イギリスで広がりを見せる、電力や燃料を地域住民の手で節約、産出、再生する活動である「コミュニティエネルギー」。ただいま、イギリス全土をあげて「第2回The Community Energy Fortnight(コミュニティエネルギー・フォートナイト)」が開催されています。
期間は2014年9月13日(土)~9月28日(日)。主催はコミュニティエネルギーの専門組合「Community Energy Coalition」です。期間中、組合のメンバーを始めとした各団体が、日頃の活動のショーケースとして、スペシャルイベントを開催します。
昨年は30のイベントが開催されましたが、今年は85つ予定されており、昨年よりも3倍近くに増えました。この一年でどんな発展があり、今年はどんなトレンドが見られるのでしょうか。運営委員でシニア・サステナビリティ・アドバイザーのクレア・マーティンスキー(Clare Martynski)さんに伺いました。
コミュニティエネルギーを巡る動きとして、イギリスではこの一年でどんな進捗があったのでしょうか。
「イギリス政府は今年1月、コミュニティエネルギーの高まりを背景に、活動の継続的なサポートを目的とした初のCommunity Energy Strategyを発表しました。資料には、これまでの成果やコミュニティへの副次効果について、イギリスが抱える温室効果ガス削減の目標などとあわせて数字とともにまとめられました。あわせてイングランドでは、今年の5月に現在進行するプロジェクトを管理・推進するNPOであるCommunity Energy Englandが立ち上がりました」
地域から始まった草の根の活動を、行政がすくい取る形で発展している、と言えるでしょう。
また、企業のなかからも変化が現れています。
「エネルギー関連企業も、それぞれの企業でコミュニティエネルギーのリーダーとしての活動を始めました。例えばCo-operative EnergyやOvo Energyです。地域でのイベント主催や、コミュニティエネルギーの周知に取り組んでいます」
「今年の最重要テーマには、イギリスの家庭や地域に打撃を与えている燃料貧困問題(fuel poverty)を設定しました。オープニング・カンファレンスでイギリス全体の問題として、そして各都市のイベントではコミュニティの特徴を踏まえて掘り下げていきます」
イギリスの燃料貧困問題とは、2004年以降の家庭用電気・ガス料金の急騰を背景に、低所得者や高齢者などを中心に、収入の10%以上が燃料費に使用されている状況を指します。冷涼な気候のイギリスでは、冬場に燃料費が支払えずに凍死する人が出るなど、社会問題になっています。
「政府はさまざまな施策を打ち出していますが、インフラ整備には時間と巨額の費用がかかります。そこで地域での発電、再生、日常生活における燃料費の節約方法といったコミュニティエネルギーが担う役割は大きいでしょう」
イベントは多様で、エコロジー関係の施設での特別展から、持続可能な建築物や暮らしを家主が地域住民に一般公開する「オープンホーム(Energy Savers Open Homes)」、グリーンな都市として知られるブリストルでは政府と企業、住民のパーティー「Bristol Community Energy Day and Party!」などが開催されます。
「コミュニティエネルギーは草の根のマイナーな活動から、メインストリームへと発展してきています。今年のコミュニティエネルギー・フォートナイトも、より多くのコミュニティに刺激を与え、それぞれの取り組みのサポート、そして意欲の高まりにつながることを期待しています。」
コミュニティエネルギー・フォートナイトは、「2020年までにイギリスの全てのコミュニティが、二酸化炭素排出量削減、再生可能エネルギー算出の目標値達成に大きな役割を果たす」というスローガンに向けて、確実な一歩、そして二歩目を歩んでいます。
彼らが見据える2020年といえば、ちょうど東京五輪の開催年でもあります。日本でもそれぞれの地域や町内で積極的にエネルギー問題に取り組んでいきたいですね。