
2024年11月に開催した丸の内コミュマネ大学プレイベント「コミュニティの未来予測」を経て、2025年4月、「丸の内コミュマネ大学」がいよいよ開講しました。今年度は、「コミュニティの最前線」を切り口に、共創を生むコミュニティのあり方やコミュニティマネージャーこと、"コミュマネ"について、社会をアップデートする素地を参加者の皆さんと創りあげていくことを目指します。4月11日(金)に開催した第1回は、全国でコミュマネを輩出し続けている嶋田瑞生氏(株式会社ATOMica 代表取締役Co-CEO)をゲストに迎え、「『みんながコミュマネ!』の社会を創るには」をテーマにお話いただきました。その模様をレポートします。
冒頭、田邊智哉子(3×3Lab Futureネットワークコーディネーター)と神田主税(3×3Lab Future館長/丸の内コミュマネ大学 プロデューサー)が登壇し、丸の内コミュマネ大学にかける想いを参加者の皆さんと共有しました。
「近年、さまざまなコミュニティで活躍するコミュマネの存在感が高まっています。こうした流れの中で、業種や地域の枠を越えてコミュマネ同士がつながることが、コミュマネの社会的な価値を高めると私たちは考えています。そのつながりのハブになることを目指して、丸の内コミュマネ大学を立ち上げました。『さんさんコミュマネ研究会』と連動しながら、最新の情報を共有し、コミュマネの役割やコミュマネ力について共に考えるワークショップなども行っていく予定です。皆さま、どうぞよろしくお願いいたします」(田邊)
「コミュニティの運営やコミュマネの育成に関わる関係者の皆さまにもご協力いただきながら、コミュマネについて学び合い、成長していける場にしていきたいと思っています。『丸の内』という名が付くからには、企業内におけるコミュニティのあり方やコミュマネの役割も探求しながら、今後は、コミュニティスペースやインキュベーションラボ連携のイベントなども開催していければと考えています。今年度はオープンスクール形式で4回開催する予定で、今日はその記念すべき第1回です。コミュマネと一口に言っても、定義はとても広いので、まずはそうした部分から皆さまと一緒に考えていければ幸いです。皆さんがコミュマネですのでコミュニケーションを取りながら楽しく学びを深めていきましょう」(神田)
続いて、丸の内コミュマネ大学第1回のゲストである株式会社ATOMica 代表取締役Co-CEOの嶋田瑞生氏が登壇しました。ATOMicaは「コワーキングを起点とした共創を持続的に生み出す独自の仕組み=ソーシャルコワーキング®事業」を全国で展開しているスタートアップです。ソーシャルコワーキング®事業とは、単なる派遣ではなく、場とコミュニティの企画運営を通じて、共創につながる関係性を生み出すサービスです。ATOMicaは、テクノロジー・オペレーション・組織力のかけ合わせにより、全国各地で約50施設を展開しながら、この事業の柱となるコミュマネを200名以上(施設数、コミュマネ人数共に2025年8月1日時点)採用してきました。
「これまで、"この人と出会わなかったら、こんなことできなかったな"と思える出会いによって、人生が好転した瞬間が何度もありました。そんな素敵な出会いを日本中に増やしていきたいという同じ思いを持つ南原君(ATOMicaのCo-CEO)との出会いもそのひとつです。今思えば、そうした出会いのそばにはいつも、そっと背中を押してくれる起業家の先輩や、良い意味で少しおせっかいな地元の先輩など、コミュマネと呼ぶにふさわしい人たちの存在がありました」(嶋田氏)
「ATOMicaが掲げるミッションは、『頼り頼られる関係性を増やす。』、ビジョンは、『あらゆる願いに寄り添い、人と人を結び続ける。』です。これらは私たちのミッション、ビジョンであると同時に、コミュマネのミッション、ビジョンでもあると思っています。『コミュマネの仕事は何ですか?』と聞かれたら、『WISHをKNOTすること』と私たちは答えています。WISHとは、願い事や相談事、悩み事のことで、KNOTは『結ぶ』を意味します。このWISHを言語化することが、コミュマネの最大の介在価値だと思っています。コミュマネは、場とコミュニティの運営を通じて、利用者の方たちとの関係性を構築し、言葉になったWISHをもとに『だったら、この人と会ってみたら?』と"推す"ことで、関係性を結ぶプロフェッショナルだと考えています。ATOMicaがもうひとつ大切にしているのは、コミュマネになりたかったら、どんな人でもなれるという世界観です。実際、ATOMicaでは、200人以上のコミュマネが活躍していますが、そのうち97人のほとんどが未経験からスタートしています」(嶋田氏)
次に、嶋田氏は、「利用者との関係性はどう作るのか」をテーマに、こう語りました。
「コミュニティの利用者が自然と出会いを重ねる世界観を実現するまでには、相当な時間がかかります。ですので、利用者同士が自発的に仲良くなることを前提にしない方がよいと思います。まずは、コミュマネと利用者が1対1で関係性を築くことが大切です。お互いの顔と名前を知ることから始まり、徐々に話をするようになり、やがて、個人的な相談を受けるようになって、協力し合うようになるという風に、段階を追っていくことが大事です」(嶋田氏)
「その最初の会話のきっかけとして活用したいのが、施設の受付です。特に用事がなくても話しかけることができるボーナスステージのような場所ですからね(笑)。ATOMicaは、『受付には神が宿る』という考えのもと、受付には必ずスタッフが常駐し、入退室管理も全て人力で行うようにしています。また、七夕や書き初め、節分など季節のイベントを開催したり、入居企業のプレスリリースを壁に掲示したりもしています。喜んでいただけますし、会話のきっかけが生まれることも多いです。このように色んな工夫を取り入れながら、少しずつ関係性を深めていくと、『ちなみに、今度ランチ会やるんですけど、一緒にいかがですか?』『ちなみに、起業に興味があったりします?』といった話ができるようになります」(嶋田氏)
最後に嶋田氏が取り上げたのは、コミュニティに欠かせない「イベント」についてです。
「現在、ATOMicaは、全国各地で約50施設を運営しています。仮に月1回イベントを開催した場合、月50本、年間で600本のイベントを実施している計算になります。さすがにこれだけの数をこなしていると、見えてくることがあります。ですので皆さん、この機会にぜひ、我々の経験を活かして"ショートカット"してください(笑)」(嶋田氏)
「突き詰めていくと、イベントには3パターンしかないことが分かりました。『何かを学びたい』『誰かの話を聞きたい』『自分と同じ属性、または違う属性の人と交流したい』の3つを参加欲求として整理することができます。あとは、この3つをベースに色んな要素を掛け合わせたり、お化粧していく感じです。好評だったイベントがあれば、どこが良かったのかを徹底的に掘り下げてみるのもおすすめです。ATOMicaでも、1つのイベントをベースに10種類ほどのイベントを作ったりしています。イベントの内容が全く同じだったとしても、イベントのチラシの文言など、伝え方ひとつで違うイベントになるというのも、これまた面白いところです。例えば、『先輩起業家の話を聞こう』の代わりに、『県内スタートアップ パイセンの話を聞いてみよう』にしてみるという風に、対象者に合わせて、イベント名の表現を柔らかくしたり、固くしたりすることもできます。イベントの企画は、中身を作ることに加えて、こうした外側をいじる楽しさもあります」(嶋田氏)
「利用者の方に制限を設けたくない。『誰だって来ていいじゃん』というスタンスを大切にしています」と嶋田氏。
「『もしかして私、コワーキングに行ってみたいかも?』と感じてもらうことがすべての始まりです。施設に来ていただいたら、そこから階段を一段ずつのぼるように、利用者の方との関係性を築いていくことが大事だと思います。その1段目から2段目、さらに次の段へと進んでいくプロセスを丁寧に進めるために、コミュマネは存在し、活躍しているのです」(嶋田氏)
その後、3×3Lab Futureネットワークコーディネーターの田邊が皆さんに投げかけたお題「どんな時に、自分や周囲の人がコミュマネしてると感じますか?」に対しては、「この人とあの人をつなげたらいいかも!とビビッときた時」、「企画運営を行ったイベントで、参加者の方から楽しかったと言ってもらえた時」など、さまざまな意見が飛び交い、大いに盛り上がりました。
後半は、渡邊知氏(株式会社ファイアープレイス CEO)を交えたパネルディスカッションが行われました。議論のテーマは、ATOMicaが他社のオフィスでコミュマネの常駐を行う「コミュマネinオフィス」や、コミュマネの呼称における細分化、地域を豊かにするために必要なコミュニティと他の要素との掛け算など、多岐にわたりました。
左から、田邊智哉子(3×3Lab Futureネットワークコーディネーター)、神田主税(3×3Lab Future館長/丸の内コミュマネ大学 プロデューサー)、嶋田瑞生氏(株式会社ATOMica 代表取締役Co-CEO)、渡邊知氏(株式会社ファイアープレイス CEO)
なぜ、コミュマネの敷居をもっと低くしていきたいと考えているのかという渡邊氏の質問に対して、嶋田氏は「つまるところ、コミュマネが好きだからです。コミュマネの仕事が面白いと思っているので、より多くの人に味わってもらえたらいいなと。選ばれし者だけができる役割ではなく、やる気がある人なら誰でもできる仕事にしていきたいという思いは、創業当初からありました」と答えました。
「各施設や個人でスタンスは異なりますが、コミュマネの定義が定まっていない中、『私はコミュマネの役割はこうだと思う』と自分の意見を言い続けることが一番大事だと思っています。正解もなければ間違いもない。だからこそ、持論をたくさん考えて、周りの人と共有することが、やがてコミュマネの定義の輪郭を形づくると信じています」(嶋田氏)
最後に、3×3Lab Futureの館長であり丸の内コミュマネ大学 プロデューサーの神田は、「今年度から、3×3Lab Futureを実験場として、『全員コミュマネ戦略』を進めていきます。『誰もがコミュマネ』の世界観を、皆さんと一緒につくっていけたら幸いです」と締めくくりました。
7月11日(金)に開催予定の丸の内コミュマネ大学第2回は、コミュマネの学校「BUFF」を運営している加藤翼氏(株式会社qutori CEO / 株式会社ロフトワーク コミュニティデザイナー)をゲストに迎え、BUFFを卒業した受講生のキャリアなどについてお話いただきます。乞うご期待ください!