シリーズSHAREISM

【 SHAREISM Vol.5 】A pioneer's Talk:カフェ・カンパニー株式会社 楠本 修二郎

化学反応がもたらす新しいコミュニティづくり。

カフェを"みんなが集まるコミュニティの場"と位置づけ
人と人のつながりをデザインするカフェ経営者のチャレンジとは

必然的な出会いに支えられて

「僕の東京デビューは、六本木の交差点にあるMr.JAMESというブルースのライブハウスで、バーテンダーとしてアルバイトしたこと」と、懐かしそうに話す楠本修二郎氏。渋谷界隈で人気を集めるキャットストリート※の開発を手掛け、「WIRED CAFE」や「246 CAFE<>BOOK」など話題性が高く、地域に適したコミュニティの場を次々と作り上げるカフェ・カンパニー株式会社のトップだ。大学進学のため上京した夜に、たまたま訪れた店のオーナーに誘われ、アルバイトを開始。六本木のアンダーグラウンドな世界に、自分の居場所をみつけ、学園祭やライブハウスのイベント企画などに没頭した。社会人になった後も、その時に出会った様々な人に支えられたと言う。

「キャットストリートの開発は今の僕の原点。街の活性化を狙って、アパートの一室を改装したカフェの成功が大きな転機。それが東急電鉄さんの目にとまり新規事業への参加へ。そしてWIRED CAFE をはじめとしたカフェの開業につながっていきました」

楠本氏の行動の原点にはいつも偶発的な出会いがあった。しかしそれは、常日頃から楠本氏の抱く「想い」がもたらした必然性のある出会いだったとも言える。

※キャットストリート...90年代につくられた、宮下公園前から表参道につながる遊歩道。カフェやアパレルショップなどが建ち並ぶ。

コミュニティの三段活用

楠本氏のカフェづくりのテーマは「Community AccessFor Everyone=CAFE」。コーヒーショップであるのはもちろんだが、カフェ= 新たなコミュニティを生み出す場という「想い」がある。

「"コミュニティの三段活用"と呼んでいるのですが、カフェは、地域・センス・ビジネス、それぞれのコミュニティをミックスできる場所。僕はいつも頭の中で『人と人のつながり』を妄想しながら場づくりを考えています。ライフスタイルや世代が異なる者同士が、カフェという場では"混ぜこぜ"になって、それぞれの感性や価値観が共鳴し合う。そういう異質な出会いが化学反応を起こし、新しいコミュニティを生み出す」

必ずしも思い描いていた通りの化学反応ではない時もあるが、逆にそこに大きなヒントがあると言う。

「『失敗から学べ』とよく言われますが、『成功から学ぶ』ことを皆さんはしていないのでは?予想に反する化学反応は、時には思いがけない成功だったりもする。『たくさんのお客様が来てくれて良かったね』ではなく、『どうしてこのつながりができたんだろう』と興味を持って探っていくと、そこには新しい何かが生まれていたりするんです」

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変化してつながっていく

変化してつながっていく

予想外の化学反応は、楠本氏自身にも大きな刺激を与え、新しいコミュニティづくりや企画のアイデアをもたらしている。近年の代表的な例の一つが、カフェとアウトドアフィットネスを融合させた、代々木の「WIRED CAFE<>FIT」だろう。

「お客様から学ぶことは本当に多くて、それによって僕もかなり変化していると思うんです。カフェと音楽のコラボレーションは定番になりましたが、カフェ×スポーツ、カフェ×地域、カフェ×農業などといった掛け合わせにより、新しいライフスタイルを創造、提案していきたいという想いがあります。それによってカフェに関わる人の幸せをデザインできれば最高です。本業としてのカフェの運営とライフスタイル発信、自分の変化が絡み合って"新しい何か"が生まれる。そこから僕は多くを学び新たなチャレンジに踏み出せるんです」

カフェという場の持つ可能性を広げ、人と人の新しいつながりをデザインする楠本氏の挑戦。人と街、社会を元気にする大きな推進力であることは間違いないだろう。


今回の取材が行われたのは、丸の内の仲通りに位置する、「CAFE SALVADOR丸の内店」。
「丸の内はビジネスマンやOLさんが集まる、まさに"ON"な街。だからこそ、丸の内のサードプレイス的な存在を意識して、"ON"と"OFF"の狭間にあるような場づくりを心掛けています」と楠本氏。地域の環境や特性を見極め、必要とされる"場"を提供している。

CAFE SALVADORの一角には、人と人が向かい合わないように置かれたソファーとテーブルがある。
「仕事で利用されるビジネスマンも多い。対面して座ると、どうしても会議のようなミーティングになってしまう。45度の位置関係だからこそ弾む会話や、雑談から生まれるアイデアがあるはずなんです」と楠本氏。カフェ・カンパニーの社内でも「会話をしながら意思決定を行うことがベター」といつも話しているそうだ。

CAFE SALVADORの店内では、『VOGUE JAPAN 』『GQ JAPAN 』『WIRED』などの雑誌を自由に読むことができる。最新刊はもちろんバックナンバーもずらりと揃う。

楠本 修二郎(くすもと しゅうじろう)

大学卒業後、リクルートコスモスを経て大前研一事務所に入社。2001年にカフェ・カンパニー株式会社を設立、代表取締役社長に就任。現在、「東の食の会」代表理事も務める。

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