稼げるだろう」と思っていたものの、人件費や家賃など増えていく固定費の支払いは悩みどころでした。

また、ツノダ氏はお金の管理は税理士などプロの力も借りています。自分の得意に集中するために、不得意な分野は月数万円の経費をかけても支えてもらうべきと判断し、相性の合う人に出会うまでに担当者の変更も行いました。「外部で一緒に働く仲間を増やしながらチームを作っていくイメージ」として、自分はやるべきことに専念するのがコツです。

また、入ってくるお金を確保するための「営業」については、小さい会社では営業担当をおかずにいただいた仕事に全力で向き合うことが大事だと語ります。

「仕事には全力で対応し、クライアントが思っている以上の価値を提供すると『あそこに頼めばまちがいない』『面白いものを出してもらえる』と認めてもらい、紹介していただけるようになります。以前勤めていた会社からもお仕事をいただいています。目の前の仕事をとにかく一生懸命にやること、それが一番効率の良い営業なのかな、と思います」(ツノダ氏)

一歩を踏み出すということについては、「振り返ってみると、『そのときは自然にくる』と思います」というツノダ氏。踏み出さざるをえないくらいに気持ちが高まると「今しかない」という気持ちになるのでは、と語ります。

「海に突き落とされたら泳がないといけなくなるじゃないですか。海に落ちてからInstagramやYouTubeで検索したりしないですよね。なんとかしても生きなきゃ、と思うはず。仕事もそれと同様です。まずは一歩を踏み出してみると、さまざまな出会いが待っています。想像もしていなかった世界が一気に広がりますよ」(ツノダ氏)

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ツノダ氏の起業ストーリーの後は、参加者がそれぞれグループワークを通して感想のシェアを行いました。ワークのあとには、ツノダ氏へ様々な質問が投げかけられました。

▼「バイトから正社員、起業とキャリアを積み重ねたお話をもっとお伺いしたいです」(参加者)

「28歳から独立を考え初め、29歳で独立しました。理由としては2つあり、1つめは最初にお話した社会環境です。2つめは、いずれ30代で結婚・出産することになるだろうと考え、そのときは自分なりの時間の使い方で仕事と子育てを行いたいと思ったことです。ただ、実際に自分が社長になって38歳で出産したときは、出産当日も病室で打ち合わせを行っていました。社長は法律上、産休・育休がなかったんです。これは想定していませんでしたね」(ツノダ氏)

▼「独立前後の会社との関係性はどうでしたか?また、価格設定はどうしていますか」(参加者)

「元の会社は商業施設の企画会社、私のクライアントは消費財メーカーなので競合関係はありませんでした。起業当初は異業種交流で知り合った間接的なクライアントからお仕事をいただくことがありました。当然ではありますが、独立前にお話をすることはありませんでした。
価格設定は難しいですよね。自分が相手にどれだけの価値を与えられるのか、自分の時給はどれくらいなのだろうと考えることもヒントになります。私も形のあるものやパッケージ商材を売っているわけではないので、いまだに値付けには悩みますね」(ツノダ氏)

▼「離婚見舞金などの仕組みを作る上で、ツノダさんが働きやすさについて考えるヒントになったことはありますか?」(参加者)

「私の原動力は『内なる怒り』。中学時代から『なぜ女子だけ家庭科をやらなければならないの』と思っていました。中学時代は『家庭科』に押し込められる納得のいかなさに怒りを感じていましたし、既存の社会や生活の仕組みに対しての違和感もあります。わたしは特別な人間ではありません。自分が感じた違和感は100万人くらいの人も同じように思っているはず。それをより多くの人に新しい価値の提案として伝える方法を示したいです。内なる怒りは原動力にはなりますが、その表現の仕方には気をつけるようにしています」(ツノダ氏)

▼「自分自身の魅力・価値として意識していることはありましたか」(参加者)

「20代後半の頃、クライアントさんたちが社内で『ツノダさんって何歳だろう?』『40代前半じゃない?』という話をされていたそうです。それくらい図々しかったというか、自分の視点や発想には自信がありましたし、それをいかに相手に伝えるか、その努力もしました。自分の魅力や価値を掘り下げるのもよいですが、『絶対にこれを伝えたい』と思えるまで徹底的に考え、その伝え方を工夫してはいかがでしょうか」

▼「なぜ政治家の道に進み、ビジネスに戻られたのですか?」(参加者)

「やはり中学生のときの社会通念に対する怒りですね。社会の枠組みを変えたいという思いはずっとありました。『女性・子どもに優しい社会をつくる』は私の軸のひとつですが、政治もマーケティングもそこに根ざしています。議員を辞めた理由は、何を優先するかを考えて、悩んだ末に仕事を選びました。政治家としての手応えも感じ、成果も残せたと自負していますが、議員には地元でのさまざまなお付き合いも必要ですが、その時間がなかなかとれませんでした」(ツノダ氏)

▼「中学、高校、大学とそれぞれご自身で決めて選択されていましたが、ご家族や周りのサポートはいかがでしたか?」(参加者)

「両親からは口うるさく言われることなく、自由にさせてもらいました。中学生のときは人と違うことをしていましたが、それは私にとって譲れない大切なことでした。同級生とも仲良くしていたので、「そういう人だ」と思われていたのではないでしょうか。議会にいたときは「女性・子どもに優しい社会をつくる」のほかに「選択肢の多い社会をつくる」ことも訴えていました。画一的な枠に無理矢理押し込めるのではなく、一人ひとりの違いに寛容な大人でありたいと思いますが、実際に子育てをするとなるとその難しさを感じますね」(ツノダ氏)

起業へのわくわく感を味わって

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続いて、2018年から3年間取り組んできたプログラムの振り返りと今後の展望も含めて、エコッツェリア協会 プロデューサー・田口とツノダ氏のクロストークを行いました。

田口からは、ツノダ氏のターニングポイントとして「25歳のときの売り込み」を挙げました。ツノダ氏も「課題の発表内容には自信があったので、採用されるかもしれない、自分の提案内容を面白がってくれると思っていた」と笑いながら振り返ります。

今回のトークで最も印象的だったのが「怒り」のキーワード。田口からは「怒りは強いので原動力になりますが、それを起業や政治に転換する姿勢、負の感情を正に変えるのは性格なのか、どうすればいいのかなと気になりました」という質問がありました。

これに対して、ツノダ氏は「自分はすごく恵まれている、と感じています。今、この時代にこの国に生まれただけで99%ラッキーだと思います。この自分の幸運を、能力としてちゃんと使わないとばちが当たるような気がしていて、それが原動力になっています」と力強く答えました。

また、ツノダ氏の場合、起業の際にポイントとなる「誰に」「何を」という点が「生活関連のB2C」に「マーケティング」とはっきり定まっていると田口は言います。通常この2つの項目があいまいになっているケースが多いなかで、印象的だというのが田口の見解でした。

これに対しツノダ氏からは、商売として成立させるために、おのずとそれなりのB2Cの企業に目を向けるようになったと語ります。マーケティングについてはそれが自分の強みを活かせる圧倒的な得意分野であったため、他のことは一切考えていませんでした。起業後の採用については友人を採用したことはなく、仕事をする仲間として、あくまでも仕事ベースで考えていたと添えました。

クロストークの最後に、参加者に向けてのコメントをツノダ氏からいただきました。 「世の中の起業のハウツー本に従う必要はないです。わくわく感を存分に味わって踏み出せばいいんじゃないかなと思います。私も形から入るタイプなので、独立する前に会社のロゴなどを考えてわくわくしていました。はじめの一歩は本能と自分に正直になることなのだと思います」(ツノダ氏)

すでに「はじめの一歩」を踏み出している

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最後のワークでは、「気づきの振り返り」を行います。今回は「はじめの一歩を踏み出すには。」
全4回のプログラムの振り返りをまとめると自分のストーリーが浮かび上がる仕立てになっており、自分と向き合う機会も多かった参加者の皆さんは、すぐに鉛筆を走らせました。

プログラムに全て参加された、皆勤賞の方からもコメントをいただきました。
「私は、第1回の講師である戸沼さんが企画したフィンランドツアーにも参加しましたが、そこで感じたのは「自分の幸福感を大切にしている人」が多いということ。「あなたも大事、私も大事」という文化が伝わってきました。ツノダさんのお話にもあったように皆がもっと幸せになれるような社会にしていきたいと思っています。どのように起業するかはまだふわふわとしていますが、楽しいプログラムでした」(参加者)

第1回に登壇された戸沼如恵氏もオンラインで参加されており、「ツノダさんと共通する部分がたくさんありました。一歩踏み出す、勇気を振り絞るって大事ですよね。このプラットフォームを大事に温めて、語りあう時間にしたいです」とお話しいただきました。また、オンラインからナビゲーターを務めた大越氏からも「お二人のご経験についてお聞きしたように、起業の裏側を知る貴重な機会はとても参考となりました。これから楽しみだなと思っています」とエールがありました。

最後に、ツノダ氏からも「こうしよう、と決めなくても良いと思っています。すべての行動に無駄はないので安心してください。今回のようなイベントに来たいと思ったときにアンテナは動いており、すでに「はじめの一歩」を踏み出しています。今気がつかなくても後から振り返ったときに「既に始まっていたんだ」と思えるはず。がんばってください」という応援の言葉があり、全4回に渡るプログラムは締めくくられました。

起業ストーリーのほか、仕事と家庭の両立や、地域活動とのバランスなどさまざまな角度から起業・創業について考えるきっかけとなった本プログラム。会場からは「やりたいことが固まった」「次に向けて動き出したい」という声もありました。参加された皆さんのこれからの活躍が期待されます。

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