イベントCSV経営サロン・レポート

【CSRイノベーション】ISO26000のCSR理解とコミュニティCSR気づきの共有会員限定

2013年6月13日開催

第1回CSRイノベーションワーキンググループが6月13日(木)に開催されました。

会員企業を中心にCSR担当者や企画部門などから35名が集まり、本業を通じたコミュニティ型CSRをテーマに、ゲスト講演とワークショップが展開。
はじめに、田口氏(エコッツェリア協会)から「今年一年間CSRをテーマに、ワーキンググループを展開します。ぜひ色々な気づきや他社の方との関係性を築いてください。理解が難しい部分もあるかと思いますが、わからないところを明確にすることで、課題整理、解決に役立てていただきたい」と今回の意気込みを語られスタートしました。

前半は、今回のゲスト笹谷秀光氏(株式会社伊藤園 CSR推進部長 取締役/元農林水産省審議官・環境省審議官)が「コミュニティCSRの時代」と題して、ISO(国際標準化機構)が定めているISO26000の意義、CSRの取り組み事例の紹介を交えて、解説されました。ISO26000は「社会的責任に関する手引」(ガイダンス)として2010年に策定されていますが、組織の社会的責任の定義と手法が初めて国際的に合意されたものです。

CSRという用語は、「Corporate Social Responsibility」→「企業の社会的責任」となり、英語にすると難しいし日本語では本来的意味が伝わりにくい。「責任」と訳されるので『責任を取る』などの重いニュアンスが出る。また、CSRの定義がなかったので各社により重点が異なり、「自分CSR」の時代であった。よってCSR元年の2003年から2010年の間、企業のCSRに関する会合では、多くの場合「まず定義を決めましょう」となり出発点から時間がかかった。だが、2010年11月、ISO26000ができ、その後JISで国内規格化もされて「デ・ファクト・スタンダード」になるので、その混乱は終わった。
ISO26000の『社会的責任』の定義をまとめると、「法令を遵守し、関係者の意見をよく聞きながら、本業を活用して実践する、環境・社会の持続可能性のための活動」となる。この『本業を活用』『持続可能性』の2つを解明する事がCSRを理解する為のポイントになる。

この2つを分析すると、『本業を活用』については「本体の会社、グループ会社、取引先などの関係者」がCSRを企業のリソース(ヒト・モノ・カネ)とスキルを用いて本業の中でまたは本業と関連付けてやりましょう、『持続可能性』については「世のため、人のため、自分のため、子孫のため」に将来の地球の事も考えましょう、となる。

ISO26000のCSRは、企業にとっては「持続可能な成長」、関係者にとっては「持続可能な消費・雇用・家計・調達など」、社会・環境にとっては持続可能性であり、この3者がWin-Win-Winの関係になり共有価値が生まれることを目指している。企業は、本業を活用して関係者との連携と協働でこの関係を目指しましょうということだと理解できる。日本的にわかりやすく言うと、近江商人の哲学である「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしの考えに通じる。



CSRを事例で紹介

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バリューチェーン活用のCSR、環境CSR、コミュニティCSRについて事例を交え、説明されました。

バリューチェーン活用のCSRについて、伊藤園では「茶畑から茶殻まで」の取り組みをしている。その中で、原料調達の一部を担う茶産地育成事業は農家・伊藤園・社会の間で共有価値が生まれている。茶殻リサイクルは、近隣に農家がなく肥料堆肥にできない部分の茶殻を各種製品の原料に配合する事で新たな価値が付加され、多種多様な製品に生まれ変わっている。封筒、あぶらとり紙、キッチンペーパー、茶殻樹脂の自動販売機にも。自動販売機は質感ならびに外観が向上し、観光地や公園などにもマッチする。

環境CSRでは、トリプルボトムライン(経済・社会・環境)の関係性が大切。経済の外側に社会があり、さらにその外側にあるのが環境である。京都議定書からは離脱したが、今や環境の発信拠点は名古屋に移っている。これはポイントとして覚えておいてほしい。
名古屋市では、2014年に持続発展教育(ESD:Education for Sustainable Development)に関するユネスコ会議が予定されている。ESDは「世のため、人のため、自分のため、子孫のためのことを、みんなで考えましょう。人に優しく環境に優しい実践的教育をしましょう。」というものである。

コミュニティCSRに関連することとして、2010年11月ISO26000が策定された4ヶ月後の東日本大震災により、ISO26000で示されているコミュニティ活動を日本人全員が実践した面がある。また、CSRは、わざわざ外部に言わなくても黙って実践していればいいと考える人もいるが、そうではない。隠匿の美では一緒に協働したいと思っている人を誘うことができないし、広がらない、さらには効果的にアピールしている国際競争社会でも残っていけないので、CSRの「見える化」が必要である。

その方法については、メディアへの露出が一番であるが、企業単独では取り上げられることが少ないので、大学やNPOなどとコラボレーションするのが良いかもしれない。また、他の会社や組織・団体のホームページでの紹介も効果的で社員のモチベーション向上にもつながる。ほかの人と一緒に活動する、「パートナーシップ」というのがキーワードである。

CSRを担当していて、社会の価値観の変化に対応して、ひとつは「いいね!」という社会からの「共感」を得ること、そしてもうひとつは、「なるほど!」という「論理」、つまりその企業がなぜその活動を行うのかの説明が大事だと実感しています。
CSR活動は、ISO26000で定義されたように、本業を通じて行うことによりことにより、活動の広がりや持続性が実現する。これにより関係者との間で共有価値を見いだせるようにしましょう。

CSRとCSV

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近年、CSRに関連する概念としてマイケル・ポーター氏が提唱するCSV(Creating Shared Value)があるが、経営論としてのCSVはCSRと矛盾するものではなく、互いに補完するものである。とくに、ISO26000が策定されたあとのCSRは、網羅性が高まっており、経済価値創造を目指すCSVと合わせて推進することにより、活動の地理的・時間的・情報的広がりが生まれ、実践の助けになる。

今後の伊藤園での取り組みについて、ISO26000の規定にある「7つの中核主題(第6章)」を基本的CSRとして行い、重点的に取り組む事項として消費者課題・環境・コミュニティの3つを重点的CSRとした。この重点的CSRをCSVで補強するという2段構えで、共有価値の創造を目指して推進したい。昨年度はCSRの体系化を行ったので、今年度はグループ企業を交えてやっていく。そして、定着させて伊藤園グループでのCSRを進化させていきたいと考えている。
共有価値の創造によりCommuni"tea"を目指していく。

気づきの共有

後半は、参加者が8グループに分かれ、持続可能な理想的協働パターン(三方よし)モデル4例について、「企業、社会・環境、関係者のそれぞれに当てはまるものは何か?」「そのモデルの気づきの点」を考え共有するワークショップが行われました。

1例につき2グループが担当。予定時間を上まわる熱いディスカッションが行われ、各グループの代表者による発表へ。

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<例1:調理家電>
社会・環境:日本農業の活性化
企業:技術革新
関係者:家計にも身体にも優しい
気づき:食育に繋がる、地産地消

<例2:大型ショッピングモール>
社会・環境:文化の発展、文化のコミュニティ
企業:グループの活性化、ランドマーク
関係者:沿線、交通の活性化
気づき:街のイメージを変え得る

<例3:地域振興施設>
社会・環境:地域、コミュニケーションの活性化
企業:利用者に直接商品を届けられる、情報発信、地域に魅力を感じてもらえる
関係者:地域社会との関係を持てる、自分たちの持っている物がいい物だと気づける
気づき:地域コミュニティの活性化

<例4:被災地支援> 社会・環境:ゴミを減らせる、被災者の心のケア
企業:技術革新、やった亊での気づきを得られる、メディアに取り上げられやすくなる
関係者:自社の製品に対する誇りが得られる
気づき:笑顔、人も持続可能な活動

異業種同士で話し合ったからこそ出てきた気づきもあり、コミュニティCSRの重要性を再認識するディスカッションになりました。

ワークショップについて笹谷氏は、「気づきを共有することで、さまざまな角度での考えやものの見方があることが認識できる。また、CSRを学ぶ上でESDの手法を紹介したが、まさに今回のワークショップのように、車座になって気づきを与え合う学習方法である。」と話されました。
最後には、Sを含む3つのキーワード「"CSR"をISO26000で固める」「"CSV"で共有価値の創造を目指す」「"ESD"を用い持続可能性をみんなで学ぶ」をあげられ、これを「トリプルSのCSR」として提唱します、とまとめられました。

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エコッツェリア協会では、2011年からサロン形式のプログラムを提供。2015年度より「CSV経営サロン」と題し、さまざまな分野からCSVに関する最新トレンドや取り組みを学び、コミュニケーションの創出とネットワーク構築を促す場を設けています。

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