シリーズVOICE

【VOICE】加藤公敬さん

公益財団法人日本デザイン振興会 常務理事

Q1
あなたはいま、どのようなプロジェクト・仕事に取り組んでいますか。
A1
そもそも私はデザイナーなのです。大学を卒業して情報システムメーカに入社。40年間デザイン業務やデザインの経営を担当。その後、日本デザイン振興会に移り、グッドデザイン賞(Gマーク)の顕彰や運営、普及などのプロモーション業務に携わっています。
その40年間の世の中の変化の中で、「デザイン」の役割、機能や価値がどんどん進化し、経営や社会課題を解決する手段としてデザインが期待される存在になってきました。そうした流れの中で、デザイナーとして「デザイン思考」の実践とイノベーションを加速する「Ba」の提案活動を行なっています。現在、活動に参加している「FCAJ(フューチャーセンター研究会)」という団体では、「イノベーションセンター」、「フューチャーセンター」、「リビングラボ」をBaと定義しています。「3×3Lab Future」も模範となるBaです。
Q2
その活動に取り組むきっかけについて教えてください。
A2
きっかけは、「デザイン」の捉え方に向き合いたいと思ったことが始まりでした。日本語のハンデ(設計?計画?図案?)はあるものの、日本ではデザインという言葉が曖昧に使われています。
「デザイン思考」でいうデザインとは、社会課題の発見から解決までの一貫したアプローチであり、経営戦略構築や人材育成、産業振興、地域活性化などをデザインすると捉え、解の無い問いに答えを創っていくのがデザインの今的な価値と役割だと思っています。デザイナーには、そうした期待と危機感を持って真剣にデザイン思考に取り組んでいってほしいと思います。
ちなみに、デザインの定義は、①色や形のデザイン、②空間やグラフィック、Webなどの複合領域のデザイン、③市場や事業の課題を解決するソリューションやサービスのデザイン(マーケティングのデザイン)、④社会の課題を発見し解決するデザイン(経営のデザイン)、と進化の過程で大まかに4段階が定義されています。
Q3
今後やりたいことは何ですか。また、それをやるためにどういった仲間がほしいですか
A3
「Ba」の実現を目指してさらに活動を展開していきたいと考えています。 グッドデザイン賞の最近の受賞事例を見ても、製品からサービス、経営、活動系にと受賞領域がどんどん広がってきており、明らかに「もの」のデザインから「こと」のデザインに展開しています。また、内閣府や特許庁、経済産業省などもデザインによる企業の活性化や日本の活力の強化を目指して「経営デザインシート」の制定や活用、「『デザイン経営』宣言」によるデザインの重要性の顕在化や訴求などを推進しています。
つまり、デザイン思考をしっかり実行し、関係者が集い、様々な意見を出し合い社会実装し、イノベーションを加速するBaを活用する仕掛けが重要となります。 それは、社会価値と経済価値の両立を目指して社会全体をかたちづくる「プルーラルセクター」であり、FCAJではそういう機能を持ったBaの実現と普及活動を推進しています。そこにはあらゆる分野や領域、スキルの人が集い、語り、考えることが基本になっています。
様々な関係性や繋がりを理解し、多様性を尊重し、美しさを自分の言葉で言える人、個性のある人、未来を語れる人、人間性に溢れる人が、仲間として期待されます。 敢えて3×3Lab Future視点でいうならば、経営や社会課題の解決を解決する「SDGs」の視点が明確に定義でき、実践、社会実装する文脈を理解し実行できる仲間が重要となります。
Q4
3×3Lab Futureでどのような活動をしていますか
A4
3×3Lab Futureは極めて特徴のあるエリアに位置していると思っています。日本のビジネス中枢の大集積地であり、経営とブランドの街としても新たな勢いのあるエリアに存在し、参加する皆さんのバリエーションがとても豊富だと思います。
そういう観点から「デザイン」と「経営」の両方の視点をミックスしたテーマのセミナーを開催し、従来の経営の先を目指したBaの実現と人材育成などを仕掛けています。 幸いに、弊会は丸の内仲通りに「グッドデザイン・MARUNOUCHI(GDM)」というデザインの情報発信のBaを持っています。二つのBaが共創することで大丸有エリアがエンパワメントすることを目指してコラボレーションもしています。(エリアマネジメントの観点)
Q5
3×3 Lab Futureをこう活用したい、というアイデアを教えてください。
A5
経営の観点から三菱地所さんの大丸有エリアの潜在力に期待し、経営層が常に「デザイン」を口にし、若い人材や経営者が育っていく、そんなイベントを仕掛けたいと思っています。
さらに、エリアマネジメントの視点からは、「日本の中心(中枢)」といくつかのネットワークを組んだ関係性の語れるイベントができないかと思っています。
「3×3Lab Future」×「首都圏周辺の街」、「地方や地域」、「グローバル(アジア...)」などのそれぞれの組み合わせが可能だと思っています。 そして、日本の新しい中心としての大丸有の創造を期待したいです。
Q6
仕事や個人の活動において役に立った、おすすめの本を教えてください。
A6
極めて実務的ですが「WISE PLACE INNOVATION目的工学によるイノベーション実践手法」(株)翔泳社(著者:紺野 登ほか)です。
デザイン思考の実践から社会実装によりイノベーションを加速するための実務知識を得ることができます。実践的なテキストです。
Q7
仕事や個人の活動において、あなたが大切にしていることは何ですか。
A7
AIが進んでロボットが当たり前の時代を想定すると、「人として正しいこと」、つまり「倫理」が価値観の軸となると考えています。フィールドワークにおいても「ユーザさんに寄り添って理解をする」ことがポイントになります。
そんな時に、ユーザさんは「私」を信頼しないと何も言ってはいただけないし、表情や行動にも出されないと思います。例えば、お話をいただくには「あなたなら話すよ」と感じていただける人になりたいと思っています。
「信頼される、尊敬される、何事にも感動をする、未来を語れる」そんな人になりたいです。 そのためには常に「あなたはどうしたい?そのために私たちはどうしたらよい?それを一緒に考えよう!」そんなコミュニケーションを心がけているこの頃です。
加藤公敬(かとう・きみたか)
公益財団法人日本デザイン振興会 常務理事

1953年山口県生まれ。九州芸術工科大学(現 九州大学)卒業後、富士通株式会社に入社。富士通株式会社では、総合デザインセンター長として、情報機器やシステムの進展に伴いプロダクトデザイン、スペースデザイン、ユニバーサルデザイン、ウェブデザインなど様々な分野のデザインを担当。さらには、富士通デザイン株式会社 代表取締役社長、富士通株式会社 マーケティング改革プロジェクト室 シニアバイスプレジデント(デザイン戦略担当)などを歴任。デザイン社の経営及び本社マーケティング(ブランド、広報IR、宣伝)活動にも参画し、「デザイン思考」によるイノベーションの実現や加速などに取り組む。2017年6月、公益財団法人日本デザイン振興会常務理事に就任。現在に至る。

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