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【国内】「水辺」をまちづくりに取り戻せ

規制緩和で進む、ユニークで新しい水辺の楽しみ方

東京の水辺がおもしろい

大手町川端緑道での映像照射実験の様子

2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の施設の多くが東京湾岸を中心とする水辺エリアに立地していることもあり、現在東京では、河川、港湾の水辺空間のPR、舟運活性化の取り組みが増えています。

国土交通省や千代田区などで構成される「秋葉原・天王洲・羽田空港舟運プロジェクト準備会」では、2015年から段階的に羽田空港船着場から秋葉原(万世橋)の運航を試行しており、採算性、利用者動向の確認とともにミニクルーズの利用者アンケートから本格的な運航に向けた検証を行っています。大会開催で増加が見込まれる観光客の輸送手段の確保はもちろん、昭和5年竣工の万世橋たもとの船着場を活用したり、神田川、隅田川、京浜運河に架かる橋梁群を眺めたりすることで、インバウンドもターゲットに日本文化を伝えるひとつの取り組みとしても捉えられています。

大丸有エリアでも、2016年2月24日に歩行者専用道の大手町川端緑道に沿って走る首都高速道路高架下への映像照射実験が行われました。主催団体のひとつであるミズベリング・プロジェクト事務局は、「あまり活用されることがなかった橋脚部に映像照射を加えてライトアップすることで、『新しく楽しめる水辺風景となりうるか』『公共空間で管理・活用される道路法や道路交通法、屋外広告条例等の法令を遵守しつつ、新しい環境・場の価値を生み出すことができるか』について、実地検証しながら、参加者一同で今後の水辺の活性化について考えるべく、開催するに至りました」と話します。

実験では、日本橋川の上に架かる首都高の橋脚をスクリーンに見立て、アーティスト・中村敬氏が制作した「日本の四季」をテーマの映像インスタレーションが行われました。水面の揺らめきを首都高の橋脚に反射させた幻想的な空間では、DJブースから音楽が流れ、設置されたソファー席で夜の街を楽しむビジネスマンの姿が多く見られました。

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河川管理の規制緩和で広がった水辺活用の可能性

河川管理の規制緩和で広がった水辺活用の可能性

横浜西口なつまつりで行われたSUPヨガの様子

こうした水辺を活用した公共空間に関する取り組みは、東京に限りません。

例えば福井県。福井市の中心部を流れる足羽川の幸橋のたもとの堤防をバーにした「川TERRACE(かわてらす)」が2015年11月に6日間の期間限定でオープンしました。市内の酒販店がワインバーを出店し、ボジョレーヌーボーを中心に、ホットワインやソフトドリンク、おつなみなどを販売。川の堤防に設置されたバーカウンターとデッキチェア付きのテーブルで、川のせせらぎを聞きながら、開放感ある水辺の空間を味わいました。

横浜市では、「横浜西口元気プロジェクト」が水辺の活用に積極的に取り組んでいます。2014年から定期的に市民が水辺の未来を語り合う場を設け、実際にその場で出されたアイデアを実現。2015年の横浜西口なつまつりでは、SUP(サップ。スタンドアップパドルの略。サーフボードの上に立ち、パドルで水を漕ぐスポーツ)を進化させたmegaSUPや、SUPの技術を利用しサーフボードの上で行うヨガなど、水辺を使った新しいレクリエーションを紹介し、人々に水辺に親しむ機会を提供しました。また、広場空間には、現地の河川にどのような魚が生息しているのか見せるために帷子川ミニ水族館を展示。多くの親子連れの関心をひき、水上のSUPと併せて賑わいを創出しました。

ほかにも、大阪中之島の川辺に生まれた「北浜テラス」など、社会実験やイベント開催を繰り返しながら常設となった施設も生まれています。

なぜ、水辺を利用した場づくり、まちづくりが全国で行われるようになったのでしょうか。

「河川は旧来、水害から市民生活を守ると言う視点から、国や都道府県ごとに整備され、厳しく管理されていました。人々の暮らしや街並みが水辺から遠ざかっていたんです。しかし、2011年に国土交通省が発表した河川空間のオープン化(河川法準則 河川敷地占用許可準則の改正)を受けて、水害対策だけでなく、水辺の美しいまちづくりを目指すため、市民や民間による事業参入で、水辺の有効活用と活性化の可能性を創造しようというムーブメントが起こっているのです」(ミズベリング・プロジェクト事務局)

市民がアイデアを出せる場をつくることが大切

2015年に開催された「ミズベリング インスパイアフォーラム2015 ポートランドイノベーショントークス」の様子

このムーブメントを支えているのが2014年に発足したミズベリング・プロジェクトです。水辺に興味を持つ市民や企業、行政をつなぎ、日本の水辺の新しい活用の可能性を創造する活動をしています。

「私たちは、民間企業や市民が川で様々な活動ができるように、水辺の利活用に関する相談にのったり、支援を行ったりしています。地域の水辺の未来と可能性を話し合いアイデアを出しあうセッション『ミズベリング○○会議』は、これまでに全国約40箇所で実施(2016年2月末時点)されており、ミズベリングの活動の根幹をなしています。やはり大切なのは水辺の未来を考える人たちが出会う場をつくり、たくさんのアイデアが生まれること。そこから新しいまちづくりが始まります」(ミズベリング・プロジェクト事務局)

水辺活用のアイデアを出しあう会議の様子その場のひとつが、2016年3月3日(木)に、東京・渋谷ヒカリエホールで開催される、水辺テーマフォーラム「MIZBERING JAPAN」です。これまで、2014年3月に「ミズベリング東京会議」、2015年1月に「ミズベリング インスパイアフォーラム」、7月に「水辺で乾杯」イベント、10月に「ミズベリング世界会議in大阪」と大規模なフォーラムやイベントを開催し、着実に水辺に関心を持つ人々のつながりを構築してきました。今回も川を活かし、各地で地域を動かそうと挑戦している人々が集い、先進的な水辺活用事例のプレゼンテーション、公共空間活用についてのクロストークなどが行われます。

水辺でやってみたいことを、自由に言い合う場があること。そのことこそが、行政の規制で人々の暮らしから遠ざかってしまっていた「水辺」をまちづくりに取り戻す第一歩なのではないでしょうか。水辺にカフェやランニングステーションがある街が当たり前になり、コンサートやダンス大会が日々開催されるエンターテインメントな川が生まれる日も、近いのかもしれません。


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