2013年度第4回地球大学Eating Design Committeeが、3月10日(月)に開催されました。ファシリテーターは、竹村真一氏(京都造形芸術大学教授)、ゲストに中山孔壹氏(中山歯科矯正医院医院長 統合医学博士 ゲノムドクター認証医)を迎え、行われました。
はじめに竹村氏より挨拶がありました。
「3.11から3年が経ち、被災地と共に日本全体を災害リスクに強い国にしていくために考えようということで、いわき市在住の歯科医師であり統合医療の専門家でもある、中山先生にお越しいただきました。
中山氏は、福島の子どもたちの健康状態をモニターされてきました。現在、心配されていた甲状腺がんが発症してきています。しかし、酸化、老化に対して抗酸化作用を強め、がんは予防し得るものとなってきており、中山氏は実践されています。子どもたちが日常的に服用しやすく親しみやすいガムを、抗酸化作用のある水素ガムとして製品化されています。
そのガムがどのような経緯と発想で生まれたのか、日常的に予防できるものとして、世界の子どもたちにどのように役立っていくのか、ビジョンを含め、未来に向けて今私たちは何ができるか、ご提言いただきたいと思います」。
福島の子どもたちが一番心配していることは、健康について。つまり「発がん」です。数年前までがんは、5mmくらいの大きさになるまで発見できませんでした。しかし、遺伝子検査技術の発展により、5mmの大きさになる前に発見ができるようになってきています。
毎年超音波の定期検診を行い対象群を広げていますが、予防にも力を入れている中山氏は、たとえ被爆をしても、がんの発症を抑えることができる可能性があると言います。
チェルノブイリの研究結果に、非常に興味深いものがあります。1986年に発生したチェルノブイリ原発事故後8年のネズミの研究では、地表で活動しているネズミは外部被爆、そして食物からの内部被爆をしているにも関わらず、特有の病気がほとんど見つからず、異常を持ったネズミもほとんどいませんでした。しかし、常にチェルノブイリにいるわけではない渡り鳥のツバメには、異常が多く見つかりました。
この結果を分けたものはなにか。ネズミはSOD(スーパー・オキシド・ディアムターゼ)酵素で活性酸素、フリーラジカルを除去できたことがわかっています。対してツバメは、長距離の移動により活性酸素が溜まった状態で被爆したため、活性酸素の処理が追いつかなかったのです。
放射線の影響は、遺伝子を損傷させる直接的な影響以外に、活性酸素をつくることによって間接的に発がんをさせることがわかっています。活性酸素はほとんどの病気と老化に関わっていると注目され、研究が進められているそうです。
酸化度を下げるヒントを得たのは、疫学研究の第一人者、ジョン・スノウ氏のとった方法、"観察し違いを比べ仮説を立てる"からです。
酸化度を抑えるような取り組みをすれば予防に繋がるのではないかと考え、中山氏は実際に被災地域をまわり、抗酸化作用のある食べ物、水、サプリメントを如何に摂るか、運動、睡眠の重要性も含め、予防法を伝え続けました。そして2013年9月、水素ガムの開発に至ったそうです。
水素は抗酸化作用の他に、遺伝子にも作用することがわかっていて、がん予防に効果を発揮します。噛むことで、唾液内の抗酸化作用物質との相乗効果が見込め、1日1個、1ヶ月の期間16人の子どもたちに噛んでもらった結果、全員の酸化度が大きく下がったそうです。
しかし、子どもたちのほんとうの健康を考えたとき、ボディのケアだけでは足りません。中山氏はマインドとボディをひとつのものとして捉える、ボディ・マインド・コンプレックスという統合医療の研鑽を20年重ねてきた中で、マインドも非常に重要と話されます。
3000年前のインドの文献に、肉体はマインドに覆われているという記述が残されています。マインドがボディに与える影響は、現代の医療者の間でも、研究が行われていました。
肉体が変化する前に、必ず精神的な変化があるということに気づいたエドワードバッチ博士は、マインドをコントロールすることで、病気を予防できるのではないかと考えました。NK細胞の量もマインドに影響されることが分かり、医療の世界でも、イノベーションが起こりつつあります。近い将来、健康診断で「幸せですか?」と幸福度を聞かれる時代が来るかもしれませんと中山氏は話されました。
幸福度を上げるのに効果的なのが"利他の心"だと言います。幸福度の高い国、ブータンの国王が震災後福島を訪れた際、利他の心に満ちた言葉を残されています。
「龍を見たことはありますか?龍はみなさんの心の中にいます。龍は経験を食べて大きくなります。困難な経験ほど、龍を大きくします。私がまた来た時に、みなさんの龍が成長している姿をぜひ見せてほしい」。
つぎに、ボディとマインドが合わさった結果、被爆後発症しなかった事例を紹介されました。
秋月辰一郎博士という、長崎で被爆された医師のお話です。秋月博士の病院で被爆された方々は、桜沢方式と呼ばれる食養生を行っていたことで、原爆症にはかからなかったのです。食養生の内容は、放射線との負の相乗効果を避けるため、陰性である砂糖を摂取しないというものです。酵素の活性化を促すため、鉄・亜鉛・銅・マンガンなどのミネラルを多く摂取することを大事にされていました。また、秋月博士への信頼は厚く、言う通りにしていれば大丈夫と、安定したマインドも重なり、予防に至りました。
さいごに、ボディとマインドの予防にとって一番大事なものは"生きがい"だと言います。
「健康なボディをつくる生活習慣とそのマインドを長く保ち続けていくには、生きがいが必要不可欠です。今後、子ども達が生きがいを見つける手助けを、環境を、どのように大人がつくっていくのかが一番大切だと思っています」とまとめられました。
後半のディスカッションでは、水素ガムの流通や入手方法、生きがいを持たせるために必要な土台づくりなど参加者からも多く質問が寄せられ、活発な議論の場となりました。
科学研究の最前線を交えながら、地球環境のさまざまな問題や解決策についてトータルに学び、21世紀の新たな地球観を提示するシンポジウムです。「食」を中心としたテーマで新たな社会デザインを目指します。