昨年9月から2015年3月まで大丸有各所で行われ、大好評だった「まるのうち保健室」が帰ってきました。今年も9月8日から募集を開始し、10月から12月まで実施されます。それに先立ち、9月12、13日の2日間、マルキューブでイベント「まるのうち保健室 "私のからだと仲良くなる時間"」が開催されました。
前回のまるのうち保健室で1000名を超える相談者があり、「丸の内OL1,000人白書」としてまとめられた結果を報告するとともに、大丸有の街全体を上げて働く女性をサポートしていこうというプロジェクトのスタートを広く告げるものでもあります。「見て聞いて体験する」をコンセプトにした会場では、トークショーなどのステージイベントのほか、働く女性のための健康ソリューションを提供するブースが多く出展されました。
まるのうち保健室は、働く女性を応援する「Will Conscious Marunouchi(ウィル・コンシャス・丸の内)」プロジェクトの一環で、就業女性を対象にした各種検査と健康相談を行うもの。昨年9月から実施され、予約開始後瞬く間に予約がいっぱいになってしまったというエピソードもあります。それほど働く女性にとって健康が深刻な課題になっているということであり、同時に、気軽に相談に行くことができない就業女性の現実が明らかになったと言えるでしょう。
保健室では、体組成計、ヘモグロビン測定器、骨密度測定器による検査と管理栄養士によるカウンセリングなどを行います。体組成計ではBMI(ボディ・マス・インデックス。肥満度を示す指数)、ヘモグロビン測定器では血液の状態が分かります。管理栄養士のカウンセリングでは、個々人の状態に合わせた適切な食事指導や、妊娠に向けた相談なども行われたようです。
こうした1000名の調査で分かってきたことは就業女性の「三大不足」でした。12日のオープニングトークでは、予防医療コンサルタント、ラブテリ東京&ニューヨークの細川モモ氏が、その"驚くべき"調査結果をレポート。
それによると、就業女性はまず48%の女性が日常の運動強度がきわめて低いという「運動不足」。そして、世界的にも類を見ないほど"ヤセ型"が蔓延している「栄養不足」。先進国中最下位と言われる「睡眠不足」の三大不足です。
当日のプレゼン資料より。就業時間と摂取栄養素の相関性は非常に興味深いデータだ
細川氏によると、1000人調査で見えてきたことのひとつが、平均摂取カロリーの低さ。平均摂取カロリーは1479kcalで、「子供の成長障害が見られた戦時中の疎開児童の平均摂取カロリーと同等(保健室報告書内では「子供の身長が6cm縮んだ」と記載されている)」そう。そして、89%の女性でタンパク質摂取が欠如しており、特に魚の摂食率がきわめて低い。ビタミンB群など食べ物をエネルギーに変換する栄養素の不足もあり、さらにカロリーはあるが栄養素に欠けるスイーツや酒類などの「エンプティカロリー」な食品が、摂取カロリーの15%を占めているなどの問題も。カロリーも不足のうえ、栄養もきわめてアンバランスであることが分かったのです。
「朝食を抜くと400kcalくらいがポーンと飛んでしまう。そして昼には簡単に菓子パンだけ、夜は残業して疲れたからとついお酒を飲み、揚げ物中心の食事で、翌朝は胃がもたれて朝食を食べないという循環が見える」と細川氏。スタイル重視でヤセが進むと、妊娠に悪影響が出るほか、栄養がアンバランスになると、脂肪など欲しくないものばかりの摂取が進み不健康になるといった悪影響もあります。また、見た目はスリムでも、体脂肪率が30%を超える「隠れ肥満」も少なからずいることも指摘されました。
睡眠不足については、先進国中、フランスが最長の8.5時間に対し、日本は7.5時間で11位。さらに東京の就業女性は5~6時間と極めて短いのが特徴。細川氏は「女性も平均週41~60時間、100時間もある就業時間で、フルに働いているし、朝はメイクアップなど男性以上に手がかかるため睡眠時間も短くなる」と分析。そして、短時間睡眠は「インスリン機能の低下をもたらす、高脂肪食を好むようになるなど、太りやすくなる」と指摘。「なんかデザートビュッフェに行って甘いものを食べたい!と思うときは睡眠不足を疑ったほうがいい」と細川氏の指摘に、会場に集まった来場者はみな驚きの声を上げていました。
こうした結果を受け、細川氏は「適切な知識を知れば、87%の人が改善したいと答えている」とし、「情報と知識を与える環境を」と今後の取り組みの方針を提示。そして「最初からすべてに対応するのは難しい。それならば、少しずつ改善できるような選択肢を提供していくことが大切」と訴えました。その例として、栄養素を補充できるおやつ製品や、日常の運動強度を上げるようなサービス、飲食店で提供する健康メニューなどを挙げています。
トークショーに登壇したWill Conscious Marunouchiプロジェクトプロデューサーの井上友美氏は「気が付いたときに健康に向けたアクションができる環境をまちづくりの中で取り組んでいきたい」と話し、その例として、プロジェクトで発行した「Will Conscious Marunouchi Eat Map」を紹介。これは健康に配慮したメニューを提供する飲食店の紹介ばかりでなく、日常の運動強度を上げるために10分ほどのウォーキングコースも盛り込んでいます。また、今年もまるのうち保健室を10月から実施し、働く女性のサポートを行う予定だそうです。また、同じく登壇した「聖路加メディローカス」の酒見智子医師は、同クリニックが取り組む「女性診療科」や「ウィメンズドック」の事例を挙げ、「働く女性だけでなく、広く女性全体をサポートしたい」と抱負を語りました。
会場では、まるのうち保健室と同じ検査が受けられる「測定コーナー」が設けられ、2日間で550名(12日290名、13日260名)が来場、体験したそうです。体験した来場者は口々に「自分の状態が分かると参考になる」と話しており、また、「職場や家の近くなどにこうした気軽な測定できる場所がほしい」と訴えていました。
このほか、会場にはプロジェクトに賛同する企業・団体がブースを出展。「見て知って体験」する、さまざまな催しを展開していました。飲食関連や測定器メーカーが中心でしたが、細川氏は「今、社会全体で女性の健康を考えるべき時期に来ている」と話しており、こうした企業・団体のみならず、ディベロッパーなどまちづくりに関与する企業・団体が参画することは、社会全体の底上げにとっても有意義であると言えるのではないでしょうか。
今年の10月のまるのうち保健室はすでに予約受付を開始。今後11月12日の予約開始は10月1日、12月2日の予約開始は10月21日となっています。働く女性のみなさんはぜひ受けてみてください。また、この活動は男性にも注意して見守ってほしいもの。社会全体の課題を、多角的に考えるきっかけ、材料になるのではないでしょうか。