
第2回CSRイノベーションワーキンググループが、NECネッツエスアイ株式会社本社で行われ、エコッツェリア会員企業を中心に15名が参加しました。
はじめに、山本清一郎氏(NECネッツエスアイ株式会社 CSR推進部 環境・社会貢献グループ グループマネージャー)から、CSRの取り組みについてお話がありました。
NECネッツエスアイ株式会社は、衛生基地局等の通信インフラの設置工事をする会社として設立され、事業内容柄「つなぐ」という言葉がキーワードとしてよく出てきます。人と人はもちろん、社会、地球とのつながりもCSRの主要テーマとして掲げ、様々なコミュニケーションシステムを提案。ISO26000の中核主題をベースに、取り組まれています。
環境分野では、ISO14001(組織に対し、環境に負荷をかけない事業活動を、継続して行うよう求めた、ISOが定めた規格)を1999年7月28日に取得以降、毎年登録証を更新されています。
また、低炭素社会実現に向けて、4つの枠「地球温暖化防止」「資源有効利用」「環境・省エネソリューション提供」「人材育成・意識啓発」で考え、CO2排出量の削減を試みています。各枠での基本的な取り組みは以下の通りです。
「地球温暖化防止」
・ 電力使用量削減
・ 社有車両のエコカー化、エコドライブの推進
・ 物流の環境負荷軽減
・ 産業廃棄物のサーマルリサイクル実施による、リサイクル率98%実現・改正省エネ法対応
・ カーボンオフセットの調達により、CO2排出を10トン削減
・ 太陽光発電により、CO2排出を約9トン削減
「資源有効利用」
・ 紙情報の電子化・ペーパーレス会議の実施
・ NEC製情報通信機器の回収、リサイクルの実施
「環境・省エネソリューション提供」
・Empowered Office(オフィス改革)ソリューションをはじめとする、環境、省エネソリューションの提供、推進
「人材育成・意識啓発」
・ 環境教育(野鳥観察会と味噌作り体験など)実施による、環境意識の拡大
・ 自然体験型プログラム(田んぼ作りプロジェクトなど)実施による、環境保全意識の向上
環境分野だけでなく、社会貢献分野での取り組みもされています。「ひまわりハウス(下章参照)」「新入社員全員による被災地支援ボランティア(小川の砂利だし作業など)」「飯田橋本社ビルでの東北物産展」「南極クラブ(南極越冬隊経験者による出前授業)」など、地域社会を始めとする全てのステークホルダーに対し、他にも様々な形で社会貢献活動をされています。
同社は、ペーパーレス会議を行っていますので、今回の会議も、紙資料ではなく、タブレット端末。役員会議はタブレット端末、通常会議はノートパソコンで、資料の共有がされます。
資料をデータ化し、そのまま共有できることにより、準備、保管、検索等が容易になり、効率化やペーパーレス化に貢献するシステムです。「資源有効利用」の取り組みのひとつで、使い手が以前よりも簡単に、そして、効率的に利用できるようにと環境を整えています。
このシステムを含むソリューションを「Empowered Office」と言い、それを取り入れたオフィスを、間近で見学させていただきました。
オフィス作りのコンセプトは「スペースとコストはオフする、ワークはプラスする」。それを可能にするキーワードは「壁をなくす」「無駄をなくす」「多機能・多用途」「チームワーキング」の4つだそうです。
ワンフロアにひとつほど、壁付きの会議室が設けられていますが、会議スペースの仕切り、デスクの間も壁はありません。人事面談などには、食堂を常に解放しているため、そちらが使われるケースが多いそうです。
紙、備品の無駄遣いを無くすよう、会議システム、発注システムにも工夫がされていました。
会議をするスペースは、フロアの至る所にモニター・プロジェクターを設置し、どこでも出来るようにされています。よって、会議スペースを多用途に使え、会議の見える化にも繋がり、情報共有が円滑になるよう工夫がされていました。
「働きやすい職場環境が、お客様のためにもなる」という視点から、出来上がったソリューションが「Empowered Office」です。
CSRの一環である「ひまわりハウス」について、塩川正二氏(新事業開発部 新事業開発主幹)よりお話がありました。
ひまわりハウスは、岩手県陸前高田市竹駒町にあります。そこは、復興の主役となる地元の方と共に、新しいビジネスモデルを創造する「コワーキングスペース」。気軽に立ち寄れるオープンスペースとなっており、パソコンやインターネット、タブレット端末等を自由に利用してもらえるようになっています。
ひまわりハウスの目的のひとつに、雇用の創出があります。陸前高田市で求められているもののひとつです。当初は、地元の起業家の方に集まっていただき、情報を共有してもらい、共に新しい事業を作っていく場として作られました。もちろん、東京から現地でやりたいという話も受けており、テレビ会議で現地の方と会議することができます。
現在は月200名ほどの利用があるそうで、街づくりの助けができればと運営されています。
引き続き、実際にテレビ会議システムを使い、ひまわりハウスの塩田氏、池田氏、菅野氏からお話を直接伺うこともできました。
塩田氏:まず地元に根付いて、地元の声を吸い上げようというのが最初の目的でした。立ち上げる前から少しずつ足を運び、地道に少しずつ輪を広げていきました。宿場は工事関係者の方が中長期押さえてしまっており、半年間、一関市から車で1時間以上かけて通う日々でしたが、その甲斐あって、この半期でひまわりハウスを知っていただく事はできつつあります。次の段階は、コンセプトである「コワーキングできる場」として、イベントを開催したり、企業の方と検討したり、陸前高田市に人を呼ぶ仕掛けをしたりしていきたいです。
塩川氏:現在はどういった方が訪れられているのですか?
塩田氏:NPO団体の打ち合わせに使っていただく頻度が、今のところ高いです。他には、学生同士で集まり、陸前高田をどうしていくかという打ち合わせなどにも使っていただいています。個人で、パソコン・インターネットを使いに来てくださる方もいて、高校・大学の入学試験の申し込みに来た学生さんも。意図したものとは違った形で、貢献できたこともありました。
参加者:東京で働いていた企業人が、環境が違う場所で常駐してみて、良かったことは何ですか?
池田氏:最初はスーツを着て働いていましたが、地元の方に「そんな格好では、いつまでたっても馴染めないですよ」と言われ、私服で働き出しました。そのお陰で、自分もリラックスして働けますし、お客様に壁を作られず話す事ができるようになりました。ここにいても、パソコンで会社のネットワークに入り、普通に仕事ができる環境なので、新しいスタイルの働き方が実現できて良かったです。
参加者:人を呼ぶ仕掛けをというお話がありましたが、具体的にはどのような仕掛けをしていこうとお考えですか?
塩田氏:コワーキング関連のイベントや、起業しようとしている方に集まっていただき、起業家に体験談を語っていただく場、中小企業診断士の方をお招きして、勉強会などを考えています。
参加者:コワーキングからビジネス創出というお話を伺いました。勉強会などを積み重ねていって、そこから価値創造し、ビジネスに。というのが理想形かと思っているのですが、ひまわりハウスとして、こんな形になっているのが理想形だなという、イメージをお聞かせいただければと思います。
塩田氏:あくまで、陸前高田市がいい形で変わっていってもらう根幹の一部を担う、というのが最大の目的です。コワーキングという概念のもとで、起業家さんを支援するということを柱のひとつに、陸前高田ブランドのようなものが生まれたら、とても嬉しいです。継続していくために、我々の企業としてもいい形は、我々の仕事がそれに絡み、何かしら形になったら、なお良いと思います。
最後に、参加者から感想や気づきの発表がありました。
・ 普段業務をしている場所が、災害対策室にもなるがよいと感じました。
・ オフィスを拝見させていただいてビックリする事だらけでした。弊社も固定席をなくし、フリーアドレスなのですが、運用が上手く行っていないので、コンサルテーションを依頼しようかと思いました。
・ オープンな会社と言う印象を受けました。横のつながりが意識されていて、情報共有のしやすさが見受けられました。オフィスレイアウトの大事さも再認識できました。
・ 私たちの会社も復興支援室というのを運用しているので、ひまわりハウスでの取り組みに協力していきたい。
東京大学先端科学技術研究センター研究顧問 /
教養学部客員教授
慶應義塾大学経済学部卒(1973年)、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士、博士(2010・2013年、共に工学)。
1973年環境省(当時環境庁)入省。京都議定書交渉の担当課長、環境管理局長、地球環境局長、官房長、総合環境政策局長、2009年から2011年まで次官を務め退官。
慶應大学教授、米国イリノイ州にて派遣教授、2016年から現在まで東京大学客員教授。その他日本経済研究センター特任研究員、国立水俣病研究センター客員研究員、地方の環境審議会委員や脱炭素対策検討の委員等を歴任。
再生可能エネルギーを主要なエネルギー源とする資源循環型の社会を構築するために必要な価値観の転換、諸制度の整備などに取り組む。
一般社団法人バーチュデザイン代表理事 /
東京大学客員教授/
慶慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授
明治大学法学部卒、米国ミシガン大学環境サステナビリティ大学院科学修士、慶應義塾大学大学院政策・メディア科博士(学術)。
IT企業、米国投資銀行等での勤務を経て2000年より現三菱UFJモルガン・スタンレー証券において気候変動関連の資金枠組みづくり、カーボンクレジット組成などに関与。政府、地方自治体、金融機関、事業会社などに向けて気候変動、GX、サステナブルファイナンスの領域について講演、アドバイスなどを提供し、新たにサステナビリティ経済の推進の実装を図る。
CSV経営サロン2024年度第3回2024年11月25日(月)開催
CSV経営サロン 2024年度 第2回 2024年9月17日(火)開催
2021年9月−3月
大賀暁氏(昭和女子大 現代ビジネス研究所 研究員、橿原市職員)×田口真司(3×3Lab Futureプロデューサー)