イベントCSV経営サロン・レポート

【レポート】営農と発電の両立を叶える「営農型太陽光発電」の現在とこれから会員限定

【CSV経営サロン】2022年度 第1回 2022年7月27日(水)開催

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脱炭素社会に向けた流れが世界的に活発化する中、国内の企業や個人にとっても、カーボンニュートラルは対応を迫られる喫緊の課題です。脱炭素化社会を実現するためには、これまで以上に地域と共生した再生可能エネルギーの普及が必要不可欠であることは言うまでもありません。その一つの解決策として注目を浴びているのが、農地に支柱を立て、その上部空間に太陽光発電設備を設置し、農業と発電を両立させる仕組みである「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」です。7月27日に開催された2022年度CSV経営サロン第1回では、合原亮一氏(合原有機農園/ガリレオ 代表取締役)、清水浩太郎氏(農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長)をゲストに迎え、営農型太陽光発電の導入事例をもとに、その有効性や課題、今後の展望を語っていただきました。

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ソーラーシェアリングの可能性と課題 ゼロ・カーボン、農業、地域を同時解決

基調講演1
ソーラーシェアリングの可能性と課題 ゼロ・カーボン、農業、地域を同時解決

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合原亮一氏(合原有機農園/ガリレオ 代表取締役)

長野県上田市に拠点を構える合原有機農園は、2016年に同市初の水田上のソーラーシェアリングを設置して以来、水田ソーラーシェアリングに先駆的に取り組んでおり、現在は8ヶ所約1.6ヘクタールの水田の上に、計640kwの太陽光パネルを展開しています。合原氏は、自社で設置した水田ソーラーシェアリング1号機の写真を紹介してこう話しました。

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「パネル固定の状態で遮光率が33%なら大きな減収にならないことが分かっていました。そこで1号機では、太陽光パネルを固定して、常に33%の影ができる区画、駆動システムを使って発電を優先し、60.9%の影ができる区画、影を30.8%に抑えて生育を優先した区画を設けて、遮光率の違いによる収量変化を実証・分析しました。その結果、収量に大差はなく、むしろ影の部分が多い区画の方が、収量が多いことなども分かりました。ここで得た結果は、農業論文として学会で発表するとともに、建設コスト縮減のために遮光率を50%に上げて、架台を小型化する一方、太陽を自動追尾して発電量を増やし、水稲生育期間中は遠隔自動制御で遮光率を下げ、下部農地に十分な太陽光を当てる制御を行うなど、営農に十分配慮したシステムの開発に活かしています」

合原有機農園について特筆すべきは、農家と市民組織が共同で発電設備を運営していることです。市民出資型で、公共施設や民家の屋根を貸借して太陽光発電事業を展開するNPO法人上田市民エネルギーと手を携え、自らの資金のみでパネルを張るだけでなく、さらにパネルを張ることができる場所に、市民の出資金を得てパネルを張り込んでいます。この取り組みは高く評価され、農林水産省の営農型取組支援ガイドブック(2018年度版)でも優良事例として紹介されています。

image_event_220727.004.jpeg出典:環境省

「日本でカーボンニュートラルを実現するためには、ソーラーシェアリングしかないと思っています。経済性を考慮した再生可能エネルギー導入の観点で言うと、太陽光は最大のポテンシャルを秘めています。海は広いですから、洋上風力の方がより多くの設備を設置できることは確かですが、太陽光に比べると約3倍のコストがかかります。経済産業省によると、洋上風力は2020年で30円台前半、2030年でも26円台前半であるのに対し、事業用の太陽光は2020年で既に12円台後半、2030年では8円台前半〜11円台後半で、太陽光が石炭や液化天然ガスなどを凌ぐ、最安の電源になると予測されています。通常、太陽光を発電するためには広い土地が必要ですが、農地の上部空間を活用するソーラーシェアリングであれば、面積の問題も解決できます」

「太陽光の導入可能量の内訳を見ると、絶対的に多いのは田と農用地、住宅です。しかし仮に住宅を含むすべての建物に太陽光を導入しても、発電量の2割にしかなりません。一方、日本には約450万ヘクタールの農地とその内約250万ヘクタールの水田があります。私の試算では、128万ヘクタールの農地や水田にソーラーシェアリングを設置すれば、約6割の太陽光導入可能量を実現できます。水田は整地されており、排水処理の必要がないため、これを活用しない手はありません。唯一の欠点は、水田で作られるお米が比較的多くの太陽光を必要とすることですが、私共の水田ソーラーシェアリングでは、遮光率40%でも8割以上の収量を確保できることを実証しました。これらのことに加えて、国内にメガソーラーの適地がほぼないことも踏まえると、太陽光発電設備を設置するなら、農地や水田を活用することが得策と言えます」

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大企業を中心に脱炭素化目標が設定されつつある中、再生可能エネルギーへの取り組みは、企業の規模に関わらず、対応を迫られる優先課題です。しかし、企業ができることとしては、電力会社から再生可能エネルギーを直接購入するか、グリーン電力証書を購入し、使用している電気と組み合わせることで、環境に配慮した電気を使用していることを証明するしかないのが現状です。

「ソーラーシェアリングは、企業の電源確保にとっても有効です。現状、日本の再生可能エネルギーは総電力のわずか20%なので、需給がタイトになれば、すべての需要を満たすことは不可能になります。自力で電力をまかなうために、自社工場の屋根にパネルを張ることは一案ですが、そもそも工場の屋根というのは、強度がそれほど強くないため、補強しなければ設置できない場合がほとんどです。その一方、工場の周辺には農地が多く、水田などの平地から自己託送方式で電気を引けば、電力会社から購入するのと同じくらい、場合によっては、より安く電気を調達することも可能です。今年、来年は厳しいかもしれませんが、今後5年、10年で、経済性も必ず高まっていくと思います」
今後、どんなソーラーシェアリングを目指していくのか。合原氏は次のように話します。

「先ほども触れたように、水田に設置すればコストを下げられるので、水田向けのソーラーシェアリングで経済性を追求していきたいと考えています。太陽追尾技術を活用すれば、発電ピークの分散で発電を高度化し、作物・天候などに合わせた最適制御ができるだけでなく、電源の質も向上します。IoTなどの最新技術を用いて経済性を確保しながら、学術レベルの影響評価で収量を確保し、新しい農業の提案で農業を再生することを目指してまいります。今年3月、日本初の垂直設置型のソーラーシェアリングが、福島県二本松に設置され、耕作放棄地だった農地が牧草地として再生されましたが、現在、私共も垂直設置型のパネルを開発中です。幅の狭い水田でも、畦などに垂直に設置すると、影の一部は畦に当たることになるので、農作物への影響もさらに改善されると思います」

最後に、合原氏はソーラーシェアリングの課題について共有しました。

「67万件の太陽光設備(10kw以上)中、ソーラーシェアリングは約3000件(2021年末)で、まだあまり普及していないことが一番の課題です。この背景には、営農の確保が難しい、農業者の高齢化問題、手続きが複雑で時間がかかるなど、さまざまな理由があります。営農型太陽光を設置するためには、農業委員会の許可を受ける必要がありますが、県によって積極的だったり、そうでなかったりと、対応がかなり違うのが現状です。また、金融機関の融資がおりにくいことに加えて、支柱によっては作付けできない農地の面積が15%を占めるため、収量80%の確保は敷居が高すぎることも課題です。どうすればこれらの課題を解決できるのか、パネルディスカッションで皆さんと一緒に考えていきたいと思います」

基調講演2    地域との共生による営農型太陽光発電の展開

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清水浩太郎氏(農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長)

続いて清水氏が登壇し、営農型太陽光発電に関わる農地転用許可制度をはじめ、営農型太陽光発電の導入状況や設備導入による課題について紹介しました。

「営農型太陽光発電のカギは、営農の適切な継続と農地の上部空間での発電をいかに両立していくかということです。農地の上部空間に太陽光発電設備を設置するためには、農地法に基づく一時転用許可が必要で、農林水産省では、平成25年に農地転用許可制度に係る取扱いを明確化しました。当初、一時転用許可期間は3年以内でしたが、平成30年5月に取扱いを見直し、担い手が営農する場合や荒廃農地を活用する場合には、10年以内に延長することといたしました。一時転用許可は、再許可が可能で、従前の転用期間の営農状況を十分に勘案し、総合的に判断しております。農地での営農が適切に継続されていれば、10年経った時点で一時転用許可は更新されますが、金融機関からは、それだけでは融資の判断がしづらいという声も挙がっており、課題として認識しております」

農地で育てる作物の収量を、同年の単収と比較して8割以上確保しなければならない「8割要件」についても令和2年度末に見直しが行われ、荒廃農地を活用する事業者には適用されなくなりました。

「その他の事業者様に関しては、年1回ご報告いただく営農の状況を踏まえて、8割以上確保できていなかったとしても、その理由等に応じて柔軟に取り計らうよう、各農業委員会に指導しておりますが、合原さんがおっしゃった通り、農業委員会のあり方も市町村によってさまざまですので、どのように取りまとめていくかは今後の課題です」

さまざまな課題がある一方、近年、営農型太陽光発電への期待は高まっています。その背景には、令和2年度にFIT認定の要件として新たに定められた「地域活用要件」が関係していると清水氏は話します。

「低圧太陽光(10−50kw)は、2020年4月から自家消費型にFIT適用となり、再エネ発電設備の設置場所で、少なくとも30% の自家消費などを実施することが要件のひとつとなっていますが、農林水産省では、農地の一時転用許可期間が3年を超える営農型太陽光発電に関しては、自家消費などを行わないものであっても、災害時の活用を条件にFIT制度の対象とする特例を設けました。この特例の適用後、低圧型太陽光の一時転用許可申請が増えていると聞いております」

「下部農地での栽培作物は、米・麦が9%、野菜・果樹が48%、観賞用植物が30%となっています。例えば、植えてから収穫までに、約3年を要する榊(さかき)を栽培するケースがみられます。この場合も、きちんと申請いただければ一時転用許可は下りますが、適切な管理がされず、農地が荒れてきた事例も出てきています。我々としては、エネルギーの安全保障と同等に、食料の安全保障も大事だと考えていますので、やはりしっかりと営農していただくことが好ましいです。なお、農林水産省は、平成30年度と令和元年度に、秋田県と静岡県で、営農型太陽光発電設備下部の農地での営農実証事業を実施しました。50%程度の遮光でも、遜色ない収量や品質を確保できるなど、有効なデータも出てきております」

一方、設備導入による課題もあります。系統制約には容量面での系統制約、変動面での系統制約の2つがあり、前者の場合は、送電容量の制約、エリア全体の需給バランスの制約が再生可能エネルギー導入にあたっての課題となっています。また、再生可能エネルギー電源は出力の変動が大きく、供給量のコントロールや予測が難しいため、需給バランスの調整が困難です。そのため、後者の場合は蓄電池を導入するなど、出力変動を小さくするための対応が必要な状況です。

「先祖代々の田畑に支柱を立てること自体、抵抗感のある農家の方々もいらっしゃれば、近隣の目を気にされている方も少なくないと思います。しかし、カーボンニュートラルを目指していく上では、営農型太陽光発電は有効な取り組みであり、営農と発電をうまく両立させ、売電収入を一定の割合で地域に還元している事例もあります。良い事例が増えていけば、農村の活性化につながると同時に、農業委員会も許可しやすくなると思います。規制についてもできる限り緩和できるよう、見直しを行いつつ、バイオマス発電や食品廃棄物や下水汚泥資源の使用など、さまざまな取り組みと組み合わせて、エネルギーの地産地消につなげていきたいと思っております」

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最後に清水氏は、農林水産省が令和3年に策定した「みどりの食料システム戦略」を紹介しました。2050年までに目指す姿として、農林水産業のCO2ゼロ・エミッション化の実現、化学農薬の使用量を50%低減、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減など、環境負荷軽減の具体的な目標を掲げ、持続可能な食料システムの構築に向けた取り組みを展開しています。

「国連食料システムサミット(2021年9月)の国際ルールメーキングにおいても、みどりの食料システム戦略をアジアモンスーン地域の持続的な食料システムのモデルとして打ち出しています。生産者の減少、高齢化、地域コミュニティの衰退、温暖化、大規模自然災害、コロナを契機としたサプライチェーンの混乱、SDGsや環境への対応強化など、さまざまな課題を解決するべく、技術開発目標、社会実装目標を打ち立て、戦略的に取り組みを進めてまいります。CO2のゼロエミッション化に関しては、営農型太陽光発電で得た電力を農機などに使ったり、ガスや石油に代わって、暖房施設にヒートポンプを導入するなどの取り組みを積極的に支援しながら、再生可能エネルギーやバイオマスの利活用もしっかり位置づけて取り組んでおります。ぜひ私共の取り組みを知っていただき、応援していただければありがたく思います」

パネルディスカッション

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後半、登壇者の両氏、本サロン座長の小林光氏(東京大学先端科学技術研究センター研究顧問、教養学部客員教授)、副座長の吉高まり氏(一般社団法人バーチュデザイン代表理事)によるパネルディスカッションが行われました。

小林氏:一時転用期間が10年に延長されたとはいえ、合原さんがおっしゃるように、農業者にはご高齢の方も多く、「そこまで先のことは分からない」と考える方も少なくないと思います。長野県上田市で合原さんが取り組まれている「相乗りくん」事業のように、地域の人々が協力し合って、ソーラーシェアリングを運営・管理していくようなケースはあるのでしょうか?

清水氏:発電事業者を一本化しながら、地域の内外から集まった人々が、農地所有者や地域住民、農協などと綿密なコミュニケーションを取りながら、営農されている事例もあります。その一方、発電事業者主導の取り組みの場合、講演でもお話ししたように、収穫までに約3年を要する榊(さかき)をとりあえず植えておき、売電収入の地代を受け取るといったケースも少なくありません。私共としては、農業のノウハウはもちろんのこと、営農と発電の両立についてもしっかりとした考え方をお持ちの方に耕作していただくことが、やはり望ましいです。課題を一つずつクリアしながら新規就農者が取り組んでいる事例もあり、幅広いパターンで推進することが重要だと考えています。

合原氏:現場ではさまざまな問題が起こっています。例えば、ソーラーシェアリングの下部農地を市民農園にできる県とできない県があります。そういったところの温度差を埋めて、いい方向に収れんしていただければと願っております。高齢化の問題は、今後5年、10年で状況は変わっていくと思いますが、農業者が高齢になると、農地の相続問題がおのずと発生します。固定資産税と水路の地代を合わせると、農地の貸し手は赤字が現状なので、後の世代は相続したがらないということが、すでに起き始めています。切実な課題であり、どう対処していくかを考えていかなくてはなりません。

一方、ソーラーシェアリングをうまく活用すれば、逆に農地がお金を生む装置になると考えています。設備を作るための資金は、おそらく10年で返済可能だと思いますが、年によって、発電量は10%以上変動するので確実とは言い切れません。毎年、少しずつでもプラスを生むような設計ができる仕組みになってほしいと思います。

吉高氏:合原さんは市民信託を利用されていますが、どのように融資を受けることができたのですか? また、オフサイトPPAの良い事例があれば教えていただきたいです。

合原氏:長野県には「収益納付型補助金」といって、補助対象事業により収益が生じた場合にのみ返済義務が発生するタイプの補助金があります。私共はこの制度を活用して、半分は補助金でまかない、残り半分を個人から信託の形で出していただいています。オフサイトPPAについては、現状、託送料金は低く設定されているので、設備を自分で所有して自己託送すれば、経済性が出てくる可能性は高いです。私共は、大手電気メーカーや電力会社からコンサルティングの依頼を受けてお手伝いしていますが、それらの企業にとって理想的なのは、農地を所有する農業法人が生産に責任を持つ形で契約を結ぶことのようです。今後、日本の農地は、良くも悪くも流動化していかざるを得ないと思います。例えば、農地を営農と電力の2階建ての生産設備にすれば、農地自体の生産性は維持できるので、従来のような値段で、農地が売買されることはなくなると思います。

清水氏:金融機関サイドには、一時転用許可がどんな場合に延長されるのか、営農は持続可能かといったことに関する十分なノウハウがまだないので、そこは大きな課題であると認識しています。物的担保を含めたノウハウを整理し、しっかり示していくことで、ソーラーシェアリングの推進に役立てていきたいと思っております。

小林氏:オンラインで参加されている方から、今の話に関連するご質問がありました。「FITも昔は高かったけれど、FITがFIPになった今、補助金などをもらわない限り、農地での発電は立ち行かなくなるのではないでしょうか。低単価の売電収入を乗り越えるためのアイデアはありますか?」

合原氏:結局、技術開発しかないと思っています。講演では、支柱の間隔を4メートルから6メートルに広げた事例をご紹介しましたが、独立型のものを実現するべく、さらなる趣向を凝らしているところです。例えば、支柱の間隔が4メートルだと100本の支柱が必要ですが、6メートルになれば65本で済むので、組み立ての人件費や工数はかなり削減できます。このように構造を単純化して強度を上げれば、採算性を向上させることはできるので、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、より良い方法を追求していきたいです。

清水氏:合原さんのように、いろいろと工夫していただきながら、売電と農産物の両方の収入をバランスよく得られる仕組みを可能にしていくことが重要だと思います。農林水産省の方でも、大学やJAなどの協力を得ながら、いい事例を増やしていきたいと思っています。

合原氏:垂直型の発電設備について「低いところに設置されているのでダメなのでは?」と言う農業者の方もいますが、薄い垂直型のパネルですので、農耕に影響はなく、それほど高いところに設置する必要はありません。規定についても正しい認識が広く共有されるよう、周知していただけるようにお願いしたいです。

小林氏:清水さんがおっしゃったように、農業との合わせ技で収益化できることは、ソーラーシェアリングの強みだと思います。10円ほどの単価で販売できるなら、電力会社に売るよりは、電気を使いたい人と直接組むことも可能になるでしょう。ただ、夜間や非常時に電気を使いたいとなると、バッファとして蓄電池などは必要になると思います。参加者の方から、もうひとつご質問をいただきました。「農地で発電した電力を企業の工場や事業で使用している良い事例はありますか? 地産地消を進める上で、企業が関わって事業の信頼性を高めるような取り組みがあるといいと思いますが、いかがでしょうか?」

合原氏:現状、そういった事例はまだ見られていませんが、キノコの栽培設備の上に太陽光パネルを設置して、それに使う設備を開発しているところはあります。私共の方でも、自社工場でそうした設備をつくれないかというご相談を受けており、1〜2年のうちに実現する方向で進めているところです。近い将来に、良い事例が出てくることを祈っております。

清水氏:企業が工場の近隣の畜産農家から出る糞尿からバイオガスを取り出し、稼働エネルギーとして使用することで、脱炭素化を進める計画を進められている例があります。RE100(Renewable Energy 100%)への機運が高まる中で、農業や畜産などとのコラボレーションも出始めているように思います。

小林氏:素晴らしい流れだと思います。長野県富士見町にジュースなどを製造する工場があるのですが、隣接するトマト栽培の施設にCO2や温水を供給し、さらに太陽光発電の導入も検討している取り組みがあると聞きました。こんな風に、法人を越えたエネルギーのやりとりが実現すると面白いですし、もっと言えば、丸の内で働く人々が、密接関連先として電気を購入するようになれば、新しいつながりが生まれるのではないでしょうか。さまざまな市町村では今、まずは自分たちが使う電気をRE100にしていこうという動きがあるので、公共機関が名乗りを上げてもいいのではないかと個人的には思います。

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