「世界で生産された食料の3分の1が、食べられることなく廃棄されています。この状況は、環境と経済に深刻な影響を与えています」。先月11日、国連食糧農業機関(FAO)が食料廃棄に関する最新の報告書を発表しました。毎年の世界の食料廃棄量は13億トン、その経済コストは 約75兆円 にも及びます。
今回の報告書で気になるのは、食料廃棄量の多さはもちろんのことですが、環境と経済への影響にも注目していることです。食料の生産から流通、加工、消費、廃棄にいたるまで、すべてのプロセスにおける地球への負荷量を意味する「Food wastage footprint(食料廃棄のフットプリント)」という考え方にもとづいて調査されました。
例えば余ったご飯を捨てる場合、そのお米が生産、運搬、そして調理されるのに必要な水やエネルギーも捨てている、ということになるのです。「食料廃棄のフットプリント」は「food print(フードプリント)」とも呼ばれ、今年の世界環境デーの標語にもなりました。
フードプリントという考えを取り入れて、「食べる」という行為を見つめなおすことが求められている今、私たちはこれまで以上にどのような対策ができるのでしょうか。ここでは海外で注目される取り組みを3つご紹介します。
農林水産省によると、日本では食料廃棄の約半分が家庭の台所から発生しています。まずは家庭で「買いすぎない」「使い切る」「食べ切る」ための工夫が大切です。
アイルランドの料理研究家のSianさんが立ちあげた、話題の献立トータルプラニングサイト「Siansplan.com」にヒントがありそうです。
このサービスでは、健康的な献立の一覧から好きなものをクリックすると、自動的に買い物リストが作成され、買い過ぎを防ぎます。さらには、余った食材を使ってできる献立や保存食作りの提案までしてくれます。ウェブサービスを通して家庭の知恵を共有し、誰でも実践しやすくしているのです。
「Siansplan.com」は各国のメディアで「家庭の健康の向上と節約に貢献し、さらには食料廃棄を減らす、すばらしいサービス」と賞賛され、利用者はじわじわと世界に広がっているそうです。
つい食材を買いすぎてしまったり、苦手なものをいただいたりすることもありますね。フードバンクに寄付することもグッドアイデアですし、アメリカやイギリスで広がってきているのが「Food Swap(フード・スワップ)」という食材の交換会です。
ニューヨークの女性が立ちあげた「Food Swap Network 」が仕掛け人で、ウェブサイトから申請することで、だれでもイベントを立ち上げることができます。
友達やご近所同士で企画をしたり、料理上手の人がその場で調理をして振る舞ったりと、地域のパーティーのような雰囲気の交換会も。会場施設の提供など、企業や行政が協力して定期的に行っているところもあります。ご近所さんとの交流が深まるのも醍醐味です。
「ちょっと多めに作っちゃって...」と、ややわざとらしくも、夕飯をおすそ分けしてくれる親切なおばさん。都市部では珍種、地方でも今や絶滅危惧種かもしれませんが、この「おすそ分け」を楽しいビジネスにしたのが、イギリス発のウェブサービス「Casserole Club(キャセロールクラブ)」です。
「Casserole Club(キャセロールクラブ)」は、近所の料理好きな人と、おすそ分けがほしい人のニーズをつなげるウェブサービスです。現在は3都市に限って実験的に行われています。
参加希望日、苦手なものやアレルギーなどの設定もできるので、ちょっとお節介だなと感じる、食べられないものをいただいたけど断りにくい......という問題を解消します。 特に食材が余りがちな単身世帯や高齢者に活用されているそうです。
いずれのグッドアイデアも、主婦の知恵だったり、ご近所さんとの協力だったりと、やっていることはなかなかシンプルです。
国連が現在行っているキャンペーン「 Think.Eat.Save. Reduce Your Footprint(考えよう、食べよう、救おう:あなたのフードプリントを減らそう)」でも、各自のシンプルなアクションが大きな結果を招くと呼びかけています。
健康と家計のためはもちろん、地球のためにも、それぞれができるアクションを起こしていきたいですね。