シリーズコラム

【さんさん対談】小林市が地方創生で元気なわけ

宮崎県小林市 肥後正弘市長×エコッツェリア協会 田口真司氏

フランス語のような西諸弁のCM「ンダモシタン小林」で、広告業界と地方創生業界を席巻した宮崎県小林市。エコッツェリア協会との関わりは、2015年10月にNTTデータと小林市がタッグを組んだアイデアソンイベントを3×3Labo(日本ビル時代)で開催したことに始まります。以来、"地方創生のトップランナー"たる小林市とさまざまなイベントを開催。直近では、初のプレミアムフライデーの2月24日に小林市特産の牛肉を食べつくす贅沢すぎるグルメイベント「宮崎牛の肉祭りナイト」を実施、肉ラバーの爆発的な人気を集めました。

そのどんな場にも必ず顔を出し、ときには手ずから肉を焼いたり「がね」(さつまいもの天ぷらのようなものでこの地域の郷土食として親しまれている)を揚げたり、市長とは思えないフットワークの軽さで場を和ませているのが、肥後正弘市長です。さんさん対談シリーズ、2016年度の最終回は、この肥後市長にお話を伺います。もはや「地方創生」の文脈を超えて、都市と地方の新たな関係を模索する時代になった今、エコッツェリア協会にとって小林市はそのもっとも大きな試金石のひとつとも言えるでしょう。今後「地方」はどちらへ向かうのか、そしてそのとき「都市」はどう関わるべきなのか。

いつもは東京・3×3Lab Futureでお会いするばかりの肥後市長でしたが、今回は市長のホーム、小林市を訪ねてお話を伺いました。

今回のインタビュー対談は、小林市にて実施された。これに伴い、インタビュー前日および当日の午前中は小林市の観光ポイントや諸施設を見学させていただいている。2日目は肥後市長の案内で小林市をまわり、より深い理解を得られた。インタビュー記事の合間では、それら見学・視察のひとこまなども織り込んでいく。

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「ンダモシタン小林」の意義

「ンダモシタン小林」の意義

田口 今回は小林市のいろいろなところを拝見して、やはり現地に来ることの大切さを教えられています。土と水の良さ、そして市長がおっしゃる「人」の良さ、それから現地ならではの空気感。肥後市長がぜひ来るようお誘いくださったのがよく分かりました。

そうしたことを踏まえて、今日はいろいろ伺いたいと思いますが、まずはやはり、そもそものきっかけになった「ンダモシタン小林」のCM動画のことからお聞きしていきたいんですね。そもそも、あのCM動画を作ろうと思い立ったきっかけは何だったんでしょうか。

(写真上)小林市はチョウザメの産地としても有名。30年前に養殖技術を確立し、キャビアの生産も手掛ける。3年まで市で育て、養殖業者に販売する。産卵は7年目以降。現在市内の養殖業者は7軒ほど。(写真中)陰陽石は、小林市の名所。驚くほど市街地から近い。(写真下)ナチュラルチーズで全国的にも有名な「ダイワファーム」は、店舗に畜舎が隣接され、ホルスタインやブラウン・スイスがくつろいでいる姿を見ることができる肥後 私は平成22年に市長になって現在2期目なんですが、市長になったときに、企業訪問や、東京も含めてあちこちいろいろ行くのですけど、そのときにですね、小林市のことを説明するだけでものすごく苦労するんですよ。どこにあるのか誰も知らない市で、何があるのかも分からない。そこで市を紹介する動画を作ろうと予算を組んで始めたわけなんですけど、振られた職員も大変だったろうと思います。

どうしたらいいか全然分からず、模索を繰り返すうちに、たまたま小林市出身者の越智さん(越智一仁氏。電通クリエイティブ・ディレクター)という方が電通にいることが分かって、アドバイスを求めに行ったら、そのうち電通さんのほうで「じゃあこちらで作りましょうか」ということになった。小林市出身で隅々まで知っている人だったので、これはもう渡りに船とばかりにお願いしてしまいました。

ちょうどそのときに西諸弁を標準語にしようという「てなんど小林プロジェクト」も始まっていましてね、ポスターも作っていた。西諸弁がフランス語に似てるなんて話を電通の越智さんにしたら、それでいこうということになって......

田口 西諸弁がフランス語に似てるというのはそんなに昔から言われてたんですか。

肥後 そうですね、言われてました。それで作られたあの2分ほどのCM動画がものすごい効果を生むことになったわけなんです。

田口 期待どおりの効果ですか。

肥後 いやもうとんでもない効果で、予想以上です。CM動画完成の打ち上げのときには「何か総務省から賞状でももらえたらいいね」なんて冗談を言って笑っていたのですが、放送賞やCMの賞を本当にたくさんいただくことになってしまって。

田口 それが小林市内でも市外でも、小林市の魅力の再発見につながったということですか。

(写真上)すき酒造は黒瀬杜氏の流れを汲む内嶋光雄杜氏がユニークな焼酎を生み出し続けている。ここで宮崎、小林市の焼酎造りの奥深さを知る。"はなたれの魔法"(はなたれを1滴入れるだけで焼酎の味が変わる)は酒好きにはぜひ味わってほしい試飲スタイル。(写真中)小野湖に落ちる「ままこ滝」。かなりの水量がある、かなり大きな滝。小野湖はレガッタ等ボート競技の会場として整備が進められている。(写真下)須木にある古民家を利用した宿泊施設「かるかや」。名産の栗の名前を付けられた民家が4棟、宿泊で利用できる。辺りには何もない。「静かすぎて怖いくらい」だそうである。星ももちろん良く見える肥後 実は市内の人は、あまりyoutubeを見ないものですから、最初は都会から来た人たちに逆に教えられたり、あとはテレビで取り上げられてですよね。だんだん市民の間でも知られるようになって、本当に、まちが明るくなったんですよ。これが一番大きい。

田口 なるほど、愛郷心があっても、引け目に感じることが多いですものね。それがなくなったと?

肥後 ええ。特に外ですよね。小林市出身者の方々、普段は西諸弁は恥ずかしくて使えないけど、「市長、CM動画のおかげで話せるようになったんですよ!」とおっしゃってくれる方々がいましてね。そういうことが本当に大切なんだと思います。

田口 今では動画も増えてきていますが、どのようなコンセプトでやられてるんですか。

肥後 これまでは小林市を紹介するというムービーでしたが、これからは、小林市はこんなことやっていますよということを知らせ、案内する方向へシフトしようと思っています。1本目があまりにもヒットしすぎてしまったので、同じことをやっていてはいつまでたっても超えられない。第2弾と第5弾は高校生主体で作っていて、第5弾の「サバイバル下校」も16万PVを超えました。

田口 高校生が作るというのもすごいですよね。

肥後 高校生はやはり感性が豊かで良い。一番いいのは、自分たちが住んでいる場所の魅力や資源を自分たちで見直す力をつけたことです。あ、小林市、こんないいところあるんだ、と高校生自身で気づいてくれる。

お互いに支え認め合う「市民」と「市長」

小林市の見どころを現場をまわって案内してくださった市長(右)

田口 地方へはよく行きますが、地元の方々って「ここすごいですね!」と言っても「いや大したことないです」「普通だから」と、あまり資源として見ることがないですよね。やはり外部の視点が入ると変わるんでしょう。

それで、もうひとつお聞きしたかったのが「熱中小学校」のことなんです。

肥後 CM動画は地方創生の一環で仕掛けましたが、この先地方創生は人材育成になっていくと思っていまして、熱中小学校が人材育成とともに交流人口を増やしましょうという全国的な取り組みだったので、これは素晴らしい、と手を挙げた。大人になっても7歳の目で世界を見直しませんかというのがいいですね。

田口 いわゆる社会人向けの学校として?

肥後 ええ。年代も関係なく、若い人でも80歳でも。内容も芸術、科学、数学と本当に多様なものが揃っていて、講師も130人以上。水谷豊さんが主演のドラマ『熱中時代』のロケ地になった学校が廃校になる際に、何かをやろうと山形県高畠町で始まったものなんですが、起業を促す授業もあるし、交流人口も増えそうですし、小林市からも何か発信できたらと考えているんです。例えばですけど、熱中小学校は本校含めて、全国で9カ所(準備中含む)あるんですが、その9自治体で集まって物販でも交流でもいいんですけど、何かイベントできないかなとか。そういうのが自然に始まるといいなーと思ってるんです。

田口 ああ、それいいですね。3×3Lab Futureで出来たらいいなあ。

肥後 それはやらせてほしいです、ぜひ(笑)。開講は4月なので、ぜひまたご相談させてください。

田口 そういう活動が、ビジネスも含めて地元によい効果をもたらしていると思うんです。活性化して市民もそれを感じて、アクティブになっていくように思うんですがいかがですか。

肥後 その通りですね。市長になって、中心市街地の疲弊が著しかったので「中心市街地活性化基本計画」を作成し、まずは市内の"建て替え"をしようということになったんですね。倒産した大型店舗を市で買い取って、土地は官が提供するから、企画と再生は民間でやってくれと言ったら、民間で「まちづくり株式会社」が立ち上がって、市民主体であっという間に資金も集めて動き始めてる。今、本当に「まちをなんとかしなくちゃ!」という思いを持つ人たちが増えてきていて、こんなに素晴らしいことはないと思います。駅舎も建て替えがあって、にぎわい創出のための交流センターにしようという話が持ち上がっていますが、これも市民とともに進めています。

田口 まさに市民のみなさんそれぞれが、自分たちで考え、動いていく。ムービーはそのきっかけになったということですね。それにつけても思うのが、市長がきちんと"前"に出てきてくれていること。

(写真上)ひなもりオートキャンプ場は、西日本のキャンパーの間ではかなり有名なスポット。イベントも多数開催されているほか、ランニングの合宿地にもなるなど、資源利用の幅は広そう。(写真下)霧島岑神社は式内社との説もある古い神社。「霧島六社権現」のひとつにして中心でもある。古い信仰の形質をよく残す神社と思われる肥後 うーん、自分では前に出てるつもりはないんですが(笑)。

田口 肥後市長は「俺についてこい!」というタイプの出方じゃないんです。ちゃんと市民のみなさんを立てるかたちで市長がお話しになっている。

肥後 もともと私はあまり前に出るタイプじゃないんですよ。どちらかといえば後ろから支えるタイプというか。そんな私だから、職員や市民の方々が、それぞれの立場から支えてくれている。それで私が前に出ているように見えるのかもしれないですね。

田口 もともと市職員のご出身で福祉や財務、本当に裏方をやってこられたわけですよね。市長になってギャップもあったのではないですか。

肥後 ありましたよ~。選挙に出るときだって、市長なんてとんでもないと思っていたのですが、市民のみなさんの後押しで出ざるを得なくなってしまって(笑)。ただ、行政出身であったことが良かったという面はあります。昔の地方行政は、国や県に依存している分、国・県の主導で物事が進められ、やりたいことができなかった。しかし、それが地方分権の動きで変わり、やりたいことができるようになったんです。

私が常々思っていたのが、地方自治体もひとつの団体だということ。一つの団体であり、市民一人ひとりが参画する中で、まちづくりをしないといけない。それが地方自治法なんですから。そんな思いがあって、市民のみなさんとまちづくりをしていこうという考えがずっとあって、市民協働のまちづくりを絶対にやろうと決めていました。だから市長になってすぐに市民目線で職員改革をして、市民の中に入って話を聞いて、改革を進めるようになりました。

田口 市長の個人的なこともお聞きしたいんですよね。市長って子どものころはどんな感じだったんですか。

肥後 おとなしい......タイプだったと思います。スポーツは好きでしたけど、表に出るのは嫌いで、誰かリーダーがいて、自分は影から操る(笑)というか、サポートする役目をするほうが好きだった。

あとは勉強が嫌いで、もうちょっと勉強しておけば良かったとそればかりはちょっと後悔してるんですけど、ただ今も昔も好奇心だけは旺盛で、いろんなことに興味を持ちますね。

田口 表には出ずに、でも市民や職員のみなさんからは支えてもらってる。これは信頼の裏返しということですよね。

肥後 うーん、だったらいいんですけど、どうかなあ(笑)。ただね、すごく出会いに恵まれているとは思います。いろんな人たちに出会って、その人たちからアドバイスをもらって、支えてもらってる。NTTデータのみなさんだって、ANA総研のみなさんも、エコッツェリア協会のみなさんもそうじゃないですか。出会いに恵まれて、支えてもらえて、本当に私は幸せだと思います。

田口 でもそれは市長が支えたいという思いにさせる人だからだと思いますよ。そういう人間になる秘訣って何だと思います?

肥後 いやー、ただ要領が悪いだけですよ。新しいものは何でも興味もって、人の意見を聞いて、それはすごい、やったらいいことあるかもしれないと思うと本当にやってみたくなってしまう(笑)。ただ、飛び込む力はあるのかなと思います。市の職員の意識改革に必要だと思えば、北川正恭さん(元三重県知事)のところへ押しかけて教えを請うたりしている。

市民会議から"オール小林市"へ

田口 市のマネジメントと外への発信というか、市の内外のバランスを取るのが難しそうですね。

(写真上)2017年6月竣工予定の新庁舎も見せていただいた。後ろは1階のピロティに面した壁。県産材のスギを構造材として使いながら、意匠的に組み合わせて、見せるようにしてある。大規模な公共施設に木造3階建ては珍しい。できあがりが楽しみな建物。(写真下)議場の天井も細かく組んだスギ材。非常に美しい仕上がり肥後 そこは市長としての難しさですね。いかにして内部統制するか――職員に対しては研修、市民には機運の醸成をどう進めるのか。そこが難しかった。だから市長1期目はまず市民会議を作って、市民の目から行政を変え、参画するためのソフト面を整える一方で、財政の見直しと安定化を図り、2期目になったら、やりたいことが自由にできる体制を整えていったんです。

田口 なるほど、1期目は内を固めて、2期目に「行くぞ!」と。市民会議のお話がありましたが、それはどういうものですか。

肥後 副市長時代に、すでにもうこんな小さな自治体は官民が一緒にやらなければダメだと思っていたんです。だから市民参加型の政治をやろうやろうとずっと思っていた。それで1期目に、各地区、中学校単位で市民会議を立ち上げて、市民と一緒に考える体制を作ろうとしたんです。

最初はうまくいきませんでしたよ。「行政が市民に丸投げしてる」「何を馬鹿なこと言ってるんだ」と言われましたしね。でも、うちは合併自治体であり、都市部もあれば農村部もある。思いが違うから、それぞれのいいたいことも違う。それを地域ごとに出していかないと、市として動くことなんてできないんです。だから地域ごとに市民会議と地域のまちづくり協議会を立ち上げて、それが地域の新たなコミュニティとなって、稼働しはじめている。

これがうまく回り始めると、市民一人ひとりがみんな主役になって、地域のことを考えて、それがやがて市の動きへとつながって、じゃあ小林市としてこうしよう!となる。これが本当の地方創生なんじゃないかと思いました。今は、そういう市民の方が増えて、いろいろな団体が一致団結して"オール小林"体制によるまちづくりが加速しています。

外部交流の重要性

「ンダモシタン小林」が受賞した数々の賞状、トロフィーたち

田口 なるほど、外から見ると、「地域」というのは実はあまり良く分からない。そこをちゃんとコミュニティ化していくことに、地方創生のポイントがあるんですね。

そこで転じてお聞きしたいのが、「外」とのつながり。いろいろな企業の方、あるいは私たちと、こうやって「お付き合い」があり「つながり」がありますが、それは小林市に役に立っているんでしょうか。

肥後 それはもうすっごく大事です。いろいろな人との出会いが全部、私の支えになるしアドバイスもいただける。CM動画のヒットが多くのつながりをもたらしてくれましたが、3×3Lab Futureでもすごく多くの出会いをいただいています。逆にすごいですよね、あそこは。首長はね、ああいうところをもっと活かしていかないといけない。誰かしらに出会えて、しかもまたアドバイスをいただけるんですから。非常に恵まれているしありがたいと思っています。

田口 私たちもいろいろな自治体とつながって、一緒に成長していきたいと思ってるんです。

トマト農家の「OGAWA FARM」を訪ねる。日本橋三越で固定ファンのいる、確かな味と品質で知られる。「アイコ」一本で勝負しているが、来年以降は新たな品種にも挑戦したいとのこと。Uターン農家で、「トマトは止めたほうが」と言われたにも関わらず、貫いて成功している。まず地元に愛されることを大切にしており、地元小学校の給食へ提供したりもしている 肥後 私は思い描いている夢があるんです。都会のコミュニティと田舎のコミュニティがコラボできるようになってほしい。これがうまく回り始めたら、漠然としているけど、地方創生なんてすぐうまく行くように思っています。今、3×3Lab Futureとのお付き合いがありますけど、こういう動きが、全国の自治体にも広まって、地方と都市の交流が拡大することにすごく期待しています。

田口 なるほど、地方が他の地方、都市と結びついて、その結果が市民にフィードバックされることで、また、まちづくりに活かされて、市民と一緒に考える。その繰り返しの運動を作ることがまちづくりを進めるコツですね。

都市とのお付き合いというと、都会の企業、オフィスで働くワーカーと2つあると思うんですが、それぞれについてどんなことを期待したいですか。

肥後 企業には、今盛んな「企業が取り組む地方創生」という視点から小林市を見ていただければと思いますし、個人のみなさんには、まず小林市に来ていただくことかな。ちょっと疲れたな、仕事キツイなと思ったら、1カ月、いか1週間小林市に来ていただければと。本当に小林市は人が住みやすいところなんです。いい水があり、いい空気があり、おいしい野菜があって肉がある。ここにくれば元気になれますというのをもっと伝えたい。

田口 僕も2日目ですけど、元気になりましたもんね。

肥後 そうそう、そういうことできたらいいなと思っています。

変わるべきこと、残すべきもの

田口 外とのコミュニケーションについては、都市部と地方ではひとつ壁がありますよね。私も田舎出身なので都会の人って怖いという印象があるのがすごくよく分かる。東京から来ましたなんて言うと身構えられてしまって。だから早いうちから交流しておくことが重要なんじゃないかと思うんです。肥後市長も東京での生活のご経験ありますよね?

肥後 大学の4年間東京で、その後も就職決まってたんですけど、小林市に戻ってきてしまった(笑)。長男ということもありましたけど、やっぱり小林市が好きでしたから。でも、たしかに一度外に出て、東京から小林市を見たから魅力を再確認して、好きになったんだと思います。今の若い人にも出ていくな、とは言わない。むしろ出て外から小林市を見たほうがいい。ただ、その後、ちゃんと戻ってきてねと(笑)。

田口 そういうコミュニケーションの一環で、3×3Lab Futureと、今度新しくできる駅の交流センターをモニターでつないでおくのも面白いかもしれません。つなぎっぱなしにしておけば、帰りの高校生たちが、東京の人たちと会話して慣れることができるかもしれませんし。いかがですか。

肥後 いいですね、ぜひやりましょう(笑)。

田口 こうやって、とても大きく変わりつつある小林市だと思うのですが、逆に残したいものって何でしょうか。変わりたくない、次の世代に残したいものは。

肥後 それはまず歴史文化。地方では失われてしまった郷土芸能がありますが、市民会議、まちづくり協議会のおかげで復活させようという意見も出ています。

JAこばやしが運営する「百笑村」は、地元産品が多く揃う。野菜が豊かで、「なにはなくとも食べていくことだけはできる」と言われる土地柄で、そのためか非常にこの地の人はのんびりで欲がないとも言われているそして、自然です。せっかくある自然を壊しちゃいけない。この点は本当に市民のみなさんに感謝しないといけません。全市で今食べ物の残滓はきちんとすべて水切りし、畜産し尿とまぜて堆肥化して土に還元している。燃やしている食物残滓は一切ありません。分別も実に細かく、厳しく決められていますが、それもきちんとやっている、全国でも有数の循環型エコタウンを実現しています。

水資源の重要性も、市民のみなさんが理解してくれていて、外国資本が水源地を購入しようとしたことがありましたが、次の世代にきちんと残そう、と売られずに済んだということもありました。平成23年には「小林市水資源保護条例」を制定して水資源の保全を図っています。自然や里山をきちんと残したうえで、経済活動も向上させ、地産地消も含めて地域を活性化させる仕組みを作ることができたら、本当に住みやすいまちになると思います。

田口 では最後の質問ですが、全国各地の自治体、課題があって、何が問題なのかも分かっているのに、中で考えているだけでなかなか一歩踏み出せないところが多いと思います。小林市は、その点トップランナーとして走り続けている。何が違うんでしょうか。

肥後 トップランナーなんでしょうか。そこは分かりませんが、ひとつ言えるのは私が行政出身であることの強みがあることです。民間と行政で一番違う予算の考え方やスケジュール感のことが、行政出身だからよく分かるし、行政に欠けていて、民間の力が必要なところがどこかもよく分かる。

あとは、途中にもありましたが「つながり」ですよね。外とつながることで、地方はどんどん変わっていく。私が職員のやる気を引き出すためにやるのは、やはり外へ連れていくこと。3×3Lab Futureのようなところに連れていけば、刺激を受けて、あとは勝手に自分たちでやる気を出して、やりたいことを考えるようになるんです。

3×3Lab Futureにはいつもお世話になってばかりで、私の活力源(笑)。これからもぜひ3×3Lab Futureにうかがって、いろいろな機会を設けたい。そしていろいろな人と会話して、みなさんの活力を吸い取らせていただければと思っています(笑)。

肥後正弘(ひご・まさひろ)
宮崎県小林市長

昭和20年生まれ。大学卒業後、旧小林市役所に入庁。福祉事務所長、財政課長等を歴任。平成15年同市収入役(平成18年合併後改めて収入役に就任)、平成19年副市長。平成22年の市長選挙に出馬し当選。現在2期目を務める。市職員時代は非常に厳しいことで庁内でも有名だったが、市長になってからは職員のやる気を引き出すマネジメントに注力している。仕掛けた小林市プロモーションムービー「ンダモシタン小林」はCM・広告関連の賞を総ナメにした。都市部へのプロモーションにも力を入れており、市長自らが講演ばかりか、さまざまな実演も厭わないことでも有名。


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