今年4月、不動産業界大手のCBRE(シービーアールイー)がこれまで東京と埼玉に構えていた計4拠点を集約、丸の内2丁目にある明治生命安田ビルへの移転が完了しました。今回の移転では、拠点をひとつにすることにより業務の効率化が図れるというだけでなく、今までのオフィスとは違ったさまざまな工夫が試みられています。
まず挙げられるのが、固定の席が設けられておらず、出社したらどこにでも座っていいという自由な環境。フリーアドレスのオフィスは増えてきていますが、ここまで徹底している例はあまりないでしょう。社長以下全社員がその時の業務内容や気分に合わせて、好きな環境で働くことができるのです。オフィス内には窓の外に広がる皇居に臨みながら仕事ができる開放的な席や、気軽に使えるミーティングスペース、気密性の高いフォン(電話)ブースなどが設置されており、社内のどのPCでもログインが可能。最新のITツールも整備されているため、フレキシブルな働き方が可能となっています。
例えば、朝の日差しが心地よい窓際の席で書類作成、クライアントとの重要な電話は雑音が入らないフォンブース、最寄りのオンデマンドプリンターで書類を出力し、そのまま社内の打ち合わせスペースへ...といった効率的な働き方ができるようになり、席が固定化されていないため、部門間でのコミュニケーションも増加傾向にあるのだそうです。
数ある試みの中でも、どのプリンターでもカードをかざせば出力できるオンデマンドプリントは好評。台数は以前の40台から10台へと削減でき、年間2,000万円以上の経費節減や省スペース化にも役立っています。このようなスペース・設備の共有を徹底し、不必要な個人席を排することで、新オフィスは以前に比べて18%の減床を実現。賃借面積を減らすことに成功しています。
このようなオフィスの劇的な変化に社員が対応できるよう、移転前には"チェンジマネジメント"と題してさまざまな取り組みが行われたそうです。継続的なメールの配信や、ITトレーニング、携帯できるハンドブックの配布など、移転後の業務に支障がないよう、綿密な事前準備が行われたうえでの移転となりました。
実際に2か月程度このオフィスで仕事をされている社員の方からは、「初日は不安だったが、自由にどこでも座っていいという快適さが素晴らしい」「フォンブースは今まで以上に集中ができるスペース」「滞在する場所によって、その時の自分の気持ちを示すことができる」 と満足度も高く、オープンな場所が増えたことで仕事上でのアイデアも湧いてくることが増えたそうです。
また、オフィス各所の壁には若手のアーティストによる作品が描かれており、社員のモチベーションアップにも一役買っているのだとか。
無味乾燥になりがちなオフィス風景ですが、こういった形で彩りが加わることで、硬くなりがちなアタマもリフレッシュできるシーンが増えることは間違いないでしょう。
さらに、オフィス内には社員とゲストのみが利用できるニュージーランド発のコーヒーショップ「mojo coffee」がプロデュースする「RISE CAFE」も併設。自慢のコーヒーや各種サンドイッチなど軽食が楽しめます。ニュージーランド本国で人気を誇る「mojo coffee」の、日本での第2店舗目。
一般的なオフィスとは一線を画した形のCBRE新オフィス。今までよりも格段に自由度が高くなっただけに、より社員一人一人の自主性が重んじられるスタイルと言えそうです。旧来のやり方に依存せず、さまざまな形のワークプレイスが注目を集める昨今。こういったオフィスの在り方、働き方が、これからのスタンダードになるのかもしれません。