シリーズコラム 「Viva Málaga!」
エコッツェリア協会にアスリートインターンとして活動し、その後スペインのマラガを拠点にフットサル選手として活動しながら、フリーランスとして様々な国で事業開発に携わる吉林千景氏がアンダルシア・マラガを紹介していきます。
第2回の今回は、マラガ近郊に広がる大きな港とこのエリアのまちづくりについて。まだあまり知られていないマラガの港やマルベーリャというスペインの中でも異色のエリアをご紹介していきます。
アンダルシアの玄関口と呼ばれるマラガには、実は、空港だけでなく貿易港もあり、ヨーロッパ大陸最南端の船の玄関口としての役割も担っています。スペイン南部の貿易ハブとして、地中海地域の他の港と連携しながら、スペインおよび欧州各地との貿易活動を行い、コンテナ輸送や貨物輸送に重宝されています。
マラガ市街地と隣接した港は、マラガに訪れた人であれば必ず一度は目にするほど、観光地としても人気があるエリアです。世界を周遊しているクルーズ船の停泊港となっており、大型クルーズ船が同時に3隻停泊していた際はかなりの迫力がありました。また、夏になると多くのヨットが世界中から集い、それぞれのヨットが掲げる国旗を見ながらの散歩は時間もとても素敵な時間です。
日本に続々と入ってくるマラガ発のオリーブオイル、豚肉など
ここ数年、日本帰国時にスーパーやデパートでマラガ産の商品を、特にマラガ産や近隣のハエン産のオリーブオイルを目にする機会が増えました。
実は、アンダルシア貿易において、日本は優先国と定められているそうで、1997 年以来、ブリュッセルと並んで初の事業推進室が設置されています。その結果、現在日本では、多くのアンダルシア産の商品が輸入され、国内のスーパーなどで手軽に購入することができるようになっています。
統計*からもアンダルシアから日本への農産物輸出額の増加を確認することができます。2024年9月までの半年間で9,300万ユーロ(約146億4,750万円)を超えました。輸入される食品は多岐にわたりますが、オリーブオイルが突出した形でリードし、対日売上高全体の64%にあたる6,000万ユーロを前期比13.5%の伸びで記録しています。第2位の食肉・食用くず肉はほぼ横ばいですが、次いで第3位の魚介類・甲殻類の売上高は820万ユーロ、前期比147%増となっています。 4位は飲料、アルコール飲料、酢、売上高210万ユーロ、前期比31%増です。
ちなみに現地の家庭ではオリーブオイルへのこだわりが強く、贔屓の生産者のものを何年も続けて購入しているという家庭も多いようです。日本人がお米の種類にこだわるような感覚ですね(笑)余談ではありますが、マラガでは「Sabor a Málaga」(サボール ア マラガ)というイベントが定期的に行われ、地域の農家やショップがオリジナルの商品をそこで販売しています。
クリスマスシーズンにはマラガ港に隣接した公園で大きなイベントが開催されます。私が現地で訪れた2023年のクリスマスイベントでは、オリーブオイル、生ハムを出店しているメーカーが多く見られました。おそらく、ここで人気を博した商品などを世界のバイヤーが発見し、このマラガ港から輸出されていくのですね。もしかしたら、日本からのバイヤーさんもいたのかもしれません。
さて、このようにマラガ産の品々が世界へ広がっていきますが、逆に、スペインらしいビーチ、気候、文化、ブランドとコラボレーションしたショップなど、世界中の人々を惹きつけている大注目のエリアをご紹介したいと思います。
次にご紹介するのは、Marbellaというエリア。どこかホッとできるスペインの雰囲気を楽しめることで知られるこのエリアは、行政なども積極的に関わりスポーツと密接なライフスタイルを実現するまちづくりが行われています。最近注目されているのは、テニスプレーヤーが現在建設しているテニス&パデル施設です。テニスコート12面、パデルコート9面に加え、3,000人の観客を収容できるメインのコートも備えられるそうです。さらに、2030年にスペイン・ポルトガル・モロッコの共同開催が予定されているサッカーW杯では、マラガにあるサッカー施設「La Rosaleda」が試合会場の候補地になっています。他にも、マラガ近郊の海岸沿いの港は再開発が進み、ランニングや散歩などがしやすいように遊歩道が整備されたり、ビーチスポーツのエリアが確保されたりするなど多様な取り組みが進んでいます。
そんなMarbellaですが、夏は特別な季節です。世界中から多くの観光客が訪れ、多国籍な様相はまさに異世界。一般的なスペインの雰囲気を期待すると、良くも悪くも裏切られます(笑)。スペインでは、英語が通じにくいエリアもあると耳にしますが、このエリアは英語だけでも問題なく楽しめます。世界トップレベルの政治家、俳優、タレント、サッカー選手などがこぞって別荘を所有していることでも有名で、特に、UAE、ロンドン、アメリカとの結びつきが強く、それらの国との人・モノ・サービスの動きが多くみられます。
そして、このエリアの地元民の間で絶えない話題は、なんと言っても不動産です。その魅力的な環境と生活の質の高さから、不動産開発が活発に進み、特にマラガとマルベーリャでは、地中海の美しい景観を活かした高級リゾートや住宅地の開発が進んでいます。多くの投資家や国際的な不動産開発業者が、この地域のポテンシャルを高く評価し、プロジェクト展開を積極的に進めています。
そこで、今回はマルベーリャの不動産開発と投資について、現地で実際に様々な不動産ビジネスに携わっている弁護士のラファエル・ロドリゲス・ロブレス氏にお話を伺いました。
世界から熱視線 勢いづく不動産投資
ラファエル氏は、マルベーリャが世界中の投資家を引き寄せる要因に、ビーチをはじめとした美しい景色と優れた立地を魅力に挙げました。温暖な気候やライフスタイル、各種の高品質なサービスはもちろんのこと、マラガ国際空港にも近い点も含めて良好な交通インフラなどが揃っています。
他にも、豊かな文化が根付いており、劇場や美術館も多く、年間を通じて行われるフェスティバルが充実しています。美食家にとってこの都市は天国。著名なシェフによる独自の料理や、多彩な国際料理が楽しめます。ショッピングが好きな方も、マルベーリャには世界的に有名なデザイナーブティックや限定ショップが数多く存在し、最新のトレンドや高級品にも出会え、満足すること間違いないでしょう。プエルトバヌス(Puerto Banús)というエリアは、マルべーリャの中でも人気のあるエリアで、白い街並みと数々のブランドがうまくコラボし、とても印象的です。また、ゴルフやスパなども充実しており、世界トップレベルのゴルフコースが人気です。
マルベーリャは高級不動産投資として、地位を獲得しています。
データによると、2023年6月から2024年6月の間にマルベーリャの全カテゴリーの販売価格が平均13.7%上昇し、不動産では新記録となる4,812ユーロ/㎡に達しました。これは前年の平方メートルあたりの平均販売価格の2倍以上です。2023年の不動産売上は2019年のパンデミック前と比較して12.3%の増加、地域的には24.55%の増加を記録しました。特に2022年の売上回復は、過去の記録をすべて上回り、COVIDの規制で抑えられていた需要が一気に表れた形です。
マルベーリャはヨーロッパでも最もエクスクルーシブなエリアのひとつとして、その評判を確立しているとも、ロドリゲス氏は語りました。高級不動産の需要はますます増加し、特に最新の建築技術を取り入れた現代建築の物件は、最高の設備やサービスを求める世界の人々を魅了しています。この傾向は今後も続くと予想されており、投資先として非常に有望だと言えます。最後に、日本の建築はとてもレベルが高く、ホテルなどの外装、内装、そしてサービスも素晴らしいので、今後、マルベーリャの海や山といった風景の中に、日本の特徴的なデザインのホテルや不動産が建設されたりすると、人気が出るだろうとも述べていました。
今回は、港、料理(食品)、スポーツをポイントにお伝えしました。マラガとマルベーリャは単なる観光地を超えて、質の高いライフスタイルを提供する地域としてますます注目され不動産価値が向上しています。個人的には、将来さらに発展が期待されるこのエリアは、日本の皆さんにとっても新たな可能性を秘めている場所だと思います。今後のマラガ、マルベーリャと日本の交流から目が離せませんね。
次回は、『ヨーロッパのシリコンバレー』と題し、続々とこれまでなかったジャンルの企業が進出してきているマラガの一面をお伝えします。IT関連の企業が集まるエリア「パルケテクノロヒコ」も紹介します。ぜひ、お楽しみに!
東京都出身。スペイン・マラガ在住。2016年慶應義塾大学総合政策学部卒。2011年よりフットサル女子日本代表選手として活躍し、2023-2024シーズンは、スペイン女子フットサル1部リーグ「Nueces de Ronda Atlético Torcal」でプロ選手として活躍するなど、世界を舞台に戦う。
帰国時にエコッツェリア協会でのアスリートインターンやWebライターとしての活動経験がある。引き続き世界の舞台で戦うために第一線で競技に励みながら、デュアルキャリアの実践として日本とヨーロッパの架け橋となる事業開発に取り組むなど、競技以外の活動にも力を入れている。