富士ビルディング3階、3×3Labo内で「触れる地球ミュージアム」オープニング記念トークショーが、1月24日(金)開催。100名以上の方が参加され、科学界をはじめ各界の方々によるトークショーが展開されました。
【トークショー登壇者】(登壇順)
・竹村真一氏(触れる地球ミュージアム主催者 ELP代表)
・為末大氏(アスリート・ソサイエティ代表理事)
・鈴木エドワード氏(建築家)
・飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所長)
・赤池学氏(科学技術広報財団理事、キッズデザイン賞審査委員長)
・菊池秀文氏(砧南小学校教諭)
・河口真里子氏(大和総研主任研究員)
・日下晴彦氏(MCHC地球快適化インスティテュート総務企画室長)
・杉本信幸氏(味の素 環境・安全部 兼 CSR部専任部長)
・森田清輝氏(ウェザーニュース取締役)
・広河隆一氏(フォトジャーナリスト、Days Japan編集長)
・楠本修二郎氏(カフェカンパニー代表、経産省クールジャパン委員会)
・稲本正氏(オークビレッジ代表)
・井上成氏(33Labo主催者、三菱地所 都市計画事業室副室長、エコッツェリア専務理事)
竹村氏が企画する環境教育ゾーンで、8月末までの限定オープンです。生きた地球をリアルタイムに感じ、学ぶことのできるデジタル地球儀「触れる地球」5機を、常設展示しているミュージアムです。
はじめに、竹村氏より「触れる地球」の可能性についてお話がありました。
「触れる地球は、キッズデザイン賞で、最優秀賞である内閣総理大臣賞を受賞するなど、よいスタートを切らせていただきました。これから第2フェイズの始まりです。私たちの仕事は地球儀を売る仕事ではなく、地球人をつくる仕事です。地球的にモノを見て、地球的に思考するためのツールとして、この地球儀を使う。そうした観点から地球儀を5台並べ、地球人をつくれる空間として、触れる地球ミュージアムをオープンさせていただきます」。
地球儀のプロフィール紹介も行われ、さまざまな機能を持つこと、データの更新によって如何様にも使うことができることなどを紹介されました。
つづいて、ゲストによるトークショーです。
為末氏:ハードル走という競技を突き詰めていくと、最終的には重力をどうはじくかが、走るコツになってきます。重力を考え地球儀を見ると、地球の反対側では逆方向に地面を蹴って飛び、走っている人がいるのだなと実感できます。オリンピックでは国を背負って競技しますが、私が指導する際は「それ以前に、人類の可能性にチャレンジしているのだ」ということを言います。この地球儀があれば、より人類全体の共通の思いを実感できるように感じました。
鈴木氏:宇宙船地球号というフレーズを世に出した思想家、バックミンスター・フラーが、一番アンビシャスに提案してきたドリームプロジェクトはワールドゲームというものです。地球をひとつの生き物と捉え、100%の人類が平等にというプロジェクトでしたが、公共があることと、ゲームを遊ぶツールがなかったのが成功しなかった理由に挙げられます。ですがここに、フラーが夢見た強力なツールが完成しました。このツールを使い多くの地球人を育てることができたなら、いつかドリームゲームという夢プロジェクトが実現するのではないかと思います。
飯田氏:エネルギー分野では、地球規模で社会の構造変化の時代を迎えています。エネルギーは独占型のものであり、権力でしたが、自分たちの手に取り戻せる時代がやってきています。一昨年の暮れの地点で、太陽光・風力発電の設備容量が、原子力発電を抜いていることがグローバルなのです。福島でも地権者が中心となり、自然エネルギー発電の取り組みが始まっています。変化を目に見えるよう、自然エネルギー発電が勢いを持って増えている様子も、いずれ地球儀に入れて欲しいと思います。
赤池氏:子ども達を含めた市民そのものをスマートにしていく、さまざまなアクションプログラムを展開していくべきだと思っています。そういう意味で、触れる地球というのは、とても可能性がある。偏差値教育、学習に使えるのではないかと。現状の触れる地球は、社会・科学の情報が少ないので、高校の世界史の情報を入れたり、ダイバーシティを含めた、公共的な情報を入れたり、自然科学なども。気候変動と歴史の関係も学ぶこともできます。
触れる地球は、竹村先生とセットでポテンシャルを発揮している様子なので、人材育成にも力を入れていければと思います。
菊池氏:触れる地球を我が校に持ってきて、竹村先生に講義を開いていただきました。学校での講義のプロトタイプをやっていただきたくお願いし、公開授業という形で実施いたしました。講義を受けた子ども達は150人以上、全員が地球儀に触らせていただきましたが、その様子を見ていると、この地球を囲んで、コミュニケーションが円滑になり、またさまざまな発想が出てくるのではないかと感じました。ぜひ学校に導入していただきたいと思います。
河口氏:宇宙飛行士が宇宙から地球を見る。神様の目で見られるのだなと、羨ましく思っていましたが、俗人でも神様の視点で見ることができるのは、素晴らしいことであると同時に、地球が生きていると実感できる。それを子どもの頃から感じられる21世紀の子ども達は、20世紀で得られてきた知識を、インテグレートしていくきっかけとして、素晴らしいツールになると思いました。
学校への導入が難しいのであれば、イメージで勉強できるツールでもある訳ですから、塾とタイアップしていけるのではと、期待しています。
日下氏:我々はなぜ炭素を解りやすく発信しなければならないかというと、"これからは低酸素社会、脱炭素社会"という言い方をされているからです。身の回りのものは、ほとんど炭素で構成されている訳です。椅子、机、触れる地球も炭素で構成されています。炭素の重要性を認識すると、"新炭素社会"が我々の目指すべき社会だと、発信しています。持続性のある地球の実現に向けて、少しでも貢献していきたいと、「炭素の魔法展」を共催させていただきました。炭素がどれだけ地球人の生活に寄与しているか、どういう可能性があるのかということを、5台の触れる地球を使いダイナミックに表現できればと思い、企画しています。
杉本氏:触れる地球のオーナーとして、このミュージアムに参画できたことを、嬉しく思うと同時に、大変ワクワクしています。
味の素グループでは、アミノ酸を中核にし、食の社会課題解決に取り組んでいます。触れる地球は、その取り組みをやろうとしている姿勢、正しさを実感させてくれるパワーツールだと思いました。アミノ酸は全ての生命の元です。地球上全ての命に対する責任を、非常に自覚することができたツールです。食、健康、栄養の問題を、我々が持っているコンテンツを使いながら、データをどんどん触れる地球に入れて使っていきたいと考えています。
森田氏:毎週金曜日、18時からの番組を地球ミュージアムからお送りすることになっていますので、気象という面では協力できるのではと思っています。
自慢話と、反省と、これからのこと3つをお話させていただきます。
まず自慢話として、現在80局で天気予報をやらせていただいています。その中で、ひまわりの衛星画像を身近に感じられるようにできたのは、少しですが世に貢献できたのではと思っています。
反省は、テレビで見る天気図は画角の関係で、20年以上アジアしか表示していません。天気予報を通じて世界を考えるというチャンスを潰してしまったのではないかと、今になって反省しています。
反省を踏まえてこれからは、まさにこの触れる地球を使っての視点で、番組などをやっていくことだと考え、挑戦していきます。
広河氏:世界で起きている衝突の最前線から、差別、貧困、饑餓の問題、天災被害など、私たちジャーナリストは、半年以上に渡って撮影します。世界中で起きているさまざまな問題を、触れる地球儀でお見せできるようにすることを考えています。
日本でも東日本大震災がありました。現在も原発から人の心まで、問題を抱えています。そんな方々にも、この地球儀を囲んで話ができるようにできればと思っています。
楠本氏:20世紀はWindowsが二次元の世界の窓になったわけですが、21世紀は三次元で、宇宙から見ることができるようになってきたということです。
私はカフェ屋という"水商売"をしています。水のように流れてしまう不安定な商売ではなく、本物の水のように人間をつくり、地球をつくり、地球を駆け巡り、情報を循環させて、潤すことができるのが水商売だと思っています。そのような繋がりが、触れる地球で可視化できるというのが、21世紀のOSなのだなと感じています。21世紀は、感性、未来をつくっていく構想力というのが大事だと考えています。若者をクリエイティブにしていく場がご一緒できればと思っています。
稲本氏:地球は、重さで言うと鉄の惑星、表面は水の惑星なのです。人間も水が大半を占めています。しかし地球のことはほとんどわかっていない。
アマゾンで森林がものすごい勢いで減少しています。触れる地球でも見ることができる、森林火災の衛生データでもわかるような減り方です。京都盆地ぐらいの広さが、毎日無くなっていくスピードです。森林が減ることも問題ですが、まだ人類が発見してもいない、生物多様性の遺伝資源という素晴らしい宝箱を、開けもせず失い続けている。その気づきの場にもなっていってほしいと思います。
井上氏:この3×3Laboでは、企業、業種、肩書き、性別すべてを取っ払い、みんなが交流して知をぶつけ合い、創造していく空間にしたいと伝えています。ただ、皆様にお集りいただくだけで、簡単に何かが生まれる訳ではないと思っていますし、イノベーションも容易ではありません。どのようにそこへ繋げていくかは、今日お集りいただいている皆様の宿題であり、チャレンジであると思っています。イノベーションを起こしていきたいと思っていますので、第一弾として三菱ケミカルさんですね。ぜひ新しいビジネスに繋げていけるよう、この施設をご利用いただきたいと思います。
さいごに、
竹村氏:企業はどちらかというと、地球にネガティブな作用をしているというイメージがありますが、たとえば三菱ケミカルさんの炭素技術や、味の素さん、ウェザーニュースさんの取り組みであったり、人類にも地球にも、ものすごい価値創造をし得る、素晴らしい資源があります。それを社会全体で育てていく空気、空間が無いのが日本を失速させている大きな部分ではないかと思います。そういう意味で、企業コラボレーションを行っています。表面的なCSRではなく、企業が持つ革新的なリソースを社会の公共財としてリキュレートしていく空間を、地球儀を5台並べてやろうということです。とまとめられました。
その後の懇親会では、ミュージアムに移動して行われ、参加者の交流がさらに深まり、イノベーションの種が生まれたのではないでしょうか。
科学研究の最前線を交えながら、地球環境のさまざまな問題や解決策についてトータルに学び、21世紀の新たな地球観を提示するシンポジウムです。「食」を中心としたテーマで新たな社会デザインを目指します。