11月30日「丸の内ラジオ体操」の最終回が開催され、120名近い人々が、午後の仕事の前に仲通りでラジオ体操に参加しました。
と書くとただそれだけのことなんですが、あの!「腕を前から上に上げて伸びの運動~!」という掛け声が仲通りに響き渡り、100名を越える人々が一斉にラジオ体操に興じるさまは、はっきり言って面白い。ラジオ体操といえば、早朝に公園で行うイメージですが、オフィス街のお昼休みということで、非日常感たっぷり。そして、意外なほど楽しそう!
そんな非日常的な楽しさにあふれた丸の内ラジオ体操がどんな手ごたえだったのか、最終日の様子を取材しました。
丸の内ラジオ体操は、11月13日~30日の間、計7回開催されました。12時45分に開始し、13時には終了します。参加者はラジオ体操出席カードをもらってスタンプを集めることもできます。
これは、『大手町・丸の内・有楽町地区公的空間活用モデル事業2015』の一環で、つまり、道路のようなパブリックスペース(公共空間)を有効に使う方法を模索しようという試みです。主催はNPO法人大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)、三菱地所、協賛はエコ結び実行委員会。そして企画協力にかんぽ生命。かんぽ生命は、ラジオ体操がその前身である逓信省簡易保険局により制定されたことにちなみ(昭和3年放送開始)、今でもラジオ体操の普及推進に力を入れていることから、今回の企画に協力しています。
ラジオ体操はかんぽ生命が由来だと知ることができただけでも見つけモノですが、会場では、おなじみのゆるキャラ・マルケンとともに、かんぽ生命の学資保険「はじめのかんぽ」のキャラクター「ゆめぴよ」に出会えたことも新鮮な驚きでした。
さて、肝心のラジオ体操は、ラジオ体操指導委員の指導のもと、軽く体をほぐしてから、ラジオ体操第一を実践しました。檀上からは「何度もいらしている方もいらっしゃると思いますが、あの腕を上下に伸ばす運動(8番目の運動)のとき、しっかりと声を出して元気よく体操しましょう」と掛け声がかかります。
ラジオ体操が始まって興味深かったのは、仲通りを歩く人々の反応。「本当にラジオ体操やってる」「へぇ面白そう」「なんだこれはラジオ体操じゃないか」と結構なつぶやき声が聞こえてきて、中にはスマホをかざして写真を撮る方も。外国人のツーリストも多く、興味深げに振り返りつつ通り過ぎていきます。
たかがラジオ体操と侮るなかれ、本気でやると結構な汗をかきますし、深呼吸で終わるラジオ体操を終えた人々の顔は、はたから見て実にすがすがしいものでした。
参加した丸の内オフィスで働く20代女性に聞くと「すっきりした気持ちで午後の仕事に取り組めそう」と明るい笑顔。「また開催したら参加したいし、ぜひ続けてほしい」と熱いエール。
はとバスツアーに乗るまでの時間つぶしでたまたま通りかかって、「つい参加してしまった」という神奈川県の女性は「こんなオフィス街の屋外で、ラジオ体操をやるという光景がすごく不思議な感じで、そしてとても楽しそうでよかった」。同じようにまたあったら参加してみたいと話していましたが、ポイントは「面白そうな感じ」「何をしてるんだろうというワクワク感」だったとか。その点、2人(匹?)のキャラがいたのは「◎」と太鼓判。
また、たまたま通りかかったというイタリア人カップル旅行者は、関係者に繰り返し「なんなのこれ」「明日はないの?」と質問していました。そんなにやりたかった?と聞くと「今日で終わりだなんて残念。イタリアのお昼休みに、街中でこんな楽しいことをやるなんて聞いたことない。やってみたかった」と単なるエクササイズではなく、街中でやることの斬新さに感じ入った様子。さらに公共空間利用の試みだと説明すると再びサムズアップ。公共空間の利用やヒューマンスケールな都市空間創出はヨーロッパが本場ですが、丸の内いや日本もまんざら捨てたもんじゃなかったようです。
ちなみに、最終回の今回、かんぽ生命と仲通りに店舗があるスターバックスから参加者へプレゼントがありました。かんぽ生命からは、東北の復興支援に貢献した東北杉のコースター、スターバックスからは抽出器具がなくても手軽にいれることができるドリップタイプのコーヒーです。スターバックスは「午後の仕事を、ラジオ体操とコーヒーのアロマでリフレッシュしてスタートしてほしい」という思いから、スタッフ一同が手書きのメッセージを書き込んでのプレゼント。「丸の内で働いている人たちをサポートしたいという気持ちはリガーレさんと一緒。最初はラジオ体操への参加だけだったが、最後はみなさんに贈り物したかった」とスターバックス コーヒー丸の内三菱ビル店の中村裕治氏。
スターバックスは全国の店舗が地域とつながり、地域の人々を笑顔にするようなコミュニティの場をつくりだす「コミュニティコネクション」を展開するなど、単なるCSRを超えた活動に取り組んでいます。そんな仲間がいると、公共空間利用にもはずみがつくってものです。
主催したNPO法人大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)の中嶋美年子氏は、今回のイベントを終えて「ラジオ体操が日本人の体に染みついていることをしみじみ実感した」そう。
近年は、ラジオ体操をやらない、知らない小学生が増えていると言われていますが、今のオフィスワーカー世代にとっては、それこそ体が覚えている共通体験。価値観の多様化、メディアの分散、悪しき価値相対主義の敷衍によって、ある一定のマスがなくなりつつありますが、こういう共通体験はあって良いものじゃないかと思えます。
それはさておき、毎回120~140名の参加者が見られ、手ごたえは十分。ただし「健康づくりの場としてオフィス街でラジオ体操を毎日続けていくというのが理想ですが、そのために屋外でのイベントを毎日やるとか、インセンティブを付けていくというのはちょっと違うかな」と中嶋氏。「まちのシーンを作っていく一環として、大丸有のオフィスワーカーのみなさんが顔見知りになる機会を提供できれば」。そこには健康促進というプラスαも付いてきます。
今後は、今回のアンケート結果を見ながらですが、「季節が良いタイミングで、また開催したい」と前向きな方向。イベントは、見ているより参加する方がずっと楽しいですし、もちろん誰でも簡単にできるラジオ体操なので、次回もぜひたくさんの方に体験してほしい。そう思えるイベントなのでした。