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【レポート】都市養蜂の未来へ(前編)

第1回 BEE COMミーティング 2020年2月8日(土)開催

11,13,15

近年、まちづくりや地域活性化の方策のひとつとして全国に広がっている養蜂活動。その養蜂コミュニティ(BEEkeeping COMmunity)が一堂に集結する、「第1回 BEE COMミーティング」が開催されました。このBEE COMミーティングは、養蜂活動から広がる新しい価値創造の可能性を探ることが狙いとなっており、主催は、銀座ミツバチプロジェクト(略称:銀ぱち)、エコッツェリア協会の2者。

エコッツェリア協会は、2016年7月に組成された「丸の内ハニープロジェクト実行委員会」に参画し、銀ぱちの田中淳夫氏の協力のもと、大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアで都市養蜂を行っており、今後のまちづくりに都市養蜂を活かしていきたいと考えていることから、今回のミーティング開催に至っています。田中氏は、本ミーティングの開会にあたり次のように述べ、期待を語っています。

「銀座での取り組みから、今は東京駅周辺の大丸有エリアでも、皆さんと一緒にミツバチを飼育するプロジェクトに取り組んでいるが、そもそもなぜ今、都市養蜂なのか。やることにどんな意義があるのか、禅問答のような議論をしていたことがあった。答えの出るような話でもなく、いつも悩んで終わっていたが、今回はその意義について、都市養蜂をやっている人たちで集まって考えてみたらどうか、また各地の取り組みを聞くことから始めよう、と思っている」

この日は、銀座ミツバチプロジェクト、大丸有エリアの取り組みを皮切りに、東京から自由が丘、赤坂のほか、京都、島根、愛知と、全国の7事例のプレゼンテーションがありました。また、後半は事例発表を元にしたワークショップを実施し、今後の都市養蜂活性化のアイデアを議論しました。

※後編はこちら

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銀ぱちと大丸有

銀ぱちと大丸有

まず、銀ぱちの田中氏から、銀ぱちの軌跡と、これまでに感じた都市養蜂の問題と可能性についての発表がありました。

銀ぱちは2006年、当時皇居前にあった社民党本部の屋上で養蜂を営んでいた岩手県の養蜂家・藤原誠太氏を師匠に迎えて「出会い頭のように始めてしまった」(田中氏)もの。

「銀座の訪問客数は1日40万人。ミツバチなんて飼って刺されないか、大丈夫なのか、というご指摘、こんな都市空間で蜜源があるのかという心配など、当初から多くの心配はあったが、なにか問題が発生したら、丁寧に対応していこうという姿勢でスタートした」

まちなかでの養蜂につきものの心配はあったものの、刺された等で大問題になることもなく、徐々に地域に浸透し、全国的な知名度も高めていくことになりましたが、都市養蜂の特徴として「人と人をつなぐ縁」になったこと、「地域課題とのつながり」を築くことができたことを田中氏は指摘します。

人と人をつなぐ縁とは、養蜂・ハチミツが、さまざまな人がつながる契機となるということ。これは、さらに具体的な活動につながる契機にもなっています。

「勉強会を開いたりするうちに、銀座にいるさまざまな人たちとつながるようになった。銀座は職人の街なので、ハチミツを使った商品開発も盛んに行われるようになり、こういった方々に支えられてきたとも感じている。また、中央区役所も巻き込んで、ミツバチのために花を植えたり、銀座を囲む花の回廊を作ったりといった動きにもつながった。高速道路が地下化したあかつきには、構造物を生かして花を植えたらどうかという提案をしたこともある」

地域課題とのつながりとは、養蜂に地域課題解決の視点を交えた活動を指しています。きっかけは、2011年の東日本大震災からの復興支援でつながった福島県福島市や須賀川市との関係です。両市ともに、今では毎年蜜源のために銀座の公園に植樹をしてくださる間柄になりました。そこに地域のさまざまな課題を乗せていこうと考えるようになり、ハチミツと地域の特産品を組み合わせた商品開発、販売などにも取り組むようになったそうです。「行き止まりのような限界集落」でも、地域にある特産のものを使って、街の中で展開できる商品を開発できると田中氏は言います。そして銀ぱち15年目を迎える今年は、この関係をさらに大きく広げていこうとしています。

「養蜂を通じてさまざまな地方の再生可能エネルギーの方々と知り合ったことがきっかけ。これからの時代、エネルギーにおいて我々はどうあるべきかを考えたときに、アラブの王様にお金を払って温暖化を促進させている時代でもないだろうと。豊岡、宝塚、会津といった地域の皆さんがたと、『ミツバチソーラー』といったことを考えている。具体的な形はこれからとなるが、エネルギーを含めた地域の問題に深く関わるようにしていきたい」

大丸有での養蜂は、エコッツェリア協会が銀ぱちとタッグを組んで取り組んでいる事業であり、エコッツェリア協会理事の村上はその目的を、(1)生態系の改善 (2)都市の魅力・価値づくり (3)社会課題解決につながる新たなコミュニティの形成 (4)商品開発と丸の内ブランドの創出 (5)全国・全世界の都市養蜂プロジェクトとの連携の5点挙げています。今回のBEE COMミーティングは(5)の連携促進の流れに沿ったもの。

現在のところ、毎年、大丸有のビル低層部の屋上に巣箱を置いた養蜂を行っており、巣箱の日常的な管理は銀ぱちが行っています。採蜜のタイミングで大丸有のオフィスワーカーから見学者、協力者などを募り、ゆるやかにコミュニティを形成しています。「大丸有の就業者とどうつながるか、ハチミツを活かした商品開発や物販を行う事業者とどうつながるか」が主要な観点であると村上は話しています。

対談「都市養蜂の意義とは」

続いて、田中氏と村上の2人が対談形式で都市養蜂を考察しました。テーマは「都市で養蜂活動を行う意味は?」「都市養蜂はコミュニティづくりに有効か?」の2点です。この議論は、このあとの事例発表を考えるうえでの視点にもなっています。

1点目については、「自然」との出会い、発見、気付きが挙げられました。

「私も都会生まれで、アブと蜂の区別もつかないところから始まったが、桜の花が、ミツバチによって受粉すると色が変わるのを見て知り、木がメッセージを送っているのだ、太古の昔からの生命のつながりがあるのだと気付かされた。また、分類上養蜂は畜産だが、ミツバチのほうでは飼われているという意識はない。逆に人間がミツバチにいてもらうために手を尽くさないといけない。その意味で、生き物に対して謙虚になる。ミツバチだけでなく、生物全体に対する付き合い方が変わる。

さらに、自然との向き合い方も変わるのではないか。昨年の夏は雨が多くて日照時間が短かった。そうすると、せっかく花が咲いても蜜が少ない。ようやく晴れたと思ってもミツバチが取りに行ける蜜がないということになる。自然とは本当に理不尽なものだと思い知らされる」(田中氏)

村上からは、都市の価値向上につながっていることの紹介がありました。

「丸の内では養蜂を始めたことで、まだ数多く残るビル低層部の屋上を有効利用でき、街の魅力向上にもつながっている。特に子どもへの人気が高く、子どもが少ない大丸有では貴重なリソースになっている」(村上)

2点目のコミュニティ形成については、田中氏が銀座で世代や職種を越えたコミュニティが形成されている例を紹介しました。夏の暑い盛りに採蜜から瓶詰めまで銀座の皆さんとやることがあるのですが、そういう時には多様性に富んだ集団になるそうです。

「採蜜と瓶詰めの作業をしていると、子どもや主婦の方のすぐ隣に有名なバーテンダーさん、シェフがいたりする。まちに住む多様な方々が一様に作業する。他ではなかなか見ることのできない集まりになっていて、これもミツバチを通じたコミュニティの形成であるといえるのでは」(田中氏)

これらの対談の内容を踏まえ、各地の事例発表へと移ります。

「丘ばちプロジェクトが考える都市養蜂の未来」――丘ばちプロジェクト隊長・中山雄次郎氏(自由が丘商店街振興組合事務長) 

丘ばちプロジェクトは、2009年、銀ぱちに師事する形でスタートし、今年で11年目を迎える都市養蜂活動です。初年度にバラのハチミツを作ることができたことをきっかけに、バラを軸にしたまちづくりと都市養蜂に取り組んでいます。自由が丘というまちのブランドを活かした都市養蜂の活動と言えるでしょう。

養蜂活動のグランドコンセプトは「ミツバチは、人と自然をつなぐもの」。国際養蜂協会連合「アピモンディア」で日本人初の理事を務めた渡辺英男氏の言葉にちなむものです。

「渡辺さんが自由が丘在住だったことから、いろいろ教えていただくことができた。渡辺さんから学んだことは、ミツバチは友達のような横の関係で、人間に決しておもねることがなく、人間が悪ければ、チクリとたしなめる生き物だということ。また、ミツバチに謙虚に学び、地球の営みに合わせて生きる『シクミ』を作らなければならない、ということだった」

この教えを元に、都市養蜂として取り組むべきは「伝えること」だと中山氏。環境や自然を征服するのではなく、自分たちがそれに合わせるのが、あるべき姿『シクミ』であることを、ミツバチをフックに伝えていきたいと中山氏は話しています。そして、それを実行していくために必要なのは「都市養蜂ならではのプラスアルファ」。

「街の知名度や認知度を最大限に活用して、いろいろな角度から、ミツバチを知ってもらうこと。これまでとは違う切り口から、大きな視点でミツバチを意識してもらえるカタチを作りたいと考えている」

これに基づいて、丘ばちプロジェクトで行っているのは「自由が丘バラ計画」、絵本「丘ばちくん」、「丘ばちビール」の3つの活動。

自由が丘バラ計画は、初年度に偶然できたバラの香りのするハチミツがきっかけです。2009年、自由が丘駅すぐそばのビルの屋上で、3群で始めた際に、「とんでもなくおいしいハチミツ」ができあがった。これは後に、すぐ近くにあるインターナショナルスクールの屋上にあった100坪ものバラ園のおかげであったことが分かったそうです。

「理事長の私的なバラ園で、まったく知られていないもの。残念ながら、2011年の東日本大震災を機に、耐震性に不安があるということでバラ園がなくなってしまったが、その代わりにバラ計画を始めることになった」

これは、毎年10月に開催される『自由が丘女神まつり』で、バラの鉢植えを商店街、住民に配布し、地域一帯に同じバラが広がり、咲き誇っている状態を創出しようという壮大な計画です。祭り期間中、駅前の女神像を切り花で飾っていましたが、これを鉢植えのバラに切り替え、お祭り終了後に希望者に持ち帰ってもらい、軒先で育ててもらうというのです

「毎年120鉢くらいで飾るもので、2012年から始めているので、まちの中にもう700~800鉢はあると思う。これが蜜源になるし、住民がバラを通じてミツバチに親しんでくれるようになる。バラ、ミツバチを通じて、まちとしての一体感も増していると感じている。『虫は苦手』という人でもバラなら好きだし、そのうちにバラに寄ってくるミツバチにも親近感を持つようになる。『今日も丘ばちはっちゃんが来てくれたわよ』と報告してくれる方も増えている」

また、自由が丘=バラというブランドイメージ醸成にもつながり、2015年には、バラ界のカリスマ・後藤みどり氏が自由が丘オリジナルのバラ品種の開発に名乗りを上げ、2019年に作出に成功。現在、名前の募集を行っています(新型コロナウイルスの影響により、2021年に発表予定)。

その他、絵本『丘ばちくん』は、養蜂に触れる入り口のハードルを下げるために始めたものです。

「いろいろな人にミツバチに親しんでもらおうと、さまざまな取り組みやイベントをしてきたが、養蜂だ、ミツバチだ、と力んで伝えても伝わらないことがだんだん分かってきた。そこで、大人から子どもまで入りやすいキャラクターと絵本で、世界観を大きく伝えてみたところ、独り歩きしはじめて、ミツバチのように媒介して拡散するようになった」

特に子どもたちは、これまで瞬間的にミツバチに興味は持っても、それが持続しないという悩みがありました。しかし、絵本とキャラクターを活用した塗り絵が好評となり、イベントになると「また丘ばちはっちゃんの塗り絵をやりたい」という子どもたちが集まるようになったそうです。

さらに、大人たちには「丘ばちビール」です。自由が丘の産業能率大学の高原ゼミ、徳島県上勝町と連携して、ハチミツを使ったクラフトビールを開発しました。 「2019年ゴールデンウィークのスイーツフェスタで出したところ、300リットルが"瞬殺"で売り切れてしまった。アルコールが好きな人は多いと思う。今後は、東急電鉄やキリンビールを巻き込んで、さらに提供する機会を増やしていきたい」

これらの取り組みのポイントは「まちに合ったやり方」であると中山氏は指摘しています。まちのイメージやブランド力をうまく活用した自由が丘らしい活動事例であったと言えるかもしれません。

「同志社ミツバチラボ@服部研究室」――同志社大学総合政策科学研究科 ソーシャル・イノベーション研究プロジェクト 服部篤子氏

服部氏が養蜂に取り組むのは「ミツバチに集まる人間の研究」「持続可能な社会構築に向けた社会実験」のためだとしています。

「もともとコミュニティの研究をしている中で銀ぱちを知り、10年ずっと観察してきた。養蜂で住民とのコミュニティを作るということが、田中さん・銀ぱちだからできているものだとしたら、ハードルが高いことになってしまう。なので、本当に人がつながるコミュニティを作れるのか、私でもできるのかを試すために養蜂を始めてみた。養蜂の研究ではなく、そこに集まる『人』が研究対象だ」

服部氏は、同志社大学総合政策科学研究科の教授でありミツバチは専門外。「農学部の先生に聞きながら、銀ぱちから1群分けてもらってスタート」しました。設置したのは西陣産業創造会館という大正10年築の歴史的建築物で、現在は起業・創業支援のインキュベーション施設となっており、コワーキングスペース「Impact Hub Kyoto」もあります。この屋上に巣箱を設置し、ボランティアも募集して作業を行っています。主宰は大学の服部研究室で、Impact Hub Kyotoとは協働の関係となっています。服部氏は実施にあたり、次の3点を目的として挙げています。

・環境指標生物を媒介に持続可能な地域経済を探る社会実験
・社会問題解決手法のモデル開発
・国内外の養蜂コミュニティの交流及びライフスタイルの比較研究

「大元の問題意識は、持続可能な社会を作るために、ある専門家だけで集まっていては、"偏ってしまう"のでないか、もっと多様性に富み、多世代に渡るコミュニティが必要なのではないか、ということ。私自身、阪神大震災を経験したときには、世代を越えて、定期的に気軽に出会える町会とは違うコミュニティがあればと思った。そこで、どの世代に対しても、おいしくて、喜ばれるものがあるという都市養蜂に可能性を感じ、研究するようになった」

現在はワークショップを開催しながら、実作業を交え、採蜜作業を行う「はちみつボランティア」、ミツバチに恩返しするため、蜜源などの周辺調査をする「エコ調査ボランティア」、そして、服部氏曰く「生命の泉に触れる」ことになる、本格的なボランティアの「養蜂ボランティア」の段階的なボランティアコミュニティを組織。今後、このコミュニティをベースにリビングラボを立ち上げ、ソーシャルビジネスに展開する道筋を探るとしています。

「売るために商品開発をする、というよりも、歴史的・文化的な立地や、起業したい人たちのマインド、あるいは地域の人たちが集まって養蜂に取り組んだ結果として、養蜂やハチミツを媒介にしてなにかが商品化され、ビジネスに発展していく、という流れが理想だと考えている」

将来的には、そこからライフスタイルを交えた社会モデルを抽出し、実装に向けた提言まで行いたい考えだと話しています。

「ミツバチによる生物多様性プロジェクト」――株式会社TBSテレビ 総務局 CSR推進部 高橋進氏

赤坂にあるTBSテレビ8階では、6群10万匹のミツバチを飼育して今年で10年目を迎えようとしています。そのきっかけは、COP10(2010年)の折に、サカス広場で生物多様性イベントを開催しようとしたことでした。

「その時、1人では何も思いつかなかったが、国連大学がミツバチのポスターを掲出しているのを見て、『これならできるのでは』と取り組み始めた。上司からは『タレントさんが刺されたりしないだろうな』と釘を刺されて始めたものだが、以来10年、見学者は誰一人として刺されていない。」

高橋氏はTBSの放送記者を経て『世界遺産』や『筑紫哲也・News23』の広報プロデューサーを務め、CSRを担当する現職に着いています。パリ・オペラ座やノートルダム寺院での養蜂など世界の都市養蜂についても明るい人物。「レンゲやクローバーなど、僕らが知っているような蜜源とは違うだろうが、赤坂でもできるに違いない」と考え、取り組みを始めたそうです。TBSビル8階にビオトープを作るなど蜜源の育成にも努めていますが、春には赤坂サカス敷地にある100本の桜が主な蜜源になっています。

「自家受粉はしないソメイヨシノだが、養蜂を始めて実をつけるようになり、商店会長からも喜びの声をいただいた。デング熱が侵入した折には、蚊の駆除のために近くの公園で農薬がまかれたのだが、ミツバチにすぐ影響がでる。本当にコロっと死んでしまうのを目の当たりにした。温暖化とは何も極地の氷が解けるといったことだけでなく、こうした小さなところでも起きるのだと教えられた」

と、地域環境と密接につながった都市養蜂を着々と進めている様子を紹介しました。

採取したハチミツはすべて近隣の関係者、飲食店等に無償配布しており、これによる事業化は行っていません。プロジェクトの8割は、地域貢献として子どもたちへの環境教育に充てている」のが現状です。

「毎年赤坂小学校、青山小学校、青南小学校の3校は必ず来るようになった。子どもたちには近くで見てもらい、触ってもらうこともある。触った子は『温かい!』『もぞもぞする!』と大喜び。巣箱近くで死にかけているミツバチを見て『なぜ死にそうなのか』と衝撃を受ける子もいる。最近の子どもたちはスマホもあるし事前学習でよく調べてくるが、本物を生で見たことはないし、体験することもないので、貴重な体験を提供できていると思う。港区の教育長も、子どもたちがこの体験を忘れることは一生ないだろう、と感激してくださっていた」

TBSでは、体験の後に子どもたちが付けるミツバチの絵日記のコピーを大切に保管しているそうです。

また、生物多様性にも一定の効果が認められています。羽のある飛翔性の昆虫では1年目には2種程度だったものが、5年目以降、10種を超えるようになりました。鳥類は2年目にハクセキレイが飛来、5年目以降、7種を数えるようになりました。

「ハクセキレイや雀は死んだミツバチを食べるだけだが、ツバメは生きているミツバチを1日何百匹も食べて困った!と思っているが、なかなか自然は人間の思い通りにいくものではないということも教えられる。イソヒヨドリなど珍しい鳥も見られるようになるなど、虫も含めてにぎやかになってきた」

今後取り組みたいことは「草むら」であると高橋氏。

「ミツバチだけじゃなく、小さな生物が生まれ、それを食べる虫が集まり、さらに虫を食べる鳥が集まってくるというような、生命の循環を草むらを通して作ることはできないか。人が集まる環境なので、見た目も意識しなければならない。そのため、必ずしもうまくいくかは分からないが取り組んでみたい。また、ミツバチを飼うということは、蜜を必要とする他の昆虫、生き物を除外している可能性があるという指摘もいただいているので、その点にも留意していきたい」

また、見学などの際の話題として、ミツバチの巣の形を利用したハニカム構造など、自然界の構造や生き物の生態を利用する技術「バイオミメティクス」の製品やアイテムなども使っていることも紹介しました。

「萩・石見空港ミツバチプロジェクト by 銀座ミツバチ with ANA」――ANA総合研究所 本橋春彦氏

萩・石見空港では2016年から空港敷地内で10箱20万匹のミツバチを飼育しています。本橋春彦氏は2015年から2018年まで同空港の社長を務め、ミツバチプロジェクトの加速、多様化に尽力。さまざまなコラボ商品を生み出し、2017年には「ハニー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、その活動は内外で高く評価されています。

本プロジェクトは、銀ぱち、広島県の地域活性化NPO「nina神石高原」などの提案を受けて始まったものですが、世界的に見ると空港での養蜂は珍しいものではないそうです。

「欧州、特にドイツでは、飛行機の排気ガスが抑えられている、環境が保たれていることの証明として、空港の敷地内で養蜂をやることが多い。それならば、日本でも同じ取り組みをやってみても良いのではないか。萩・石見空港は便数、利用客が少ないのが悩みだったので、知名度向上という目的もあって、イチかバチか、チャレンジすることになった」

もちろん日本の空港では初の試みとなりました。しかし、2016年には10箱で320kg、17年には20箱640kg、18年は30箱1トン越えと、採蜜量も順調に伸ばしています。

「蜜が取れたらいろいろな展開の可能性があると考えていたので、お菓子、ビール、酢、お酒......といったものをいろいろ作るようになった。130g入りの瓶は、地域にある障害者の方の作業所で詰めてもらうなど、地域との連携も盛んに行っている。このようにハチミツを介して、さまざまな人とのつながり、コミュニティが広がったと感じている」

ハチミツ関連の製品のパッケージは、地域活性化に意欲的なデザイナー・天宅正氏がデザインしたものです。「空港はちみつ 01 IWJ」とあるのは、「IWJ」は萩・石見空港のスリーレターコード、「01」は「一番目」を意味しているのだとか。

「日本で一番目、ということではあるんですが、ANAとしては、空港養蜂のプロジェクトを日本全国、アジア各地に展開したいと考えている。1から始まって、どんどんこのナンバーを増やしていくことにもチャレンジしていきたい」

本橋氏のフットワークの良さは銀ぱち・田中氏も認めるところで、本橋氏の発言に継いで次のように話しています。

「空港へお邪魔した際には、『すぐやりましょう!』と言ってくれて、置き場所はどうしますかと訪ねたら、社長室のすぐ目の前でいいと(笑)。それだと毎回社長室を通って出入りすることになるのでかえって大変ですよということで別の場所になったが、本橋氏自ら地域企業を回ってコラボやタイアップを決めていく、そのフットワークの良さには本当に驚かされた。近隣の農家では、作物の収量が上がったという話もあるそうで、さまざまな形で縁が広がっていることを感じさせる」

「Sustainable Challenge」――愛知県立愛知商業高校ユネスコクラブ 中西氏、宮野氏 、山本さくら氏

愛知商業高校ユネスコクラブは、2013年に同校がユネスコスクール認定を受けたことをきっかけに、ユネスコ関連授業の一貫で始まった養蜂を引き継ぐ形で翌2014年に発足。以来、ミツバチと「エシカル消費」を軸に、地域でさまざまな活動を展開しており、その活動は令和元年度消費者支援功労者表彰で内閣総理大臣表彰、生物多様性アクション大賞2019でSDGs賞を受賞したほか、現代社会の教科書に掲載されるなど、高い評価を受けています。

同校の養蜂は、学校が名古屋城から徳川園までのエリア「文化のみち」に位置していることから「なごや 文化のみちミツバチプロジェクト」として立ち上がり、採取されたハチミツは「徳川はちみつ」と名付け商標登録。

「ミツバチは食料全体の1/3の受粉媒介をしており、その経済効果は約30兆円と言われている。農薬被害や大量死問題などのミツバチの危機は生物多様性や持続可能性な社会の危機でもある。地域に住むすべての生物が共存した持続可能な社会にしたい、そのために着目したのがエシカル消費だった」

エシカル消費とは、人や社会、環境、生物多様性などすべてのものに配慮した思いやりのある消費行動。個人消費はGDPの6割を占めており、「消費には社会を変える力がある」とユネスコクラブのメンバー。そこで、徳川はちみつを使い、エシカル消費を選択するきっかけとなる商品の開発に取り組むようになったそうです。コンセプトは「買って食べて応援できる」。名古屋の地元企業と協働で、ういろう、甘酒、ドーナツなどの商品を開発してきましたが、この日の発表では、地元企業 ぷらんぼんと協働で開発した、復興応援ご当地アイス「希望のはちみつりんご」、ガーナ産のフェアトレードカカオを使用したアイス「幸せのはちみつカカオ」を詳しく紹介。「希望のはちみつりんご」は、売上ひとつに付き8円を小中学校の復興基金に寄付しており、2018年には累計10万個の売上を達成したそうです。

こうしたエシカル商品の開発だけでなく、さらに「行動」に移すきっかけを作るために取り組んだのが「コト消費」への対応です。クラブでは、エシカル消費へと行動変容を促す体験を提供するため、JTBとのツアー「文化のみちを巡る自分磨きの旅」、地元施設との「親子de楽しむ料理教室」の開発、実施に取り組みました。

JTBとのツアーは、旅行に興味のある地域の女性をターゲットに、自分磨きをテーマとし、エシカルな体験をしてもらうというもの。オーガニックランチ、フェアトレードチョコレートを使った和菓子での茶道体験、蜜蝋のハンドクリームづくりなどのメニューがあります。一流の講師も揃え、説明から体験まで上質の「コト消費」を提供。その結果、ツアー終了後に参加者の95%が「今後もエシカル消費を行っていきたい」と回答したそうです。

料理教室は、毎日の食を通じて地産地消、ごみの削減、無農薬野菜、動物への配慮などの気付きを得てほしいとの思いから実施したもので、マクロビオティックやエシカル商品を多く扱うショップ「ヘルシングあい」を会場として行いました。徳川はちみつ、愛知産の米「あいちのかおり」、愛知県が生産量一位のいちじくを使い、「あいちがかおるいちじくとはちみつの玄米タルト」を小中学生の親子で作るというコンテンツを提供。食材それぞれに社会的課題に対応したテーマが設定されており、料理を通じて気付きが得られるようになっています。体験後のアンケートでは、消費行動への意識変容が見られたとのことです。

そして、最新の活動として「伝統工芸品」を紹介し、伝統工芸品に取り組むようになった理由を次のように話しています。

「生物多様性やSDGs、エシカル消費といったものに共通しているのは、日本人にとっても馴染みのある『思いやり』の気持ちであることに気付いた。そのうえで、地域の文化を見直したところ、伝統工芸品は自然の恵みと、地域の人々が持つ思いやりの気持ちと知恵が詰まっているエシカルな商品であることに思い至った」

この30年で伝統工芸品を支える職人が激減していることもあり、伝統工芸品を未来へつなげていくため、名古屋友禅によるスワッグ(インテリア装飾)作りの体験会を企画。ミツバチのオリジナルデザインなども考案し、伝統工芸品とエシカルな行動が連動した企画となり、地元のメディアにも取り上げられ、話題になったそうです。

来年度は「さらに地域とのつながりを深めたい」と、山本さくら氏は話しています。

「企業やさまざまな団体などを通して、地域とのつながりを作れたことが、これまでの活動の成果のひとつだと思う。その感謝の気持ちを込めて、2019年には「地域全体で作るアイス」をコンセプトに商品開発に取り組み、徳川はちみつ入りのアイスクリーム『文化のみち アイスクリン』のパッケージを、地域住民の投票で決める総選挙を行った。これからも、こうした活動を通じて、地域とのつながりを深めていきたいと考えている」

続く後半のワークショップでは、「事例発表を聞いて」と「養蜂活動を街づくりや地域活性化に活かすアイデア」の2点のテーマで行い、各チームのアイデアを発表しました。

レポート後編ではその内容について紹介します。


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