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【レポート】地域の「伝える」を「伝わる」にする情報発信の鉄則とは

BFL地方創生セッション vol.4「地域に必要な情報発信、メディア機能」2017年10月25日(水)開催

10月25日、NTT データが運営するオープンイノベーションラボラトリー「BeSTA FinTech Lab」(BFL)と3×3Lab Futureの共催イベント「BFL地方創生セッション」の第4回が開催されました。
2017年7月のBFLオープンに合わせてはじまった本イベント。月に一度開催され、これまで「地方創生×オープンイノベーション」、「持続可能な地域経済」、「レジリエントカンパニー」をテーマに、ゲストによる講演やワークショップを実施してきました。
※第1回のレポートはこちら
http://www.ecozzeria.jp/events/localproject/event20170817.html

第4回となる今回のテーマは「地域に必要な情報発信、メディア機能」。ゲストには株式会社日経BP 日経BP総研クリーンテック研究所・所長の河井保博氏、株式会社昭文社 デジタルメディア事業本部 ことりっぷwebプロデューサー・平山高敏氏を招き、今求められる情報発信のあり方や地域に必要なメディア機能について、プレゼンテーションが行われました。

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情報は「伝える」だけでは届かない

情報は「伝える」だけでは届かない

プレゼンテーションは、河井氏からスタート。はじめに、本イベントのテーマとなる「情報発信」について、「情報を『伝える』ものから、『伝わる』ものにするという意識を持つことが必要」と話し、これまでとこれから求められる情報発信の違いを指摘します。
「高度経済成長期は、世の中のニーズがわかりやすく、誰もが欲しいと思うものを発信するだけ良かったものの、いまは情報を発信すれば届く時代ではなくなった。あらゆる情報に溢れ、受け手の価値観も多様化している現在においては、本当に伝えたい人にしっかりリーチし、心に刺さるようにするところまで意識して発信しなくてはならない」

つまり、一方的に発信(=伝える)するのではなく、情報を伝えるべき人に伝え、理解してもらう(=伝わる)ことが正しい情報発信、と考えることが前提として必要になります。

では、情報を「伝わる」ものにするためにはどのようにすればよいのでしょうか。伝わる情報の鉄則として下記8点を河井氏は挙げます。
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・ターゲットとチャネルを見極める
・ターゲットの期待を見極める
・他にない特徴を見極める
・共感を得るメッセージ
・価値が分かりやすいメッセージ
・コミュニティ/支援者をつくる
・インフルエンサーを引き込む
・できるだけ続けて何度も発信
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いつ、誰に対して、どういった内容を届ければよいかを分析し、情報の質、発信の精度を高めることはもちろん、これからは受け手の共感を得て、コミュニティをつくることがメディアの新たな役割、と話します。 これまでのような、広報・宣伝の手段としての情報発信だけでなく、意識付けや仲間作りにつながる情報発信が増えてきているそうです。

例えば、日経BPがアサヒビールと運営するWEBメディア「CAMPANELLA [カンパネラ]」では、「ビジネスパーソンにひらめきの鐘を」というテーマのもと、お酒や食事を通した場づくりの提案をしています。その背景には、若者の飲み会離れ、ビール消費の低迷がありました。そこで、ビールそのものをアピールするのではなく、「ビールがある場所」というものを魅力的に伝えるコンテンツを作成。ビールを飲みながら企画会議など、新しい楽しみ方を伝えることで、消費拡大へつなげていきました。

また、地域のコンテンツづくりのケースとして、出雲の地域資源を活用した特産品開発事業「食べるお守りシリーズ」を事例に解説がありました。ターゲットの設定から、ブランドの世界観づくり、販路開拓などまでを日経BPが支援したこのプロジェクト。
このプロジェクトに参加した日経BP総研 マーケティング戦略研究所では、これまでのコンサルティングの経験から、「ヒットを生むのは女性から」「女性が地域発ヒットに期待するものは、正直、ナチュラル、高品質、素朴」といった知見を持っています。この知見に基づいて、コンセプトづくりを支援。出雲で古来から豊富に生えている薬草を使ったクッキーを考案し、地元の女性を巻き込んで、意見を出してもらい商品開発を行いました。販路もターゲットである健康志向の女性に届くように、ナチュラルローソンで発売。全店舗で展開され、定番商品になりました。

「メディアではないが、基本的な考え方は伝わる情報をつくることと同じ。誰に、何を、どのように伝えるか一貫して設計することで、心に刺さるものをつくることができた。また、地元の方との商品開発や全国的な販路展開といった後押しも大きく、さまざまな人を巻き込まなくては情報は拡散していかない」と話し、情報発信におけるコミュニティづくりの重要性を強調しました。

地域に特化したメディアだからこそできる情報発信

続いて平山氏のプレゼンテーションは、ローカルメディアをテーマに、地域における情報発信について。 ローカルメディアとは、各地域に特化した情報を、現地に住む人が、現地の視座で発信するメディアのことを指します。日本各地で増えてきており、「ローカルメディアは情報発信するためのツールから、熱量を集めるハブとして、新しいコミュニケーションを生むものへと変化している」と話します。

例えば、東京・大阪から移住した夫婦が運営する滋賀県のローカルメディア「しがトコ」は、WEBサイトでの情報発信だけでなく、instagramにてユーザーの写真を使用した投稿を行っています。WEBで自ら発信し続けるだけでなく、同じように滋賀愛を持ったユーザーの投稿をキャッチアップすることで、熱量が集まるひとつのコミュニティを形成。Facebookにおいても、しがトコはファンによるシェアが多く、平均的な企業Facebookページの6倍以上のリーチ率を獲得しているそうです。さらに、地域の魅力発信から発展して、滋賀に魅力を感じた人が、実際に移住し、活躍する場を持てるように、滋賀ならではの仕事情報を紹介する求人プラットフォーム「しがトコ はたらく」も展開されています。

また、こうしたローカルメディアには、東京の大手メディアや代理店にも勝る強みがあると話します。
「例えば、ある地域の観光プロモーションのコンペにおいて、東京の大手代理店も参加する中、ローカルメディアが採用されるといったケースが増えている。これは、地域プロモーションにおいて、そもそもの魅力を掘り起こせていないまま、バズる動画をつくる、ネットで有名な人を使うといった方法に走ってしまうことが多い中で、その地域が持つ魅力を誰よりも知っていて、提案できるという点が大きい。こうした魅力は熱量を持って地域と向き合っていなければ見つけることはできないもののため、ローカルメディア特有の強みとなっている」

また平山氏も河井氏と同様に、情報は伝えるものではなく、伝わるものにすることが必要と述べ、ローカルメディアでの情報発信における必要な要素として、以下の4点を挙げました。
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・世界観:メディア特有の雰囲気を持っている
・テーマ:専門性がある
・背景:なぜそれを語っているのか明確
・愛情:主語を持って楽しんでいる
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この4点が首尾一貫して可視化できていることで、趣向が同じ人が集まりやすくなり、根強いコミュニティの形成につながると話します。
こうしたメディアの新しいあり方を解説しながら、情報発信することだけではなく、地域にとってどういった存在でありたいかという最終的なゴールに合わせたメディアづくりが大切であると強調しました。

メディアづくりに近道なし

プレゼンテーションの後の質疑応答では、参加者からさまざまな質問が投げかけられました。中でも「よそ者でもローカルメディアをつくっていけるのか」「メディアを通してコミュニティをつくるために、旗振り役をどう探せばいいか」といったメディアをつくるにあたっての質問が多数。これに対して両氏は、「自分が正しいと思うことを、地道に根気強く続けることが大事」と口を揃えます。河井氏による「伝わる情報の鉄則」にもあったように、繰り返し発信しつづけることで、近いことを考えている人との出会いや、人の意識を変化させることにつながっていくとアドバイス。熱量を集めるハブとなるには、自分自身が熱量を持って取り組むことが大事となるのです。

最後に「今後お二人が地方創生にどのように携わっていきたいと考えているのか」という質問に対して、河井氏は地方の産業活性化を支援したいと挙げ、「地域の二代目や金融機関の方と新しいビジネスモデルを作りたい。そして、情報発信の面では、まず地域に知らしめ、他の地域に順々に伝わっていくようにすることで、一緒にやりたいという人が集まるようなサポートをしていきたい」と話しました。
平山氏は「ことりっぷWEBはユーザー自身も情報発信できるスキームがあるため、よりユーザーと地域の人をつなぐコミュニティとなるようにしたい。また、日本各地で生まれているさまざまなプロジェクトを早い段階からピックアップし可視化させていていくことで、より多くの人を巻き込む流れを作っていきたい」と意欲を見せました。

メディアと地域に真摯に向き合う両氏の展望に、熱い想いが「伝わる」講演となりました。


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