Lift France Day I - Marc Gignet - Open Innovation Funnel by Playing Futures: Applied Nomadology
「オープンイノベーション」の必要性が説かれるようになって久しいですが、日本では文化土壌の違いもあり、なかなか定着しきれていない現状があります。
よく指摘されているのが「NIH(Not Invented Here)症候群」いわゆる自前主義や、情報を扱うカルチャーに欠ける点です。先端技術を扱う分野の場合は、秘密保持契約の問題もありますし、よしんばうまく進んだ場合、収益をどう分配するのかといった問題も発生します。
これらの課題をクリアするために、ある一定の選別を経た企業同士がシーズ技術を共有しあうセミオープン/セミクローズドな連携も多く見られるようになっています。これは「クローズド・オープンイノベーション」と呼ばれ、日本の風土にマッチするスタイルとして注目を集めています。
こうした動きは、近年ますます拍車がかかり、さまざまな分野の企業・団体が、日本なりのオープンイノベーションのあり方を模索する取り組みを始めています。今回は、そんな中から新しい情報をピックアップしてご紹介します。
多彩な業種、人材が集う場所として人気の高いコワーキングスペース。これをさらに一歩推し進めたのが、2012年にオープンした渋谷ヒカリエ8階にある「Creative Lounge MOV」です。
特徴的なのは、一定のスペースを占有できるレジデンス会員とは別に、オープンラウンジだけを利用できるラウンジ会員がある点。
オープン・ラウンジのコンセプトは「街の中心にある広場」で、階段で段差を付けたスペースや、テーブル、ソファ、ブース席などが揃い、思い思いの場所で仕事をすることができようになっています。利用者同士のコミュニケーションを触発する仕掛けも用意されているほか、定期的なイベントも開催されています。
直近では、レジデンス会員、ラウンジ会員がお互いの仕事や技術、趣味などを開示しあい、交流を深める「MOV市」が開催されます(2月20日)。パネルトーク、懇親会なども行われるそう。これは非常に楽しそうなイベントです。
クリエイター向けのシェアスペースで有名な「Co-Lab」でも、ただブースを貸すだけではなく、コンシェルジェを用意し、人と人が触れ合う機会を作るようにしていましたが、こうしたフラットなオープンスペースは、人と人が有機的につながることを促します。この点、二子玉川の「カタリストBA」の"バウンダリーオフィス"に近いスタイルですが、よりカジュアルで、間口が広いといえそうです。MOVでは、アントレプレナーやクリエイターだけではなく、企業内個人の利用も広がっているとか。今後もMOVでは会員同士が交流できるイベントのほか、企業も参画できるコラボレーションを企画していくそうです。渋谷発の新しいビジネスを創出するプラットフォームとして期待がかかります。
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旅するビジネスマン同士のコミュニケーションを活性化させ、新しいビジネス機会を作ることはできないだろうか――このコンセプトから誕生したのが、品川プリンスホテル Nタワーの「BUSINESS LOUNGE supported by Epson」です。Nタワーの2013年3月のリニューアルオープン時に、ビジネスに特化した宿泊者専用ラウンジとして誕生しました。職場、家以外で仕事をする第3の場所"3rdプレイス"としてのビジネスラウンジ。今、世界中のビジネスマンの注目を集めています。
最上階の17階にありWi-Fi、プリンターなどビジネスに必要な設備も整っています。ソファ、テーブルなどが配されたコミュニケーションエリア、PCを使って作業できるワークブースのほか、ミーティングルーム(有料)も3室用意されています。
また、コミュニケーションを活性化させるために月に1回程度交流会+セミナーを開催。ビジネスラウンジ同様、宿泊者が対象となりますが、旅するビジネスマン同士の交流からどんなミックスアップが生まれるのか。ユニークなオープンイノベーションの場になりそうです。
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最後に、オープン・イノベーションハブとして先駆者的な存在の富士ゼロックス「お客様共創ラボラトリー」をご紹介します。
開設されたのは2010年5月。富士ゼロックスにおける経営課題解決の実践例を基に、徹底したお客様視点での対話をとおし、お客様やパートナーと共に新たな価値創造を目指す場として開設しました。その後3年半経った現在、来社数は約1500社となりました。 お客様との継続的な、内容の濃いコラボレーションの結果、あらたなビジネスモデルの創出にもつながってきています。
これは、冒頭でも述べた「クローズド・オープンイノベーション」の一種だといえるでしょう。
今後は大学や自治体、公的機関との連携にも力を入れ、社会課題解決に向けたソーシャルネットワークのハブの役割を担い、産学官それぞれが持つ知の融合とシナジーの発揮を進めら場として寄与していきたいそうです。
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ネットがオープンイノベーションの強力なツールになることは周知のとおりですが、一方で、リアルな人との交流に勝るものはないということも、改めて述べるまでもないでしょう。エコッツェリアから誕生した「3×3Labo」もまたしかりです。皆さんもネットコミュニケーションに依存せず、こうしたプラットフォームに飛び込んでみてはいかがでしょうか。